あさひのブログ -4ページ目
めずらしくアメリカ映画。

「メッセージ」(2016年 原題「Arrival」 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 主演/エイミー・アダムス)
118分


原作はテッド・チャンのSF短編「あなたの人生の物語」。

――世界各地12か所に突然巨大な未確認飛行物体(UFO)が出現した。宇宙人の襲来だとパニックに陥った人々が暴動を起こしデマが広がり各地で集団自殺が起こった。

言語学者のルイーズの元にアメリカ軍のウェバー大佐がやって来た。実は彼女は以前軍に協力して外国語の解読をしたことがあり、その関係でまた依頼したい案件があるというのだ。それは宇宙人語の解読だ。あのUFOに乗っている宇宙人が何らかのメッセージを我々に向けて発しているというのだ…!
ルイーズにまず示されたのはそのメッセージの録音。何かくぐもった響きの音が二種類録音されていたが、さすがにこれだけでは解読のしようもない。これを発する相手の表情、動きなどがなければ…。するとウェバー大佐はルイーズに一緒に来て宇宙人に会ってくれという――

[ここからネタバレ------
ルイーズと物理学者イアン、そして特殊部隊がUFOに接近する。宙に浮いているその真下にぽっかり穴が開いており、そこからクレーンリフトで上昇して進入すると、どういう仕組みか途中で重力が90度回転し、彼らは歩いてUFOの内部へと進む。奥にはガラスのようなものでできた窓があり、そしてしばらくすると煙のようなものがその向こうに立ち込め、そして何か黒い動く物体の姿が見えた。それはいくつもの足を持つ巨大な蛸のような蜘蛛のような生き物だった。それは何か鳴き声のような独特の音をいくつか発するとまた姿を消してしまった。

宇宙人の存在を目の当たりにした彼らは戦慄するが、ルイーズは言語学者として彼らとのコミュニケーションに強く引き付けられた。
二度目の面会で彼女は音ではなく文字でコミュニケーションをとることを提案した。
三度目の面会ではホワイトボードに名を書き、これが自分だと指し示した。イアンもそれに倣う。その後ルイーズは彼ら二体をゆっくり指示した。すると彼らは各々が黒い液体のような物を放出、その液体は円形の模様を形どった。これが彼らの名前のようだ…。
彼ら…7本の足のようなものを持つためヘプタポッドと名付けられた宇宙人が示した文字らしきものの意味を読み取るためあらゆる言語学者が動員された。ルイーズらとヘプタポッドの交流の中で少しずつその文字は解析されていった。
その単語がいくつか解析され、いよいよルイーズは彼らになぜ地球にやって来たのかと尋ねた。するとその答えは「武器を与えるため」だった…。
単語の細かいニュアンスが判明しているわけではない。武器と訳したが、だからといって地球を侵略したり損害を与えると決まったわけではない、そうルイーズは説くが軍部はヘプタポッドへの警戒の色を強める。

世界各国が同様にヘプタポッドとの交流を試みていたが、中国が彼らの目的が「武器を使う事」だと判明したため交流を中止し攻撃対象とすると発表した。各国も中国に倣い攻撃態勢となった。そしてアメリカ軍も宇宙人を敵とみなし交流を中止することとなった。だがヘプタポッドに悪意がないと信じるルイーズは単身UFOに近づく。するとUFOから小さな輸送物体が現れルイーズを乗せてUFO内部へと運んだ。UFO内でルイーズは巨大なヘプタポッドと相対する。
彼らはルイーズに武器を与え人類が3千年後に彼らを救うと伝えて来た。彼らの言う武器とは…言語のことだった。ヘプタポッドの使用する言語は時間の概念を飛び越える。彼らと交流を始めてからルイーズは夢のような映像がフラッシュバックするようになっていた。それは彼女の一人娘との幸せな日々、そして病に冒され死へ向かう娘の姿…ルイーズはまだ結婚していないし子供も産んでいない、なのにまるで体験したかのようにはっきりとした映像が頭に蘇るのだ。それはヘプタポッドの言語を解読するうちに彼女が時間の概念を飛び越えて物事が見えるようになったからだ。彼女の未来がフラッシュバックしていたのだ。ヘプタポッドは人類に武器…この言語を与えるためにやってきたのだ、3千年後に彼らを襲う危機を人類に救ってもらうために。

12あったUFOは突然、何の前触れもなく空気のように消えてしまった。ルイーズの傍らにイアンが寄り添う。彼女は後にイアンと結婚し娘のハンナをもうける。だがイアンとは離婚しそしてハンナは病に冒され若くして亡くなるのだ。その未来がルイーズにはすでに見えてしまっていた。未来は決まってしまっているのだろうか、娘が死んでしまう事は避けられないのだろうか、だとしたらイアンと結ばれることは結局不幸になることなのだろうか…だがルイーズは彼を受け入れる。つらい事以上に幸せな時間が沢山ある事を彼女は既に見て知っているからだ。(終)
----ここまで]

前半はがっつりSFなのに後半はいつの間にか人間ドラマ。サスペンスでもあり序盤から仕掛けられている大きなトリックを持つミステリでもある。
日本公開当時「世界中が感動の涙!」みたいなアオリがついてたけど、テーマ自体はさほど驚くようなものでもなくベタだったりする。ただSFを手法にして、宇宙人まで出してきておいて描くのは普遍的な人間性のテーマだというのが面白いところ。
物語は目で見られる分原作よりはわかりやすくはなっているけど、それでも1/3くらいの人は最後意味がわからないのではないかと思う。[ここからネタバレ含む-----ルイーズの回想シーンだと思われていたものが実は予知夢的なものだったと解るかどうかがカギで、これが分からなければ「バツ1で娘を亡くしたルイーズが過去の悲しみを乗り越えて再婚する話」になってしまう。ラストにハンナの父がイアンだということも示してるけど、「イアンと再婚して娘にまたハンナと名付けた」とも捉えられかねない。----ここまで] 脚本すごく頑張ってるけど話が難しすぎてキビシイかもなー。

ストーリー以外としては、序盤の宇宙人との対面シーンの緊迫した空気感がすごくハラハラして面白かった。実際未知の脅威…今までにない大災害などに直面した時の世界は確かにこうなるだろうというリアルさも含めて。
宇宙船通路内で重力が変わって上部へ向かって歩いていくというアイディアも面白い。

原作ではヘプタポッド言語の性質を追及していくことと主人公の生き方がリンクするところに重きを置いてて映画とは主眼が違うけど、この作品はこの作品でテーマが絞られててよくまとまっているので原作ファンの方もただの実写作品ではなく別視点から見た別の物語として楽しめるのではないかと思う。



原作の小説。
ウィリアム・フォン(馮紹峰)とリウ・イーフェイ(劉亦菲)主演のファンタジーラブコメディ。

「二代妖精之今生有幸」(2017年 監督/肖洋 主演/馮紹峰、劉亦菲)
110分

※日本語版はまだありません。

――動物園の象の飼育員として働く袁帥は若かりし頃映画監督志望で、映画製作のために多額の借金をしたため今でも借金取りに追われる生活だった。手っ取り早く借金を返すために富豪の女性と見合いを繰り返すが、結婚して借金を肩代わりしてくれるような都合の良い相手はなかなか見つからなかった。
そんな時、突然若い女が結婚したいと彼の前に現れた。白繊楚と名乗るその女は昔いじめられていた所を助けられた北極狐だと言う。頭がいかれた女だと袁帥は相手にしなかったが、しつこく追って来た白繊楚が酒を飲み干すと見る見るうちに全身に真っ白の毛が生え巨大な狐の姿になった。袁帥は仰天して逃げ出すが化物狐はふらふらしながら追いかけて来る。
白繊楚が暴れているのを察知した妖怪管理局…妖怪が人類と関わりを持たないよう監視している妖怪警察の洪思聡はすぐさま部下を連れ現場へ急行する。白繊楚を取り押さえ、特殊な虫を放つ。その虫に刺された人々は妖怪を見た記憶を消去されるのだ――

[ここからネタバレ-----
袁帥の前に再び白繊楚が現れる。虫に刺されなかったため記憶が残っていた袁帥は恐れ追い払おうとするが白繊楚は恩返しがしたいと言い、金に困っている袁帥のためにゴミ拾いなどの仕事を始めた。
白繊楚が特定の人間と関わりを持っていると知った妖怪管理局の局長の雲中鶴が袁帥の前に現れ、白繊楚を捕獲したら莫大な金を支払おうと麻酔薬を手渡す。だが袁帥は真摯な姿を見せる白繊楚に情が移り麻酔を打つことができなかった。
自分が捕まれば袁帥は大金が手に入って喜ぶだろうと考えた白繊楚は自ら麻酔薬を首に打ち倒れる。袁帥は彼女の親友で人間に化けて女優として活躍している賈冰冰の助けを借りて白繊楚と手に手を取り合って逃げ出した。
雲中鶴は白繊楚の父を人質に取り出頭を逼り、ついに白繊楚は捕らえられ牢獄に閉じ込められた。

洪思聡は実は白繊楚の幼馴染で彼女に片思いしていた。白繊楚が袁帥の事を愛していると悟った洪思聡は彼女の幸せのために、袁帥に協力を持ち掛ける。雲中鶴に変装して刑務所へ潜入し白繊楚を助け出すのだ。
特殊メイクで雲中鶴そっくりに変装した袁帥とその秘書に扮する洪思聡は首尾よく刑務所へ入り白繊楚を連れ出すが、戻って来た雲中鶴と鉢合わせした。正体を明かされ追い詰められそうになるが捕まっていた囚人たちが一斉に脱走し、恨みを買っていた雲中鶴は囚人たちに襲われる。

その後、妖怪界の規定が改訂され人類との結婚も認められるようになった。白繊楚は袁帥と結婚し子供を授かり幸せに暮らしましたとさ。(終)
-----ここまで]

正統派アイドル映画!楽しかった。爆  笑
美男と美女が出会って最初はいがみ合うけど互いの真摯な気持ちに気づき障害を乗り越えて結ばれるという大定番ラブストーリー。
ウィリアム・フォンはこんな役も演っちゃうんだと驚いてしまったくらいファニーででもちゃんと格好良いし、リウ・イーフェイの可愛さはもはや犯罪レベル!女もひと目惚れしてしまう超級女子力ふりまき小動物系キューティガール!そしてCGで作られた北極狐がまたヤバいくらい可愛い表情を見せる。ネコミミ系女子が好きな人はノックアウト間違いなし。
リー・クァンジェ(李光潔)の二役も笑ってしまうくらいよくできてたし。(ウィリアム・フォンと雰囲気似てる彼をキャスティングしたのは巧い!)
一見ビミョーというかメイクが若干キモいグォ・ジンフェイ(郭京飛)、アイドル映画でこんな重要な役やるからには中国では有名な歌手かイケメンと言われる人なんだろうと思ったら彼は普通にコメディ俳優だった。でもだからか最も目を引いたし異色で印象に残ったなぁ。

リウ・イーフェイは「曹操暗殺」「項羽と劉邦」でもまぁかわいいね程度の印象はあったけど、この作品は本当にあざとすぎるくらい彼女の魅力が爆発。イケメン王子ウィリアム・フォンですら彼女の引き立て役となっている。
アイドル映画の中でもこれは見る価値あり。
「瘋狂的外星人」のニン・ハオ(寧浩)監督作品。「超時空同居」「和平飯店」主演のレイ・ジァイン(雷佳音)の出世作らしい。

「黄金大劫案-Guns and Roses-」(2012年 監督/寧浩 主演/雷佳音)
108分

※日本語版はありません。

タイトルは「黄金略奪大作戦」みたいなニュアンスかな。

――満州国。スリやサギで生計を立てている小東北はある日神父を騙して警察に捕まった。入れられた拘置所では日本軍によって捕らえられた革命党の男がひどい拷問を受けていた。だが小東北は自分には関係ないとその男が身に着けていた上等な衣服を奪って拘置所を出た。
…だが実は奪った靴の中には革命党の秘密の手紙が仕込まれていた。小東北の住処に革命党の男らが押しかける。革命党に捕まった小東北は彼らのアジトへと連行された。そこで待っていたのは銀幕のスター、女優の芳蝶だった。実は彼女は革命党の志士として密かに戦っているのだ。
彼女らが日本軍の資金となる金塊を強奪しようと計画していると知った小東北は自分も仲間に入れてほしいと懇願する――

[ここからネタバレ-------
芳蝶らははじめ相手にしなかったが、日本軍に追いかけられているところを小東北の機転で助けられ、ようやく参加を認める。
金塊を運ぶトラックのルートを知るため芳蝶らは銀行頭取の顧憲明のパーティへ。運転係を言いつけられた小東北だがこっそり中へ入る。豪華な料理にキラキラ光る銀の食器…小東北はあさましくもフォークを片っ端から懐に入れて後で換金しようと目論む。だが若い女性に見つかり騒ぎ立てられたため逃げ出した。

後日街中でその女性を見かけた。その時突然空襲が始まる。立ちすくんでしまった女性を助けて物陰に隠れるが、着弾の衝撃で飛んできたガレキがぶつかり気を失ってしまった。
気が付くと豪華なベッドに寝かされていた。なんとあの助けた女性は顧憲明の一人娘の茜茜だったのだ。ここが顧憲明の屋敷だと知った小東北は芳蝶らが捜している地図を求めこっそり書斎へ忍び込む。そして目的の地図を発見するが茜茜に見つかった。小東北は茜茜の事が好きで君の写真が欲しくて探してたのだと言い繕った。すると茜茜はすっかりその気になってくっついて来るようになってしまった。

夜中に行われた金塊の運搬を襲って強奪に成功した革命党。芳蝶は革命党に入ることを勧めるが小東北は分け前の金塊を貰うとさっさと帰っていった。
だがコソ泥の小東北が金塊を持っていたという噂はあっという間に警察の耳に届き小東北は捕まり日本軍の鳥山大佐の前に引き出された。父親を人質に取られた小東北は革命党のアジトの場所を吐く。金塊は日本軍に回収され銀行の地下金庫に厳重に保管された。小東北や革命党らを助けるために小東北の父が体を張って追っ手を阻止したが力尽き命を落とした。小東北は父の仇を討つため革命党入りしたいと申し出るが、芳蝶らは小東北の裏切り行為に腹を立て彼を追い返すのだった。

小東北は地元の義侠団から銃を手に入れ顧憲明の屋敷へ。今日はここで顧茜茜の結婚式が行われる。日本軍の横路将軍や鳥山大佐など多くの要人が集っていた。そしてそこには彼らを狙う芳蝶らの姿もあった。
小東北が鳥山大佐を狙って発砲し、芳蝶らもその後に続き、激しい銃撃戦となる。だが日本軍の応酬に革命党の志士は次々と倒れて行き、屋敷は日本軍が制圧した。

顧茜茜に助けられた小東北。茜茜は一緒に逃げようと言うが、小東北は目の前で死んでいった芳蝶ら革命党の遺志を継いで日本軍と戦うために、彼女にはわざと冷たい言葉を言い放ち立ち去った。
小東北は義侠団の力を借り、王水を積んだタンクローリーで銀行へ突っ込む。タンクから流れ出た王水は地下へと流れ込みあらゆる金属と金塊を溶かしていく。義侠団と日本軍の激しい銃撃戦。かけつけた茜茜は鳥山大佐の銃弾に倒れる。激高した小東北は銃を打ち放し鳥山大佐を追い詰め、大佐は踊り場から転落し王水のプールへと沈んで行った。

そして幾日かが経った。
革命党の志士となった小東北は仲間との連絡のために映画館へと来ていた。上映されている映画にはあの芳蝶が出ていた。そして顧茜茜の姿もそこにあるように見えたのだった。(終)
------ここまで]

なんか支離滅裂な作品だった…。
コメディぽいんだけど煮え切らないギャグ、笑いどころのようなBGM流れてるけど全く笑えないシチュエーション、存在意義が不明なカットの数々、結局何があったのかわからない急すぎる場面転換。最後は強引に英雄譚にまとめ上げようとしてるみたいだけど…これ何かのパロディなのか??

物語自体は「水滸伝」に代表されるような中国に昔っからある「義侠を自称する強盗団が悪代官の賄賂金等のあくどい金を奪うため知恵と力を絞る」というプロット。この作品では悪代官が日本軍で義侠強盗団が共産党員。最初は金のために共産党員に協力してた主人公のコソ泥が彼らの必死な姿に心打たれて自ら国のために日本軍と戦う、というベタベタな展開。たぶんこのプロットは中国では大定番の英雄譚だと思う。
で、この作品何を描きたかったのかというのがまったくわからない。クライマックスにまでビミョーすぎる笑いをひねりこんでて共産党員らが真面目に国のために戦ってるように見えないし…。コメディとして作ったのだとしたらハッキリ言って面白くない。本気で英雄譚として描いてるのだとしたら馬鹿にしてるのかって怒られそう。

でも主演のレイ・ジァインはやっぱり芝居が上手かった…序盤は若手がやりそうなあるあるなコメディキャラだなと思ってたけど、だんだんとその心境が変化していくさまが、特に終盤はその表情に逐一引き付けられた。
そして悪役を演じる山崎敬一がこれまた上手すぎで!キャラが濃くて最初はむしろコメディらしい笑いをリードする役割だったけど単におおげさに演じてるわけじゃなく、鳥山幸之助というクセがあるけど矛盾のない一個人としてのキャラクターが出来上がっててめちゃくちゃ魅力的だった!
この二人が「コメディなのに」シリアス劇のような本気のお芝居を見せつける。でもこの作品にそんな本格的な演技力は求められてないような気がするんだけど…。そういう意味でこれはコメディにしたかったのか英雄譚を描く気だったのか、監督の意図が読めない。

この時代を描いた中国ドラマのお楽しみ…日本人と日本語の描き方については、おそらく日本人アドバイザーがちゃんとついてたんだろう、おかしな点がなく吹き替えもちゃんとした日本語になってたし台詞の表現も不自然ではなく、ある意味ガッカリチーン
(伊達政宗公の像が建てられてるのとかは意図したギャグなので不自然とか言わない!)
「流浪地球」の王磊隊長を演じるリー・クァンジェ(李光潔)と、「戦場のレクイエム」の王指導員役が印象深かったユェン・ウェンカン(袁文康)のW主演ドラマ。

「悍城」(2018年 監督/劉殊巧 主演/李光潔、袁文康)
全24話

※日本語版はありません。

悍は(暴力的、悪い意味で)勇ましい、猛々しいという意味。日本語では悍ましいと書いておぞましいと読む。城はキャッスルではなく市街、都市の事。
マレーシアをモデルにした架空の国際都市・ランクーパーを舞台に、ヤクザ同士の闘争や麻薬捜査の潜入捜査官らを描くノワールサスペンス。

――東南アジアにあるカン国ランクーパー州は中華系、東南アジア系、インド系、欧米系と様々な人種が集う国際都市だ。ここは鄭泰誠率いる七星社というヤクザが警察を凌ぐほどの力を持っている。そして今もう一つ、李漢才率いる鼎盛合が七星社と勢力を争っていた。
七星社部長の于永義は鼎盛合の幹部を殺害して逮捕され海の孤島にある凶悪犯罪者用の刑務所に収容されていた。七星社の圧力によって彼は狭い牢獄に入れられることもなく広々とした個室でのんびり過ごしている。だがその彼に鼎盛合の刺客が襲い掛かる…それを阻止したのは刑務官の白振赫。彼はその職務とは別に、于永義を守らねばならない理由があるのだった。

ランクーパーへやってきた怪しい中国人・珞珈はレストランで銃を打ち放し逮捕された。孤島の刑務所へ入れば刑期を短くできると知った彼は進んでそちらを希望する。実は彼の目的は七星社の于永義に近づく事。珞珈はまず牢獄一の権力者である"輝のアニキ"の信頼を得ようと図る――

冒頭からガチガチのヤクザ仁義ものに見えるのだけど、物語が進むにつれどうも毛色が違うと気づかされる。華僑らの物語とは言えキャストはマレーシア人、シンガポール人も多く街のエキゾチックな雰囲気がいい味出してる。そして最後のオチにはタイトルの意味が重くのしかかって来て、意外とよくできた脚本だと驚かされた。
"意外と"、というのは…この物語の本筋はハードボイルドで面白いのに、これを台無しにしているのが序盤から無意味にぶち込んでくる、大人の事情丸出しなラブコメと広告。チーン
視聴率のために美女がからむ恋愛要素を入れるのはわかる、でもなぜにコメディ??ヤクザものというシリアス一直線な物語に女性が出て来た瞬間不釣合いなコメディが始まるのでイラッとしてしょうがない。コメディばかりを繰り返してるために主人公の心情の推移が全く見えなくて、後半本気で恋に落ちてた主人公にハァ?いつの間に?ってなる。そしてあざとい広告ね…ドラマの中で若いヤクザ達がゲームアプリに興じてるシーンを無意味に挟み込んだり「この〇〇(アプリ名)が便利なのよ」なんて物語に関係ない台詞を言わせたり、特定のスナック菓子や飲料を大写しにしたり、ドラマの雰囲気や流れを思いっきりぶった切ってて脚本家が大泣きしたであろうことは想像に難くない。ヤクザの物語だけに強大な権力に屈した様子を見せつけてるな…。
こういう余計なものが入っていなければ物語も引き締まって最後まで一気に見れるだろうに、これでは途中で脱落する人が多いだろう…。

リー・クァンジェが演じるどこからどう見てもあやしい男・珞珈はその正体も目的も全て謎とされていて誰の敵で誰の味方かわからない、ユェン・ウェンカンが演じる白振赫は元警察でいろいろあって結局ヤクザになってしまうという、なかなか複雑でおもしろい設定。この二人の真の目的が判明するまでの前半が強烈に面白い。後半は目的を達成するために二人が協力してある事件を調べていくけどここはわりとありがちな展開というのか。
しかしこの主人公らを差し置いて光ってたのがリウ・ダーカイ(劉徳凱)さん演じるボスの鄭泰誠とスン・イェン(孫岩)が演じる于永義!デレデレ
沢山のヤクザが出てくる中で鄭泰誠はものすごくイマドキなヤクザ…つまり派手派手しい格好をしておらず一流企業の社長らしいスーツでビシッと決めてて、常に取り乱すことなく余裕に構えてる、だからこそ迫力がある。
そして于永義は真逆で吉本新喜劇に出て来るようなド派手なシャツとスーツにネクタイ、キンキラキンの時計やアクセサリを身に着けたいわゆる下品なチンピラで、こいつ絶対最初に消えるだろうなと思ったのになんと最終回まで健在で、しかもトリックスターとして物語をぐいぐい引っ張っていく。演じるスン・イェンの表情がもう千原ジュニアにしか見えなくって!笑い泣き コメディ俳優か芸人なのかと思いきや全然、シリアスなドラマばかりに出てる実力派。一見軽そうなのに馬鹿ではなくしたたかで、腹の内を探り合うサスペンスにおいて最もおいしいキャラに。これは素晴らしいキャスティング、めちゃくちゃハマってた!
あと成俊森を演じる若いモデル系イケメン、リァン・イームー(梁譯木)も見た目だけでものすごい存在感を醸し出してたな。
他にも若者らしくかつ人情味に溢れた小武や毎度さっぱり良い所のない刑事・霍思楽とか、キャラクター的に濃ゆい人だらけで主人公の珞珈も胡散臭くてクセ者。同じく主人公であるはずの白振赫はあまりに常識人というか地味すぎてすっかり隠れてしまってたよ。雰囲気的にも一人だけ古風な感じだったし…。

あんまり中国っぽくない現代劇だけどバイオレンス、ノワール好きな方はどうぞ。一応任侠ものとして泣けるシーンもそこそこあります。

「大漢十三将之血戦疏勒城」(2019年 監督/回宇 主演/謝苗)
100分

※日本語版はありません。

「之」は日本語でいうところの「・(中点)」なので、メインタイトルが「大漢十三将」サブタイトルが「血戦疏勒城」。

――西暦74年。漢帝国北部にある疏勒城に北方民族の大部隊が迫る。城を守る将軍・耿恭は都に援軍を要請するが、都は先帝の崩御、新帝の即位と行事が立て続いたため予算がない。それでも耿恭は援軍が来ることを信じ籠城を決める。
耿恭は北方軍の第一陣を奇策で撃退するが、北方軍は水源に毒を投入した。耿恭は城内に井戸を掘らせるがほとんど水は出ない。数か月が経ち人々は馬の糞尿を絞って水を得るありさまだった――

[ここからネタバレ-----
そうして二百日余りが経ち城内は完全に疲弊しきっていた。耿恭は今夜にでも北方軍が夜襲で一気に攻めて来るとにらんでいた。そして精鋭三人を選び、北方軍が城攻めをしている隙に後方へ回り敵の糧秣を焼いてくるよう命じる。
果たして北方軍は夜襲に来た。耿恭らは必死に城門を守る。だがついに城門が破られた…だがその時北方軍に撤収の命が下る。糧秣を焼かれたことに気づいたのだ。疏勒城はかろうじて持ちこたえたのだった。
しかし城門を壊された以上明日攻め込まれればもう防ぎようがない。耿恭は裏手の隠し通路から百姓らを逃がし、生き残った数十名の兵士らと玉砕覚悟の防衛戦に臨む。
北方軍が城内に突入し、耿恭らは善戦するもついに取り囲まれた。北方軍の王が投降を呼びかけるが耿恭らは高笑いする。怒った王は皆殺しを命じる。その時、後方から漢の旗をひらめかせた大軍が姿を現した…都からの援軍だった。王は舌打ちし撤退を命じる。
疏勒城の兵士で生き残ったのは耿恭を合わせたったの13人であった。たった13人で一城を守ったのだ。(終)
-----ここまで]

・・・なんか感想がない。真顔
話はベタ中のベタできちんとまとまってるし起承転結もしっかりしてるし、お芝居も主演の子をはじめ良かったしキャスティングもよく考えられててリアルに寄せてるなと思うし、エンタメとして狙って作ってるけどそんな嘘くさくないしお金もしっかりかけてるし・・・でもなんだろう、これといって特筆するものがない作品だった。

物語は史実に依るもので、だから驚くような展開はない。だからラストも見えてしまってる。主人公が一人で幾人をもばったばったとなぎ倒すというベタなアクションもあるけどそこまでド派手な演出にしておらず、アクションを見せる作品なんだとしたら地味。最初はアイドル映画なのかなとも思ったけど、出演者はきちんと顔は薄汚れてて着物や鎧も埃だらけにしてて「カッコ良く見せる」ものではない。リアリティ重視で撮ってるから戦争の悲惨さを描いてるのかとも思ったけどそうだとすると終盤の玉砕行為がテーマに反してしまうし、忠義ものだとするとあまりにベタ、ちょっとクサすぎる。
ま、特に訴えたいことはなく単に「この物語を撮りたかった」ってだけかもしれないけどね。

ネット限定の映画だそうで名の通った俳優は使ってないけど、主演のシエ・ミャオ(謝苗)はよく有名なカンフー映画に出てる武術俳優さんらしい。確かに彼の殺陣はばっちりキマってた。ヒロインの范柔を演じるチェン・ムンシー(陳夢希)は駆け出しアイドルなのかなぁという雰囲気を漂わせてたけどお芝居も意外と悪くない。でも殺陣はさすがに無茶だったね…脇がしまってないし素人丸出し。
キャスティングで良いなと思ったのが、主人公、つまりヒーローである耿恭に背丈の低い彼を、あとヒロインのライバルである北方人に背丈が高く西洋風の顔立ちの女優さんを当ててる所。体が小さくても技術で大柄な人間に勝つというプロットはアジア受けが抜群だし、実際に漢民族は北方民族に比べて小柄だったと思われるので、そういう所こだわったのかなぁと。