「一本好書」第九期 57分頃から。
黄依依「この斯金斯は率直に言って流れ者、はみ出し者。彼女は完全に暗号界の恥よ!私は今よくわかったわ、(暗号を)台湾に売らなければならなかったのが。きっと彼女の奇行が分かったせいで彼女の人格自体に疑問が出て来たのよ。もし暗号を作る人の人格を問うのなら彼女の暗号を用いる人なんていないわ!」
院長「君は一体何を発見したんだ?」
黄依依「あなたもきっと、二つの戦争の間にドイツ軍が(かつて)使用を始めた機械暗号に暗号機エニグマを加えたのを知っているでしょう。暗号界の一里塚よ。この斯金斯、彼女が自分の発明だと言うこれは実際は完全に盗作よ!この人は全く何のボトムラインもない!(※恥と考える最低ラインが無い、恥知らずの意味。)」
もし暗号を発明する人の心に恥がなければ、暗号を解読する人も同様に恥をなくす、そうしてやっと相手の思考が得られるのだ。これが世界で最も陰暗で最も難しい職業(=暗号解読)なのだ。
私は黄依依が斯金斯の恥知らずな盗作行為をはっきり知った後、勝利するため追撃しこれを解読したいという気持ちを固めるだろうと思っていたのだが、彼女が何度も癇癪を繰り返すようになるとは思わなかった。
この日は樹林へ行ってリスにクッキーをやり、明くる日は警備所へ行って人と将棋を指すため木工所へ立ち寄ったが、(暗号解読の)事務室の扉は固く閉ざされていた。これは確実に様子がおかしいので私は宿舎へ彼女を探しにいった、彼女と何か雑談でもしようと。
黄依依「どうぞ(入って)。」
一歩入って私は呆気にとられた。彼女は何をしてたと思う?彼女はトランプで自分の運命を占っていたのだ。
黄依依「今あたしの愛情運を見てたのよ、いらっしゃい、座って。
あたし聞いたんだけど、あなたの奥様ってもう亡くなったって、ホント?」
院長「君には関係ない事だろう。」
黄依依「そうねぇ、どんな愛もみんなひとつの暗号なのよ。一枚引いて。
フフッこれはあたしの化身。わかった?あなたの愛情の暗号(キーワード)はあたし。奥さんの事を話してよ。」
院長「私と彼女は苦しい戦争の歳月の中で知り合った。革命の心を胸に私達は一緒にやってきた。新しい中国が成立した後、私たちは一緒にソ連へ行った。」
黄依依「あなたの話はお上が言うのみたいでちっともロマンがないわ。」
院長「我々の革命的浪漫主義だ。国家の為なら、我々はどんな犠牲をも厭わない。」
黄依依「知ってる?数学所で初めてあなたに会った時、あたしはあなたにすっかりひきつけられたの。あなたのまとう特別なオーラ、ミステリアスで、クールで、あなたのそういう所に本当にもう自分ではどうにもならないほどにのめり込んでしまってるの、わかってる?」
私は恋愛方面については本当に何の経験もないことを認めざるを得ない。妻も組織が紹介してくれたのだ。
黄依依の美しさ、才能と情熱は、人の心を動かさずにはいられないものだ。だがこの時は、光復一号を解読することが国家の安全と危機に関わることで、戦士が生きるか死ぬかという時に私が愛などに陥るわけにはいかなかった。私はしばらく彼女に関わらないようにした。
まもなく彼女の解読室の中から毎日トントン叩く音がするようになった。(うるさくて)建物内の人は皆仕事ができなくなった。私が彼女の門を敲きに行くしかなかった。
院長「黄依依、開けろ!黄依依!」
黄依依「あたしの事は放っておけばいいんでしょ、何を言うのよ。」
どうする、どうしろって?
解読には彼女が必要だ。そして彼女に必要なのは集中することだ。彼女が私への感情のために心を乱しているとわかっていた。この国家の安全危機が掛かる解読のためのインスピレーションは元来ただよう糸くずのようにもろくて弱く細いものだ、それが愛なんてものにからめとられてしまうとは。彼女の頭からこのことを消さなければならない。
黄依依「あなたがあたしを愛してくれないのは分かったわ。だからあたしはあなたを忘れられる方法を考えたのだけどまだ見つからないの。あなたと光復一号のせいで疲れちゃった。
暗号解読には天が与えた運気も必要よ。でもこんな一人の男の愛も得られないようなあたしに天が手を差し伸べてくれるはずもないわ。あなたは本当にあたしが暗号を解けることを望んでいるの?」
院長「私はもちろん君が解読を完成させることを望んでいるよ。」
黄依依「じゃああたしたちは相思相愛ね。あたしがこんなにもあなたを愛していると今神様も分かったでしょう。あなたがあたしを愛さないから、神様もあたしを愛さないんだわ。あたしがこの数日何をしてきたか知ってる?あたしは今までいくつもの失敗や絶望を経験してきた。あたしは毎日自分で色んな種類色んな形の模型を作って試してる。」
院長「君が毎日事務室内でトントン叩いていたのは模型を作っていたのか。」
黄依依「ええ、でも全て失敗だったわ。今まだ少しも進展はないの。
私を手伝って。あなたがあたしを愛してくれることが一番の手助けなの、あたしは真剣よ。」
院長「君はどうして毎日毎日愛の事ばかり考えてるんだ、愛がそんなに重要か?」
黄依依「愛より重要なことって何があると言うの?」
院長「今私に言った事だ、暗号解読が最も重要だ。これも愛だ、大きな愛だ。国家のための、人民のための愛だ。」
黄依依「ハッあなたはもちろん国家を愛し人民を愛せる、なのにどうしてその他の愛は受け入れられないの?!」
院長「その他の愛は大きな愛(博愛)に属しているものだろう。もう一度言う、今暗号解読を除いては私の心にその他の愛はない。」
黄依依「…あなたは、なぜ私を愛せないの?」
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