「一本好書」第九期 50分頃から。
最後には総部首長が直接出向いて、彼女の二つの条件に応えた。光復一号を解読すれば(局を)離れていい、そしてそこから一人を連れていけると。一人を連れていく?ちょっと変わった要求だ。ただ光復暗号を解読さえできれば、一人と言わずひと山持って行こうがなんだと言うんだ。
次の日の朝早くに私は黄依依を連れて出発した。私が探してきた人であるから、ある意味私の(手柄の、成果の)一部である。彼女が将来成功すれば、それは私の手柄の一部になる。失敗も…失敗も私の一部になるのだ。
701での最初の夕食時、黄依依は女特務に見えるような格好で襟の無いセーターを着ていたが、(それでも)皆の目を釘付けにさせていた。
仕事の初日に、彼女に助手を選ばせた。彼女は仕事の資料も見ることなく、事務室の集合写真をじっと見て、そしてその中の一人に目をつけた。それは精神分裂病になってしまった昔の仲間だった。
助手「ここに在籍する人は誰でも(助手に)選んでください。」
黄依依「これ、この人は特別ね。」
助手「…この人はどうしても無理です。」
黄依依「気が狂ってしまったんでしょう?」
院長「彼はかつて最も傑出した暗号解析家だった。君の目の付け所はやはり凄いな。」
黄依依「おそらく彼はただものではなく、そしてあと一歩のところまで行った、ちょうどあの解読の巨匠・納什(ナッシュ?)も暗号によって気を狂わされてしまったように。」
助手「実際我々はみんな狂ってますよ。光復一号はこの世界でまれにみる最高クラスの暗号で、(少なくとも)十年は全く解析する術はないでしょう。だから我々の受けたこの任務は元々完成させる術はないんです。」
院長「暗号の一部も解読させてもいないのに、任務を完成させる(事を論ずる)のは不可能だ。」
助手「でも問題は我々が今までどの高級暗号の一部も解読してこれなかった事です。光復一号の保密期間は30年。10年以内に解読できたらそれだけで非常に凄いことなのに、その上我々は今戦を目前とし二年内に解読できないとなれば、解読に何の意義もなくなるでしょう。」
黄依依「どんな暗号も、ただの数学の問題に過ぎないでしょ。」
院長「君は斯金斯の"世紀の難"を知っているか?」
黄依依「斯金斯?彼はあなたの先生である安徳羅(アンドラ?アンドリュー?)の昔の同級生じゃなかったかしら。当時安徳羅はアメリカのいくつかの暗号を解読してアメリカ人を驚かせたわ。直ぐに斯金斯を探し出して安徳羅のアキレス腱を挫かせたのよね。だからもしあなた達が斯金斯を破りたいっていうのなら、あなたが先生から学んだものは全く役には立たないわよ。」
助手「光復一号が、その"世紀の難"なんです。」
黄依依「何て!?」
助手「アメリカ人はあれを台湾に売ったんだ。」
黄依依「…あり得ないわ。あなた達は"世紀の難"を解読するっていうの、二年内に?それは斯金斯と安徳羅のトップクラスと競うってことじゃない。」
院長「私が解読するんじゃない、君がだ。」
黄依依「なんでもっと早く言わないの!」
助手「言ってたらあなたここに来ました?」
黄依依「……あんたは悪魔ね。」
院長「君は(救いの)天使だ。」
黄依依「ハッ…あたしが天使…あたしはちょっと問題のある天使よ。あなたは私の(生活、人生)をめちゃくちゃにしたわ。」
解読に携わる者は皆悪魔だ。暗号解読は読心術よりもさらに常軌を逸するものだからだ。理解しなければならないのは死人の鼓動。黄依依に私が感じた感覚は、最高のセンス、最高の理解力、数学的にも非凡の能力。このような人は天性の暗号学のスターだ。
彼女はすぐに斯金斯を理解するために問題のリストを書き出していった。例えば彼女(斯金斯)の最も尊敬する数学家、彼女の生活習慣、家庭背景、婚姻状況等々を。
だが彼女は本当に問題のある天使だった。世の中をなめたような態度、出勤時間を守らない、会議に参加したがらない、人と交流したがらない、報告書を見ず、敵の情勢に無関心。そして口を開けば遮るものがないように文句ばかり言う。
黄依依「(観客に向かって)あなたたち、あたしは若く見えるでしょう?」
観客「若い!」
黄依依「ホントに?」
観客「本当に!」
黄依依「なんで私がこんなに若々しいか知りたい?教えない。これはあたしの秘密なの。
(院長に向かって)でもあなたには教えてもいいわ。」
院長「教えなくていい。」
黄依依「でもあたしはあなたに言いたいのよ、でないと窒息しちゃう。
それはね、心に愛があるから。女は愛のパワーが必要なの。もし愛がなければ、女はすぐに老けてしまう。愛があればそうはならないの。」
院長「愛が君にはそんなに重要なのかね。なら君は君の解くべき暗号をよく愛するべきだな。君には既に軍令状が下りている。覚えておけ、ここには男も女もない、もし解読できなければ君はここで老いて死ぬことになるんだ。」
私が長く待つまでもなく、黄依依は実力を発揮しはじめた。
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