高次脳機能障害者の就労


  【本格カミングアウトが差別の始まりに】


 「支店は14人居たんですが、基本的には皆さん親切にしてくれました。ふたりとても親切にしてくれた方がいてけど逆に他に強烈にたちの悪い嫌がらせをしてくるスタッフも二人いて……。

『なんでこんなことができないの』って聞いてきて、『記憶ができないから、会社にも説明してる』って返事したら、鼻で笑って『障害かよ』とか。

本来は顧客に許可を取ってから訂正すべきだけどとても小さいので社内で済ますようなミスの訂正について、事後報告したら『これお客さんに電話してやるべきでしょ』って、他の人には絶対に言わない対応をあからさまにしてくるんです」

 そんな嫌がらせが毎日のように続く日々が半年も続いたある日、小川さんはついにキレてしまいました。

「そんなことをされたら僕はもう生きていけない」と机を叩き、二三日休むことを上司に告げると、そのまま帰宅してしまったそうです。

「そのまま土日はさんで5日間ぐらい仕事を休みましたが、その間にも上司から『どうしてキレたんだ』ってメールが来て。怒りが収まらなくて、住んでるマンションから飛び降りようかな、本当に飛んでやろうかと。

お前らがそんな感じだから俺は死んだ、うちの妻と子どもに恨まれながらお前は生きることになるんだって」

 何とか踏みとどまり、友人からアドバイスをもらったり神社巡りなどをして気持ちを落ち着けてから再出社した小川さんですが、待ち構えていたのは「なんでキレた? 普通キレないだろう」といった尋問。まるで危険人物扱いでした。

「理由を説明しても分かってもらえない。話は僕がする仕事について、今までしていた難しい仕事をしてくれという。僕はそれをやるにはまた早朝出勤でカバーしなければならない。なんでで障害がある俺が一番難しい仕事をしているのか、せめて公平にしてくれと」

 ここでこうしたやり取りを見ていた役員が社長に掛け合ってくれて、一夜にして週3日の在宅勤務の配慮をしてくれたましたが、それでもなお、状況は解決とは言えない状況でした。

「支店長は行政出身で障害者と働いていた経験があるので、障害の配慮もしてくれたが、根本的に高次脳のことは理解できない感じ。謙虚に助けて下さいとお願いしていたけど、『とはいえ誰だって大変だろう』とか、『面倒見てやっている』。そんな発言も目立ちました」

文責・鈴木大介 
脳に何かがあったとき 2021.10月号

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