高次脳機能障害者の就労


  【8年目の破局】


「当時の僕は現場監督をするようになっていたんですが、監督は自分の頑張りだけではなくて、現場のミスが管理者の責任になってしまう。さらに人が辞めたりする中で自分の担当量がものすごい増えてしまったんですが、そんな中で少し面倒な顧客に引っかかった際に、全部の仕事ができなくなってしまったんです

 これは当事者アルアルの、「マルチタスク問題」。高次脳機能障害の当事者は、複数の仕事を同時進行するのがそもそも苦手ですが、健常者であれば仕事量がオーバーフローしたときに「いくつかやり残してしまう」のに対し、当事者は「抱える仕事全部がまるっきりできなくなってしまう」ことが往々にしてあります。

まさに破局、でした。あれどうなってるんですか、これはどうなってるんだって、客のクレーム対応ばっかりになってしまい、すべての仕事が遅れ……。結局アンケートにもお客さんに不満が入り、社内での信用を完全に失って、上部からも指導が入りました」

 こうして小川さんは、メインの仕事からは外され、顧客と関わらない小さな仕事しか振られないようになってしまったと言います。

「仕事量も少なくて毎日定時の5:30に帰らされる日々で、働いても人に迷惑をかけてしまうなら、一生働かない方がいいのかな、と思った

 なお、この時点で小川さんはWハウジングから戸建て建築の性能評価(後述)を外注で受けていたK住宅評価センターに出向する経験をされています。ただ、この経験がその後のご自身にとって生命線になるとは、当時の小川さんは考えていませんでした。

文責・鈴木大介

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