高次脳機能障害者の就労

鈴木大介さんの許可を頂いて掲載しております。私が書いた文章をまとめて下さいました。

本当に感謝致します。


  【練り上げた小川流仕事術】


「普通の人は同じ仕事を何度かやれば憶えるでしょうけれど、僕の場合は何年同じものを見てやっても全く憶えられないんです。なので、自分のやる仕事の手順書を書いて、自身が過去にミスをしたり難しさを感じたポイントを全部集めたチェックリストを作って、それを見ながら仕事をするようにしていおはようました」

 一方で、仕事全体の進め方に関しても、ご自身の中でセオリーを構築していった小川さんです。
「普通の人はミスがないかのチェックをしながら仕事できるんでしょうけど、僕の元の性格は几帳面で完ぺき主義で、細かいところまで確認しながら作業を進めると、脳が疲れてしまって、途中で力尽きてしまうんです。そこで、健常者のスピードについていくためにも、ざっくりと大まかに見る範囲を狭めて想像で仕事をするスタイルにしました。『Aが来たらBだ』 みたいなパターンを自分の中で作って、あまり考えず、細かいところは見ずにどんどん進めて最後までやり切ってしまう。そこから過去の失敗リストなどを参考にチェックを繰り返して完成度をあげていくんです」

 完成後にチェックを繰り返す作業のため、毎日8時半出勤の0時頃まで残業の日々でしたが、設計の仕事はダブルチェック体制が整っていることもあって、小川さんは大きなミスをすることなく仕事をこなせるようになりました。

「とはいえ、自信はない不安な日々。毎日障害と格闘で、働くのが大変でした。夕方にはぼろぼろですが、遂行機能障害もあったために翌日が不安で……。当時は翌日やる物件をコピーして家に持ち帰って1~2時間予習して、ここを注意してみなければならないとか前の晩から明日の対策を考える日々でした」

 こうして働き続けていた小川さんに暗雲が立ち込めたのは、Wハウジングへの就職から8年目のことでした。



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