朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -16ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

警察を辞め法務技官に転身した安沼保夫さんの身バレ覚悟の警察職場実態のカミングアウトでした。

警察学校から交番、機動隊、留置係、組織犯罪対策係までの刑事としてのリアルな実体験を暴露しています。そこでは、やりがいもあれば、ガバナンス破綻明らかにこれはオカシイ!?上司・同僚がいました。

安沼さんは、公私にわたって悲喜こもごも、人として、警察官として世のため人のために働いてきました。

彼のような達観した心境になるときがくる、いつかそれぞれ人によって訪れるのではないかと思いました。

204P 大切な仕事

警察の業務は多岐にわたり、私の経験したことはその一部に過ぎない。それでも一警察官の喜びや悲哀を感じていただけたら幸いだ。警察官だった頃、自分の仕事が世のため人のためになっているのかと考えたことがある。警察を辞めた今改めて思うのは、すべての仕事が誰かの役に立っているということだ。

 

スカッとした痛快な逮捕劇や警察官同士の熱い友情話、勧善懲悪の物語がありませんでした。東野圭吾さんの小説「ガリレオ」のような大学教授や加賀恭一郎など映えある刑事がまったく出てきません。日々の警察でのリアルな生活感がひしひしと伝わってきました。殺人事件もまったく遭遇したことがない安沼さんのような警察官がいた世界の事実・実態を知ったことがよかったかな。

4P

東野圭吾の小説に「警察官は推理小説を読まない。現実の事件で小説のようなトリックが使われることはないし、動機も込み入ったものでなく、ついカッとしてといった短絡的なものがほとんどだ」という記述があり、膝を打ったことがある。

 

 

 <目次>

まえがき 警察官は警察小説を読まない

第1章 ようこそ警察学校へ(某月某日 オリエンテーション:入校前日の腕相撲、某月某日 幸か、不幸か…:教場と、鬼助教 ほか)

第2章 配属ガチャ、ハズレました(某月某日 着任:「おんめぇもそう思わねえか?」某月某日 交番勤務の1日:日勤篇と夜勤篇 ほか)

第3章 事件は××で起きている(某月某日 社会不適合警官:久しぶりの交番勤務、某月某日 万引き処理:「被害届出さなくていいんですか?」 ほか)

第4章 さよなら、桜田門(某月某日 内規違反:郷に入っては郷に従え、某月某日 絶対的支配者:反抗的な者は… ほか)

あとがき 「パパの今の仕事って何?」

 

 

安沼保夫さん

1981年、神奈川県生まれ。明治大学卒業後、夢や情熱もないまま、なんとなく警視庁に入庁。調布警察署の交番勤務を皮切りに、機動隊、留置係、組織犯罪対策係の刑事などとして勤務

 

 

【No1812】警察官のこのこ日記 本日、花金チャンス、職務質問、任意でご協力お願いします 安沼保夫 三五館シンシャ フォレスト出版(2025/02)

 

キャリアデザイン。人生100年時代を見据えて、主体的に自分らしく生きていくために何をすべきなのか。

自分のこれまで得られた知識や経験を活かしながら、学びや仕事、家庭生活、社会活動を行っていく方向性は変わらない。

ライフラインチャートなどを活用しながら、自己分析や自己理解をさらに深めていく。

自分の好きなもの、得意なこと、大切なものが交わるところであり、世のため人のために行動していく等々自分自身の価値観を大切にしていきたい。

 

人生100年時代のキャリアデザインとは?変わる「労働」、私たちはどう働く?これからのジェンダーとキャリアの関係性はどうなる?自分の生き方(=キャリア)を自分で構築するための指南書!

 

 <目次>

はじめに 

第1章 「自分らしく生きる」可能性の広がりとキャリアデザイン(「3ステージ人生」から「マルチステージ人生」へ、「自分らしさ」を求め「仕事ファースト」の終わりの始まり、ライフイベントとキャリアデザイン、ファイナンシャルプランニングの重要性の高まり、「自分探し」で発見する「自分らしさ」と「個人化」)

第2章 働き方の変化が及ぼすキャリアへの影響(人類の誕生と働くこと、そして労働観の変遷、雇用と生活を保障してきた日本的労使関係の変貌、ポスト終身雇用時代の新たな働き方、メンバーシップ型からジョブ型、そしてその先、新たな働き方へのソフトランティング策)

第3章 仕事と生活の変化とキャリア(キャリアの全体像から考える「自分らしい生き方」、ライフロールその1 学習者、ライフロールその2 職業者、ライフロールその3 家庭者、ライフロールその4 社会者)

第4章 代表的なキャリアの理論と概念(キャリア理論の基礎を築いたスーパー、人間の「欲求」をキャリアに取り入れたマズロー、多様かつ変化する人々の生き方をキャリアとして提示したホール、「自分らしい生き方」につながる多様なキャリア理論)

第5章 100年時代のキャリアデザイン―自分らしいキャリア形成に向けて(自己分析・自己理解、「自分らしさ」の4つのドメイン、100年時代の自分のライフロールをイメージする、「外部環境」を考慮したキャリアデザイン)

参考文献

 

【No1811】自分らしく生きるためのキャリアデザイン ライフシフトで価値観・働き方が多様化する現代社会において 平岩久里子 ナカニシヤ出版(2023/10)

表紙の草野碧さんの装画が映える。

地質調査、狼犬、原爆、隕石、ウミガメなどを含めた自然科学をテーマとする5つの短編集だ。

地球規模の壮大な歴史や生命の神秘、宇宙へのロマン、それぞれに専門的で深い知識や経験を豊富に持ってないと書けない内容だと感じられる。

そして、それぞれ物語は、男と女たちの人間味が溢れ出てくる味わい深いおはなしだった。

262P

「残念なことやけど、今の姫ヶ浦からもうじき、ウミガメはおらんになる。でも、浜はずっとこのままやない。いつか誰かが何十年かかけて、昔みたいなえ浜に戻すかもしれへん。反対に、もし姫ヶ浦が誰からも見捨てられても、何百年後かには浜も自然と綺麗になっとるやろ。そしたらカメさんの方で、勝手にこの浜を見つけてくれる」

「何百年後……」

「気の長い話やけどね」と佐和は笑った。「人間も、同じや思うよ。好きなところで、気に入った場所で、生きたらええの。生まれた土地に責任がある人なんて、どこにもおらんのよ」

 

 

 <目次>

夢化けの島

狼犬ダイアリー

祈りの破片

星隕つ駅逓

藍を継ぐ海

 

 

伊与原新さん

1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞

ジョブ・クラフティングという技法を使って、ウェルビーイングとワーク・エンゲイジメントが高い幸せな働き方をしていきたい。

「仕事のなかに自分のひと匙を加えてみる」働きがいを高める仕事術。

例えば、社内副業は副業として自分の強みを発揮し関心に沿った業務に従事することができる。そうできると、元々の部署の仕事にも役立ち仕事の捉え方が変わっていく。

ジョブ・クラフティングは、仕事の捉え方を変えて幸せな働き方につながる。自分の仕事を主体的に捉え直すことによって、自分らしさや新たな視点を入れてやらされ感ある仕事をやりがいのあるものへと変えていく考え方だった。

 

ジョブ・クラフティングとは、自らの仕事体験をより良いものにするために、主体的に仕事そのものや仕事に関係する人たちとのかかわり方に変化を加えていくプロセスのことだ。

 

ジョブ・クラフティングには三つの形式がある。(物理的変化、認知的変化)

1 業務クラフティング 業務内容や作業方法を自分で見直したり、自分の得意な事を業務に入れられるよう工夫をする。

2 関係性クラフティング 人との関係性や質を変化させる。積極的に挨拶をする、誰に対しても感謝する、呼称を変えるなど

3 認知的クラフティング 仕事に関するものの見方を変える。ディズニーランドのカストーディアル・キャストなど、マクロとミクロの視点を持つ。

 

ジョブ・クラフティングが注目されるのは、

 ワーク・エンゲージメント(仕事に関連するポジティブで充実した心理状態)を高める。仕事から活力を得て(活力)、仕事に誇りとやりがいを感じ(熱意)、仕事に深く集中している状態(没頭) 

2 仕事のミスフィット感を小さくするため。仕事の中でも自分が興味持っていることに少し多めに時間を使ったり、自分の強みを活かせるように仕事のやり方を変えてみたりすることができる。

 

ミドルシニア層では、自身の変化や仕事の変化に向き合うことが多くなる。そうした変化への適応にはジョブ・クラフティングは有効だ。例えばポストオフ経験者を対象にした調査で、ジョブ・クラフティングを行った人の方がワーク・エンゲイジメントが高いという結果が出ている。

定年後再雇用や他の仕事への転身でも、ジョブ・クラフティングの実践が身についていることがプラスに働く。また、仕事以外でもクラフティングを行うことがウェルビーイング(幸福感)を高めることにつながる。

 

 <目次>

はじめに仕事に向き合い、働きがいを自ら高めていくために

第1章 ジョブ・クラフティングの基礎

第2章 ジョブ・クラフティング・マインドセット

第3章 最初の一歩を踏み出し、習慣化を図る

第4章 業務全体を俯瞰する

第5章 ジョブ・クラフティングを継続・発展させる

第6章 定年も見据えたジョブ・クラフティングの方策

第7章 職場や組織からのサポート

参考文献

おわりに 

 

高尾義明さん

東京都立大学教授。博士(経済学、京都大学)。1967年生まれ。大阪市出身。京都大学教育学部を卒業後、大手素材メーカーに4年間勤務。その後、休職して京都大学大学院経済学研究科修士課程に入学。博士課程への編入試験合格を機に退職し、研究者の道に進む。九州国際大学経済学部専任講師などを経て、2007年4月から東京都立大学(旧名称:首都大学東京)大学院社会科学研究科経営学専攻准教授。2009年4月より同教授。2018年4月より同大学院経営学研究科教授

 

【No1809】50代からの幸せな働き方 働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法 高尾義明 ダイヤモンド社(2024/06)

キャリアを考えるとき。そもそもキャリアとは何か!?を考えました。

それは轍であり自分が歩いてきた足跡を辿って何をしてきたのか、どのように乗り越えて来たのか、克服してきたのか、感情の高低・盛り上げ下がり方はどうだったのかなど、理論家のサビカスのキャリアストーリーインタビューをして、またライフラインチャートを使うなどして自己分析を進め自己理解を深めることを十分にする必要がありました。

また、人生において受験、就職、結婚、病気、昇進、退職などの各種の転機があります。振り返ってみると、それらの転機には、理論家シュロスバーグが提唱する4つのS(状況、自己、支援、戦略)にまさに当てはまって対応してきた事例が多いことに気付きました。だから、自分を知ることにつながるキャリア理論について、機を見てさらに学んでいます。

 

4P まえがき

キャリアコンサルタントの実践家がつけるべき知識・経験・スキルは「過去のキャリアコンサルタント試験に出た択一式試験に答えられる程度の知識」ではなく、歴史的にキャリア理論がどういう変遷を得てどう新しい理論に至ったかという哲学や倫理であり、なぜ幅広く学ばなければならないかを理解しようとする姿勢であり、謙虚で誠実に学ぶ態度です。

なぜ人(評論家)をキーワードに歴史を学ぶのか。それは先人がそのまた先人から学び、その不足しているところあるいは時代に合わないところを修正しながら作り上げてきた体系的なものだからです。ニュートンは巨人(先人)の課題に乗ったからこそ先が見えたのだと言いました。我々も自らの経験則ののみならず、先人や同時代人の学びをしっかりリスペクトして行くべきです。

キャリア理論の周辺の精神分析・行動主義・人間性心理学その他の周辺分野の理論家についても通常より幅広く心理学の歴史全体が大まかにわかるように網羅したつもりです。

 

 

 <目次>

まえがき

キャリア理論の流れ

第1部 キャリア理論家(フランク・パーソンズ、エドムンド・G.ウイリアムソン ほか)

第2部 キャリア理論に影響を与えた理論家(1)精神衛生運動・精神分析(クリフォード・W.ビアーズ、ジークムント・フロイト ほか)

第3部 キャリア理論に影響を与えた理論家(2)心理測定運動・行動主義・行動療法(アルフレッド・ビネー、エドワード・L.ソーンダイク ほか)

第4部 キャリア理論に影響を与えた理論家(3)人間性心理学(アブラハム・H.マズロー、カール・R.ロジャーズ ほか)

第5部 キャリア理論に影響を与えた理論家(4)その他(G.エルトン・メイヨー、クルト・Z.レヴィン ほか)

参考文献

人名索引

キーワード索引

 

 

渡部昌平さん

秋田県立大学総合科学教育研究センター准教授。1994年国際基督教大学卒業、1996年明星大学大学院修了、修士(心理学)。労働省(当時)に入省し、札幌公共職業安定所、職業安定局業務調整課、民間需給調整事業室、飯田橋公共職業安定所、職業能力開発局キャリア形成支援室、沖縄労働局等を経て現職。2021年より期間限定でYouTube「“実践家向け”ナラティブ社会構成主義キャリアカウンセリングNABEチャンネ

 

 

【No1808】キャリア理論家・心理学者77人の人物で学ぶキャリア理論 渡部昌平 福村出版(2022/02)

 

だらだらと単に時間が過ぎていくのではなくて、休日を主体的に楽しむのです。

彼らの姿に近づくためには、趣味や好きなことをする、家族や友人を過ごす、読書をするなど、自分なりにできることをひとつでもやって彼らの行動(や考え方)を「真似」することです。

10P 世界水準のエリートであるエグゼクティブの休日の過ごし方

休日を「何もしない時間」と考えるのではなく、「説教的にエネルギーをチャージする時間」(休養)と「知的エネルギーを蓄える時間」(教養)と一位置づけている。趣味や好きなことをする、家族や友人と過ごす、読書をするなど。

心身のエネルギーをチャージすることによって、「自己効力感」を高める。

13P 自己効力感とは

心理学者アルバート・バンデューラー博士が提唱した概念で、目標を達成するための能力を自分が持っていると認識することを指します。

「自分ならできる」とか「きっとうまくいく」と自分の可能性を肯定的に認知できる心理状態のことであり、前向きな気持ちを手に入れ、パワフルに働くことで、仕事の生産性を高めるためにはきわめて重要な要因となります。

 

「温存戦略」、疲れる前に戦略的に休めるようにしたいものです。

15P 仕事のパフォーマンスが上がる休日の過ごし方

「温存戦略」を徹底する―体力と気力を使い果たさない。

疲れを感じているならば、しっかりと休んで疲れを取り除くことが大切ですが、もっと大事なのは、疲れたから休むのではなく、疲れる前に休むライフスタイルを手に入れることです。

 

自己効力感を上げる方向。他の人と比較しないハードルが高くない方に興味があります。

113P 自己肯定感ではなく、自己効力感を重視する理由

自己肯定感とは、自分の能力や価値に対して、自己評価が高い状態を指します。自己評価が高いのは、他の人と比べて「自分の方が上」と判断することですから、ハードルが高くなり、ストレス・レベルも高くなる考え方といえます。

自己効力感は、他の人と比較するのではなく、「自分ならばできる」と自分の能力や価値に自信を持つことですから、ハードルは自然と低くなり、ストレスを感じる余地のない考え方と言えます。

 

【No1807】世界の一流は「休日」に何をしているのか 年収が上がる週末の過ごし方 越川慎司 クロスメディア・パブリッシング インプレス(2024/11)

「無意識を活性化させるだけで願望が実現する」ことが書かれた本。

 

正負の法則からは、人生万事塞翁が馬、禍福は糾える縄の如しという言葉が頭の中に浮かんでくる。

「正負の法則」とは、「プラスマイナスゼロの法則、人生をトータルで見ると、プラスの出来事(良いこと)とマイナスの出来事(良くないこと)のすべてを相殺するとゼロになる」という法則になります。

つまり「一生のうちで、良いことも悪いこと同じ分だけ起こる」という考え方です。

 

感謝は、無意識にして良い方向に向える手段や方法。

341P 感謝が大切な本当の理由

願望実現するために、感謝の気持ちを持つことは最も大切です。

なぜなら、感謝をすることであなたの心を開き、目の前に起こるさまざまなことを素直に受け入れられるよう、無意識に整えてくれるからです。

無意識が整うと、あなたは心から達成したい願望実現のためにはどんな行動をしたらよいか、あなたのこれまでの経験をベースに無意識そのものが導き出してくれます。そしてあなたの周りにも願望実現にふさわしい人や物事が引き寄せられやすくなるでしょう。

感謝をする人の周りには常にあなたを応援してくれる人が集まり、結果、願望実現が最短最速で達成されるのです。

 

 <目次>

はじめに 

第1章 なぜ無意識を使いこなすと夢が叶うのか?(意識=「1%の顕在意識」+「99%の無意識」、あなたの「行動の99%」は無意識に支配されている ほか)

第2章 どうしたら無意識を使いこなせるのか?―進化論ベースの「無意識の使い方」(原始人の脳は「無意識」優位だった!無意識は「マインドフルネス」な状態で活性化する ほか)

第3章 無意識を使いこなす法(1)―「不安過多」の解消(「夢を叶える時間の流れ」とは?正負の法則―「良いこと」も「悪いこと」もプラスマイナスゼロになる ほか)

第4章 無意識を使いこなす法(2)―「情報過多」の解消(無意識に蓋をしてしまうTVの見方とは?SNSの設定1つで無意識が活性化する方法 ほか)

第5章 無意識を使いこなす法(3)―「人付き合い過多」の解消(「人付き合いが増えるほどマインドレスになる」と知る、「損得勘定」を捨てる ほか)

おわりに

 

BAZZIさん

1984年神奈川県生まれ。生まれつき難聴、コミュニケーション障害を抱えながらも「死ぬまで好きなことをしたい」という想いから、2005年にプロマジシャンとしてデビュー。人生を自由自在に生きることを指針に、夢を叶えるアーティストとしても活躍。2022年に一般社団法人Dream Investment JAPANを設立し、カンボジアや福祉事業への支援活動を行っている。アーティストの枠を超え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中

204P「あってはならない夜間中学」、けれど「なくてはならない夜間中学」

世の中で自分が知らない世界があるのはわかります。またこれまで育ってきた環境ではあまり出会わない人たちはいます。小説のなかでいろいろな方々と出会ってきました。いわゆる主人公になりきって疑似体験をしてきたこともあります。

218P 「戦争や貧しさや病気で、学校に行けなかったかた、読み書きから学べます。授業料や教科書代の負担はありません。一緒に、河堀夜間中学で勉強しませんか」と、声を張り上げ続ける。

いろいろな事情で義務教育を受けることができなかった人や修了できないたちがいます。

夜間中学校に通うことで自分も家族も救われたこの小説の主人公「さやか」は、「シネ」などの言葉の暴力やろっ骨を折るくらいのいじめに遭ったことが原因でした。

義務教育さえまともに終えていないという枷は、社会でも家庭内でもさやかを生き辛くさせていました。

例えば、不遇の人にも配慮できる人となり、そういう人を受け入れることができる世の中がずっとあってほしいと願う必要があると思うのです。

249P 

身体を捻じる運動を続けながら、さやかもまた天を仰ぎ見る。

澄んだ夜空に大きくオリオン座、それに木星やシリウスなど明るい星々が瞬いている。

視線を校庭に向ければ、仲間たちが伸びやかに両腕を横に開く。

何年もかかって、この場所に辿り着いた者がいる。

何年も通って、文字や言葉を手に入れようとする者がいる。

そして何年もかけて夢を育み、叶えようとする者がいる。

ひとりひとりが、さやかには、頭上の星と同じく、輝いて見える。

ああここは星の教室だ。

さやかを夜空ごと、学び舎ごと、仲間たちを抱き締めたい、と思った。

 

これまで当たり前に学校に行けて食事ができて普通に本を読み勉強をすることができたことはかなり幸せなほうだと思います。

227P 学びとは誰に奪われないものを自分の中に蓄えることだ、と悟った。誰のためでもない、自分自身のため、自分の人生のために学ぶのだ、と。

 

読んでいる最中、涙腺が緩んでしまいその症状が止まらない。その姿が誰にも見せられないくらい。

198P

「わしが駅前でビラをもろたんは七年ほど前だった。当時、字が読めなかったわしに、「平仮名から勉強できる」て、ビラ配ってた人が教えてくれた。けど、李さんと一緒で、「いきなり中学校へ入れるわけがない」と思い込んでしもてな」

それでも、ビラを捨てられなかった。

考えて、迷って、とうとうビラを握り締め、河堀夜間中学校に来た。

「小さい小さいビラ一枚が、わしをこの学校へ導いてくれた」

その声が揺れている。

「けど、きっと、わしらだけど違う。この国は義務教育を終えてへん者が、もっともっと仰山いているはずなんや。わしはこの手ぇで」

両の手をぎゅっと拳に握って、遠見は、

「この手ぇで、何とか、そのひとらにビラを届けたい」

届けたいんやと、声を絞った。

 

 <目次>

第一章 履歴書

第二章 夜の高低で

第三章 あおぞら

第四章 弱くて、脆い

第五章 明日の夢

第六章 結び直すのは

第七章 まだ見ぬ友へ

最終章 星の教室

あとがき

 

高田 郁さん

兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック『YOU』にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。2013年『銀二貫』で第1回大阪ほんま本大賞を受賞し、2022年には第10回となる同賞の大賞を『ふるさと銀河線―軌道春秋―』で受賞

 

少ない言葉のなかにも含蓄するところが大でありました。

このなかで気になった名言をいくつか取り上げてみます。

感謝する。違う世界の人と付き合う。楽しもうなどです。

 

53 教えてもらったことはすぐに実行し感謝を伝える。相手を味方にする人は、あなたの教えは価値があると行動で示す人です。やった結果を感謝するとともにフィードバックしていると、相手との関係性が深まって親身になってくれ、問題の解決し成長していける。

 

84 社外の人たちと接点を持ち、自分の世界を広げる。会社という後ろ盾なしに人と交わることで本物の出会いや学びがあるのです。社外の人、自分と違う世界の人と付き合うことは、自分と言うひとりの人間を魅力的に変えてくれる機会だからです。家でも職場でもない場所で肩書のないただの人として交流する機会をもつと、コミュニケーション力が磨かれて、自分の人としての魅力を意識させられます。

 

87 せっかくだから楽しもうと考える。どんな時間でも永遠に続くことはありません。一つひとつの瞬間を愛おしむように味わっている人は、誰から見ても魅力的で好きにならずにはいられないのです。楽しむことは、簡単には不幸にならないというプライドでもあります。

 

 

 

 <目次>

はじめに 

1 「明るく感じのいい人」は好かれる

2 「一緒にいて心地いい人」は好かれる

3 「自分を大切にする人」は好かれる

4 「相手に興味と理解を示す人」は好かれる

5 「気配りのできる人」は好かれる

6 「言葉に愛と敬意のある人」は好かれる

7 「なぜか魅力的な人」は好かれる

 

 

有川真由美さん

作家、写真家。鹿児島県始良市出身。台湾国立高雄第一科技大学応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性へのアドバイスをまとめた書籍を刊行。韓国、中国、台湾、ベトナムでも翻訳される。内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室「暮らしの質」向上検討会委員(2014‐2015)。日本ペンクラブ会員

 

【No1804】なぜか好かれる人の小さな習慣 自然と印象がよくなる88のヒント 日々のささやかな行いが、あなたの魅力と品格を育てる 有川真由美 毎日新聞出版(2024/12)

べらぼうな蔦屋重三郎は、男からも魅了される人物だ。

彼を読み物から推測してだんだんと知って触れ合っていくうちに、彼の魅力に取り込まれていくようになってきました。

彼は、人とのご縁を大事にしました。

同じく一世風靡した人気作家たちに大層好かれていました。

冷静なこころと判断力、決断力に優れていました。

そして、熱い心意気がある鯔背な男だったようです。

 

80P 重三郎と愉快な仲間たち

素早く流行に乗り、大衆が望んでいるものを見極め、それを惜しみなく与える。これは重三郎が成功を収めたことができた所以の一つです。重三郎には確かに天才的な審美眼がありました。「たぶんこうしたらいいんじゃないか」と予測したことがすべてそのとおりになるという神がかった力もあったのだと思います。

 

(中略)

そんな中、重三郎の周りには多くの人気作家が集います。版元が原稿料を支払う慣習を作ったこと、飲み会で楽しい設定をしてくれること、もちろんそれらも重三郎の魅力です。でもそれだけで作家たちは重三郎を選んだのではありません。

作家連が重三郎をよしとした理由は、その冷静さにあります。加えて判断能力、決断力です。文章を書いたり、絵を描いたりするほうの才能を持って人間は、おおよそ冷静さにかけています。バランスをとるように、自分に無い部分を重三郎に求めたのです。理屈の通ったやり方をする反面、熱い心を持つところも重三郎が気に入られた所以でしょう。

山東京伝一代記の中の一文です。蔦屋重三郎は器の大きい男だ。幕府からの処罰なんて物ともしていない。そう書かれています。作家たちが重三郎に寄せていた気持ちを見ることはできます。いい男だ。ついて行きたい。そう思っていたのはよくわかります。

 

 <目次>

はじめに こんなべらぼうな生き方があった

第一章 蔦屋重三郎はこうして生まれた(蔦屋重三郎って何もの?出版人蔦重爆誕! ほか)

第二章 ビジネスマン重三郎(ヒット連発!黄表紙で天下取り、コネは保証力 ほか)

第三章 蔦屋と人気作家たち(新規事業は浮世絵で、重三郎と愉快な仲間たち ほか)

第四章 蔦重の聖地 江戸吉原はこんなところ(本当にあった公共遊郭 吉原、吉原概要 ほか)

第五章 生きた!燃えた!きらめいた!蔦重の時代 天明(花開く江戸メディア、改革と翻弄と ほか)

 

 

ツタヤピロコさん

作家。女傑。下町にある風俗街が地元。子供の頃からの本好きで、読破した本は数千冊。大学では江戸文化を学ぶ。天明期専攻。学生の頃からのディープな蔦屋重三郎マニアで多くの文献を読み漁ってきた。重三郎への一途な憧れから出版業界に就職を果たす。別著名でいくつかのヒットも執筆刊行、実はすでに社会現象を巻き起こした本を何冊かつくっているが「重三郎だったら、こんなもんで満足しないよ」と、ひとりいきり立ち、粉骨砕身、本を執筆し、つくり続けている。