【No1834】その復讐、お預かりします 原田ひ香 双葉社(2024/12) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

この物語を読んでも、スカッと!はしません。

「復讐を預かる」成海慶介は、ただ成り行きを見守っているだけのように見えるが、別途仕掛けていて突然すばやく行動を起こす。また相手からの依頼を受けるだけでなく、お客様に殊勝な心掛けで諭すような言葉を発する人物であった。

121P

「遅かれ早かれ、あんなオケはすぐに飽きられる。でも、そんなことは関係ない。本当に大切なのは、あなたはどんな音楽家になりたいのか、どんな人生を送りたいのか、ということだ。本当に望んでいることが何なのか、もう一度考えるのです」

 

83P

美菜代はその札を見て、胸が痛むのを感じた。けれど、成海は全く意に介さず、口笛でも吹きそうなぐらい気軽に、それを数えた。

「確かに百万円ありますね」

「よろしくお願いします」

乙恵は丁寧にお辞儀をした。成海はにっこりと笑った。

「あなたの復讐はもう成し遂げられたも同然です」

 

復讐されるような人間は、ほっておいても不幸になる。

そんな人物は不幸にならずとも心からの幸せは掴めないものだ。

85P

「だから、この間説明しただろ。何もしなくても、神様が復讐してくださるんだよ。『復讐するは我にあり』」

「また、そんなこと言ってえ。神様が復讐してくださるなんて、あるわけないじゃないですか。私たちが動かなかったら誰がやるんですか」

「だから、何もしないの。復讐なんてしない方が依頼人の幸せにつながるんだから」

 

自分が傷ついて悲しくなって後悔する気持ちになる、ブーメランのように自分に返ってくる。依頼人の幸せにつながらないので、思っていても復讐をしないほうがよいのだ。

309P

「それでも復讐はするな。おれはそれしか言えない」

成海はぽつんと言った。

自分と自分の周りの人間を汚す。必ず、後悔する

「所長に、復讐するは我にあり。って言葉を教えたのって、誰なんですか」

「……小学校時代の校長だよ。ミッション系の学校だったから」

「そうだったんですか……」

美菜代の心の中に、小学生の成海がマリア像を見上げている絵が思い浮かんだ。

「復讐しなくてよかった、と思える日が必ず来る。いまはそれだけしか言えない」

 

 

 <目次>

第一話 サルに負けた女

第二話 オーケストラの女

第三話 なんて素敵な遺産争い

第四話 盗まれた原稿

第五話 神戸美菜代の復讐

解説 島田亜希子

 

原田ひ香さん

1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞、07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞