朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -124ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

自分がその立場になってみないと本当は分からないものだ。

けれどもどうしたらよいのか積極的に考えておこうと思う。

延命治療を中止して消極的に死なせる尊厳死に対して、筋弛緩剤などを投与して積極的に死なせる安楽死。この是非を各自考えるために書かれたものだった。

脳死状態の患者に対して、延命治療の末路の悲惨さを回避するため、人工呼吸器の管を抜き治療を止めた女医の白石ルネ。

3年後、院内からの内部告発により殺人罪で逮捕され、担当看護師の裏切りや院長などの病院上層部の保身により有罪判決が下りた。

医療の不確定要素に目を瞑って、法律的な見解だけで裁判が進む不条理さがあった。

消極的に死なせる尊厳死ではなく、積極的に死なせる安楽死が日本においては殺人罪となる。しかし助かる見込みのない患者を何もしなければ罪に問われないのだ。

不可解、不明瞭で納得しがたい。多事総論し意見を集約しなければいけないだろう。

患者本人や家族が事前に同意しているなど一定の条件の下で、超高齢社会の日本では、もっとこの議論が進んで良いのではないかと思う。

 

末期に接すると、こういうに風に見えるものか!

32P 

葉の一枚一枚が、輝いて見える。末期の眼ね。

はっとした。末期の眼は死にゆく人が、見るものを特別美しく感じることだ。ルネが顔を上げると、あたりの風景が一変した。色の粒子が輝き、葉の輪郭が指で辿れるほどにくっきりと見えた。末期の眼は死にゆく当人だけでない。周囲の者にも当てはまるのだ。なぜなら、母といっしょに見える紅葉は、これは確実に最後なのだから。

 

 <目次>

第一章 突発時

第二章 密告

第三章 豹変

第四章 激流

第五章 齟齬

第六章 不均衡

エピローグ

 

1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒。二十代で同人誌「VIKING」に参加。外務省の医務官として九年間海外で勤務した後、高齢者を対象とした在宅訪問診療に従事。2003年、『廃用身』で作家デビュー。14年、『悪医』で第三回日本医療小説大賞受賞.

 

 

池袋署刑事課神崎と黒木。硬派と軟派のコンビが事件を解決に導く。

「ストーカー被害者に対する事前対応及び生活安全課との連携」の事務分掌

池袋で起こったシングルマザー殺害事件に関わった二人。

事件解決に意気込むがその捜査から外され、他の小さな事件を担当させられることになった。盗難事件や自殺志願者の救助等それぞれの事件に真剣に取り組み解決するのだった。

メインとなる殺人事件の核心に迫る手掛かりがなくてどう解決するのか。

積み重ねの重要さ。それらがつながってシングルマザー殺害事件の真相にも迫ることになる。人をきちんと見極める二人だったからこそ、気づけた真相なのではないかと思った。

 

 <目次>

第一話 不穏

第二話 上京

第三話 晩餐

第四話 変身

第五話 誤解

第六話 街角

第七話 初恋

第八話 真実

 

1975年静岡県生まれ。「再会」で第56回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「ルパンの娘」シリーズ、「チェインギャングは忘れない」など。

シャングリラとは、「地上の楽園」や「理想郷」という意味。

「1か月後、地球に小惑星が衝突する。人類に逃げ延びる道はない」

人類が滅亡することがわかりその間どう過ごすか、どう生きるかを問いただしている。

たとえば、大昔の地球に巨大隕石が衝突して恐竜が死滅したときのような荒唐無稽なストーリーだが、気候変動による雪害や台風から、地震などの天変地異が起こる可能性はなきにしもあらずだ。

明日も今日と同じような日を過ごすことができなくなるかも!と想定する、心がまえをしておくべきかと思う。

滅亡の前にできるだけ思い残すことがないように、ワクワク、ドキドキしながらいまを大切に生きていかねば。

 

食料を得るためにコンビニを襲撃したり自動車で平気で人を轢き殺したり、人間は、極限になると、自分が第一になり、盗難でも殺人でも何でもありになってしまうのか。

滅亡の前の情景は、殺伐とした空気感や音量、きな臭い匂いとかが漂い覆っていた。五感に伝わる生々しさが濃く描かれていた。

 

学校でいじめられている高校生、ぽっちゃり体形の友樹。

友樹の母親、高校中退の不良だった40歳のシングルマザー静香。

ヤクザの小飼いで40過ぎてもうだつが上がらないチンピラの信士。

大病院のお嬢様、学校一の美少女、友樹が片想いしている雪絵。

この雪絵がいち推しの歌姫Loco。

ずっと心に居残り続けるような彼らが主な登場人物だった。

 

「幸せについて問う」

最後のときまでにどのように生きてどう過ごすのか!

 

 <目次>

シャングリラ    

パーフェクトワールド  

エルドラド  

いまわのきわ  

 

滋賀県生まれ。「流浪の月」で本屋大賞グランプリを受賞。ほかの著書に「神さまのビオトープ」など。

滋賀県生まれ。2006年、「小説花丸」に「恋するエゴイスト」が掲載されデビュー。以降、各社でBL作品を刊行。17年、非BL作品である『神さまのビオトープ』を刊行し高い支持を得る。20年『流浪の月』が本屋大賞グランプリを獲得

映像と文字との両方楽しむやり方もありだと思う。

このミステリー小説、ノースライトを読む前に映像で見ていたのだ。

出演者の姿や顔、情景などを頭に思い浮かべながら読むことができたのは僥倖だった。

 

岡嶋設計事務所に勤める建築士の青瀬稔が主人公、この青瀬稔は、西島秀俊さん。

「ノースライト」とは、青瀬の幼少期に父親と一緒に住んでいたダム建設飯場の家に由来する。北側からの光が部屋をやさしく包み込むような家だった。

インテリアデザイナーをしながら娘の日向子を育てている青瀬の別れた妻、青瀬ゆかりは、宮沢りえさん。

優秀なダムの型枠職人として全国のダムの建設現場を家族と一緒に渡り歩く青瀬稔の父、青瀬年雄は、寺脇康文さん。

青瀬の親友であり、公共事業にまつわる贈賄嫌疑が起こった岡嶋設計事務所長、岡嶋昭彦は、北村一輝さん。同じ事務所の同僚には、柄本時生さんと田中みな実さん。

岡嶋昭彦の妻、岡嶋八栄子は、 田中麗奈さん。彼女は一人息子の一創を大切に育てているが、夫の昭彦との間に二人だけの秘密を持っていた。

大手出版社が出版した建築雑誌「平成すまい二〇〇選」に掲載された信濃追分のY邸。

この家の依頼人の吉野陶汰は、伊藤淳史さん。

 

吉野が青瀬に対して「あなた自身が住みたい家を建ててください」と依頼したのはどうしてなのか?

吉野は、完成時にはとても喜んでいた。しかしY邸に移り住むことなく家族ともども姿を消していた。このY邸にはドイツ人建築家ブルーノ・タウト製と推量されるただ一脚の椅子だけが残されていた。

 

青瀬稔が吉野家一家失踪の謎を追うストーリーだった。

一人一人の細やかな背景などが理解できドラマの理解も深まり、ドラマと小説の両方楽しめて面白かった。

 

ちなみに、映像は、NHK総合で去る12月12日(土)と19日(土)の夜9時から2回放送されていたものだった。

 

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、作家デビュー。2000年「動機」で日本推理作家協会賞受賞。2012年刊行の『64』は各種ベストテンを席巻し、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー最終候補にも選ばれた.。

男性脳学を知り尽くした脳科学者が、男性脳の特徴を説明した上で、息子に生きる力をつけさせる、息子を愛のある男にする、息子にやる気を出させる、息子が女性をさりげなくエスコートできるように、黒川さんが息子さんに実際にやってこられた実例を紹介しながら、「母自身が惚れる男子」になる育て方を教えてくれる本だった。

 

主として男性脳型と女性脳型の違いは、

「遠く」を見るか、「近く」を見るか。

「客観」を優先するか、「主観」を優先するか。

 

真似ることは学ぶこと。

義務教育全般の基礎を踏まえ、先人の英知を辿り知ったうえ、ぼくたちは、新たなものの見方を創造していくのだ。

新しいものの見方を手に入れるために、世の中を理解するためにも、自分の専門分野だけでなく、広く社会一般の教養を手に入れて学ぶべきだと思う。

159P なぜ学校に行くのか

ものの見方を手に入れるために、学ぶ。

こう決めておけば、苦手な教科ほど、無視できなくなる。そこに、自分の持っていない「新たなものの見方」があるからだ。挫折も多いほうがいい。ものの見方がさらに深まるからだ。そして、「なぜ、社会に出たら使いもしない微分積分をやらなきゃいけないのか」なんて疑問を持たなくなくても済む。

この目標なら、「苦手」も「挫折」もポジティブな方向となり、迷いがなくなる。学ぶものにとって楽なうえに、万能なのである。

 

 <目次>

はじめに 

第1章 男性脳を学ぶ(ミニカーに夢中な男の子、「自分」に夢中な女の子、男女の脳は違わない? ほか)

第2章 「生きる力」の育て方(やるかやらないかは、母親が決めていい、子育てに後悔は要らない ほか)

第3章 「愛」の育て方(スキ、アイシテル、愛情貯金 ほか)

第4章 「やる気」の育て方(性格じゃなくて、栄養が悪い、肉食男子に育てよう ほか)

第5章 「エスコート力」の育て方(ことばのエスコート、共感力を身につける適齢期がある ほか)

おわりに 

 

脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より(株)感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元にベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(共に講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)を発表。

経験なき経済危機を乗り越えるためには、「木を見て森を見ず」ではいけない!

また、平時には、たくさんの意見を聞いて判断する余裕や時間がある。

しかし戦争などの有事には一刻を争うのだ。速やかに即決すべきです。

 

日本経済・財政、コロナ対策などの大きな政策を計画し実行していくためには、過去の歴史や他国の状況などを把握し、客観的な視野で大局的に考えて行動してほしい。

特に、私たちが選挙で選んだ政治家には、極論を言うと分科会などの専門家の意見を聞かずともよいから、強いリーダーシップを取って判断してほしい。中途半端ではなく先へ先へと物事を判断してほしいと切に思う。ぼくの常識は、人の命が、いの一番の優先順位だ。

 

日本経済・財政、コロナ対策に関する課題・問題が山積している。

そこでどうすればよいのか、いかにするべきか、新しい具体的な方策を期待したい。

27P 全国民対象の一律施策でなく、3分の1の人に手厚い政策が必要

コロナ問題による所得の減少は、すべての国民が一様に直面している問題でなく、一部の人々にとって深刻な問題だということだ。だから、政府の政策は、すべての国民を対象とする一律のものではなく、深刻な問題に直面している人に集中的に行われるべきということになる。

 

休業者が失業者になる予備軍という。失業者が増えるとさらに深刻な状況になるのが火を見るより明らか。雇用調整助成金は命綱。

失業者微増の背後で「休業者600万人」の衝撃

39P 雇用調整助成金でどこまで支えられるか?

事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者を一時的に休業させて雇用の維持を図った場合、従業員に支払った休業手当などの一部を国が助成する制度だ。

経済が急速に回復するとも思えない。したがって、仕事に復帰できず、失業したり非労働化したりする人が増えることが危惧される。雇用調整助成金でどこまで支えられるかが、今後の課題となるだろう。

 

緊急事態宣言を一部の都県に発出された。その対策を伝えていた会見時には、ぼくにはあまり意味が伝わってこなかった。

プロンプターのモニターの文字をただ棒読みで読んでいたように感じたからだ。

ドイツのメルケル首相のように、危機感を持って真剣さがわかるように感情にもぜひ訴えてほしかった。

96P 経済対策・国は国民を見捨てた

休業要請は自治体に任せたが、政府は範囲拡大には反対した。そして「強制でなく要請だから補償はしない」とした。

営業自粛しても、家賃、光熱費、維持費は払う必要がある。もちろん、従業員の給与もある。関係者まで含めれば、収入減少者の範囲は極めて広くなる。

マスクは配ったし、10万円も配った。営業自粛要請や協力金の支給は自治体がやってくれる。政府は補償金は出さない。首相は自宅で寛ぐ。

これが、日本政府が発した明確なメッセージだ。要するに、国民は捨てられたのだ。(「正確には、高齢者と基礎疾患保有者を見捨てた」というべきと別に記載)こうしたメッセージを明確に出している国は、他にない。

繰り返すが、メルケルは「企業と従業員がこの困難な試練を乗り越えるために必要なものを支援していきます」と約束したのだ。

 

一人10万円の特別定額給付金は有難かったが、野口先生によると、ばらまきではなく本当に困っている救済が必要な人への選択と集中が必要だった。

118P 冷暖房器具、家具、和服などの支出が大きく増加

贅沢品といってもよいものだ。普段は買おうと思ってもなかなか決心できなかったが、思いがけず多額の給付金が政府から与えられたため、購入したのだろう。

エアコンや大型冷蔵庫、白物家電、家具の買い替えが最近増えているといわれる。また、ハイブランドの小物やアクセサリーの売れ行きも好調と言われる。

結局のところ、「給付金の大部分は貯蓄の増加に回り、あとはエアコンや和服などの購入に充てられた」ということになる。

「給付金をもらえたのはありがたいが、これがなければどうしても生活できないというわけではなかった」というのが、勤労者世帯の平均的な感想だろう。

逆の面からいえば、収入が激減して生活に行き詰まっていた世帯を助けるために集中的に支出されたということではない。

(中略)

本当に困窮している世帯の救済に充てられるべきだった。あるいは、ワクチンの開発資金に投入されるべきだった。

 

 <目次>

はじめに 

第1章 日本経済が受けた打撃(1)休業者の激増

第2章 日本経済が受けた打撃(2)激減した企業利益

第3章 迷走を続けた政治の対応

第4章 不適切な政策が多すぎる

第5章 財政支出増でインフレにならないか?

第6章 実体経済から離れた株価の動き

第7章 ニューノーマルへの移行を妨げるもの

第8章 生産性の引き上げが急務

図表一覧

索引

 

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)など多数。

 

【No.687】経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか? 野口悠紀雄 ダイヤモンド社(2020/10)

アレキシサイミア-失感情症。喜怒哀楽愛悪欲など自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しい病気。

側頭葉内側にあるアーモンド形の扁桃体が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない。

十五歳の誕生日に、ユンジェの目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。

ユンジェの淡々とした目線、出来事に対する鋭い観察眼、人に対する行動力があまりにも美しく静かで胸に深く染みる。

 

SNSの普及によって、情報のやり取りは緊密で大量に行われている。

しかし、人と人との直接の触れ合いは減って、人とふれあうことで育つ感じる力、つまり共感する力も弱くなっているように思える。

「人間を救えるのは結局、愛なのではないか。」に同感だ。

 

264-266P

『アーモンド』は、感情を感じられず他人の感情もわからない主人公ソン・ユウジュと、物心もつかないうちに親とはぐれて不良となったゴニ、二人の少年の成長物語だ。

それぞれの理由から「怪物」と呼ばれ、クラスの仲間からも社会からも浮いた存在だった彼らが、さまざまな出来事を経験し、失ったものを取り戻しながら成長していく過程が、ユンジュの視線で淡々と語られる。

本書では、著者の映画でのキャリアも存分に発揮されている。読みやすく無駄のない文章を通して、ユンジュの目に映る感情の無い世界が、まるで映像を見ているように、本当に音が聞こえてくるかのように伝わってくる。テンポの速いストーリー展開と相まって、読者は一気に物語に引き込まれてしまう。それがこの本の人気を支える大きな理由になっているようだ。

(中略)

ところが、物語の中のユンジュは、誰も近づこうとしなかったゴニの心を理解しようとする。感情がわからないゆえに本物の共感とは何か、と問い続けるのだ。そして、ゴニと向き合う時間は、ユンジュに「愛」というものを気づかせる。

「人間を救えるのは結局、愛なのではないか。そんな話を書いてみたかった」と茶者は語っている。「愛とは、“種”に注がれる水と日差しのようなもの。人にもう一度注がれる視線とか、決めつける前になぜそうなったのか質問してみること、それが愛なのではないか」と。

頻発する暴力事件やいじめ、虐待など、私たちの社会で起きているさまざまな問題の多くは、共感の欠如がその根底にあると言われる。本物の「共感」ができる力を取り戻すため、私たちは、著者が提示する「愛」についてあらためて深く考えてみる必要があるのではないか。

 

 <目次>

プロローグ

第一部

第二部

第三部

第四部

エピローグ

作者の言葉

訳者あとがき

 

1979年、ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、第6回『シネ21』映画評論賞受賞。2006年、「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本、演出を手掛ける。2016年、初の長編小説『アーモンド』で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞して彗星のごとく登場(2017年刊行)、多くの読者から熱狂的な支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、シナリオ作家、小説家として、幅広く活躍している。

北海道出身の直木賞作家、桜木紫乃さんの初エッセイです。

桜木紫乃?さくらぎ しの!AV女優のような名前だなと、あの「ホテルローヤル」で出会ってから、彼女の作品を頻繁に読むようになりました。

 

主人公が場末のストリッパーや岡場所の女郎、芸者、ゲイボーイ、極道・任侠の徒、流しの漁師、どさ回り・旅回り中の芸人など、どんよりと曇った空のように、どこぞか裏に陰がある雰囲気が漂います。

ぼくが今まで進んできた道には決して歩いていない人たち。

これからもあまり付き合わないであろう個性を無性に知りたくなります。

かれらの話の展開はとても切ないのですが、それが返って肌に合う作風なのです。

 

サクラギさんは北海道、道東、釧路などを舞台とした小説を、なぜしばしば書いているのか。

彼女は、釧路に生まれ育ち北海道の道東を強く愛しているからです。

 

子どもたちの存在、父親や旦那さんとのエピソード、伊集院静さんや渡辺惇一さんらとの思い出など、小説を読んでいるだけではわからない部分、つまり、サクラギさんの裏面、知らなかった姿勢を垣間見ることができてよかったと思います。

 

ぼくは、読んでいて数行でいいから、たとえ一言でもいいから。

作中で自分の心に響く生きた言葉を探し求めています。

名言を見つけることができたときのこころの動きは、全くもって名状しがたいくらいに気持ちがよいのです。

 

180P

愛海夏子:

アナウンサーになったころ「どんなアナウンサーになりたいですか」と聞かれて、北海道のどこかの町のどこかの部屋で横になってテレビを見ている人が、私の言葉に、へえ、と頭を上げる瞬間があってほしいと思いました。

たった一人でいいから、その人の日常生活に影響を与えられる人になりたい、と。ま、それは自分の知るところではないんですけどね。そうだったらいいな、と。自分の生きた証が人の喜びの中に残ってくれたらうれしいですね。

 

桜木紫乃:

それはもの書きも同じです。欲してくれたところに一行届けばいいんです。

その人にとっての生きた言葉、求めている着地点はきっと一行しかないから。

その一行のために何百枚も書いていますが、たとえば全く通じなくても徒労だとは思いませんね。

 

 <目次>

1 北海道の女 五十路越え 肚くくる日々、捨てた昨日を惜しんだりしない ほか

2 ブンゴーへの道、帰ってきたブンゴーへの道 ほか

3  北の風景 そろそろ咲かなくちゃ、影のない街 ほか

   書くこと 声が連れてくる原風景、波の先へ進むしかない ほか 

対談 桜木紫乃×愛海夏子(シークレット歌劇團0931主宰)

 

1965年釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞

主人公の音海星吾は、美術サークルに属する大学生。

中学時代に不良たちに絡まれた星吾は、彼を助けようとして身代わりに刺された大学生を見捨てて逃げてしまった。警察にも消防にも通報せずに、助けられる生命であった大学生を死なせてしまった。そんな彼が自己の弱さにもがき苦しみ贖罪を願う悲哀のミステリーだった。

厳密に言うと星吾は事件の加害者ではない。人を放置したことは許されることではないが、14歳の少年がその場に居合わせた時にそんな冷静な判断ができるのだろうか。

星吾は、自分を救ってくれた人を死なせてしまったことをずっと後悔し他人と心が交わらない人生を選んでいた。

どこからどこまでが加害者側になのかと線引きが難しい立場から、どう世間の眼に映るのかと正義感を模索させられた。

SNSの匿名で安全な場所から他人を酷く激しく叩きのめすように批判できる理由のひとつとして、セロトニンが分泌され正義中毒のエクスタシーを感じるからと中野信子さんの本に書かれてあったことを思い出す。

法的にはグレーゾーンのような報道やSNSでの誹謗中傷といった現在進行形の問題もあって、自分だったらと置き換えて考えさせられる話であった。

人間は完璧ではない。時には間違いも犯すものだ。

自分を赦し許されるために、時間がかかってもどのように考えて、どういう行動をとるのか、どう生きていくのかが贖罪ではないかと思った。

 

1976年長野県生まれ。2006年伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞で審査員奨励賞、スタッフ賞を受賞。08年第1回富士山・河口湖映画祭シナリオコンクールで審査委員長賞を受賞。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。16年「サイレン」が第69回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に選ばれ、連作短編集『ジャッジメント』でデビュー

人の生きる意味を問うた「君たちはどう生きるか 吉野源三郎」と同様に、人が負の歴史から何が学べるか。アウシュヴィッツ強制収容所での過酷な体験をもとに書かれた作品、「夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル」を読んだら!とお薦めしたい。

 

貴賤や老若男女、世の中の立場を問わず、時間だけは誰にでも平等だと思う。

それをどのように使うかどうかはそれぞれ各人の考えや行動による。

例えば、気の置けない友人と読書会で熱い思いを語り合うなどして、ぼくは後悔しないよう有意義なときを過ごしたいと思っている。

 

人には運・不運がある。交通事故や突然の病気などからみると、生きていることとか死んでしまうのかはまったく紙一重で誰もこれからはわからない。

フランクルさんが次の人に順番を譲った謙虚さが積み重なった生に繋がるラッキーさが見受けられた。

 

宿命は既に決まった定めとなるのだろうが、運命は自分の行動で変えることができるようだ。

 

ナチが、一人ひとり裸にしてどんなに惨い行為をしても心までは奪えなかった。こころのなかは自由であって従わなくても何を考えても良い。どう認識するのかは人間の自由だから。

それぞれ各人には、生きる価値や意味がきっとあるはずだ。

どんな酷い境遇においてでも、神に祈りをささげる、オペラを歌う、音楽を楽しむ、美しい夕日を見る、ユーモアを持って励ますなど、逃避できる別の世界を持つのが大切であり、翻ってそうでない人にももちろん必要だと思う。

 

「人は必ず死ぬのに、なぜ自分は生きているのか?どんな人生にも意味はある。

人生が自分に何かを与えるのではなく、自分が人生に対して何をしてあげられるのか。

どんなに絶望的な状況であっても、必ず希望の光はある。」

 

例えば、家族愛や後世に残したい責任感など、将来の目標や未来の希望があればなんとか生きていけることを知った。

 

自分が置かれた状況を客観視して冷静に分析する能力や俯瞰する眼を持つとよい。

いまの時代にも応用できる。

例えば勉強、職業、仕事、人との付き合いなど、人生のいろいろな場面で物事を選択するとき、方向性が間違えない普遍的な法則のようなものだから。

 

65-66P

そしてわたしたちは、暗く燃えあがる雲におおわれた西の空をながめ、地平線いっぱいに、鉄色から血のように輝く赤まで、この世のものとも思えない色合いでたえずさまざまに幻想的な形を変えていく雲をながめた。その下には、それとは対照的に、収容所の殺伐とした灰色の棟の群れとぬかるんだ点呼場が広がり、水たまりは燃えるような天空を映していた。

わたしたちは数分間、言葉もなく心を奪われていたが、だれかが言った。

「世界はどうしてこんなに美しんだ!」

 

 <目次>

心理学者、強制収容所を体験する(知られざる強制収容所、上からの選抜と下からの選抜 ほか)

第1段階 収容(アウシュヴィッツ駅、最初の選別 ほか)

第2段階 収容所生活(感動の消滅、苦痛 ほか)

第3段階 収容所から解放されて(放免)

『夜と霧』と私 旧版訳者のことば 霜山徳爾

訳者あとがき

 

Viktor Emil Frankl

1905年、ウィーンに生まれる。ウィーン大学卒業。在学中よりアドラー、フロイトに師事し、精神医学を学ぶ。第二次世界大戦中、ナチスにより強制収容所に送られた体験を、戦後まもなく『夜と霧』に記す。1955年からウィーン大学教授。人間が存在することの意味への意志を重視し、心理療法に活かすという、実存分析やロゴテラピーと称される独自の理論を展開する。1997年9月歿。著書『夜と霧』『死と愛』『時代精神の病理学』『精神医学的人間像』『識られざる神』『神経症』(以上、邦訳、みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』『宿命を超えて、自己を超えて』『フランクル回想録』『〈生きる意味〉を求めて』『制約されざる人間』『意味への意志』(以上、邦訳、春秋社)。

 

池田香代子 訳

1948年東京生まれ。ドイツ文学翻訳家。主な著書に『哲学のしずく』(河出書房新社、1996)『魔女が語るグリム童話』(正は宝島社、1999 続は洋泉社、1998)『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス、2001)『花ものがたり』(毎日新聞社、2002)など。主な翻訳にゴルデル『ソフィーの世界』(NHK出版、1996)、『完訳クラシック グリム童話』(全5巻、講談社、2000)などがある。『描たちの森』(早川書房、1996)で第1回日独翻訳賞受賞(1998)。

 

【No.683】夜と霧 新版 池田香代子訳 ヴィクトール・E・フランクル みすず書房(2002/11)