
経験なき経済危機を乗り越えるためには、「木を見て森を見ず」ではいけない!
また、平時には、たくさんの意見を聞いて判断する余裕や時間がある。
しかし戦争などの有事には一刻を争うのだ。速やかに即決すべきです。
日本経済・財政、コロナ対策などの大きな政策を計画し実行していくためには、過去の歴史や他国の状況などを把握し、客観的な視野で大局的に考えて行動してほしい。
特に、私たちが選挙で選んだ政治家には、極論を言うと分科会などの専門家の意見を聞かずともよいから、強いリーダーシップを取って判断してほしい。中途半端ではなく先へ先へと物事を判断してほしいと切に思う。ぼくの常識は、人の命が、いの一番の優先順位だ。
日本経済・財政、コロナ対策に関する課題・問題が山積している。
そこでどうすればよいのか、いかにするべきか、新しい具体的な方策を期待したい。
27P 全国民対象の一律施策でなく、3分の1の人に手厚い政策が必要
コロナ問題による所得の減少は、すべての国民が一様に直面している問題でなく、一部の人々にとって深刻な問題だということだ。だから、政府の政策は、すべての国民を対象とする一律のものではなく、深刻な問題に直面している人に集中的に行われるべきということになる。
休業者が失業者になる予備軍という。失業者が増えるとさらに深刻な状況になるのが火を見るより明らか。雇用調整助成金は命綱。
失業者微増の背後で「休業者600万人」の衝撃
39P 雇用調整助成金でどこまで支えられるか?
事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者を一時的に休業させて雇用の維持を図った場合、従業員に支払った休業手当などの一部を国が助成する制度だ。
経済が急速に回復するとも思えない。したがって、仕事に復帰できず、失業したり非労働化したりする人が増えることが危惧される。雇用調整助成金でどこまで支えられるかが、今後の課題となるだろう。
緊急事態宣言を一部の都県に発出された。その対策を伝えていた会見時には、ぼくにはあまり意味が伝わってこなかった。
プロンプターのモニターの文字をただ棒読みで読んでいたように感じたからだ。
ドイツのメルケル首相のように、危機感を持って真剣さがわかるように感情にもぜひ訴えてほしかった。
96P 経済対策・国は国民を見捨てた
休業要請は自治体に任せたが、政府は範囲拡大には反対した。そして「強制でなく要請だから補償はしない」とした。
営業自粛しても、家賃、光熱費、維持費は払う必要がある。もちろん、従業員の給与もある。関係者まで含めれば、収入減少者の範囲は極めて広くなる。
マスクは配ったし、10万円も配った。営業自粛要請や協力金の支給は自治体がやってくれる。政府は補償金は出さない。首相は自宅で寛ぐ。
これが、日本政府が発した明確なメッセージだ。要するに、国民は捨てられたのだ。(「正確には、高齢者と基礎疾患保有者を見捨てた」というべきと別に記載)こうしたメッセージを明確に出している国は、他にない。
繰り返すが、メルケルは「企業と従業員がこの困難な試練を乗り越えるために必要なものを支援していきます」と約束したのだ。
一人10万円の特別定額給付金は有難かったが、野口先生によると、ばらまきではなく本当に困っている救済が必要な人への選択と集中が必要だった。
118P 冷暖房器具、家具、和服などの支出が大きく増加
贅沢品といってもよいものだ。普段は買おうと思ってもなかなか決心できなかったが、思いがけず多額の給付金が政府から与えられたため、購入したのだろう。
エアコンや大型冷蔵庫、白物家電、家具の買い替えが最近増えているといわれる。また、ハイブランドの小物やアクセサリーの売れ行きも好調と言われる。
結局のところ、「給付金の大部分は貯蓄の増加に回り、あとはエアコンや和服などの購入に充てられた」ということになる。
「給付金をもらえたのはありがたいが、これがなければどうしても生活できないというわけではなかった」というのが、勤労者世帯の平均的な感想だろう。
逆の面からいえば、収入が激減して生活に行き詰まっていた世帯を助けるために集中的に支出されたということではない。
(中略)
本当に困窮している世帯の救済に充てられるべきだった。あるいは、ワクチンの開発資金に投入されるべきだった。
<目次>
はじめに
第1章 日本経済が受けた打撃(1)休業者の激増
第2章 日本経済が受けた打撃(2)激減した企業利益
第3章 迷走を続けた政治の対応
第4章 不適切な政策が多すぎる
第5章 財政支出増でインフレにならないか?
第6章 実体経済から離れた株価の動き
第7章 ニューノーマルへの移行を妨げるもの
第8章 生産性の引き上げが急務
図表一覧
索引
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)など多数。
【No.687】経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか? 野口悠紀雄 ダイヤモンド社(2020/10)