【No.685】おばんでございます 桜木紫乃 北海道新聞社(2020/11) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

北海道出身の直木賞作家、桜木紫乃さんの初エッセイです。

桜木紫乃?さくらぎ しの!AV女優のような名前だなと、あの「ホテルローヤル」で出会ってから、彼女の作品を頻繁に読むようになりました。

 

主人公が場末のストリッパーや岡場所の女郎、芸者、ゲイボーイ、極道・任侠の徒、流しの漁師、どさ回り・旅回り中の芸人など、どんよりと曇った空のように、どこぞか裏に陰がある雰囲気が漂います。

ぼくが今まで進んできた道には決して歩いていない人たち。

これからもあまり付き合わないであろう個性を無性に知りたくなります。

かれらの話の展開はとても切ないのですが、それが返って肌に合う作風なのです。

 

サクラギさんは北海道、道東、釧路などを舞台とした小説を、なぜしばしば書いているのか。

彼女は、釧路に生まれ育ち北海道の道東を強く愛しているからです。

 

子どもたちの存在、父親や旦那さんとのエピソード、伊集院静さんや渡辺惇一さんらとの思い出など、小説を読んでいるだけではわからない部分、つまり、サクラギさんの裏面、知らなかった姿勢を垣間見ることができてよかったと思います。

 

ぼくは、読んでいて数行でいいから、たとえ一言でもいいから。

作中で自分の心に響く生きた言葉を探し求めています。

名言を見つけることができたときのこころの動きは、全くもって名状しがたいくらいに気持ちがよいのです。

 

180P

愛海夏子:

アナウンサーになったころ「どんなアナウンサーになりたいですか」と聞かれて、北海道のどこかの町のどこかの部屋で横になってテレビを見ている人が、私の言葉に、へえ、と頭を上げる瞬間があってほしいと思いました。

たった一人でいいから、その人の日常生活に影響を与えられる人になりたい、と。ま、それは自分の知るところではないんですけどね。そうだったらいいな、と。自分の生きた証が人の喜びの中に残ってくれたらうれしいですね。

 

桜木紫乃:

それはもの書きも同じです。欲してくれたところに一行届けばいいんです。

その人にとっての生きた言葉、求めている着地点はきっと一行しかないから。

その一行のために何百枚も書いていますが、たとえば全く通じなくても徒労だとは思いませんね。

 

 <目次>

1 北海道の女 五十路越え 肚くくる日々、捨てた昨日を惜しんだりしない ほか

2 ブンゴーへの道、帰ってきたブンゴーへの道 ほか

3  北の風景 そろそろ咲かなくちゃ、影のない街 ほか

   書くこと 声が連れてくる原風景、波の先へ進むしかない ほか 

対談 桜木紫乃×愛海夏子(シークレット歌劇團0931主宰)

 

1965年釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞