【No.686】アーモンド ソンウォンピョン 矢島暁子/訳 祥伝社(2019/07) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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アレキシサイミア-失感情症。喜怒哀楽愛悪欲など自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しい病気。

側頭葉内側にあるアーモンド形の扁桃体が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない。

十五歳の誕生日に、ユンジェの目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。

ユンジェの淡々とした目線、出来事に対する鋭い観察眼、人に対する行動力があまりにも美しく静かで胸に深く染みる。

 

SNSの普及によって、情報のやり取りは緊密で大量に行われている。

しかし、人と人との直接の触れ合いは減って、人とふれあうことで育つ感じる力、つまり共感する力も弱くなっているように思える。

「人間を救えるのは結局、愛なのではないか。」に同感だ。

 

264-266P

『アーモンド』は、感情を感じられず他人の感情もわからない主人公ソン・ユウジュと、物心もつかないうちに親とはぐれて不良となったゴニ、二人の少年の成長物語だ。

それぞれの理由から「怪物」と呼ばれ、クラスの仲間からも社会からも浮いた存在だった彼らが、さまざまな出来事を経験し、失ったものを取り戻しながら成長していく過程が、ユンジュの視線で淡々と語られる。

本書では、著者の映画でのキャリアも存分に発揮されている。読みやすく無駄のない文章を通して、ユンジュの目に映る感情の無い世界が、まるで映像を見ているように、本当に音が聞こえてくるかのように伝わってくる。テンポの速いストーリー展開と相まって、読者は一気に物語に引き込まれてしまう。それがこの本の人気を支える大きな理由になっているようだ。

(中略)

ところが、物語の中のユンジュは、誰も近づこうとしなかったゴニの心を理解しようとする。感情がわからないゆえに本物の共感とは何か、と問い続けるのだ。そして、ゴニと向き合う時間は、ユンジュに「愛」というものを気づかせる。

「人間を救えるのは結局、愛なのではないか。そんな話を書いてみたかった」と茶者は語っている。「愛とは、“種”に注がれる水と日差しのようなもの。人にもう一度注がれる視線とか、決めつける前になぜそうなったのか質問してみること、それが愛なのではないか」と。

頻発する暴力事件やいじめ、虐待など、私たちの社会で起きているさまざまな問題の多くは、共感の欠如がその根底にあると言われる。本物の「共感」ができる力を取り戻すため、私たちは、著者が提示する「愛」についてあらためて深く考えてみる必要があるのではないか。

 

 <目次>

プロローグ

第一部

第二部

第三部

第四部

エピローグ

作者の言葉

訳者あとがき

 

1979年、ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、第6回『シネ21』映画評論賞受賞。2006年、「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本、演出を手掛ける。2016年、初の長編小説『アーモンド』で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞して彗星のごとく登場(2017年刊行)、多くの読者から熱狂的な支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、シナリオ作家、小説家として、幅広く活躍している。