【No.692】善医の罪 久坂部 羊 文藝春秋(2020/10) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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自分がその立場になってみないと本当は分からないものだ。

けれどもどうしたらよいのか積極的に考えておこうと思う。

延命治療を中止して消極的に死なせる尊厳死に対して、筋弛緩剤などを投与して積極的に死なせる安楽死。この是非を各自考えるために書かれたものだった。

脳死状態の患者に対して、延命治療の末路の悲惨さを回避するため、人工呼吸器の管を抜き治療を止めた女医の白石ルネ。

3年後、院内からの内部告発により殺人罪で逮捕され、担当看護師の裏切りや院長などの病院上層部の保身により有罪判決が下りた。

医療の不確定要素に目を瞑って、法律的な見解だけで裁判が進む不条理さがあった。

消極的に死なせる尊厳死ではなく、積極的に死なせる安楽死が日本においては殺人罪となる。しかし助かる見込みのない患者を何もしなければ罪に問われないのだ。

不可解、不明瞭で納得しがたい。多事総論し意見を集約しなければいけないだろう。

患者本人や家族が事前に同意しているなど一定の条件の下で、超高齢社会の日本では、もっとこの議論が進んで良いのではないかと思う。

 

末期に接すると、こういうに風に見えるものか!

32P 

葉の一枚一枚が、輝いて見える。末期の眼ね。

はっとした。末期の眼は死にゆく人が、見るものを特別美しく感じることだ。ルネが顔を上げると、あたりの風景が一変した。色の粒子が輝き、葉の輪郭が指で辿れるほどにくっきりと見えた。末期の眼は死にゆく当人だけでない。周囲の者にも当てはまるのだ。なぜなら、母といっしょに見える紅葉は、これは確実に最後なのだから。

 

 <目次>

第一章 突発時

第二章 密告

第三章 豹変

第四章 激流

第五章 齟齬

第六章 不均衡

エピローグ

 

1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒。二十代で同人誌「VIKING」に参加。外務省の医務官として九年間海外で勤務した後、高齢者を対象とした在宅訪問診療に従事。2003年、『廃用身』で作家デビュー。14年、『悪医』で第三回日本医療小説大賞受賞.