春夏秋冬の風景の変化や季節の移ろい、いつもの街のなかでの奇抜な面白い建築物の発見、草木や生花への興味の集中さなど自分のなかにも変化があったことに気がついていました。
読書で文字を読むことが、私たちの視覚体験の糧になっていたことが身をもってわかります。
121P 読書はなぜ大切なのか?
ドゥァンヌ博士らはさらに重要な発見をしています。文字の認識が上手な人は、文字だけでなく、顔や日常用具や建築物への視覚反応の精度も高いのです。さらに、見た対象物が左右対称か否かを判断するテストの成績も優れていることがわかりました。
文字には単に形状が似ている組み合わせがあるだけでなく、「本」や「文」のように左右対称な文字や、「さ」と「ち」のように鏡像で意味が変わるペアさえあります。
こうした微妙な差異に気づく能力が、無意識のうちに、文字以外の広範な対象全般に汎用化されています、文字を読むことは、「読書」という枠を超え、私たちの豊かな視覚経験の糧になっていたのです。
人類の初期には、仕方がなく近親交配が珍しくなかったようです。
そうすると、ヒトの染色体に異常が起きて障害が出現する確率が高くなります。
猿の姿からヒトへの進化状態からパッと推測してみると、人類は奇形であったであろうか説は、まったくの荒唐無稽ではないような気がします。こういう視点の発想は面白い。
148P 近親婚か禁止される理由
さて、私たちヒトの「姿」を今いちど冷静に見てください。木を登るには力不測の腕、生肉を噛み切るにも力不測の顎、体温を保護するには薄すぎる体毛、私たちにとって当たり前すぎるヒトの特徴は、霊長類界では「奇形」です。これは近親交配で生じた身体障害であった可能性があります。
池谷さんは、科学者が人生を懸けて取り組んだ実験や調査を発表した、神経科学や生命科学などに関する学術論文を毎日チェックするそうです。
それらの論文の中から興味深い発見があった選りすぐりを分かりやすく簡単にしてエッセイにしたためて紹介しているのです。
<目次>
はじめに
1 だから人はおもしろい
2 計り知れない脳
3 感性を刺激する
4 愛の不思議
5 未知なる力
6 明日のために
初出一覧
1970年、静岡県生まれ。薬学博士、東京大学薬学部教授。神経の可塑性を研究することで、脳の健康や老化について探求している。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。著書に「進化しすぎた脳」「メンタルローテーション」など。
