『会報 201712月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

平成25年の改正障害者雇用促進法により、精神障害者の雇用義務が課せられることとなったことに伴い、平成304月より民間企業の障害者雇用率が引き上げられ、今まで以上に障害者の雇用促進が求められています。障害者雇用の現状や障害者の就労支援機関の概要を説明し、精神障害者の雇用管理上の留意点について事例を踏まえて解説した記事が会報にありましたので、要旨をまとめながら理解を深めてみました。

今回は、管理上の留意点についてです。

 

3.管理上の留意点

(1)精神障害者の雇用実態

障害者雇用促進法では、雇用・就労支援の対象となる精神障害者について、いずれも症状が安定し、就労が可能な状態にある者と規定されています。精神障害者については、精神疾患が改善した後も障害が残り、就労継続して行く上で、特別の支援が必要な者としてとらえることができます。

職場において障害に配慮した支援を受けているかについては、「支援を受けている」と回答した人が72.3%となっています。支援を受けている人のうち、職場で配慮されている事項としては、「調子の悪い時に休みを取りやすくする」が最も多くなっています。精神障害者の雇用上で配慮していることとして回答されたものでは、「通院・服薬管理等雇用管理上の配慮」が最も多くなっています。

また、採用後に精神障害者となった従業員を雇用する事業所の67.5%が職場復帰について配慮を行なっています。

 

(2)障害者への配慮

①職務配置の配慮

「職務配置」は、障害を持った従業員の能力と、その職務に必要とされる要件との適合を図った上で行ないます。

 

②能力開発の配慮

障害者の能力開発は、OJTが主となりますが、これは日常業務の中で、上司、同僚とのOJTを通じてコミュニケーションをとる機会を持つことによって、共生の意識を互いに確認し合うという副次的効果が見込まれます。

障害者の教育訓練で先ず、検討しなければならないのは「個人の現有機能」と「職場の要請」との間に生ずる、あるいは生ずる恐れがあるギャップを取り除く、または未然に防ぐということです。

 

③職場環境の配慮

通勤時間について、1時間に1回の休憩を入れることや、就業時間についても本人の状態に応じて柔軟に対応できる仕組みが大事になります。

 

④通勤への配慮

朝夕のラッシュ時の通勤を避けるために、時差出勤を可能にするフレックスタイム制度の導入や、月、年の繁閑に応じた変形労働時間制の活用等によって障害の種類程度に応じた働き方が可能となるような配慮が必要です。

 

 

障害のある従業員に対する取組みは、障害のある従業員だけではなく全ての従業員にとって働き易い職場環境を考えさせる機会となります。全ての従業員にとって働き易く、能力を発揮できる職場環境を整えて、職場の活性化に繋げて行くことが大切ですね。