格差は、「あること」そのものが問題なのでしょうか。
所得格差、教育格差、仕事格差、家族格差、ジェンダー格差、地域格差――。
少し考えるだけでも、私たちの社会には「○○格差」と呼ばれるものが数多くあります。
もちろん、格差のない社会を理想として思い描くことを、私は否定するつもりはありません。
できることなら、生まれた家庭や性別、病気や障害、親の所得、住んでいる地域などによって、その後の人生に大きな違いが生じない社会であってほしい。
しかし現実には、人それぞれの能力や経験、努力、選択、働き方まで含めれば、あらゆる「差」をなくすことは極めて困難です。
ならば、私たちは格差問題にどう向き合えばよいのでしょうか。
今回、basicincome.jpの【BI実現の壁超克シリーズ】第5弾として、「格差問題の壁とシンBI2050」をまとめました。
この記事で考えたかったのは、「すべての格差をなくせるか」ということだけではありません。
むしろ重要なのは、格差がその人の人生をどこまで左右しているのか、ということです。
たとえば、親の所得が低かったために、子どもが希望する教育を受けられない。
病気になったことで仕事と所得を同時に失い、その後の生活まで崩れていく。
離婚したくても、その後の生活が成り立たないために選択できない。
一度仕事を失ったために、学び直したり、別の仕事に挑戦したりする余裕までなくなる。
こうした社会では、最初に生じた一つの不利が、次の不利へとつながっていきます。
そこでシンBI2050では、まずLSF(Life Security Foundation)生活保障給付によって、すべての国民へ、個人ごとに、共通の生活保障基盤を設定することを考えています。
これは、全員の所得を同じにする制度ではありません。
働いて所得を得ることも、より高い所得を目指すことも、資産を持つことも、それぞれの生き方を選択することも当然です。
違いが残っていても、その下に「誰も失わない生活基盤」がある。
そのことによって、現在置かれている経済状態が、その後の人生まで決定づける力を小さくできないか、と考えるわけです。
ただし、LSFだけですべてを解決できるとは考えていません。
病気や介護には厚生健康保険。
失業、職業転換、学び直し、起業などには厚生就労保険。
老後にはLSFを基礎とした上での厚生積立年金保険。
住宅問題には厚生住宅保険。
障害、DV、虐待、家族問題など、一人ひとり異なる事情には改革社会福祉制度。
さらに、教育、雇用、税制、住宅、家族関係などについては、それぞれの社会制度や法制度そのものを改革していく必要があります。
今回の記事では、その具体的な事例として、シングルマザー・ひとり親家庭の問題についても考えました。
ここには、所得格差だけではなく、仕事、ジェンダー、家族、教育などの問題が複雑に重なっています。
そして親が置かれた状況は、子どもの生活や教育、その後の人生にも影響します。
一方で、LSFを給付すればそれで解決、という問題でもありません。
たとえば養育費は、本来、生活困窮者への「福祉」の問題ではなく、親が子どもに対して負う養育責任の問題です。
子どもの生活基盤を社会として保障することと、親としての責任を果たすことは、別の問題として制度化されなければなりません。
こうして考えていくと、シンBI2050が目指す社会像も少し明確になります。
格差のない社会を理想として思い描きながらも、現実に存在する格差が、一人ひとりの人生を決定づける力をできる限り小さくする。
不利な状況に陥ったとしても、そこから脱却できる。
仕事を変えることも、学び直すことも、家族のあり方を変えることも、新しい人生に挑戦することもできる。
そして、生まれた家庭や一時的な困難だけで、その後の人生まで決められてしまわない。
それが、「格差問題の壁」に対してシンBI2050が提示できる、一つの社会制度設計ではないかと考えています。
今回の記事では、シンBI2050の原点となったBP(ベーシック・ペンション)構想まで遡りながら、この問題を詳しく考察しました。
ご関心があれば、ぜひ本編もお読みいただければと思います。
⇒ BI実現の壁超克シリーズーⅤ:格差問題の壁とシンBI2050 - シン・ベーシックインカム2050論