先月、厚労省が公開している「多様な正社員」の円滑な導入・運用のための事例集を取り上げ、多様な正社員を活用した場合のメリットや雇用管理上の留意事項、活用のためのポイントについてまとめました。この事例集では、さらに多様な正社員の採用から退職に至る雇用管理をめぐる様々な課題への対応を検討し、労使等関係者が参照することができるようにするため、多様な正社員を導入している企業の事例を公表しています。これから5回にわたってその事例の要旨を紹介したいと思います。

原本を参照されたい方は、厚労省の以下のURLに公開されています。

 

 厚労省 - 多様な正社員の導入事例

 

1回目は、医療、福祉の業務分野における病院経営についてです。

 

誰もが働きやすい環境を整備し有能な人材の離職を防止するために、短時間正職員を導入しました。患者受入れ体制が整備勤務地限定 職務限定 時間限定 され、経営環境の改善にも寄与した事例です。

1.正社員

 ・正職員(事務)

事務(医療事務、健康管理センター事務、学校事務等)や法人事務局(人事、企画調整、財務等)の仕事に従事します。

 ・正職員(医療職)

職務限定され、職種(医師、看護師、准看護師、薬剤師、作業療法士、検査技師、臨床心理士、管理栄養士)によりその仕事内容は異なります。

 ・短時間正職員

事務員も含めた全職種が短時間正職員制度の対象であり、職種によりその仕事内容は異なります。時間限定です。

2.非正規雇用の労働者

 ・パート職員

パートタイム勤務(週40時間未満)で、契約期間:1年です。仕事内容は職種により異なります。

3.多様な正社員の区分

(1)多様な正社員区分の導入

看護師が働きやすい環境を整備し、有能な人材の離職を防止することを目的としました。短時間正職員制度を導入するに当たり、現場の管理職や経営層から挙がった各懸念に対し、対策を講じました。現場の実情に沿った制度にするために、管理職(看護部長や各病棟の師長等)や現場で働く全看護師から意見聴取も行いました。

(2)雇用管理

①労働条件

短時間勤務としては、1週間当たりの勤務時間が20時間以上であれば、勤務パターン(勤務時間や曜日)は自由に選択が可能です。

②就業規則

短時間正職員専用の就業規則があります。短時間正職員専用の就業規則では、「就業時間の変更」「年次有給休暇」「給与の構成および種類」等において、正職員用の就業規則とは異なる内容を記載しています。

③給与

短時間正職員の時間当たり給与水準は、同等級の正職員の時間当たり給与水準と同一です。短時間正職員には労働時間に比例した給与額が支給されます。

4.雇用区分の転換

(1)正社員区分からの転換

正社員から短時間正社員への転換は、勤務変更の届出のみで可能です。転換事由は育児、子育て、介護、資格取得、社会活動等、幅広く認められています。

(2)多様な正社員区分からの転換

育児、子育てや介護等の短時間勤務を必要とする事由が解消した際に、勤務変更の届出のみで正社員へ転換することが可能です。

(3)非正規雇用の労働者区分からの転換

 ①正社員登用

パート職員が短時間正社員へ転換するには、短時間正社員の募集に対し、外部からの応募者と同じように筆記試験と人事部による面接を受け、合格する必要があるという制度です。

 ②無期転換への対応

パート職員は1年ごとの契約で、毎年更新を繰り返しています。よって、5年を超えて勤務するパート職員からの申出があれば、順次契約期間を無期に切り替えて行く方針です。

 

 

次回は、情報通信業の業務分野におけるシステム開発事業についてです。 

 

 

 

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