MMA業界の問題点: 契約に関して / 文化が違う?芸能界とも似てる? - 5 | SLEEPTALKER - シュウの寝言
(2019年12月31日に朝倉海選手を破りRIZINバンタム級チャンピオンとなったマネル・ケイプ選手が、UFCと契約したと正式に発表されたのは、2020年3月31日だった)
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米国の法律上の契約名は「何に対するコストなのか」がストレートに分かる。これに対して日本の名称は何のコストなのか分からない。「誰の責任で契約するのか」を名称にしているためだ。
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それでは、やっとになりますけど💦ここで、MMAの世界での契約の話、その流れについて書きたいと思います。
 
まず選手は団体と契約を結びます。
1試合契約か複数試合契約。
そして試合が決まるごとに、団体が出す試合合意書にサインします。
これには対戦相手や階級、契約体重、場所、ファイトマネー、支払いの期日から団体側が負担する航空券や宿泊費用、食費などが明記されています。
欧米の場合はこれに加えて、コミッションの出す試合合意書にもサインします。
これにも対戦相手、契約体重、日時、場所、ファイトマネー、そして州によって、ファイトマネーの支払いの期日も明記されている事もあります。
 
1)団体と結ぶ単数または複数試合契約
 
まず一番初めに選手が団体と選手が交わす契約です。
英語で言うとIndependent Contrctor、独立請負業者としての契約というのが相応しい内容のものがほとんどです。
終身雇用のような契約でもなければ所属契約でもないんで、例えば、日本の芸能事務所がタレントを交わす契約や、我々のようなマネジメント・エージェント・代理人が選手と交わす契約とは別ものになります。
簡単に言ってしまえば、何ヶ月の間に何試合をするのか?それに対してのコストが約束されるものです。
 
もちろん試合の事以外にも、重要な項目が含まれているんですけど、選手側なら考えないといけないポイントなのでは?と思うのだけをここでは書きます。
 
契約期間
 
これは大きく分けて、二つのスタイルがあります。
A. 契約書にサインした日から「契約期間」がスタートするケースと、B. 契約書にサインした日ではなくて、契約上の第一試合をした日から「契約期間」がスタートするケースです。
この違いは、結構大きいんです。
 
例えば、2020年1月1日に18ヶ月4試合の契約書にサインして、同年3月1日に初戦の選手にとって、A.のケースなら契約期間がスタートするのが1月1日で、終わるのが2020年7月の終わりとなります。という事は、プロモーターはこの18ヶ月の間に4試合組まないといけないんで、平均したら4ヶ月ちょいに一回の頻度で試合を組まないといけないという事ですから、
 
B.のケースなら、実質上契約期間がスタートするのは3月1日となります。
という事は、ここから数えて20ヶ月ですから、2021年8月の終わりで契約期間が終了となります。
この場合は、プロモーターはこの20ヶ月の間に3試合組めばいいという事になるんで、選手は、半年から一回しか試合を組まれなくても文句は言えない、という事になります。
もっと嫌な事を想定すれば、1年間試合を組まずに干されても、残りの8ヶ月の間に3試合は可能だからという論理も成り立つんです。
選手が怪我した場合は?
団体側からしたら、これは全く問題ないんです。
どの団体の契約書も、選手が怪我して試合ができない状態になったと場合は、団体側には契約期間を半年とか延長できる権利が発生するというものが大半なんで。
それならきた試合のオファーを断り続けた場合は?
これも団体側からしたら大丈夫なんです。どの団体の契約書でも、試合を断ったら(団体によっては2回とか3回続けて断ったらとかになります)契約期間を延長できるという項目が入っているのが普通なので。
 
1試合契約の場合は、欧米のスタンダードは大体3ヶ月で、ほとんどの場合は、契約期間が試合した日からスタートするのではなくて、契約書にサインした日からのスタートするものですけど、どちらのケースの契約書も見た事があります。
 
ちなみに今やっているUFCのコンテンダー・シリーズの契約上の良い点は、みんな1試合契約だ、なんです。
ファイトマネーも決して悪くはありません。
アメリカのフィーダー・ショーのメインより高い額で設定してあります。
そして契約期間が短いので、勝って契約が貰えなかった選手、そして負けた選手は、すぐに他の団体で試合ができます。
また勝ち星を重ねて次のチャンスを狙えるんです。
トライアル的な大会なんで、そんなに長く縛る必要なし。
これ、欧米的な考えかな?と思うんです。
 
これが逆にアジアの場合だと、トライアル的な大会なのに、1とか2年とか拘束する方が多いと思います。
しかも、かなり低額のファイトマネーの方が圧倒的に多いです。
 
どちらがプロモーターとして誠意のあるやり方だと、選手の方から見えるのか?
 
後者のアジアの場合、団体側が、選手をどう見ているのか。
試合するチャンスをあげるんだから、これだけうちにコミットしろ、なのか。
それとも、複数契約だから、負けてもまたチャンスをあげるし、うちはあなたを育てたいと思っているから、なのか。
そう言われたとしても、これを見極めるのが大切だと私は思います。
 
そして、ファイトマネーがちゃんと業界スタンダード、そしてその団体で同じ戦績ぐらいの選手たちが貰っている額と比べて、フェアなものなら良いと私は思っています。または2連勝したら本戦に入りファイトマネーがグンと上がる、とか。
そうではなく、ファイトマネーが低く(更には勝った時のファイトマネーのアップ率も低かったら)拘束も長いと、団体側は海老で鯛を釣ろうとしている、だから選手にとっては良い条件とは言えないという結論になると思うんです。
 
選手は独立請負業者、つまり個人事業主なんで、フェアな条件でないのなら、そしてもしも「チャンスをあげるんだから、これだけうちにコミットしろ」みたいな団体の方が常に上から目線での考えなら、前者の、つまり欧米的な方が選手にとって良いのでは?というのが、私の個人的な意見です。
 
ちなみに、前にもここで書いた「契約書ではこう書いてあるけど形式的な事だから気にする必要はない。こう言われたのは一度や二度ではないです」に関してですけど、一番最近でこれを聞いたのは、某日本の団体と1試合契約の話をしていた時でした。
 
あの時でてきた契約書が、1試合契約なのに契約期間が1年でした。
という事は、その間、他団体で試合する時は許可を取らないといけない。
契約上はそういう事になりますから、契約期間を短くしてくださいと言ったんです。
そしたら団体側から私にではなく、選手に直接、その選手の先輩が、形式的な事だから気にする必要はない、と言ってきたんです。
そうなると、選手は納得せざるを得ませんでした。
それなら少なくとも、記録に残る形で同じ内容をその先輩からメールで送って貰った方がいいよと言いましたけど、その選手はそれを先輩に言う事はできませんでした。
凄くわかるんですよね、これ。
なかなか先輩には言いづらいと思いますし、その先輩がもしもその団体で試合しているなんて事だったら、尚更後輩としては先輩の言う事を聞くしかない。
それは仕方ないかなと思うんです。
 
 
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