(コロナ対策が万全に近いといえるUFCでも感染者は出ている)
UFCルールはどうなんですか?
最近はあんまりないですけど、少し前までは、よく、そう聞かれました。
厳密に言いますと、UFCルールというのは、競技ルールの面では存在しないんです。
ほとんどファンの方はご存知だと思いますけど、北米ユニファイドMMAルールがもとにできたユニファイドMMAルール(Unifed Rules of MMA)というのが、全ての州、そしてほとんどのアスレチック・コミッション(以下「コミッション」)という組織のある国で使われており、コミッションが作成し管理しているものなので、UFCが作ったルールや規則ではないんです。
反則、ドクターストップ、セコンドの数、選手への支払い、試合前のメディカルテスト、ドラッグテスト、試合にかける保険、バンテージの巻き方、ファイターとセコンドのライセンスなども、このコミッション管轄になるんですけど、それも実を言うと細かい決まりは州によりけりの部分が多々あります。
そして、不測の事態、例えば計量オーバーで試合が飛んだりとか、今なら選手がコロナに感染して試合が飛んだりとか、ローカル大会なら時折あるんですが試合日に選手が来なかったりとか(💦)、そういった時の対処に関しては、州(またはコミッションのある国)によっては明確ではない所もあるんで、そのあたりはUFCルール、つまり団体側のポリシーが適用されることもあるという言い方が、現時点では一番正しいのでは?と思います。
もうこの時点で、結構面倒臭いな、というのがお分かりになると思います💧
アメリカだけでも50州、ぞれぞれ全て微妙に違うと考えた方が良いということなんで…..
多くのレフェリーは、複数の州でライセンスをもち試合を裁いてますけど、試合前に、この州で〇〇に関してはどんなルールだったっけ?と聞くと、100%に近い確率でレフェリーも即答できず、こうだと思うけど一応確認する、とコミッションのスタッフに聞いて、それでもわからない場合はコミッショナー自身に確認してまた戻ってくる。
これが現場の現実なんです…...
それだけ、試合が開催される場所によって微妙にルールや規則が違う。
これ、普通のメジャースポーツならあり得ないことなんですよね。
NFLだってMLBだってNBAだってNHLだって、どこで試合しても根本的なルールや規則、罰則は同じなのに、なんでMMAだけちゃんとしっかりと統一できないのか、意味わからん、というのが、私がまず声を大にして言いたい問題点だと思います。
統一できないくせに、ユニファイドなんて、ちゃんちゃらおかしくね?と酒の席でコミッションの人たちに言ったことは一度や二度ではないですし、アメリカのメディアを通じて、私なんかに限らず、かなりの数の選手、マネジメント、ドクターなどが疑問を呈している、これ、根本的な問題点なんです。
(統一できている部分もあるんですけど、これは後述します)
そこで、今回は、なるべくわかりやすく、アメリカのMMAにおけるアスレチック・コミッションの役割と、私が感じている他の問題点を綴っていきたいと思います。
そして、そこから世界各国の団体の選手の契約と日本の団体の契約など関して、更にはコロナ禍での大会運営や日本の政府がなぜMMAをスポーツとして支援できないのか?ということに関して、私の視点から感じている問題点、疑問点に言及していきたいと思います。
アンタの意見なんて読みたいくないと思う方は、ここから先は読まないことをお勧めします。
100%選手側にいるマネジメントという立場の私の考えは、こういったことは言い続けないと、そして形に残るように書き続けないと、何もいい方向には動かないですし、当然主張すべき選手の権利も勝ち取れない。これを信じているんで、ここに書くことにしました。
選手、コーチ、親、マネジメント、なんなら友達でも良いんです。
疑問点は公に問い続ける。
そうしないと何も発展しないと信じているんです。
ただこれはあくまでも、25年ぐらいこの仕事をしたきた私の経験から感じている、私1個人の意見ですから、そこら辺はご理解ください。
正しいとか正しくないではなく、あくまでも私はこう思う、です。
そして、私の意見が、これからの世代の選手や選手側の人たちが、色々と物事を考える時の参考の1つにでもなればいいかな?と思ってます。
これ、すご〜く長くなると思いますが、何回かに分けて最後まで書き遂げたいと思います。
(NJ州アスレチック・コミッションの現Counsel・法律顧問のニック・レンボ氏)
アメリカのアスレチック・コミッションというのは、誰が管理している組織なのか?
これ、アメリカでは、ほとんどの場合、州政府になるんです。
(なぜ「ほとんど」なのかというと、アメリカ先住民居留地は自らの政務を管理する権利があるので、それぞれの居留地管轄下にコミッションがあるんです)
どの省(または局)に属しているのかと言いますと、これも、州によりけりなんですよ……。
NJ(ニュージャージー)州なら法務省、CA(カリフォルニア)州なら消費者局、NV(ネバダ)州なら商工省といった具合に、50州全て調べた訳ではないですが、これ、何度も書きますけど、州によりけりなんですが、要はコミッションのスタッフというのは、州政府に雇われている州の職員、日本でいうとお役所の方々なんです。
さて、そうなると、まず一番初めに皆さんが知りたいと思うのは、一体役所の中にあるコミッションという部署には、何人ぐらいフルタイムのスタッフが働いているのか?だと思うんですけど、これも州によりけりなんですが、コミッショナー、コミッショナー代理、顧問などのうち、一人か二人がフルタイムでオフィスを仕切る。
その下にフルタイムの事務スタッフが数人。
あとは、みんなパートタイム、といった感じの体制で業務を行っている所が多いのでは?思います。
試合の時に、控え室から入場、そして退場から控え室へと、選手についているインスペクターたちなどは、試合の時に雇われるパートタイムのスタッフなんです。
(余談ですが、このインスペクターたちは、元または現職の警察官の方々がバイトでやっている事が多いです)
これは一昔前の話なんですけど、コミッションのスタッフの人数が、仕事量と比較すると明らかに足りなくなり、NJ州のアスレチック・コミッションでは、選手が提出したメディカル・テストの検査書類の承認プロセスがちゃんと行われてなく、そのままほったらかしになっていた事などが発覚して、コミッショナーが解雇された、という事件もありました。
当時、NJ州のアスレチック・コミッションのオフィスでフルタイムで働いていたのは、確かコミッショナーと法律顧問と事務スタッフが二人だったと思います。
もう随分前の話なんですけど、できたばかりの綺麗なビルで、オフィスの窓から見える景色は、一面に広がる森林だったと記憶してます。
清潔感のある真っ白い廊下を通り、コミッションのオフィスに入った時の光景は今でも鮮明に覚えてます。
至るところに書類が山積みのゴミ屋敷状態で、その陰から顔を出したスタッフが、一瞬ボサボサ頭の濵田まりに見えました。
これじゃ、やるべきこと、ちゃんとやれてないでしょ!?
あの時、そう確信したのを、今でも忘れません。
アトランテック・シティがあるNJ州は、まだボクシングの試合もそれなりの頻度に行われていましたし、あの時はUFCの他にも一気にMMAの大会が増えた時代で、それに対応できていなかったんです。
そしてあの時代は、そのような状況を把握した上で、不正を働いていた選手や悪徳マネジメントもいました。
実際にドクターの診断は受けず、メディカル・テストの書類には自ら記入してネットで適当にドクターの名前を探し、それを使い、サインして提出。
これをやってもバレる確率が限りなくゼロに近かったんです。
(ま、それもあって当時のコミッショナーは解雇されたんですが💦)
でもこれって一つ間違えれば大問題になるんで、絶対にやってはいけないことだと思うんですけど、実際にそれをやったことがあるという選手やマネジメントは、一人や二人ではありません。
それなら、なぜ選手側はそんな不正を働いたのか?
一番の理由は、アメリカの医療費がバカ高いから、なんです。
例えば、前述のNJ州だと、プロのMMAの試合をするのに必要なメディカルテストは、頭部のMRIかCT検査、眼検査、心電図検査、血液検査(HIV、C型、B型肝炎)、そして健康診断となります。
保険が適用されないケースがほとんどなんで、どんなに安いところを探したとしてもトータルで1200ドルはかかると思うんです。
フィーダー・ショー(ローカル大会)でのプロデビュー戦は、だいたいギャランティ500ドル、勝利ボーナス500ドルぐらい。中には250ドル、250ドル。下手したら、手売りしたチケットからの取り分だけ、なんていう選手もいるんで.........
そう考えると、赤字になることの方が圧倒的に多い。
選手にとっても、そして団体にとっても、これは頭痛の種なんです。

