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音路78. あなたは愛されている



前回コラム「音路77.昭和浪漫(4)裸足の足に感じるの…」で、先頃 亡くなられた上島竜兵さんに関する内容を書きましたが、多方面より、さまざまなメッセージを頂戴し、誠にありがとうございました。
今回のコラムは、急きょ関連して、「癒し」をテーマに書きたいと思います。


◇魔の手

新型コロナ禍が、何となく一段落した雰囲気が社会に漂いはじめ、多くの人たちが動き出し始めましたね。
ですが、緊張感やがんばりから解放され、ホッと安心した時こそが、人はゆるみを生じ、事故に巻き込まれたりもします。
注意力が欠如し、危機感を忘れてしまったりもします。
山登りでは、下山時に、圧倒的に事故が多く起きますね。

実は、ピークを乗り越えて、落ちつきを見せはじめた、こんな時こそ、人は気分が落ち込みやすくなったり、よくわからないモヤモヤ感にさいなまれやすくなったり、余計な事柄が頭の中にわいてくる… 昔から、そう言われていますね。
五月病、中二病にも、似ています。
「魔の手」は、人間の心の隙(スキ)を見つけては、入り込もうとしますね。
「コロナ禍という山を下り、今が むしろ、精神的には危ない時期だな」と心配している方々も少なくないと思います。

* * *

新型コロナ禍が落ちつきを見せ始めたとはいっても、世の中には、まだまだ悲しみや後遺症に苦しむ方々が膨大におられます。
親しい方を亡くされた方々の悲しみが消えたわけではないことを、忘れたくはないものです。
そして、命を犠牲にされた方々の分まで、生命を、人生を、精一杯に使っていきたいものです。

* * *

新型コロナ禍を無事に乗り越えられた人と、大なり小なり犠牲になってしまった人とでは、今、雲泥の差なのかもしれません。
大きな格差が、そこに生まれているような気がします。
身体的、精神的、経済的、学業… さまざまな格差が生まれています。
新型コロナ禍で生じた、こうした格差は、精神的には、相当に こたえますね。

死ぬことはなかったのに…、経済的に困ることはなかったのに…、学校に通えていたはずなのに…、仕事を続けられたはずなのに…、夢を追い続けられていたはずなのに…、幸せになれたはずなのに…、むなしさ、悲しみ、くやしさ、後悔、いろいろなものが入り混じって、大きな不安の塊りが、自身の中に蓄積している方も少なくないかもしれません。

昨日まで、明るく接してくれていた方が、急にどうして…。
そんなことは、今、めずらしくないようにも感じます。

知らないうちに、さまざまな「魔の手」が、自身に忍び寄っていたということも少なくないかもしれませんね。
自身には関係のないことと思わずに、気をつけていたいものです。
周囲の方々の異変にも、注意をしていたいものです。

* * *

さて、世の中には、責任感や使命感が強過ぎたりして、「トラブルは、相手に問題があるのではなく、自身のほうに問題があるのではないか、私が解決しなくてはいけない、でも 私には解決できない、もうダメだ、もうイヤだ」と思い込んでしまう人も多くいますね。

また、乗り越えようと精一杯努力してきたのに、自身は永遠に越えられないと思い込んでしまって、急にふさぎこむ人もいます。
傍から見れば、あなたはとっくに越えていると思って、そう伝えても、信じようとしません。

どちらのケースも、ある段階を越えると、そうした方々に いろいろな言葉をかけても、彼らの耳に入ってくれません。
これは、普段そうでない方々でも、いつ、同じような状況になるかわかりませんね。

昭和生まれのベテラン世代であれば、これまでの人生で、死をも感じるような苦痛や苦労を幾度となく乗り越えてきた人も、たくさんいるはずです。
若い世代の方々…、思い悩む方々…、目の前の道が見えなくなったら、ぜひ、そんな方々に、一度話しをしてみてください。

テレビのニュース番組等では、相談窓口の電話番号を淡々と伝えていますが、何か言葉を添えてもいいと、いつも感じています。
そこに、その番組や司会者の姿勢が見えてくる気がします。
人を救えるのは、何かのシステムではなく、人の姿勢や行動、言葉であったりしますね。

* * *

この「歴音 fun」のコラムを、つらい病床や、さまざまな迷いの中で、読んでおられる方が少なくないことは承知しています。
今回のコラムは、そうした方々に、少しでも、癒しを…、元気を…、もう一度… と感じていただけるような音楽曲を集めてみました。
私はカウンセラーではありませんが、皆さまの身に忍び寄る「魔の手」を、心の中から、はねのけてほしいと思っています。

すべての人に死は訪れますが、せっかく手にした生命… 私は貧乏性なので、苦労も困難も含めて、もう少し使いたいと思っています。
今回のコラムが、苦しむ方々に、少しでも役に立ってくれることを願っています。


◇生き返る

ロックバンド「シカゴ」の、1978年(昭和53)の楽曲。
♪僕の明日に太陽がのぼるなんて、これっぽちも信じてなかった。
♪僕の人生はここで終わったはずだった。
♪なのに、希望と夢が、僕の中に、こんなに容易(たやす)く入ってくるなんて…。
♪僕は生き返ったのさ!
…そんな歌詞内容の曲。

そんな日が、きっと訪れますよ。
♪アライブ・アゲイン

 


◇もう一度、逢おうよ

1977年(昭和52)に米国で結成されたロックバンド「サバイバー(survivor)」がいます。
映画「ロッキー」シリーズでのヒット曲でも知られる彼らですね。

このバンドは、70年代前半に流行したブラスロックのバンド「アイズ・オブ・マーチ」が、ヒット曲を出した後、人気低迷で1973年に解散し、その元メンバーの一部と、同じブラスロックのバンド「チェイス」の元メンバーの一部が集まって結成されました。

バンド「チェイス」は、1974年の米国ライブツアーの移動中に、リーダーと他のメンバーのうちの3人が乗る飛行機が墜落し、全員死亡します。
60~70年代は、今よりも飛行機性能が劣り、気象情報もぜい弱でしたので、結構、有名ミュージシャンが乗る飛行機が墜落しました。
事故死したミュ―ジシャンたちが少なくない時代でしたね。

飛行機嫌いで、バスで移動したメンバーひとりが難を逃れ、その彼が、前述の「アイズ・オブ・マーチ」の一部メンバーと一緒に結成したバンドが「サバイバー」です。
なぜ、このバンド名なのかは、こうした「生き残り」という理由からです。

そして何の因果か、そのバンド「サバイバー」が1982年に発表したのが、世界中で大ヒットした映画「ロッキー3」の主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」です。
主題歌も、空前の大ヒット!
二つのバンド(チェイス、アイズ・オブ・マーチ)の生き残りたちが、まさに、新バンド「サバイバー」として音楽界の表舞台に復活した瞬間でした。

* * *

英語の「サバイバー」とは、近親者を亡くした遺族のことを意味しています。
そして、災害・事件事故から生き延びた人、過去の虐待経験などを克服した人、重い病気と戦っている人のことを「サバイバー」とも呼びます。

生命の危機からの生き残りのことを「サバイバル(survival)」といいますが、日本でも英語「サバイバル」で通用しますよね。
強い意志、強い団結力、賢い知恵、大きな支援が、それを成功に導きますね。

* * *

ここで、そのバンド「サバイバー」の1984年(昭和59)の楽曲「アイ・シー・ユー・イン・エブリワン(I See You In Everyone)」をご紹介します。
その前に、このお話しを少しだけ…。

〔See You Again〕
さて、英語表現の「See You Again(シー・ユー・アゲイン)」という「Again」がつく表現は、日本でいう「じゃあね、また明日ね」とは微妙にニュアンスが異なります。
再会の可能性がかなり低く、ひょっとしたら、もう会うことはない場合の英語表現です。
あえて、日本語で言うなら、「またお会いできる日を楽しみにしています。それではお達者で…。遠い空から、お幸せを願っています」のような意味あいでしょうか。
まさに「一期一会」の時に使うような「See You Again」ですね。

* * *

サバイバーのこの曲のタイトルが、「アイ・シー・ユー・イン・エブリワン」という、丁寧な表現ですので、感謝の気持ちや、近いうちに再会したい強い意思表示にも聞こえてきますね。
この楽曲の歌詞の中には、「チェイス」という言葉が登場します。
もちろん、消滅したバンド「チェイス」のことであり、亡くなったメンバーたちのことを、暗に示しているものであろうと思います。

敬愛する、今はなきチェイスのメンバーたち…、もう一度、サバイバーのメンバーたちと一緒に、みんなで集まろうよ!
♪アイ・シー・ユー・イン・エブリワン


* * *

多くの人たちが、あなたとの再会を望んでいますよ。
ひとりで、何も言わずに、皆の前から永遠に立ち去ることなど、決して許されませんよ。

とにかく、もう一度逢いましょう!
それでは、近いうちに…、「again」無しの、See you!


◇その両手を差し出してくれ

次は、2016年に亡くなったデヴィッド・ボウイさんの、1972年(昭和47)の名曲「ロックンロールの自殺者」です。
ロック音楽史に輝く存在になっている楽曲ですね。
この曲で、救われた方も少なくなかったはずです。

* * *

「ロックン・ロール」という言葉は、もちろん音楽のスタイルを表す用語ではありますが、言葉としてはさまざまな意味があります。
その言葉のイメージの中には、激しく揺り動かす…、激しく震える…、激しく回転し渦巻く…、というものもあります。
まさに、音楽と言葉の意味が融合したかたちですね。
人間は、本来、身も心もロックンロールする生きものであろうと感じます。
この楽曲は、まさに、身も心も揺れ動く自殺願望の人に向けた歌です。

歌詞の主要な部分だけを意訳して…

それを失うには歳をとりすぎた…、選ぶには若すぎる…。
君の時計は、君の後ろをついていくだけ…。
よく知らない者たちが、君に暴言を吐き、君はつまづいてばかり…。
君の居場所は見つかったかい?

自身の影を、太陽の強い光で消してしまってはいけないよ。
牛乳配達が来たのかどうか、毎日 健康的に牛乳を飲まなくちゃなんて、そんなこと考える!
自分ばかりを見つめて、自分を追い込むな… そんなことしても意味がない!

君と同じ苦しみを、オレも担ってやるよ。
オレと一緒に、前を向いてみようぜ!
オレの方を、しっかり見ろ!
君は一人じゃないんだ!
君のすばらしさは、オレがわかっている。
オレに、その両手を差し出してくれ!

1990年(平成2)の、日本でのライブ演奏です。
♪ロックン・ロール・スゥ-サイド

 


◇ベター、ベター、ベター、ベター

次は、ビートルズの1968年(昭和43)の名曲「ヘイ・ジュード」です。

当時、メンバーのジョン・レノンさんは、妻のシンシアさんと離婚協議中で大もめ…。
ジョンさん夫婦の5歳の息子のジュリアンさんが悲嘆にくれていた時期で、それを見かねた、やはりメンバーのポール・マッカートニーさんが、そのジュリアンさんを元気づけるために、ポールさんだけで書いた楽曲が、この「ヘイ・ジュード」です。
「ヘイ・ジュールズ(ジュリアンのこと)」から、「ヘイ・ジュード」にタイトル変更しました。

バンド内で、ジュリアンさんの遊び相手で、良きお兄ちゃんがポールさんでした。
皆さまも、子供の頃、大勢の親戚の中に、こんなお兄ちゃんやお姉ちゃんが、一人や二人は いませんでしたか…。

この楽曲の歌詞は、子供にもやさしく、終盤は「ナナナナ…」と歌いやすく、皆でいっしょに歌えるようになっています。
ジュリアン・レノンさんは大人になり、ミュージシャンとなってヒット曲も出しましたね。
ジョン・レノンさんも、息子にたくさんの曲を贈りましたが、ポールさんとジョンさんに曲をプレゼントされるとは、どのような心境でしょう…。

ジョン・レノンさんは、「この歌詞は、息子ではなく、ポールからオレへのメッセージだ」と言っていましたね。
一応、ポールさんは全否定。

歌詞を深読みしたら、キリがありませんが、やはりオノ・ヨーコさんを思い起こさせる歌詞ではありますね。
ポールさんが、ジョンさんとジュリアンさんに贈った、励ましの曲だと、個人的には想像しています。

* * *

基本的に、この楽曲にジョンさんはクチをはさみませんが、ひとつだけ、下記の歌詞部分をポールさんが削除変更しようとしましたが、ジョンさんが、それを止めました。
ジョンさんが、この楽曲の歌詞で、もっとも気に入っていた部分だったようです。

ポールさんは後に、この楽曲を歌うと、この時のジョンさんを思い出すと語っていましたね。
励ましを受けた側も、贈った側も、忘れることはなかったのだろうと思います。

音楽バンドでは、メンバー同士で、歌詞や楽曲を贈り合うということが少なくありませんね。
直接 会話をしないで、歌詞に表現することも多くあります。
この楽曲も、とても いい歌詞ですね。

皆様の中にも、あの時の友人や恩師の励ましの言葉を、忘れていない方も少なくないのでは…。

前述の、ジョンさんが変更を止めた歌詞部分です。
私の意訳です。

♪Hey Jude, begin
(さあ、ジュード〔ジョン、ジュリアン〕… 始めてみようよ)

♪You're waiting for someone to perform with
(誰かが助けてくれるのを、ずっと待っているつもりかい?)

♪And don't you know that it's just you.Hey Jude, you'll do
(君にしかできないこと、君がやるべきことが、わからない君じゃないだろ)

♪The movement you need is on your shoulder
(すべては君の肩にかかっている。君次第なんだよ)

今も昔も、大勢で歌うことの多い、この楽曲ですね。
ロンドン・オリンピックのセレモニーでも、大勢で合唱しましたね。

ベター、ベター、ベター、ベター、きっと、今より良くなる!

2010年のポールさんのライブ映像です。
♪ヘイ・ジュード

 


◇歯の痛いナイチンゲール

ここで、クラシック音楽からも少しだけ…。
クラシック音楽には、それだけで癒しや元気をもらえる曲は、山のようにありますね。
今回 ここは、「苦悩」や「不安」には、「風変り」「異端」で対抗しようと思います。

あまたいるクラシックの大作曲家ではなく、相当な異端児音楽家と呼ばれた作曲家がいます。
フランスの作曲家、エリック・サティ(1866~1925)です。

今現代でも、音楽ジャンルの枠を越えて大成功する音楽家がたくさんいます。
サティを、どの音楽ジャンルに入れるかを考えることなど、ばかげているようにも感じますね。
彼なら、きっと、そう言うでしょう。

* * *

彼は12歳までに、母と祖母を不幸なかたちで亡くし、父は行方不明。
祖父の元で育ち、そして見つかった父の元へ、父の後妻の影響でピアニストへ。
中世の神秘や、古代ギリシャが好きな、孤独を好む少年だったようです。

夜の飲み屋で雇われ演奏してみたり、軍隊に入ってみたり、気の向くままの性格もあったようで、よく他人と もめたようです。
ただ、その個性的な音楽性は、あのドビュッシーも高く認めていました。
他人から見たら、自由気ままな生き方のように見える彼でしたが、59歳で肝硬変で亡くなります。
酒を愛し過ぎたのかもしれません。

彼の人生は、複雑な幼少・少年期を経て、音楽学校でも軍隊でも挫折してからは、音楽と酒にあふれていた印象も受けます。
苦悩と孤独に ずっと包まれていたのかどうかは、私にはわかりません。

不思議な音楽性を秘めた楽曲、そしてあまりにも奇妙な演奏指示をたくさん残した彼です。
まさに「異端児」と呼ばれた音楽家がそこにいました。

冗談が好きで、「おふざけ」を楽しみ、他人を幻惑させて面白がる人間だったようにも見えます。
彼は、自身の曲に不思議なタイトルをつけるのが好きでした。

その一部を
*犬のための、ぶよぶよとした前奏曲
*ナマコの胎児(ひからびた胎児)
*梨の形をした3つの小品
*家具の音楽

* * *

彼は、楽譜にも、調号や拍子、小節線を書き込まず、不思議な演奏指示を残しました。
「52拍分の音を840回繰り返すように(演奏時間18時間)…」と指示を書いた楽曲のタイトルは、「ヴェクサシオン(いやがらせ)」です。

楽曲「ナマコの胎児(ひからびた胎児)」での演奏指示は、「歯の痛いナイチンゲールのように…」とあります。
邦題に「胎児」とありますが、人間の胎児ではなく、「はららごの干物」という別のタイトルもあります。

本人が残した解説に、「(フランス北部にある)サンマロ湾の港町で海洋生物のナマコを観察した…」とあります。
演奏のある部分で、「歯の痛いナイチンゲールのように…」と残しました。
あのナイチンゲールさんでも、歯が痛い時は、きっと渋い顔であったろうと思います。
想像ですが、サティは、港町でナマコを同じような顔でながめていたのかもしれません。

さらに、この曲には「シューベルトの有名なマズルカからの引用…」と記載されていますが、そんなマズルカ曲は存在しません。
曲の最終部では、「作曲者が強制的に終わらせる」と残しました。
つまり、うるさく忠告する奴が隣にいるので、ここで曲を終わらせるということらしいのです。
ひょっとしたら、そのうるさい奴は、ナマコにそっくりだったのかもしれません。

下記映像の中に、彼が残した、演奏指示のような、イメージのような言葉が登場します。
これを演奏者は、どのように とらえるのでしょうね。
三部構成の曲で、その冒頭に、彼の残した解説文章も出てきます。

ほぼ、音楽のお遊びのような曲ですが、本人は相当に楽しかったか…、暇つぶしか…、うっぷんばらしか…。
ひょっとしたら、彼は、彼なりに歌詞を付けたかったのかもしれませんね。
気になった方は、どうぞ、歯の痛いナイチンゲールの顔を想像しながら、お聴きください。

♪ナマコの胎児

 

他の曲の指示でも、食べ過ぎないで弾け…、偽善的に…などなど、 わかるような、わからないような…、微妙なニュアンスを伝えたいのか…、まったくの冗談か…?
さすが「異端児音楽家」の面目躍如です。

今、そこで、気がめいって、うかぬ顔をしている方…、上には上がいましたね。
ナマコ人間が、近くにいませんか?


◇不安の裏側

ここからは、サティのちゃんとした(?)楽曲を…。
さあ 思いきって、暗く不安の世界へ…。

下記の1番は、「舌の上に、のせるように…」という演奏指示。
何か 妙な味がします…
♪グノシエンヌ 第1番

 

下記映像にあります小節線のない楽譜… ちょっと気持ち悪い!
ただ、聴く側には、楽譜の小節線の有り無しは関係ありませんね。
♪グノシエンヌ 第3番

 

古代ギリシャの神「ジムノペディア」を讃えて踊る儀式を「ジムノペディ」というそうです。
♪ジムノペディ 第1番

 

♪ジムノペディ 第3番

 

ここまで四曲を聴いてきて、「不安」が、何か「安らぎ」にも感じてきませんか?
「不安」と「安らぎ」は紙一重なのかもしれません。
表裏一体なのかもしれませんね。

たまには、「不安」の裏側も のぞいてみましょうよ…。


◇異端は武器

「スローワルツの女王」と呼ばれた、フランスの人気シャンソン歌手のポーレット・ダルティさんのために書かれた歌唱付きのシャンソン曲です。
サティさん… ここは、そのまんまのタイトル曲かい!?

前田勝則さんのピアノ演奏で…
♪ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)

 

歌唱バージョンです。
ピアノ演奏は、ダルトン・ボールドウィンさん。
歌は、エリー・アーメリングさん。
♪ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)

 

この楽曲は、作曲がサティで、作詞はアンリ・パコーリです。
歌詞では、相手の女性を、ほめてほめて、ほめちぎります。
ちょっと持ち上げすぎ…?
これでもかと、おだてあげ、私は身も心もあなたのもの…。
そして、あなたは私のもの…ずいぶん強引です。

結局、女性シャンソン歌手のポーレットさんは、オペラ歌手のジルベールさんと結婚しました。

サティは、1900年のこの楽曲で認められます。
夜の飲み屋の演奏家から、音楽家へ…。

この楽曲の楽譜は、彼には数少ない小節線が書かれた楽譜です。
一発当てるには、小節線くらいは、やっぱり必要!?
他所(よそ)でも弾いてくれなくちゃ、話しになりません。

人生の巻き返しのチャンスが、どこに転がっているか わかりませんね。
彼は、「異端」「変わり者」を武器に、音楽家としての新たな人生を始めました。

世の中には、昔も今も、「異端」を武器に、成功した人物がたくさんいますね。
普通や一般と違うことは、決して、人生にマイナスではありませんよ。

* * *

ここで、ちょっとだけ異方向へ…。

下記映像を初めて見た時に、ちょっと感動しました。
この母子の様子が、なんとも…。
プロ歌手の家庭とは、こんなものなのかも…?
きっと、この二人の子は、音楽と愛情につつまれて育つはず…。

おそらくは韓国であろう、ソプラノ歌手の Ji Hyun Jangさんには、この食卓歌唱のシリーズがあります。
日本人プロ歌手の家庭も、のぞいてみたくなりました…。

三人による、とても素敵な歌唱映像です。
♪ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)

 


◇大切なあなた

今、この母であり歌手の方も、たいへんな悲しみの中にあるのかもしれません。

世の中に、「大切なあなた」を今現在お持ちの方もいれば、かつてお持ちであった方もいると思います。
これから持つことになるであろう方も、たくさんおられますね。
それより何より、これをお読みのあなたが、誰かの「大切なあなた」であるのかもしれません。

現在でも、過去でも、未来でも、生死も、関係ありませんね。
「大切なあなた」であることに間違いありません。

そして、「大切なあなた」を心配し、時に悲しむ誰かが存在します。

極端なかたちで、相手を悲しませることは、あなたの本意ではないのでは…。

下記映像の姿を見ると、娘さんと母親が、あまりにも一体化して見えてきます…。
聖子ママの元気な姿を、みな待っていますね。
もう一度、めぐり逢いましょう!

♪大切なあなた

 


◇あなたは愛されている

下記の二曲は、キリスト教色の強い歌詞の楽曲です。

私は、キリスト教徒ではありませんが、素晴らしいメロディの音楽曲として、また、宗教の枠を越えて 理解できる素晴らしい歌詞内容として、初めて耳にした時から、すぐにお気に入りの楽曲となりました。
多くの人を癒してくれる、宗教の枠を越えた、素晴らしい楽曲だと思います。

* * *

下記の楽曲は、韓国のキリスト教の牧師さんが作った楽曲ですが、日本の卒園式など、さまざまなシーンで歌われたり、流されたりもしますね。
私が日本語バージョンを初めて耳にしたのは、おそらく2000年代だったと思います。

人はみな、誰かに愛されるために生まれてくる気がします。
仮に今がそうでないとしても、少なくとも、愛されていたのだろうとも感じます。
みな、愛されながら旅立ってほしい…。

ゴスペルシンガーである松本優香さんの日本語歌唱で…
♪君は愛されるため生まれた

 

韓国?の歌手グループ「Gifts(ギフツ)」による日本語歌唱で…。
日本語発音が抜群に上手… むしろカッコいい日本語歌唱。
日本の街なかの路上や病院で、彼らの歌声を聴けるようです。
♪君は愛されるため生まれた

 

草の根のように、各地で愛されつづけている楽曲ですね。
まさに、愛されるために生まれてきた楽曲です。
福岡を拠点に活動するゴスペルグループ「G.L.A.D.gospel singers(グラッド・ゴスペル・シンガーズ)」の歌唱です。
地元に密着し愛される音楽グループが、いかに大事な存在であることか…。
♪君は愛されるため生まれた

 

コロナ禍で会うことができなくとも、人は音楽で、心をつなぐことができます…。
♪君は愛されるため生まれた

 

身体の障害は、乗り越えられます…、支え合えられます…。
聴こえなくとも、音楽を感じることはできます。
♪君は愛されるため生まれた

 

* * *

下記は、2009年の日本の映画「誰も守ってくれない」の主題歌です。
ボーイソプラノの少年合唱団「リベラ」が歌う楽曲「あなたがいるから(You were there)」です。

作詞は、合唱団「リベラ」を創った音楽プロデュ―サーのロバート・プライズマンさん、作曲は、名曲をたくさん作る村松崇継(むらまつ たかつぐ)さん。
歌詞はもともと英語で、日本語訳はここでは詳しく書きませんが、どうぞ検索等を行なって、和訳をお読みになってみてください。

人は誰かに守られ、そして誰かを守っている…
あなたも、きっと そう…。
あなたが、ひとりでそこにいるときにも、その人はそこにいて、あなたを守ってくれている…。

「癒し」は、互いに与えあうもの…
人はみな、誰かに守られていたい…、守っていたい…。

リベラ
♪あなたがいるから

 

* * *

下記は、前述のキリスト教曲とは関係ありませんが、藤田麻衣子さんの同名異曲です。
生命保険会社のCMに使用された楽曲です。

藤田麻衣子さん
♪あなたがいるから

 


◇ヒーリング

私は、ヒーリング・ミュージックの世界に決して明るいほうではありませんが、自身の精神の安らぎのために、そうした音楽を意図的に聴くこともあります。
クラシック音楽や、イージーリスニング音楽、ポピュラー音楽とも違う、人間の何かに響いてくる音楽ですね。
アレコレ悩む思考を一旦 停止させ、目の前のサウンドだけに耳を傾けるのも、時にはいいものです。

鳥やふくろうたちの歌声とともに、マリナ・レイさんの音楽を夜に聴くのも、私は大好きです。
♪Enchanted Forest (魅惑の森)

 

* * *

1940年代から2000年代にわたり活躍した、写真家・映像音楽家のダン・ギブソンさんが残した作品群があります。
「ダン・ギブソンズ・ソリチューズ」という映像音楽シリーズとして、ネット上で見聴きすることができます。
癒しの映像と音楽が、私たちを、現実とは別の安らぎの世界に連れていってくれます。

ダン・ギブソンズ・ソリチューズ

 

鳥たちの鳴き声は、彼らにしてみれば会話なのかもしれません。
でも、それは、人間には音楽に聴こえてくることもありますね。

あのポップスの名曲も、ダン・ギブソン風のヒーリング・ミュージックにすると…
♪サムホエア・アウト・ゼア

 


◇きっと、どこかに…

前述の楽曲の原曲は、1986年のスピルバーグ総指揮のアニメ映画「アメリカ物語」の主題歌です。
リンダ・ロンシュタットさんとジェームス・イングラムさんのデュエットです。

きっと、どこかに…
♪サムホエア・アウト・ゼア

 

日本語版
♪サムホエア・アウト・ゼア

 

米国の女性シンガーで、パワーあふれるボーカルを聴かせてくれたリンダ・ロンシュタットさんでしたが、重い病気になり、歌を歌うことができなくなりました。
イングラムさんは、2019年に66歳で、病気で亡くなりました。
リンダさんは、あの持ち前の不屈の闘志と根性で、人生をしっかり歩まれています。

私は、元気をくれる女性歌手のまさに代表格として、彼女の歌声を長く聴いてきましたが、近々、別コラム「絶対!絶対!結婚しないわよ(仮題)」で、彼女の楽曲のことや、不屈のパワーボーカルについて書きたいと思っています。

私には、彼女のこんな台詞が聞こえてくる気がします。
「困難に へこたれて たまるもんですか! 声なんて出なくても、私は人生を歌えるわよ!」。

それが リンダ!
大切なリンダ!
愛されているリンダ!

大切なものは、きっと、どこかにあります…。
きっと、どこかにいてくれます…。


人生は、苦難と忍耐の時ばかりでは、ありません。
きっと、あなたも…。

* * *

2022.6.2 天乃みそ汁

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