春、ベートーヴェン、ヴィヴァルディ、シューマン、ストラヴィンスキー、グリーンスリーブス、威風堂々、交響曲、ヴァイオリン、ピアノ、クラシック音楽、洋楽。

 
 

歴音29.春だフォ~!四大春曲!



春、真っ盛り!
前回まで、「桜うた」コラムを三回にわたり連載しましたが、今回は、「春」の名称がタイトルになっているクラシック音楽曲をご紹介します。

私が勝手に、チョイス(選曲)しました。
「四大春曲(よんだい はるきょく)」!

「春」の四曲です。

◎ヴィヴァルディの協奏曲「四季」より「春」。
◎シューマンの交響曲第5番「春」。
◎ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。
◎ベートーヴェンの「ヴァイオリン ソナタ第5番・春」。

ほかにも「春」の名称の付いたクラシック音楽曲はありますが、この四曲は、相当に特別な曲ですね。

心地よい季節の「春」に、音楽から「春うらら」を、どうぞ味わってみてください。


◇ボーカルで聴く、クラシック曲

「四大春曲」の前に、音楽オールジャンルの「歴音fun」ですので、クラシック音楽曲をベースにした、春らしいボーカル曲を4曲だけ…。

ボーカルで聴く、春っぽい、クラシック音楽曲!


【ラヴァーズ・コンチェルト】

「ラヴァーズ・コンチェルト」という名称で、世界中で歌われている楽曲がありますね。

この楽曲の大元の楽曲は、長い間、J.S.バッハの作曲した作品だと思われていましたが、近年の研究の結果、クリスティアン・ペツォールトであろうといわれています。
「メヌエット・ト長調 BWV Anh. 114」と表記される楽曲です。

バッハの音楽作品には、通常、作品番号として「BWV(番号)」が付されています。
この場合の「BWV Anh. 114」の「Anh.(アンハン)」とは、バッハの作曲とは伝えられているが、確証が得られていない、疑問が残る…という場合に、付される用語です。
また、別のコラムで、このお話を書きますね。

では、なぜ、J.S.バッハの作曲と長く考えられていたのか…。
そこには、バッハ夫妻の深い愛のエピソードがありますが、長くなりますので、また別のコラムで書きますね。

ここは、薬師丸ひろ子さんの日本語歌唱で…。
♪恋は、小さいウサギのように…。

春の恋は、子ウサギのように、あなたの後をついてくる…

薬師丸ひろ子
♪ラヴァーズ・コンチェルト

 


【グリーンスリーブス】

大作曲家が作ったクラシック音楽曲ではありませんが、ヨーロッパに古くから伝わる作曲者不明の伝統曲「グリーンスリーブス」です。

春から初夏の、若々しく みずみずしい草木の緑を感じる この楽曲にも、深い神秘の伝説が残っています。
緑色のドレスの袖(そで)を意味してはいますが、大元は、女性の衣服についた草原の草の緑のことで、袖にも深い意味あいが込められています。
この謎めいたお話は、また別のコラムで…。

ここは、英国出身で、70年代、80年代を代表するハードロックバンドの「ディープ・パープル」と「レインボー」の中心人物として、ロック音楽界をけん引したギタリストのリッチー・ブラックモアさんが夫婦で活動している「ブラックモアズ・ナイト」の演奏と歌唱で…。
ブラックモア夫妻が、中世の雰囲気と、緑の「男女愛」を届けてくれています。

ブラックモアズ・ナイト
♪グリーンスリーブス

 

エイミー・ナトールの歌唱でも…
♪グリーンスリーブス

 


【威風堂々】

次は、英国の第二の国歌と呼ばれる、エルガー作曲の名曲「威風堂々(いふう どうどう)」です。
巷(ちまた)で、よく耳にする あの雄大な楽曲ですが、たいていはオーケストラでの壮大な演奏ですね。

ここは、惜しくも2019年に亡くなられたオペラ歌手の佐藤しのぶさんと、秋川雅史さんが歌う同曲です。
泣きそうになるくらい、素晴らしすぎるデュエット歌唱です。
歌詞も素晴らしい。

佐藤しのぶ・秋川雅史
♪Pride ~ 威風堂々

 


【今宵はフォーエバー】

最後は、ビリー・ジョエルさんです。
彼は、4歳からピアノレッスンを始めましたが、クラシック音楽分野ではありませんでした。
ですが、1983年(昭和58)、ベートーヴェンの楽曲の一部に、自身が作曲したメロディをつなげて、素晴らしい楽曲に仕上げました。
そのベートーヴェンの曲こそ、「ピアノソナタ第8番・悲愴」の第二楽章です。

ベートーヴェンとビリー・ジョエルさんの、まさに合作!
この歌詞…、ベートーヴェン本人が聴いたら、そうそう あの時の僕もその通り…と泣いて喜ぶかもしれませんね。

こんな素敵な動画をつくった方が…
ビリー・ジョエル
♪ディス・ナイト(今宵はフォーエバー)(1983・昭和58)

 

すばらしい音楽作品は、何百年後の未来の人々にも、感動をしっかり届けてくれますね。
若い世代の方々にも、もっとクラシック音楽作品にふれてほしい!


◇四大春曲

さあ、クラシックの「四大春曲」のお話に入ります。
この四曲は、私のチョイス(選曲)ですので、人によって「四大春曲」は異なるはずですが、なにとぞ ご勘弁を…。


(1)ライン川の「春」

まずは、この春のファンファーレから!

人生の終盤に、自殺行為の後に助けられるなど 辛い時期を過ごした作曲家シューマンでしたが、この楽曲は、彼が、クララと結婚した1840年の翌年の1841年の幸せに満ちた時期に、あっという間に作曲した交響曲です。

シューマンは、当初、この交響曲を「春の交響曲(Frühlings sinfonie)」と呼んでいたと伝わっています。

彼は、当時のドイツの詩人アドルフ・ベトガーの詩に感動し、交響曲第1番「春」を作曲したといわれています。
その詩の一節「さあ、おまえの歩いていく方向を変えよ。谷ではもう春が始まっているのだ」の言葉に心を動かされた彼は、結婚し、希望に満ちた新しい人生を、まさにスタートさせようと決意したのだろうと思います。

この頃は、まだ精神疾患の症状は非常に小さく、幸せな時が多く、彼の音楽の絶頂期の前半の時期です。

彼は、生涯に、すごい交響曲を4曲作りますが、第1番から、まさにシューマン独特のロマンチック世界が炸裂していますね。

精神の病さえなければ、ベートーヴェンに引けを取らない交響曲作品を、数多く残したことでしょう。

ここは、バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルで…。
演奏者も指揮者も、春の白い装い!

ライン川の向こうから、春がだんだん近づいてきます!

シューマン
♪交響曲第1番「春」

 


(2)四季の「春」

バロック音楽後期の、まさに巨星のヴィヴァルディですね。
日本でいえば、江戸時代の五代将軍綱吉の時代あたりです。
そんな時代の音楽が、現代人に、これほど影響を与え続けているとは、すごいことですね。

彼は、ヴェネチア(今のイタリアのベニス)の生まれで、神話めいた物語性のある音楽が大好き!
このヴァイオリン協奏曲「四季」の中にも、細かな自然の移り変わりの描写や、昆虫や鳥、犬の鳴き声などが登場し、物語がしっかり描かれています。

* * *

「春」の冒頭は、鳥たちが歌いながら舞い踊る描写。
そのうちに、雷が鳴り始めて、鳥たちは大騒ぎ!
雷は遠くに行っちゃったよ!よかった よかった!
また、みんなで歌おうよ!

その後は、羊飼いが牧草地で昼寝しているあいだに、牧羊犬がおとなしめに遠くで鳴いています。
犬が吠えている描写の部分は下記動画の3分30秒からのビィオラの音の「ボーボー」という音色部分です。
飼い主が寝ている中、犬は ちゃんと お仕事しています。

その後、やっと目覚めた羊飼いが、草原のさわやかな風を感じて…
「あ~よく寝た!今日も、気持ちのいい晴天の春の草原だ!春 最高!」

日本でいえば 江戸時代の中頃に、ヴィヴァルディは、音楽でここまで表現したのです。

* * *

1720年代頃に作られたといわれる協奏曲「四季」の中の「春」は、まさに、これぞ 春!

実は、「四季」というタイトルは、彼が付けたものではありませんが、楽曲につけられた解説のような文章を読めば、それは「四季」以外の何ものでもないことがわかります。

この楽曲「四季」には、一説にはヴィヴァルディ本人かもしれないと考えられている「ソネット(詩)」がつけられています。
春・夏・秋・冬のそれぞれに付けられています。

下記は「春」の部分に付けられた「ソネット(詩)」の和訳です。

春が来て、はしゃぐ小鳥たちは、陽気な歌で よろこび迎え、
泉は、そよ風の息吹にやさしく、こんこんと湧き出る
黒いマントで空を覆いつつ、気高い稲妻と雷が、春の到来を告げに来る
口上が終わったあとに、小鳥たちが再び、魅惑的な声で歌い出す。

花咲き乱れる 心地よい牧場では、
小枝や草のそよぐ爽やかな音に、
忠実な犬をかたわらに、山羊飼いが眠る。

牧人の にぎやかなバグパイプの音に、
妖精たちと羊飼いが踊る。
みんなの大好きな、光あふれる春の空の下で。

* * *

それぞれの「四季」の始まりの時期に、季節を感じながら、無性に聴きたくなる楽曲「四季」ですね。

昭和の時代に、学校の卒業式では、一年間を振り返るように、よく「四季」の音楽が流されていましたね。

ヴィヴァルディ
ヴァイオリン協奏曲「四季」。

下記動画の冒頭から10分までが「春」です。
10分から21分までが「夏」。
21分から32分までが「秋」。
32分からが「冬」です。

♪四季

 


(3)祭典の「春」

次は、ロシア出身の作曲家ストラヴィンスキーの、バレエ音楽「春の祭典」です。
フランス語タイトルで、「春の祭典(春の戴冠式)」。
ロシア語タイトルで、「聖なる春」。
彼は、ロシア語表現を使いませんでした。

1913年(大正2)、フランス・パリの「シャンゼリゼ劇場」のこけら落としのバレエ上演作品として作られた「春の祭典」です。

当時としては、あまりにも斬新で奇抜な音楽であったこともあり、上演中に客席が騒然となり、その良し悪しで観客同士が乱闘に…?
今は、「暴動」とまではいえないとされています。
とはいえ、収拾するのにたいへんだった初演のようです。
「みなさま、どうか最後まで聴いてあげてください」とアナウンスされたようです。

* * *

今現代の私たちであれば、このようなタイプの音楽や舞踏でも十分に楽しめますが、もし大正時代初期の日本人が、これを見聴きしたとしたら、どのような反応をしたでしょう。
おそらくはフランスのパリと同様だったか…?

ただ、1900年代初頭に生まれた こうした楽曲は、新しい「音楽の春」になったのは間違いないだろうと思います。
今の時代に向けて、音楽が急速に進化しはじめた時代!

彼は、まさにヨーロッパ・アメリカの音楽家と考えていいと思いますが、「春の祭典」には、ロシアの香りがたっぷりですね。

ストラヴィンスキー
(下記動画には楽曲の冒頭部分がありません)
♪バレエ音楽「春の祭典」

 


(4)ヴァイオリンの「春」

さて、「四大春曲」のトリは、この御方!
ドイツが生んだ、世界の大作曲家 ベートーヴェン!

ベートーヴェンの楽曲「ヴァイオリンソナタ 第5番・春(スプリングソナタ)」です。
「春」という副題は、彼の死後に付けられたものです。
「副題」嫌いの彼でしたが、本当は嫌いじゃないはず!

「春」と付けられたのは、第一楽章の、明るい春のような雰囲気からでしょうか…。

* * *

ベートーヴェンには、「ピアノソナタ」という まさに黄金の作曲スタイルがありますね。
悲愴、月光、田園、テンペスト、ワルトシュタイン、熱情、告別など、有名なピアノソナタ曲がめじろ押し。
副題だらけ!

一方、当時はまだ、ピアノを助けるような役割のヴァイオリンと、ピアノの組み合わせの曲が多かったのですが、彼は、ピアノとヴァイオリンが、まさに対等の存在か、ピアノを圧倒するようなヴァイオリンの存在感を示す音楽スタイルを確立させようとしていました。

彼自身は、もちろんピアノでの作曲がメインで、ヴァイオリンの演奏が苦手だったようですが、そこは、あの「ど根性」と「負けん気」の作曲家です!
「俺に、ピアノとヴァイオリンの、優れたアンサンブル曲が作れないはずがない!」

当時は、ピアノも、ヴァイオリンも、楽器としての技術性能レベルが、すでに相当な高さまできていましたので、後は、それに見合った楽曲作品が作られるだけだったのかもしれません。

まさに、この楽曲「ヴァイオリン ソナタ 第5番・春」は、ヴァイオリンも、ピアノも、二者とも主役で、おいしい場面を交互に繰り返す「W主演」のような見事な楽曲です。

* * *

彼の「ヴァイオリン・ソナタ」の最初の1番から3番までは、1797年から1798年にかけて作曲され、当時ウィーンの宮廷作曲家で、宮廷楽長として最高の地位にあったアントニオ・サリエリ(1750~1825)に捧げられています。

4番と、この5番「春」は、1801年に発表され、ベートーヴェンの庇護者・支援者でもあった、モーリッツ・フォン・フリース伯爵に献呈されています。
「ピアノソナタ第14番・月光」が作曲されたのと同年です。

その頃、彼の耳はますます悪くなってきており、1802年10月6日には有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれることになりますから、その前年に完成した楽曲ということになりますね。

精神的に不安定な時期ですが、この「ヴァイオリンソナタ 第5番・春(スプリング・ソナタ)」は、非常に明るく軽快で、それでいて、おちついた雰囲気を持った楽曲です。
この苦悩の時期に、彼に何があったのでしょう…。
どのような気持ちが わいてきたのでしょう…。

彼の庇護者であり作曲の依頼者でもある人物に、何かの発奮材料でも言われたのか…。
「作れるものなら、明るく陽気な楽曲でも作って聴かせてみろ」とかなんとか…?
落ち込む時期のベンちゃんに、やさしい庇護者…だったのか?

* * *

今回、ユーチューブ上に、桜色の衣装を着た演奏家による、この楽曲の演奏動画はないかと探しましたら… 見っけ!

ヴァイオリンが髙木 凜々子さん、 ピアノが五十嵐 薫子さんです。
なんと、演奏に使ったヴァイオリンは、(株)黒澤楽器店より貸与のストラディヴァリウス「Lord Borwick(1702年)」です。

下世話な話ですが、近年の取引状況からすると、おそらく価格は20億円は下らないようにも思いますが…。
有名ミュージシャンの方々は、土地や家屋敷を売却して購入しますよね。
オオタニさ~ん、買って!スミマセン、ジョークです!
この演奏会は、このヴァイオリンのお披露目の意味合いが強かったようですね。

私のパソコンのスピーカー…たしか2~3万円。
20億円の楽器の音を、2~3万円のスピーカーで聴く…。
それでも、このヴァイオリンの音… スバラシヴァリウス!

ここは、「ヴァイオリンソナタ 第5番・春(スプリングソナタ)」の第一楽章と第二楽章の、ベートーヴェンの穏やかな一面を どうぞ…。

ベンちゃん… 時々、想像もできないような、柔和な顔を見せるよね!
赤色のマフラーは、どちらのサイン?

春の季節は、やっぱり桜色のドレスがいい!
ヴァイオリン:髙木 凜々子、 ピアノ:五十嵐 薫子

 

♪第一楽章

 

♪第二楽章

 


◇幻の「交響曲第10番」

ベートーヴェンは、前述の「ヴァイオリン・ソナタ 第5番・春(スプリングソナタ)」の後、決意の再出発である「交響曲第3番・英雄」と同時期の1802年から1803年にかけて、ヴァイオリン・ソナタの6番から、あの名曲の9番までを作ります。
彼特有の、音楽の猛烈な進化の過程が、このヴァイオリン・ソナタにもありました。

彼が次々に傑作を生んだ1804年から1814年までを、一般的に「傑作の森」と呼びますが、最後のヴァイオリン・ソナタ作品である「第10番」は、9番から9年後の1812年に作られました。

1812年までの段階で、彼の交響曲は第8番までが作られており、残すは交響曲第9番だけでした。
1824年に、交響曲第9番、いわゆる「第九」は完成します。

彼は、その三年後、交響曲第10番の断片的な部分だけのスケッチのみを残し、1827年に亡くなりました。

* * *

幻の「交響曲第10番」になりましたが、ひょっとしたら「交響曲第6番・田園」のような雰囲気を持った、「ヴァイオリン・ソナタ第10番」を引用した交響曲作品になったのではないかという文章を、昔、何かで読んだ記憶があります。
どこで何を読んだのか記憶にありませんが…。

たしかに、優雅な交響曲に転用できそうな気がしないでもありません…。

彼が、あと5年生きていてくれたら、交響曲第10番ができ上っていたのかも…。
幻の交響曲の姿と、春の田園風景を想像しながら、どうぞ…。

クレーメルのヴァイオリンと、アルゲリッチのピアノで…。
ベートーヴェン
♪ヴァイオリン・ソナタ 第10番

 


◇よんだ? アント~ニオ!

今回は、「四大春曲(よんだい はるきょく)」として、私なりに選曲してみました。
「春」を強く感じるクラシックの四曲でしたよん!

これって、「四大夏曲」、「四大秋曲」、「四大冬曲」も面白そうだと思ってきましたよん!
いずれにしても、アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」は、それぞれに入りそうだよん!
「よん」は、もういい!

「アントニオ」という名は、古代ローマの人名「アントニウス」に由来するそうですが、ヴィヴァルディといい、猪木さんといい…

ブラボ~! アントニオ!

 

 

最後は、懐かしのお笑い一発芸で…
春だ フォ~!

誰が読んだ…、訓んだ…、喚んだ…、呼んだ…、四だ! 四大春曲!

さて、あなたなら、どの曲を選ぶ?… 四大春曲!

まだまだ、「春・Fruhling(フリューリング)」を楽しむよん!

暑い季節になったら、今度は、四大夏曲…?
アント~ニオ! ストームを頼むよん!

 

 

2024.4.17 天乃みそ汁
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