桜、さくら、桜ソング、和歌、俳句、花見、朧月夜、大藤史、京都、童謡、唱歌、歌謡曲。

 
 

歴音26.さくら咲く(桜うた.1)



いよいよ、やって来ました!
桜のシーズン!

これまでのコラムに加筆修正するかたちで、「桜うた」コラムを連載で書きます。
今回は、「桜うた」の第1回です。


◇開くのかい?開かないのかい?…さくらの日!

それにしても、今年の開花は、予想に反して、相当に遅れ気味!
今年のこれだけ大きな寒暖差… そりゃあ、桜たちも慎重になるというもの!

さて、毎年3月27日は、「さくらの日」!
「3(さん)×9(く)=27」…。
さんく=3×9
さんく=27
さんく=さく=咲く
昭和のオヤジギャグ満開!

実は、それ以外にも、このような理由があります。
日本の古来からの暦に、「七十二候」がありますね。
この時期は、このような言葉表現があります。
3月21~25日ごろ…「雀始巣(すずめ はじめて すくう)」。
3月26~30日ごろ…「桜始開(さくら はじめて ひらく)」。
3月31~4月4日ごろ…「雷乃発声(かみなり すなわち こえを はっす)」。

3月27日は、ちょうど「桜始開(さくら はじめて ひらく)」にあたるというわけ…。

それにしても、これらの漢字表記…音読みにしたほうが認知度が上がるのに…。
桜始開…おう!しかい!

「なかやまきんに君」なら、言うのかい…!?
桜よ、今年始めて、開くのかい? 開かないのかい? どっちなんだい?
おうしかい!パワ~!

お花見気分で浮かれてしまいました… 失礼しました!

* * *

この桜コラムも、ずっと待機中でしたが、え~い開花!
さあ、お花見だ!

 

にゃらん… 師匠と弟子のお花見旅

 

桜には、酒もいいが、茶とおにぎりもいい…

 

この桜と茶の 上質な「綾(あや)」には、しびれる…

 


◇桜の国、ニッポン!

日本は、まさに「桜の国」!
日本全国、桜だらけ!

 


御室(おむろ)の桜も、一目見たら、春の義理がすんだようなもんや。
by 義理がたい 京都人

 

妙心寺の関山慧玄(かんざんえげん)は言いました。
「慧玄(えげん)が這裏(しゃり)に生死(しょうじ)なし」。
さて、慧桜(えお・さとはる)たちは どうであろうか…。

 

藤原道長(NHK大河で演:柄本 佑)さまも、アップデートされたそうです…。

 

* * *

日本は、桜の名曲のオンパレード!
「桜」という ひとつの花だけで、これだけ たくさんの名曲がある国は、日本くらいかもしれません。

日本人なら、この楽曲のメロディを知らない方は、まず いないでしょう。
江戸時代の幕末期に、楽器の「筝(そう)」の練習用の曲として作られた楽曲で、作曲者は不明です。

筝(そう)の演奏:木村園代
♪筝曲「さくら」

 

明治時代に歌詞がつけられました。
♪さくらさくら

 

こちらは、1900年(明治33)に生まれた 東京・隅田川の桜の名曲。
作詞:武島羽衣、作曲:瀧 廉太郎
♪花

 

* * *

下記の楽曲は、前述の楽曲「花」から110年後に生まれた楽曲です。
たった百年で、日本人の「桜愛(さくらあい)」は変わりません。
というより、二千年以上前の「弥生(やよい)」の時代から、変わっていないでしょう。

作詞は秋元康さん、作曲は上杉洋史さん。
原曲は、「AKB48」の2010年(平成22)の楽曲。

(歌詞の一部)
♪桜の花は、あの日の栞(しおり)
♪人はみな、満開に咲いた夢、忘れない

ここは、合唱版で…。
映像は、京都・太秦(うずまさ)の領主「秦(はた)」氏の領地だった神奈川県 秦野市の桜。


♪桜の栞

 


◇春は、名歌・名句・名文の季節

人は、桜を見ると、妙にウキウキしますね。
時に、「しみじみ」もします。

(以下、和歌や句の一部を、現代にあわせ、漢字に変換、句読点を加えました。)

 

春は、あけぼの。
やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細く たなびきたる。
(清少納言「枕草子」)

 

世の中に 絶えて桜のなかりせば、春の心は のどけからまし。
(在原業平)

 

* * *

いつかまた、春の宮 この花を見む。時 失えへる 山がつにして。
(紫式部「源氏物語」)

花の色は 移りにけりな いたづらに、わが身 世にふる ながめせしまに。
(小野小町)

散る桜、残る桜も 散る桜。
(良寛)

いにしへの 奈良の都の 八重桜。今日 九重に 匂ひぬるかな。
(伊勢大輔)

願わくは 花の下にて 春 死なん。その如月(きさらぎ)の、望月(もちづき)の頃。
(西行)

さくら花、主を忘れぬものならば、吹き来む風に 言伝てはせよ。
(菅原道真)

桜花 咲きにし日より 吉野山、空もひとつに かほる白雪。
(藤原定家)

春霞 たなびく山の桜花、見れどもあかぬ、君にもあるかな。
(紀 友則)

いつまでも 見飽きることのない桜… あなたにも、きっと ありますよね。

Rin'(りん)
♪サクラ サクラ(2005・平成17)

 


◇おぼろ…

俳句の春の季語に「朧月(おぼろづき)」があります。
歌謡曲の歌詞にも、よく登場しますね。

春がすみの夜に、少しぼんやりと見える「月」を表現したものです。
花粉が飛んで、かすんで見えているわけではありません。
春の季節特有の昼夜の大きな寒暖差により、微細な水滴が空気中に漂う現象です。

* * *

ここで、一曲…。

下記の曲の歌詞の「お七(おしち)」とは、江戸時代のあの女性「八百屋 お七」をイメージしたものです。
恋しい人会いたさに、寺に放火し、それは江戸の大火災「天和の大火」となり、数千名が亡くなりました。
そして、お七は処刑されました。

朧月(おぼろづき)の中に、恋しい御方の顔が…。
おぼろげの彼女は、その炎がどうなるかまでは、考えが及びませんでした。

坂本冬美
♪夜桜お七(1994・平成6)

 

それにしても、歌詞の中に「ティッシュ」とは…。
江戸時代の「懐紙(かいし)」、「ふところ紙」でもよかったのでは…。

* * *

今も昔も、世の中には、春の「朧月夜(おぼろづきよ)」に思いを込めて、桜を見つめる御方も、たくさんいます。

朧月(おぼろづき)の句…

*くもりたる 古鏡の如し 朧月(高浜虚子)
*花の顔に 晴れうてしてや 朧月(松尾芭蕉)
*おぼろ月 大河をのぼる 御舟かな(与謝蕪村)
*敦盛(あつもり)の 笛 聞こえけり 朧月(正岡子規)
*春の月 枯木の中を 上りけり(正岡子規)
*春の月 さはらば雫 垂りぬべし(小林一茶)

ここで、芭蕉先生の大量の桜の句の中から、ガツンとくる「桜の句」を少しだけ!

*うかれける 人や初瀬の 山桜
*糸桜 こや帰るさの 足もつれ
*咲き乱す 桃の中より 初桜
*風吹けば 尾細うなる 犬桜
*姥桜 咲くや老後の 思ひ出
*両の手に 桃と桜や 草の餅
*顔に似ぬ 発句も出でよ 初桜
*夕晴れや 桜に涼む 波の華
*春の夜は 桜に明けて しまひけり
*さまざまの こと思ひ出す 桜かな

芭蕉先生… 桜の花見で浮かれておりました。反省します!

「桜」と「朧月」の春は、名歌・名句・名文の季節!

* * *

下記の唱歌の作詞は、数々の有名唱歌の作詞を行った 高野辰之です。
彼は、長野県 水内郡 永江村(現:中野市)の出身で、若い頃に、長野県飯山市で教師をしていました。
この歌詞に出てくる「菜の花畑」、「見渡す山の端」、「朧月夜」は、長野県北部の北信地方の風景と思われます。
作曲家・岡野貞一との「黄金コンビ」の一曲です。

私は、この曲を耳にすると、いつも、おぼろ昆布の汁と、鳥そぼろご飯を食べたくなります。
両者とも、桜のお花見の席に、あうあう!

「おぼろ」は、かすんで、ぼんやりとした状態。
「そぼろ」は、細かくほぐされて、バラバラにされた状態。
私は「さぼろ!」

シェイリー・マリー
♪朧月夜

 


◇桜ソング

ここからは、楽曲タイトルや歌詞の中に「桜」が登場する邦楽曲を少しだけ…。

* * *

東京の神宮外苑の桜…。
槇原敬之さんが、1992年(平成4)に作詞作曲しました。
May J.(メイ・ジェイ)さんが2014年(平成26)にカバーし、NHKのテレビ番組「ニッポンぶらり鉄道旅」の主題歌に。

電車の窓越しに見る桜の風景… 何か いい!

May J.(メイ・ジェイ)
♪遠く遠く

 

* * *

あのチャリティー番組の、「帰ってくる」シーンの曲。
帰ってこい!
みんな、帰ってこい!
故郷の桜は変わってないよ!

加山雄三・谷村新司
♪サライ(1992・平成4)

 

* * *

NHKの朝ドラ「春よ、来い」の主題歌。
脚本家・橋田寿賀子さんの半生を描いたドラマ。

ユーミンさんお願い!一曲 作って!
実は「桜」という歌詞が出てきません。
ですが、多くの方が、「桜」をイメージするのは間違いありませんね。

松任谷由実
♪春よ、来い(1994・平成6)

 

* * *

歌の歌詞にある「桜坂」は、東京都大田区にある、青春の「桜坂」。
オヤジの私には… 結構 急坂!

福山雅治
♪桜坂(2000・平成12)

 

* * *

いきものがかり
♪SAKURA(2006・平成18)

 

アンジェラ・アキ
♪サクラ色(2007・平成19)

 

hanami(はなみ)
♪ありがとう(2022・令和4)

 

松田真将(まつだ しんすけ)
♪桜が咲く頃、交わした約束。(2018・平成30)

 

下記の曲のモデルは、実際には愛犬との出来事のようです。
RSP
♪さくら ~ あなたに出会えてよかった(2009・平成21)

 

大原櫻子
♪ひらり(2017・平成29)

 

続きは、次回「桜うた.2」で…


◇桜を抱きしめて…

大藤 史(おおとう ふみ)さんが作った「桜ソング」を三曲…。
まるで、桜の花びらのような歌声…。

大藤 史
♪さくら(2020バージョン)

 

大藤 史
♪桜色の空(2022・令和4)

 

♪4月の空、淡い桜色した、別れの季節…
大藤 史
♪季節を抱きしめて(1998・平成10)

 

♪季節を抱きしめて(2023バージョン)

 


◇さくら咲く

さて、漢字の「桜」は、「櫻」の新字体で常用漢字ですね。
「櫻」は旧字体で、今でも人名用に使われます。
「桜子」さんは少ないですが、「櫻子」さんは 結構いますよね。

「木」編と「嬰(えい)」が一組になっている漢字です。

* * *

「嬰(えい)」とは、生まれたばかりの赤ちゃんを意味する「嬰児(えいじ)」の「嬰(えい)」と同じ漢字です。
「嬰(えい)」は、そのまま、生まれたばかりの子供を意味しています。

二つの「貝」の下に「女」という漢字があり、「嬰(えい)」が作られていますね。
古代、玉子のような形状の「子安貝(タカラ貝)」は、女性たちの安産の守り神とされており、「嬰」という漢字は、安産の神様に守られた女性という意味や形のようです。

「貝」が二つ横に並んでいるのは、「首飾り」の如く、何かを取り巻いていることを表現しています。

つまり、生まれたての子供たちのような 小さな かわいらしい花が、樹木全体を、大量に取り巻いている…それが櫻(桜)の木です。

子供たちの笑顔や笑い声に包まれる樹木…それが桜!
まさに、卒業や入学に ふさわしい樹木ですね。

* * *

さて、「櫻(桜)」という漢字を、なぜ、「えい」「おう」だけでなく、「さくら」と読むのか?

日本に古来からある「さくら」という言葉の「さ」は、「田畑の神様」を意味しています。
「くら」は、神様が宿る場所を意味しています。
つまり、神様がおられる樹という意味で、「さくら」といいます。

中国の漢字「櫻」と、日本の言葉「さくら」が、見事に融合し、日本読みの漢字「桜・櫻(さくら)」が作られたのだろうと想像します。

桜の「お花見」とは、まさに(安産の)神様に会いにいくこと…、神様がおられる場所に行き、神様とともに大切な時を過ごすこと… なのかもしれませんね。

* * *

桜の花の「いのち」は、なんとも短い…、なんとも はかない…。
桜の神様に出逢える機会は、一年に数日だけ…。

桜たちは、短い その日数のあいだに、全力で咲き誇ります。
誰が見ていようと…、誰も見ていまいと…。
それが 桜たちの喜び…、笑顔…。

さあ、今年も「さくら」に逢いに行きましょう!

桜の神様に… 感謝!
ありがとう… 桜たち!

今年も、来年も、その先も…
桜も人も… さくら咲く!

三浦サリー
♪桜咲く(2013・平成25)

 

連載の次回「桜うた.2」に続く

 

2024.3.27 天乃みそ汁
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「卒業と桜」の楽曲はこちらで…