豊玉毘売

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豊玉毘売ーとよたまびめー
『日本書紀』では　豊玉姫ーとよたまひめー
　　　　　　　　　豊玉姫命ーとよたまひめのみことー
と表記。

大綿津見神の娘で、塩椎神に、

海神の宮へと導かれた火遠理命 ( = 山幸彦 ) に一目惚れし、
その場で契っています。
その後、父神に、
「門の所に、美しい男の方がいます」と伝えに行き、
「この方は、虚空津日高ーそらつひたかー ( = 空から来た王子又は皇太子 ) だ。」
と言う父神の一言で、
火遠理命の正体を知ることになります。

海神の宮で、三年の月日を火遠理命と過ごしますが、
釣り針を見つけた火遠理命は、陸へと帰る事になりました。

やがて、お腹に宿った御子神が生まれる時期がきて、
「天津神の御子を、海の中で産むわけにはいかない」と、
火遠理命の元へとやってきました。

いよいよ産気づき、建ててもらった産屋にて、
天津日高日子波限建鵜草葺不合命ーあまつひたかひこなぎさたけうがやふきあえずのみことー
を生みますが、
「産む時は、本来の姿に戻っているので、決して見ないで下さい」
と言う、豊玉毘売の言葉を訝しく思い、
火遠理命は、産屋を覗いてしまいました。

産屋の中では、産みの苦しみに、
八尋鰐ーやひろわにー
( 一尋が約1.8mなので、約14.4mの鮫 ) が、
のたうち回っていました。

その光景に、驚き恐れ、逃げ出した火遠理命の悲鳴で、
見られたことに気づいた豊玉毘売は、
恥ずかしくて、悲しくて堪らず、
また、約束を破った夫を恨み、
「火遠理命と、御子神の元へ通おうと思っていたけれど、
とても一緒にいることは出来ない」
と、海坂ーうなさかー※を閉じて、
海の世界へと帰っていってしまいました。

しかし、生まれたばかりの御子や、火遠理命への思慕が抑えられず、
妹の玉依毘売―たまよりびめーに、御子の養育と、
火遠理命への恋歌を託します。

ー貴方から貰った赤い琥珀の玉は、
その通された緒さえ輝くほどだけれど、
白い真珠のような貴方のお姿は、
私にとっては、それにもまして貴いものですー

豊玉毘売の歌に、火遠理命は、

ー沖をゆく鴨の寄りつく島で、
私が一緒に寝た、愛しい妻の事は忘れない
いついつまでもー

という歌を返しています。

二度と会う事の叶わなかった二柱ですが、
二柱のエピソードは、
海坂を閉じてしまったせいで、
海の世界と陸の世界は、自由に行き来出来ない世界となってしまった。
とか、『浦島太郎』や、『鶴の恩返し』など、
後の世界に、大きな影響を及ぼしています。

また、会う事は出来なかったけれど、

ずっと、歌を贈りあっていたという伝えもあるようです。

ご神徳　子宝
　　　　　安産
　　　　　豊作
　　　　　豊漁

※海坂　舟が、水平線の彼方に消えていくのは、
　　　　海には坂があり、そこから他界へと渡っていく
　　　　という古来の考え方。
　　　　神話では、海の世界と、陸の世界の境界と捉えられている。

それにしても、火遠理命と、豊玉毘売の出会いと、
大国主神と須勢理毘売命の出会いが似ていて、
そこに意味を探してしまうのは、
私だけでしょうか?