火遠理命

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火遠理命ーほおりのみことー
別名　天津日子日子穂穂手見命ーあまつひこひこほほでみのみことー
　　　山幸彦ーやまさちひこー

　　『日本書紀』では、彦火火出見尊ーひこほほでみのみことー
　　　別名　火折命ーほおりのみことーと表記。

邇邇芸命と木花之佐久夜毘売の間に生まれた御子神の一柱。
火中出産で生まれたことから、名前に「火」の文字が付きます。
また、「火」は「穂」に通じることから、
兄弟全てが、穀物の精霊とされ、農耕に関するご神徳があります。

火遠理命の神名は、稲穂が実って重くたわむことを意味し、

火の勢いが弱まる様子を表しています。

　
火中出産の、火が消え始めた時に産まれた三男で、
山で狩猟をして、生活していたことから、山幸彦の名が付けられました。

兄の海幸彦と、狩りと釣りの道具を交換して漁に出ましたが、
兄の大切な釣り針を、海で無くしてしまい、
代わりの釣り針を持って行っても取り合ってもらえず、
途方に暮れていた所を、塩椎神ーしおつちのかみーに助けられ、
海神ーわだつみーの宮へと赴きます。

そこで出会った大綿津見神の娘、豊玉毘売ーとよたまひめーと結婚し、
三年の月日を過ごしましたが、釣り針のことを思い出すと、
溜息ばかりが出てしまいました。

その様子を見かねた豊玉毘売が、父神に相談すると、
大綿津見神は、山幸彦に訳を問いました。

理由を説明すると、大綿津見神は、海中の生き物を集め、
釣り針を探し出してくれました。
それを持って、海幸彦の元に戻るのですが、
大綿津見神は、
「返す時は、
この針は、心の塞ぐ針。
　　　　　　心の焦る針。
　　　　　　貧しくする針。
　　　　　　愚鈍にする針。
そう言って、後ろ手に返してやりなさい。

また、兄が高い場所に稲田を作るなら、低い場所に稲田を作りなさい。
もし、兄が低い場所に稲田を作ったのなら、高い場所に作りなさい。
そうすれば、吾は水を司る故に、必ず三年の間に、
兄は貧しくなっていくであろう。
そして、もし、兄が攻め入って来たならば、
この玉を使って、苦しめてやりなさい。」
そう言って、塩盈玉ーしおみつたまーと塩乾玉ーしおひるたまーの二つを、
山幸彦に授けました。

かくして、大綿津見神の誓約の通りになり、兄を配下にして暮らしていると、
天津神の御子を、海原で産むわけにはいかないと、
臨月を迎えた豊玉毘売がやってきました。

慌てて産屋を建て、いざ出産という時、
「出産の時は、本来の姿に戻ります。
決して見ないで下さいね」
と、豊玉毘売にお願いされましたが、
勿論、山幸彦は見てしまいます。

正体を知られた豊玉毘売は、大層恥じ入り、
一緒にいることは出来ないと、
生まれた子供を置いて、海へと帰ってしまいました。

後悔した山幸彦が、毘売に会いに行こうにも、
海神の宮に繋がった路は、既に閉じられた後でした。

相愛のまま、残りの生涯を想いあった二柱でしたが、
再び会うこと叶わず、
火遠理命は、580歳でその生涯を終えました。

大山津見神の、又は石長比売の言葉通り、
寿命がある身となったのです。