2410 : MEMSマイクの 魔改造!(前編 完全双指向性化) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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 TODAY'S
 
おばけくん MEMSマイクの魔改造

 

でも、お掃除ロボットが空を飛んだり、フルスピードで走り抜けたりすることはありませんけど・・・

 

かつての「クラシックプロ CM5を58の音に」や大ブレークした「激安中華コンデンサマイクの高級化改造」のようなShinさん流 「魔改造」はついに「MEMSマイク」本体に及びました。

 

 

 

 

 

 

パラドクスとオーソドクスの狭間で

ラドクスを深堀りすれば、それは対立関係にあるはずの「オーソドクス」の一部だったりする。

 

「MEMSマイクの単一指向性化」はいくつかの方式で進める中、質の高い「双指向性」の実現がきわめて重要なファクターであることが一層見えてきました。

 

MEMSマイクのケース背面に穴をあける方式は、そのイナータンス制御(速度成分〈逆相〉流入量制御)の難しさが特筆モノです。

原因はメンブレン(ダイアフラム)裏側と背電極を覆う「穴あき空気室」が速度成分を取り込むための障害となり、さらにこのレゾネーション」=「ヘルムホルツ共鳴」をどのように制するか、という「指向性上」、および「音色・音質上」の課題があまりにも大きく、デリケートだからです。

 

 

 

EQで好き勝手な特性のマイクなどゴメンです

 

「そんなモンEQでチョイチョイや」など論外、マイクロホンはそこまでイージーな技術ではありません。

 

マイク設計において、どんな優秀回路を使おうと、高級精密測定器を揃えようと、マイクロホン理論を踏まずにたどり着く先はやはり絶海の孤島でしかありません。

それ以前に、MEMSを含むコンデンサマイクに対してアクティブ電子回路がどこまで必要か、という問題もあります。

 

それは世界の名だたる名機ほど回路は単純である事実がすべてを物語っています。

 

 

マイクロホンを学ばずして、ひたすら回路と測定器に軸足を置くかぎり理想とする「単一指向性MEMSマイク」を実現することは不可能でしょう。

 

また熟練者との関わりでは、マイクロホン各メーカー、コンデンサマイクカプセル・ダイアフラムメーカーでは量産前、最終音決めは熟練した「人の耳」に頼ることが製品の成否を決めるファクターとなっていることは周知の事実です。

 

そして測定器はその量産、品質管理と品質保証に使うツールでしかありません。


 

 

 

 

 

発想の転換

 

 

「単一指向性」を得るなかで、これまで私の「音圧傾度型」=(圧力勾配型)ではMEMSマイクのケース背面にドリルやミニルーターで速度穴を開ける方法をとってきました。 

しかし調整の難しさから、MEMSマイクにおけるこの方法に疑問を感じながらその先を探っていました。

 

今回はじめて前号 2019で新更新したミニルーターの初仕事としてこの改造をおこないました。

 

すでにMEMSマイク単一指向性化は実現していますが、メンブレン背面の空気室、ここに穴をあけたレゾネーターの Q(キュー)のデカさに往生しながらのクリチカルなイナータンス制御・調整は地獄の沙汰、なんとかせねば、と詰まっていた。

 

 

チューリップ赤 ものごと、「詰まったら発想を変えろ!」は何事に対しても共通の合言葉。

 

 

 

手順

まずは何よりも正常動作を確認したICS-40730を使用する。

すなわち「プレヒート」工程の終えたICS-40730を使う。

 

 

 

 

 

TOP面をルーターでそぎ落とす

 

 

写真のように皮を剥ぐようにTOPの薄板が外れ、内部構造が顔を見せた

 

 

!切りクズの心配

ルーターの遠心力で常に外側に飛ばされるため切りくずが内部に入ることはまずないが、侵入した場合は「フッ」と吹き飛ばすことが許される。

その意味で加工前にヘッドホンモニターし、加工後にふたたびモニターすることが必須です。

 

前後両面から吹くだけでよい。(しかし強いエアブローは禁止)

 

大型ダイアフラムのように、腫れ物に触る感覚で接したり、息の湿気を気にする必要もない、この辺がMEMSマイクは浮世離れしています。

 

 

(後日追記)

このあと同一方法で3個改造をおこない,合計4個になりました。

上記手順により、切りクズによる異常は1件も発生していません。(2024.4.24)

 

 

 

 

 

これで次元の異なる双指向性化が実現した

フタが外れたICS-40730はこの品種独特の4つのメンブレンが現れます。

 

背面の空気室はなくなり、残った四角錐は可聴域でのレゾネーションはなく、さらに削って薄くする必要はない。

あまり薄くすると、構造上、指向性のアレンジが難しくなってしまうので

枠を残したこのレベルが使いやすい。

 

 

 

また、難易度は高くなりますが、MEMSマイクもう1つの名機 IM-73A135V01でも同一手順で「双指向性化」が実現しました。

 

 

 

 

単一指向性じゃなく、なぜ双指向性?

それは下図をごらんください

 

 

MEMSマイク(圧力型)の基本形は「無(全)指向性」である。

これに加え、完全な「双指向性」の実現は良質な単一指向性の合成を可能にする決定的要素となります。

 

理論図ですので、そのままでは正常動作することはなく、指向性はそのブレンド比で決定します。

 

 

!もう一つはRCA 77D(X)方式である「背面シャッター」方式ですが、

MEMSマイクでは相対的なサイズが小さすぎ、現実的ではない。

シャッターの代わりに脱脂綿・フェルトといった音響抵抗(rm)の密度、当て方でこれに代わることができ、結果的に「音圧傾度型」となります。

 

 

!また、MSステレオマイクが視野に入るかもしれませんが、現在の状況はかなり特異な双指向のスタート地点です。

 

 

 

 

 

無(全)指向性と双指向性は基本要素となる


無指向性~双指向性間のバリエーションの間には様々な「単一指向性」が合成される。

(ワイド単一指向性、単一指向性、ハイパー単一指向性」など。

 

その意味で今回の「完全双指向性」の実現はMEMSマイクの将来を決める決定的な意味を持ちます。

 

 

後編に続きます

 

 

 

 

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