
7月31日に紀尾井町のYahoo! JAPANの「LODGE」において開催された
兼業で公務員はどう変わるのか ~人生100年時代の働き方と学び直しを行政・企業・NPOで考える~
というイベントのレポート(後編)です。
ちなみに前編はコチラ
兼業で公務員はどう変わるのか~イベントレポート・前編~
イベントの主催はSOZO日本プロジェクトという任意団体で、私が所属するNPO法人二枚目の名刺の廣代表もコアメンバーの一人として活動に参加しています。
そのご縁もあって、私が二枚目の名刺で担当者として実施した「2枚目の名刺に関する公務員意識調査」の結果の初お披露目もさせていただきました。(前編参照)
そういうことで、満員御礼ではあったものの、関係者として隅っこに席をいただき登壇者の議論を聴かせていただきました。
イベント情報などは、こちらが分かりやすいかと。
NPO法人新公益連盟HP
前編では、イベント全体の話から第1部までをご報告しました。
この後編では、イベントの第2部からイベント終了まで一気にご報告します。
第2部 公益兼業で自分と社会を変える
続いて第2部では、、公務員が兼業としてNPOに関わることへのニーズや、働き方改革の流れの中で労働時間規制も兼業も「公務員だけは違う」ということにはならない、といったことなどが議論されました。
ちなみに登壇者はこちらの皆様。
◇モデレーター:
島田 由香氏 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長
◇パネリスト:
・伊藤 禎則氏 経済産業省 参事官
・松尾 真奈氏 霞ヶ関ばたけ代表/農林水産省 林野庁木材利用課
・小沼 大地氏 NPO法人クロスフィールズ 代表理事 / NPO法人新公益連盟 理事
第2部の冒頭は、経産省の伊藤参事官がまず問題意識を投げかけました。
“働き方改革は自分の選択肢を増やすことに繋がる。日本で発生している問題の多くは“タコツボ化”に起因するもの。民間と役所のタコツボ化を払拭して、垣根をなくしたい”
働き方改革では「残業を減らせ」とか「副業・兼業解禁」などと言われますが、それは「全員残業はするな」とも「全員、副業・兼業しましょう」というものでもないということ。あくまでもそういう“選択肢”を用意するということ。
そして、伊藤参事官は更に
“キャリアというものは自分で作るもの、公務員であってもそう。しかし、自分の持ち札が1枚しかないと自分のキャリアを狭めてしまう。持ち札を増やす方法は、兼業でもリカレントでもいい。
民間では、会社と働く人の関係が相対化し、もたれかかる関係から、自律的な関係になりつつある。
公務員だけは関係ない、とは言えない。
兼業はあくまで選択肢、したくない人はしなければいい。しかし、組織にとって兼業を禁止する理由はなくなっている。”
と会場に投げかけました。
国家公務員でありながら2枚目の名刺を持つ“当事者”でもある農水省の松尾さんは、入省6年目。
普段は木材のPRをする業務に携わってますが、本業以外に霞ヶ関ばたけという朝の勉強会の企画・運営をしている“2枚目ホルダー”です。
そんな中央省庁ど真ん中で働く松尾さんは、“2枚目の名刺”を持つことで、やはり自分の中に変化があったと明かします。
“入省してからは毎日業務に慣れるのに必死。外にランチに出たことも無かったし、終電で帰る毎日。日の光をあたっていないな~、と(笑)。
そして、段々と上司が言っていることに反対のことは言えない雰囲気に飲み込まれ、ここで働いている意味が分からなくなっていた。
今では「霞ヶ関ばたけ」の勉強会で、立場関係なく、自分の意見が言えること、民間の人と意見交換できることがモチベーションアップにつながっている。”
松尾さんにとっては、「霞ヶ関ばたけ」が自分の中のバランスを保つサードプレイスのような意味を持っていることが窺えます。
「日の光をあたってないな~」
「ここで働いている意味が分からなくなっていた」
こういう言葉って、当事者ならでは言葉ですよね。
続いて、NPO法人クロスフィールズ 代表理事 / NPO法人新公益連盟 理事の小沼さんからは、兼業先として国家公務員を受け入れる可能性があるNPOの立場からの発言。
国家公務員もNPOも同じように社会を変えようとする立場だという前提に立って、国家公務員の兼業について2点の意義が伝えられました。
国家公務員が兼業する意義①
“NPOとしては、公務員のチカラが必要だと心から思っている。NPOは思い(想い)はあり現場を知っているが仕組みが分からない。仕組みや仕組みの変え方を分かっている公務員と組むと、社会を変える速度が加速すると考えている”
国家公務員が兼業する意義②
“国家公務員に現場を知ってもらいたい。NPOは現場を知っているが法案を書く国家公務員が現場を見ないで法案を書いている。もし現場を見ていたら、法案に魂が込められるのでは。現場を知る機会として使って欲しい”
今回、第2部でコーディネーターを務めていた島田 由香さんは、HR界隈では大変影響力のある方。この島田さんのコーディネーターとしてのコメントや問題提起も、とても刺さるものがあったので、少しご紹介します。
・(国家公務員は)すごい志をもって行政の仕事をやっているのに、何か輝いていない。何か目的を忘れてしまっているような。
・何のために仕事をしているのかと言ったら、いい人生を送り、いい社会にするために仕事をしている。行政では社会を作っているはず。
・素敵な公務員はたくさんいるのに、能力もあるのに、やれるのに、思い込みがあったり、これが当たり前だ、みたいなのに従っているのを壊していきたい。
・仕事なんてどこでも、いつでもできる。9時に出社することを当たり前に考えすぎ。自分のエネルギーを自分に大切なことに使って欲しい。
2枚目の名刺を持ちませんか?
といったような活動をしているから、ということではなくて、単なる一人の公務員として、とても胸に刺さる言葉を多く会場に投げかけていた島田さん。歯に衣着せぬ言い方ながら、大きな愛情を感じました。
そして、最後に、しっかりと、「民間企業での兼業まで広げないのか」と伊藤参事官に投げかけていたのもさすが。
第2部の質問タイムでは、一人目に手を挙げたのはなんと、内閣人事局の職員。
“実は20件ほど、有償でのNPOでの兼業は事例が確認できている。できないというのは思い込み。職員一人ひとりに情報が届くようにすることが必要”
この「情報が届くようにする」方法について登壇者からは、小沼さんから助言が。
“窓口機能があるといいのでは。各省庁にマッチングの窓口があって、そこにNPOが情報を流せたら、そこから庁内に広がるのではないか”
また、当事者として松尾さんからは、
“国家公務員でNPOを立ち上げている仲間はいる。同じ公務員がやっているNPOなら、安心して参加できる。そういうところから入るのもハードルが低くていいのではないか”
といった意見も示されました。
確かに、今、NPOも玉石混交。自分がたまたま接点を持ったNPOが国家公務員として関わって大丈夫な団体なのか、リスクはないのかといったことの判断は、実は結構難しい問題だったりします。
その点に対して、同じ公務員が設立している団体なら安心できるという意見です。
また、同じく質問に立った経産省の職員だという参加者からは、
“(兼業ではなく)出向などのカタチなどでないと限界があるのでは”
といった指摘も。この指摘は、
“自分もプロボノなどやってきたが、平日はNPOのミーティングなども同席できない。NPOは土日にミーティングを設定しにくい。接点の時間長が限界がある”
といった問題意識からの指摘。
この問題意識については、私も心当たりがあります。
これに対し、伊藤参事官からは、
“出向は本人の希望も聞くが、あくまで人事主導になる。兼業なら本人が主体的にできる”
という制度上の出向と兼業の違いも整理されました。
また、小沼さんからは、
“今、できないメニューに着目して兼業を推し出した。NPOとしては業務としてお金を払ったほうが安心できるというニーズがある。プロボノが市場の価格破壊を起こしてしまい、まっとうな商売を圧迫してしまうことは問題”
という異なる切り口での兼業の必要性が説明されました。
つまり登壇者お二人の意見を総合すると、
兼業であれば出向と違って、本人が何をやりたいかという意志が尊重される。
同じように本人の意志で取り組む形としてプロボノと兼業が考えられるが、NPOとしては業務としてお金を払ったほうが安心できる場合がある。またプロボノの場合、気を付けないと価格破壊によって真っ当な商売を圧迫してしまう可能性がある
ということでした。
最後の質問は、神奈川県庁に勤める地方公務員から。
“ボランティアや自主活動はこれまでもあった。働き方改革は進めるべきだが、その文脈で兼業・副業を進める意味、5年後、10年後にそれが当たり前になったときに、個人の働き方はどうなっているか”
時間が押していたこともあり、登壇者一人ひとり、この質問に答えながらクロージングのコメントをして、第2部は終了しました。各登壇者のコメントは以下のとおり。
松尾さん
“(霞ヶ関ばたけに関わり)入省した当時のモチベーションを取り戻せている。自分の目的は、社会の課題を解決すること、それはどこにいてもいい。人をコーディネートしたり、法律の仕組みを理解できるという強みだったりを、組織に囚われずに働いていけたら”
伊藤参事官
“柳川先生(東京大学)によれば、10年後、遅くとも20年後、副業していない人はいない。会社のあり方が変わって、プロジェクト化している。役所も同様。一つの部署で完結しなくてPTなどを組成すること多数。そうすると複数の組織に所属する個人も当たり前に。イノベーションを担う人材に求められるのが、花粉の運び手という概念がある。今の日本には他家受粉を促す蜂が必要”
小沼さん
“ソーシャルセクターに関わる選択肢を増やしたい。コレクティブインパクトという考え方がある。一つの団体で変えられるものの限界、そうではなくて、一つの団体のビジョンをセクターを越えて共有して、同じKPIを追いかけて、色々な団体、企業、政府が仕掛けていくこと、そのためには人が行き来してお互いのビジョンを共有することが必要。こういう世の中にしたいというセクターを越えて、同じ方向に踏み出していくという未来のあり方のために、この副業を突破口にしたい”
島田さん(コーディネーター)
“自分の能力や可能性を発揮できるのは一箇所では無い。トライセクターリーダーという考え方もある”
こうして、パネルディスカッションと会場とのやり取りによる第1部と第2部は終了。
第3部は、「NPOによるショートピッチ」。
実は今回のイベントでは、
NPO-公務員のマッチングシート
という資料が配布されていました。

マッチングシートは、一緒に活動に取り組む公務員を募集する、求人情報のようなもの。
こんな風に、NPOなどの団体が団体概要や、実際に活動に参加してくれる人にお願いしたい事業や業務内容も書かれています。

※団体としてどこまで公表している情報なのか確認していないので(あの会場限りの情報を含む可能性があるので)、団体名称は伏せておきます。
第3部のNPOによるショートピッチでは、ここに掲載されている団体の中から10団体ほどが1分間で会場にいる公務員に参加を呼びかけました。
前編でもご紹介しましたが、今回のイベントの目的は
1.公益兼業に対するニーズの掘り下げ
2.公務員とNPOのマッチング
第1部と第2部で「1.公益兼業に対するニーズの掘り下げ」がなされたとして、第3部のショートピッチと、この後の交流会は2つ目の目的である「公務員とNPOのマッチング」のためのプログラム。
そういえば、司会の方も
「1組でも、このイベントでNPOと公務員のマッチングを実現したい!」
と宣言していました。
実際にマッチングが実現したのかどうか、後日談は聴いていませんが、今回のように団体概要・業務内容・勤務形態・待遇などを公務員に向けて一覧で示された機会というのは、ほとんど無かった気がします。
具体的なマッチングに至っていなかったとしても、きっと
「こういう内容・条件ならやってみたいかも」
と思ってこのシートを見ている公務員はきっといます。
(実際、私もこのブログを書くために見返してみて、2~3つの団体には問い合わせてみたいな~と思っています)
それがいずれ、実際の行動に繋がれば、今回のイベントの目的は達成されたと言ってもいいのではないでしょうか。
最後に
「公務員だけは関係ない、とは言えない」
これは今回のイベントの最中、経産省の伊藤参事官が繰返し言っていた言葉です。
働き方改革も、長時間労働規制も、学び直しも、兼業・副業も、年功序列・終身雇用の私たち公務員には関係ないんじゃない?
そういう世の中の反応に対して、彼の信念として、チカラを込めて伝えたいメッセージだったのではないかと私は受け止めています。
でも、本当に
「公務員だけは関係ない、とは言えない」
のでしょうか。
(私自身も含めて)これらの変化を推進する立場からはそう言いたいところですが、果たして、
「んなこと言ったって、やっぱり関係ないっしょ」
というスタンスの公務員に私たちの言葉は届くのでしょうか。
“そもそも大学で学んだことを使ってるわけじゃないから、陳腐化して使えなくなるような知識をそもそも持っていません。学び直しなんかしなくても、公務員の仕事は何とかなります”
“頑張ったところで給料が上がるわけでもない、好きな仕事ができるわけでもない。それなのに自分をアップデートする意味ってありますか”
“法令で一定程度身分保障があり、給料もそこそこもらえて、貯蓄も年金もあるから兼業や副業をする必要を全然感じません。休日くらい自宅でゆっくりしていたいです”
これが多くの公務員の本音の声なのでは?
この人たちに、
「公務員だけは関係ない、とは言えない」
という言葉は自分事として届くでしょうか。
もちろん、温度差・時間差は織り込み済みかと思いますが、それでもNPO法人二枚目の名刺で「公務員×2枚目の名刺プロジェクト」を推進し、公務員が2枚目の名刺を持ちやすい社会的雰囲気を作ろうとしている私としては、
「公務員だけは関係ない、とは言えない」
という言葉の本当の意味が、より多くの公務員に届くために何が出来るのかを考えたい、
そんな新しいメッセージを開発したい、
その想いを強くしたイベントでした。
今回いただいたご縁もいくつかありましたので、
・霞ヶ関界隈での仕掛け
・地方での仕掛け
など、今後も「公務員×2枚目の名刺プロジェクト」として、取り組んでいけたらと思っています。
あ、その前に、
意識調査のまとめを
最後まで終わらせなくちゃ(大汗)
告知・ご案内

公務員おしゃべりカフェやります!
【日時】8月8日(水)19時~21時
【場所】池袋駅または新宿駅周辺のカフェ
【参加費】飲食費実費
【参加方法】
公務員キャリアデザインスタジオにメール(k.careerdesign☆gmail.com ←☆を@に置き換えてください)で氏名と参加者区分(公務員志望者・内定者 か 現役公務員 か)と「●月●日来店希望」と伝える。
メールで「公務員おしゃべりカフェ」が開店する会場(リアル店舗のカフェ)の情報が届く。(※迷惑メールのフィルター設定にご注意ください)
「公務員おしゃべりカフェ」が開店する会場(リアル店舗のカフェ)に行って参加している公務員と好きなことをしゃべる。
↑来店方法はこれだけ。
皆さんのご来店をお待ちしています!
ここ最近の回の開催報告ブログがこちら
【開催報告】あなたたち、結局最終的にどうなりたいのさ!?(公務員おしゃべりカフェ)
【開催報告】“現役”公務員おしゃべりカフェ6月13日@池袋
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(開催報告)公務員おしゃべりカフェ4月11日@池袋
皆さんのご来店をお待ちしています!