クラウンとプリウス

クラウンの評判が良いとの噂を聞いたので、見に行くことにした。

スタイリングが良いとの評価が高く、確かにパッと見たところ悪くはないと思う。

可能なら運転したいところだが。

 

ディーラーに行くとさっそく営業さんが出迎えてくれた。

クラウンに乗りたいと、告げると予約状況を見てくると言う。

席に座るように促されたが、プリウスが展示してあったので、席につかず、プリウスを

見ることを告げた。

 

ではプリウスの感想を

初めてじっくり見るプリウス。背が低くなり、プリウスと思えにくらいに格好が良い。

カッコ良いスタリングの定義は人によってまちまちだが、背が低く、幅が広く、タイアが

地を踏ん張っているようなものであれば、たいがいは格好良く見える。

でもそんなことをすれば、Packagingにしわ寄せがくるめ、そんなスタイリングは

安易にできない。

ところが今回プリウスはそれに挑戦したようだ。

営業曰く「デザイナーのデザインスケッチがそのまま量産化された」と言っていた。

誇張があるが、確かにそんな雰囲気はある。

Aピラーの角度は相当寝ており、かつてのプジョーを凌駕するくらいだ。

やりすぎを反省してプジョーもボルボもやめてしまったが。

 

さて乗り込んでみる。

ドアノブを引く。

安っぽさ全開だった。

軽いのは良いとしても剛性感、しっかり感が無い。

ちょっと不安になる。

乗る際にAピラーが邪魔になる。

年寄りには辛い。

シートに腰を掛け、まずポジションを合わす。

Defaultでも低く、BMWともそう変わらない。

一番下まで下げたが、ステアが低い位置にあり、以前のTOYOTA車の駄目ポジションに

変わってしまった。

辻褄を合わせるためにはシートを後ろに下げて、腕を伸ばしてステアリングを握る必要がある。

LEXUS IS、RC辺りではだいぶ治っていたのに残念である。

ステアリングは小さく、Sports Carのようだった。

ステアリム剛性、取り付け剛性は上々で、TNGAになってからは改善されている。

メーターは板切れのような小さなパネルがステア越しに見ることができる。

センターメーターを止めたのは残念だが、走りに徹した、という事?

ステアリングのデザインはどこかで見たことがあると思ったらBEVのbZ4Xと同じものだった。

メーター-の板切れも同じかもしれない。

空調などの物理スイッチが残っており、この辺は好ましい。

横一列に並んでおり、指の腹で操作できるもので操作性も悪くない。

インパネは基本的にハードプラで、触らなければ質感が高く見えるが、色々と叩いてみると

安っぽい音がする。

ちょっと興醒めする。

シートの取り付け剛性、シートバックの剛性も悪くない。

シートのフレームは使いまわし(多分TOYOTAで3つぐらい)するので、良いものを

作っておけば、皆その恩恵にあずかることができる。

Aピラーに気をつけながら降りようとした際にドアノブを引くと、昔”地獄のドアノブ”と

評したカローラと共通のものを使っていることに気が付いた。

これ、軽さだけが取り柄で、引く際の剛性感や、質感など一切排除されたもので、

低品質であり、これを以前”地獄のドアノブ”と書いたことがある。

まさかこんなもん使ってしまうとは。。

これを操作するだけで、安い車と思わせる。

降りた後、サイドガラスが下がっていたので、何気なくドアの下端に手をかけていると、

内装の取り付けがよろしくなく、手で押してみると、パカパカ動いてしまった。

個体差ではなく、こういった仕様のようだ。

軽自動車じゃないんだから、しっかりと取り付けて欲しいと思います。

こういったところが共振していらぬ音が出るもんです。

 

さてリアシートに乗り込む。

何も考えないで乗ったらルーフに頭を軽くぶつけた。

以前も先代アクアでぶつけた記憶がある。

もう、これSedanじゃないんだな。

シートは座面をえぐって頭上空間を何とか作り出している。

これだと座面の厚みは削られ、体が曲がった状態で座ることになり、腹が圧迫されることになる。

しかもHPが低いので、膝裏が浮き、尻だけで体を支えることになるため、痛くなるし、

体が安定しないため疲れも早い。

足首の角度も大きくなるため落ち着いて座ることができない。

こんなリアシートに乗ったのは日産プレセア以来かもしれない。

最近ではBMW 218i グランクーペにも似たような印象を持ったが、ここまで酷くない。

あり意味割り切りを感じるものであり、ここまでやらなくては駄目だと言う気概の

現れかもしれない。

しかしながら、先にも書いたが、格好良い車を作るのは簡単なことであり、多くの

制約の中でどうやってPackagingを成立させるのかがデザイナーの腕の見せ所なはず。

スタイリングを良くするために割り切った、と言えば格好がつくと思ったのか知らぬが、

何とも解せない。

 

安易な車作りと低質感にはちょっと驚いてしまった。

完全に方向性を失っているように思えましたね。

台数はあまりでないでしょう。

これが最後のプリウスになるかも。

確かにこうしてみると格好良いですねえ。

このスタイリングに惚れれば買いですかいが、リアシートは諦めること。

家族がいる人は駄目ですよ。

 

 

クラウン

まず驚いたのがフロントグリル。

大きなグリルが収まっているが、どこにも開口部がない。

別に開ける必要は無いが、それが安っぽい意匠で、見ても触っても質感低く、ちょっと愕然とした。

フロントグリルはある意味車の顔を構成する一部分であり、その作り込みで印象は大きく変わる。

何でこんなにプラ一発成型の安物で済ましたのだろう。

まずここで大きな失望があった。

写真で見ると酷くはないが、実車を見ると中々の失望感を与えてくれます。

これマジ?って感じです。

フロントグリルの大切さをTOYOTAは良く分かっていたと思うけどなあ。。

 

ドアノブを引く。

完全にクラウンのそれではなく、軽く、安っぽい感覚。プリウスと同じような印象だ。

少し高い位置に椅子があり、腰を掛ける。

バッテリーがつないでいないのでポジションに関しては確認できず。

ステアはプリウス同様に問題なし。

インパネを眺める。

「ん?」

どこかで見た光景。

空調パネル、シフトノブ周辺のパーツ、シフトノブ、Start/Stopのボタン等がプリウスと同じものを使っていた。=>良く見たところ異なる部品でした。営業さんも同じ部品です!

と言っていたので、確信していましたが、微妙に異なっていました。

塗装などで雰囲気を変えて高級感を出しているものの、同一だった。

クラウンが、、、

インパネの上部はハードプラ、白い箇所は多少の弾力があるが、全体を見て、高級感、高品質は

一切感じられなかった。

先代も質感は褒められたものではなかったが、”クラウン”であることを何とか保っていたと思う。

しかしこのクラウンはそれを放棄している。

凝縮感もなく、簡素で、質素で、空虚なインテリアに思えた。

ちょっと狼狽えてしまうほどの低質感(クラウンとして)。

降りる際にまたデジャブ。

あの地獄のドアノブがクラウンにも使われているではないか!

繰り返してしまうが、このドアノブを引くだけで安い車と感じさせてしまうほどの出来の悪さ。

もうこれは終わっているかもしれない。

なんか寒々しく感じた。凝縮感が無く、とりあえずスイッチがあるべきところに置いてあるだけ。

それは良いのですが、高級感とか、質感の高さは感じられない。

こちらはプリウス。ドアノブ、シフトノブ、ヒーコン、シフト周りが共用されています。

何ともため息。

 

リアシートは座面を多少へこませているが、作りは中々良く、シートバックの角度も悪くはない。

座れるリアシートだった。

ただ頭の側面に直ぐピラーが迫っており、頭周りの空間は褒められない。

車を降りてから改めて内装の取り付け具合を確認したが、これもプリウス同様に

ペコペコしていた。

もうクラウンは終わったと言っても良いと思います。

少なくともクラウンのお作法がクラウンたらしめていたと思う。

それを全て投げ打ってこの車は登場した。

しかしそこに新しい価値観を持ってクラウンを作ったのではなく、単にカムリベースの

SUVを作っただけ。

高級感や所有する満足感は与えることはなく、クラウンの持っていた世界観を無くしてしまった。

クラウンらしさがある!と、自動車評論家が行っているが、やはりこの安っぽいSUVは

その名を継承すべきではなかった。

 

ちなみに試乗車は他のディーラーに貸し出されていてお払い中だった。

 

総評

1990年にバブルがはじけ、その後出てきた国産車は見るも無残な低質感だった。

金をかけないで作る事を優先したのだが、それまでのバブル時代の車との差があまりにも

大きかった。

但し、無駄が無くなり、ちゃんとしたPackagingを持つ車も増えていった。

浮ついた車作りを止めた印象があり、長い目で見れば、そこでMakerも地に足が付いた車を

作る事に回帰した感がある。

さて、この2台を見るとバブル崩壊前と崩壊後の悪い所取りと言った印象だ。

スタイリング優先でPackagingは無視。見た目優先。金がかけられないため、品質低い。

もうこれ、最悪でしょ。

特にクラウンはもはやクラウンとは呼べないほどの低質感であり、がっかり。

空調パネル、ステア、シフトノブ等の使いまわしはBMWでもやっているけど、

それはBMWが一つのBrandとして操作系に一貫性を持たせるためにやっていることで、

それは伝統でもある。

また、BMWはどの車種もバッジを隠してもBMWと認識できる。上から下までBMWであり、

一つの思想の下で共通性を持たせている、と言えなくもない。

実際にCostが浮くのだが、それを思わせない。

しかしクラウンとプリウスでは全く共通性のない車であり、思想も走りも乗り味も全く異なる。

良いものを作ったのであり、それを共通化した、と言うのかもしれないが、だったら

BMWのように8から1シリーズまで共通して使っているような質感の高いものを

全車に採用すべきだ。

でもどう考えたってTOYOTAがそんな事をするわけがない.

プレジデントからVitzまで同じものを採用するはずがない。

結局Cost第一なんですよね。

僕はクラウンUserの気持ちは分からないけど、これまでのTOYOTA車のヒエラルキーの

Topに君臨していたクラウンがカムリと変わらないような質感を持つ車を見たら

がっかりすると思うけどね。

100万上乗せしてLexusに乗った方が絶対良いですよ。

(中身一緒だけど。バッジ代と、内装の作り、塗装の代金分が上乗せ。満足度は絶対に高い。)

 

クラウン クロスオーバーは完全にOutでした。

カムリクロスオーバーなら何とか許容範囲かもしれないけど、カムリセダンの方の出来が

良かった気もする。

何か気が沈んでしまいました。

 

プリウス?

もうこの車の事は忘れましょう。

スタイリングだけですよ。

走りが良いそうですが、そうだったら他にも良い車はたくさんあります。

これだったらSUVに乗った方が良いです。

 

おまけ

今回のクラウンは安く仕上げたSUVに単にクラウンの名前を付けただけである事が

改めて認識できました。

何とかクラウンにしようと開発陣はがんばったかもしれませんが、それは全く達成していません。

SkylineがR34からV35に変わった時もがっかりしました。

V35は気に入らなかったけど、でもプラットフォーム、サスペンション共に新規開発であり、

ある意味Sedanの理想を追いかけた車だったわけです

全く似て非なる思想の下で開発されており、今回のクラウンと比較しちゃいけないと

思ってしまいました。