日産セレナC28 試乗

6代目セレナが約6年ぶりにFMCされました。

BOXY、ノア、STEPWGNがFMCされ、商品力の低下にようやく日産も対応できます。

TOYOTAはTNGA採用で走りの質を上げてきています。

HONDAは新しい方向性であるシンプルなデザイン、初代、2代目への原点回帰で勝負。

では日産は?

せめて2005年以来採用し続けているプラットフォームの一新が必要だろう。

国内専用モデルのため、金がかかるCMF(Common Module Family)の採用をずっと

見送っていたが、いい加減、時代に追いつかなくてはならない。

と、勝手に考えていました。

 

ところが、発表されたセレナは相変わらずCプラットフォームを使っているではありませんか。

という事はサスペンションも旧来のまま。

捩じり、曲げの飛躍的な剛性UPは望めない。

ここで一挙に僕の興味は失せてしまいました。

プラットフォームを熟成させて使い続けること自体、駄目なことではないですが、

もうCプラットフォームなんて他の車種で使っていないですからね。

“専用プラットフォーム採用!”と皮肉を込めて言いましょうか。

 

とは言え、とりあえず見ていきましょう。

Spec

全長 4,765 mm 全幅 1,715 mm(ハイウェイスターV)全高 1,870 mm 車重 1690㎏

110kW (150PS)/6,000rpm、200N・m (20.4 kgf・m)/4,400 rpm

まだガソリン車しか販売されておらず、エンジンはMR20DD。N/Aだけど、直噴採用。

MR20自体は2代目から使っており、そろそろ新エンジンが欲しい。

e-POWER専用エンジンの新規開発でResourceを食われており、それどころではないか。

Newエンジンは1.4リットル直列3気筒ガソリンエンジンで、ある意味、e-Powerが

これで本来の力を発揮できるのではないだろうか?

ずっと望まれていた発電専用エンジンですね。

 

スタイリング

確証はまだありませんが、フロントウィンドウ、フロント、リアのサイドウィンドウは

先代からの使いまわしのようです。

またもや愕然。

プラットフォームで金を浮かせて置きながらも、更にケチってウィンドウの再利用。

確かにリーフもそうだし新しいRZ34も同様でした。

どうも日産はこの辺りに金をかけない方針らしい。

と言うか、車を前方、もしくは後方から見て輪切りした際に、ディメンションがほぼ変わらず、

キャビンの形も大きく変えられないため、スタイリングを大きく変えることはできません。

そもそもプラットフォームを変えないために制約そのものが大きいのに、

さらに足枷をはめるとは。

これではPackagingの進展も望めません。

しかもミニバン故に、スタイリングの自由度が極端に低いのに。。

これでTOYOTA、HONDAに対抗できると思ったのだろうか??

よって、Detailをちまちま変えるしか手段はありません。

昨今の日産顔であるアリア、NOTE、サクラなどとは異なるVモーションの新しい解釈を採用。

RZ34はリクリエイション Carであるため、そこから外れてもしかたないけど、

どうも一貫性が無い。

新しさはあるものの、Sportyでもなく、豪華でもない。

米国で販売されている小型セダンのヴァースのMCでも似たような顔を採用したので、

今後はアリア系、セレナ系と2パターンで行くのかな?

 

サイドはスライドドアのため、フェンダーの張り出しなどは抑え気味。

シュプールラインは先代のウィンドウを使ったため、そのまま継続。

ショルダーにハイライトを通して車を長く見せている。リアに向かってこの面が

大きくなっていくため、ちょっと後ろが重く感じてしまいます。

クオーターピラー、ウィンドウは変更されました。僅かな違いで、見落としそう。。

 

リアは縦にコンビランプを置き、開口部の広さを保っている。

特に何か工夫したところは見えず、特徴もない。

ミニバンのリアハッチは制約が大きくて、せいぜい表面の凸凹で個性を出すしかないので

難しい所です。

 

全体的に先進性も無いし、嫌なところもないし、強い印象もない。

可能な範囲で手堅く、できることをやった、と言った感じですかね。

BOXY/NOAHのオラオラ系、STEPWGNのシンプル系のその中間と言った印象です。

先代からのシュプールラインがそのまま残っていることもあり、新鮮味が薄く、先代の

MCと言った趣です。

これで6年も持つとは思えませんでした。

先代は少しDetailがうるさかったので、シンプルになっています。ショルダーのハイライトが明確で、車の長さ、

エレガントさを表現しています。Bodyの下の方はすっきりさせていますが、これも先代の反省でしょう。

こちらが先代。ちょっと厚化粧。シュプールラインに呼応して、上下反転したようなキャラクターラインが

走っており、勢いがあります。

サイドプロテクターは力強さの表現だったと思いますが、後付け感が強く、不評のため廃止。

 

 

 

インテリア

シフトノブの撤去は日産初だそうで。

エアコンコントロール関連が置かれている面にギアセレクトの4つのボタンを

置いてしまいました。

言いたいことは色々ありますが、それでも操作性が良ければ許せます。

乗り込みます。

相変わらずシートのサイズは小さめ。間違いなくフレームは先代のまんま。

例のゼログラビティシートを採用しているそうだが、あまり恩恵は感じない。

剛性感とかも感じない。

シートの生地はジャガード織物/トリコット。カサカサした感じで、汚れにくいみたいだけど、

高級感や、手触りが良いとは思えない。

先代もそうだったけど、どちらかと言うと安っぽい印象。

ポジションはそんなに悪くない感じ。

ステアリングは小さく、太く、剛性感もありOK。

エアコン関係の操作は一枚のパネルで、一部静電式だけどON/OFF、温度調整等は

ダイアルが残されているので、この辺は好ましいです。

その下には例のシフトボタンと、ハザードスイッチが並びます。

ボタンはP、R、N、D/Mと4つある。

"R"のみ少し突起があり、押し間違えが無いようにしているらしい、ささやかな抵抗ですね。

本来はそれぞれのボタンに凸面を作り、押しやすいようにボタンの間を開けるとかして

操作性を高めるべきです。

結局見た目優先で、"R"以外はパネルと面一になってしまいました。

勿論、肘が浮いた状態でこの小さなボタンを的確に押すのは快適なはずがなく、

シフトノブに勝る点は皆無です。新しさのみ追求した結果です。

せめてダイアル式にするとかにしておけば、と思います。

車を動かす、止める、と言う行為を実施するのですからそのアクションはできるだけ大きく

しておくべきだと思います。

 

2列目のシートも相変わらず薄く、小さく、かけ心地はこの手の車として平均点。

HPが高いため、きちんとした姿勢で座れます。

3列目はシートバック低く、足回り狭く、閉鎖感強く、長い距離を乗るシートではないです。

何か進化したのかな?

さっぱり不明でした。

少しは質感を上げようと、インパネにはステッチ付きのパッドが張られております。

高級感とまではいかないけど、先代よりは見栄えが良いようです。

それ以外はハードプラ採用で、全体的にはクラス標準ですかね。

木目調パネルも採用されています。ちょっと暗い色で、これ見よがしになってないのは好印象。

樹脂でテカテカになっていないので、この雰囲気は良いですね。

でも質感自体はもう少し。

NOTEと通じるインテリア デザイン。使い勝手と質感向上がテーマ。

少しメーターパネルが下向きだったの気のせいかな?

見たとおり視界が良く、よく考えられています。

新しいと言えばこれか?

仲良く並んだシフトボタンはやはり”変化”のため。せめて凸面にしなくては駄目だと思う。

デザイナーはウォークスルーがし易いとか言うんだろうな。

ハザードランプも本当は出っ張らせて指先ではなく、掌で叩いて押せるようにすべきです。

非常時に間違いなく押せることが必要なボタンですからね。

 

さて走ります。

まずスタートボタンを探します。

無いなー

と思ったらステアリングの陰に隠れていました。

デザイン優先で置くところが無かったのですかね。

次はパーキングブレーキ。

これも見当たりません。

探すと、これもステアリングに隠れて左ひざの上の辺りの位置に控えめに置かれています。

一々見ないとその存在が分からないなんて、どういう趣向だろうか?

分かりやすい、操作しやすい場所に置くべきだと思いますけどね。

必ず利用するものなんだから。

”D”ボタンを押して走りだします。

50メートルインプレッション開始。

特に何も感じないです。

エンジンの音、振動、公道に出る際の段差、駆動系のフリクション、ステアフィール、

アクセルの重たさ等、色々感じることができるものですが、最初に発した言葉は

「アクセル軽い」でした。

ステアはフィールとか語れるようなインフォメーションは無い。

アクセルを深く踏むと、いつものCVTならではのラバーバンドフィールは

随分と抑えられていて、変な滑りも抑えられていました。

昨今の良くできたA/Tには敵いませんが、十分許容範囲になっているように思えます。

そんなに悪くない。

エンジンが高回転になるとそれなりに室内が騒がしくなります。

この手の車はドンガラで、そもそも反響しやすいので、NVHは不利。

静かになったと言いますが、あくまでも先代との比較なのかなと。

ブレーキは少しストロークを感じて効いてくる印象。ちょっと奥が深く、その先でも剛性感が

足りないようです。

国産車のファミリーカーの多くはこんな印象ですが、もう少ししっかり感があると安心できます。

ステアフィールは反力も感じず、可もなく、不可もなく。

中立付近は少し遊びがあり、変な壁は感じません。

自然な感じで、この車のキャラクターに合っているように思います。

ステアに対して車がワンテンポ遅れて動く感じですが、ロールの速度も制御されており、

不安感は無い。

ステアを左右に振っても俊敏さが無いだけで、何も問題ないです。

個人的にはもう少し重く、インフォメーションが欲しいです。

これでは高速道路では少し不安かも。

VWのシャランは、ミニバンのくせして乗用車と全く変わらないようなステアフィールで、

素晴らしかったです。

あんな感じになるとセレナも一歩抜きんでた存在になるのに。

乗り心地は悪くないです。

変なピッチやロールは無いし、安定しています。突き上げ感も少なく、タイアの

おかげもあるのでしょうが、快適でした。

ちなみにサイズは205/65R16です。

視界は広く、高い位置に座っているため、運転しやすいです。

売れるわけも分かりますよね、こういう車に乗ると。

途中からManual Modeに変更してパドルシフトを試してみましたが、例のごとく

CVTでは明確なシフトチェンジ、ロックアップを感じず、せいぜい坂道での

エンブレに使用できるぐらいのものでした。

 

基本的にネガな部分はあまり見つからず無事試乗を終えました。

日産の資料から抜粋。いくつか見た限りでは同乗者を酔わせないとか、しっかりした走りとかの記載が。

内容を見てもせいぜいスバルのMC程度でした。

要は金をかけていない。

やはりe-Power待ちですね。

 

 

降りてみて

特に強い印象は何もなく、普通の良い車でした。

何が良かった?と聞かれても答えに窮するような車で、同様に悪い所を上げろと言われても

答えに困ります。

この手の車は車感度が低い人達が買うといみじくも日産が言っていましたが、まさにそんな人を

ターゲットに作っているように思いますね。

平均点が高く、嫌みが全くない。

個性が無いと言えばそれで、なんとも表現しにくい車です。

おそらくe-Powerに乗れば新しさも感じるし、静粛性も上がっていると思われますが、

現時点のガソリン車に関しての評価はそう高くは上げられません。

いつもの評価で言えば、、、

“重厚感、剛性感、走りの質感は低い。アクセルに対してレスポンスも悪く、回転感も悪い。

駆動系のフリクションも低いとは言えず、ドンガラBodyのため、背中から後ろが

スースーする感じ。

必要性が無ければ買うべきではない車”、

となってしまいます。

でもミニバン、価格を考えれば、相応な車なのだと思います。

ミニバンに対する僕の定規が無いため、どう評価すべきか、よく分からないと言うのが

本音です。

他2社の車もこのような感じなのでしょうか。。

 

あまりにも印象が薄く、また運転している感覚が無いので、感想を書くのに困りましたが、

一つ気が付きました。

この手のミニバンはCustomizeが盛んだが、それはこの手の車の乗り味が薄いことが

影響しているのではないか?

せっかく新車を買ってもすぐに慣れてしまい、新鮮味や満足感が失われてしまう。

それを補うために、色々と手を加えて失われてしまった新鮮な感覚を取り戻すのではないか?

この手の車が街中で多いため、他者との差別化と言う側面もあると思うが、どうなんだろう。

当然ながら走り関係に金をかけず、外見ばかりのドレスアップの方向なのもその裏付け?

僕自身、車を基本的にいじらないので、よく分からないけど、何となくぼやけた、

印象が薄いセレナの乗り味からそんなことを感じました。

 

まとめ

セレナは手堅いFMCをしたとも言えますが、その進化の幅はものすごく短い。

e-Powerが出なくては何とも言えないですが、少なくともガソリンエンジン車に関しては

2022年に出た車としては物足りない。

国内専用車だから手を抜いているとは考えたくないですが、17年前のエンジンと

プラットフォームの使いまわしを考えると、国内市場をなめているとしか思えないのです。

エクストレイルと比較して力の入れようの違いは明らか。

フロントサブフレームの強化、電動パワステがコラム式からラック式になったのは朗報。

走りのしっかり感につながります。

Body剛性強化はパッチを当ててしのいでいるのだろうが、それでは重くなる一方。

根本的な軽量化は不可能です。

もう少し資料が揃えばこの車の全容が見えてくると思いますが、少なくとも乗った印象では

新しい車とは思えません

Note AURAの出来具合が良かったために期待したのですが、ちょっと残念な結果になりました。

本命のe-Powerに期待しましょう。

 

おまけ

日産は売る車が無い。

アリアもエクストレイルも受注停止。RZ34も同様。

リーフも停止中だけど、過激な値上げ敢行。NOTE、AURAも値上げ。

サクラ、セレナ、NOTE、デイズなどの軽自動車のみ何とか3~6か月程度で納車可能な状況。

国内への新車導入はありがたいことだけど結局はUser裏切る状況。

RZ34の受注状況について聞きに行ったのですが、何も情報はありませんでした。

半導体の枯渇は世界的状況であり、簡単には回復できないのも分かりますが、

これでは新車を買う気持ちも萎えてしまいます。

営業さんも大変です。

BMWも同様で、モノは来ない、車は値上がりで、厳しいそう。

最近担当になった営業さん(入社2年目)が退社したと連絡がありました。

その前の営業も2年ぐらいしか持ちませんでしたね。(同様に退社)

本当に大変な時代になりました。

ちなみに今回はSkyline時代から25年近くお付き合いがある日産の営業さんと久しぶりに

お会いして話してきました。

BMWに浮気しているにもかかわらず、お相手いただきありがたいことです。

本命はいつでも日産なんです。

 

米国で発表されたMC版のヴァース。

顔つきがセレナ似。これもVモーショングリルの新しい解釈なのでしょう。

あまり洗練されていないし、説得力もない。

アリアで提言されたVモーションの方が洗練されていたように思います。

 

下はキャラバン。

これもセレナ系Vモーション??