脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史とその危うさ その4 | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史とその危うさ その4

脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史とその危うさ その4

 

東京都にある杏林大学医学部附属病院脳卒中センター長の平野照之教授が、脳卒中・循環器病対策基本法の成立を受け、ブログを発信していた。元、国立循環器病センターのレジデントの経歴をもつ医師である。

doctors-cure.com/site/blog/hirano/topics/

http://plaza.umin.ac.jp/kyorinSU/staff/hirano.html

 

以下にその内容を添付しようと思う。いわゆる医療側の発信を紹介したいと思う。そのブログには、日本脳卒中協会から発出されたメールが添付してあった

 

そこには、2008年以来、脳卒中対策基本法の法制化に向けて、尽力した日本脳卒中協会の歴史が語られていた。与野党の激突する厳しい国会情勢の中” との表現があったが、その中で、一体何が起こったかという都合の悪い事実は記載されていない。

 

横浜市には日本脳卒中協会とともに、脳卒中対策基本法の法制化に向けて活動していたNPO法人日本脳卒中者友の会(旧称:全国脳卒中者友の会連合会)の理事長である石川敏一氏や、「脳卒中から助かる会」代表の上野 正 東大名誉教授などが在住していた

 

すでに、201023日の公明党山本国会議員の報告にもあるように、法制化へ向け精力的に行動する患者団体があった。

https://www.yamamoto-hiroshi.net/archives/2010/02/100103_2.html

 

20113月、超党派の「脳卒中対策推進議員連盟」の設立総会が開催された。この時に挨拶に立たれた患者代表は、NPO法人日本脳卒中者友の会(旧称:全国脳卒中者友の会連合会)の理事長である石川敏一氏や、「脳卒中から助かる会」代表の上野 正 東大名誉教授。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11724653527.html

 

確かに、2013年に尾辻秀久参議院議員を会長とする「脳卒中対策を考える議員の会」は発足した。 

 

この時、患者団体を代表して、全国脳卒中者友の会連合会理事長石川敏一、全国脳卒中者友の会連合会顧問 上野 正、全国失語症友の会連合会理事長 八島三男、全国失語症友の会連合会常務理事 園田尚美が出席した。この私自身も、この会の発足時にオブザーバーとして参加し、ブログでも掲載させて頂いた。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11724653527.html

 

結局、2015年4月、民主党議員の反対のため、「脳卒中対策基本法の制定」は頓挫。結局、多数の循環器病も入れ込んだ「循環器病対策基本法」とするなら賛成するという政治家の意向を組んでの方向転換となった。

 

しかし、この方向転換に、真っ向から最初に抗議したのは公益社団法人 日本脳卒中協会の理事長でもあり、脳卒中対策立法化対策協議会代表山口武典氏であった。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12041668385.html

 

ところが法案成立の見込みが厳しくなると、20155月、日本脳卒中協会はそのスタンスを変えてしまった。そして、永年にわたり脳卒中対策基本法成立に向けて協力してきた患者団体を切り捨てた。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12085721439.html

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12159689033.html

 

20165月には「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」からの要望を聞く議員の会が開催された。

 

この転換に異を唱える全国脳卒中者友の会連合会の石川敏一氏らはこの会から外され、異を唱えなかった全国失語症友の会連合会常務理事である園田尚美氏らが、患者代表として残った。

 

これはある意味、患者団体としていびつな形を作ることになった。そして、 “患者団体は協力してこそ意義がある。” という主張が行われるようになり、この形は患者団体の中でも問題になったと聞いている。

http://noutomo.com/wp/wp-content/uploads/2017/01/5fd10e478c5f65e28c7d23282215edc8.pdf

 

確かに、日本循環器学会を含む循環器病関係諸団体からの申し入れもあり、この法案は成立されたが、法案成立前の東大病院の心臓手術医療事故の隠ぺい問題発覚は、ある意味この法案成立に影を落とした結果となった。

 

なぜなら、この医療事故隠ぺい問題が問われている東大病院の循環器内科教授小室一成氏が脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会の代表理事であったからだ。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12437384242.html

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12439257966.html

 

医学会というものは、都合の悪いことには蓋をして、こうしてきれいな歴史を作ってゆくのだろうか・・・? 

 

患者の存在があってこその医師であるとは思うが、このような医療側の対応では、残念だが国民、つまり患者側に視点を置いた実効性のある脳卒中対策が行政の中で展開していくことは非常に難しいことが予想される。

 

まさにその不成功の実例が、前回のブログでも言及した10年間にわたる横浜市の脳血管疾患救急医療体制である。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/

 

この基本法を受け、各都道府県で計画的に脳卒中対策事業が行われることになると期待されているが、行政組織はそんな容易には動かない。

 

NPO法人日本脳卒中者友の会(旧称:全国脳卒中者友の会連合会)や、「脳卒中から助かる会」は、横浜市行政に対して大きな影響力があった。

 

たとえば、2005年国によって認可されたtPA治療(血栓溶解療法)を中心とした脳血管救急医療体制を行政として行っているのは全国でも横浜市だけであり、この体制の構築にはこの患者団体なしではなし得なかった体制であることを、医学会は認識しているのだろうか?

 

参加病院のtPA治療実績の公表も全国で横浜市だけであり、国立循環器病センターのある吹田市あるいは大阪府、また東京都で同様の体制が展開されているとは聞いていない。

 

脳卒中・循環器病対策基本法を受け、20181218日の公明新聞にも横浜市のことは紹介された。

https://www.komei.or.jp/komeinews/p18305/

 

しかし、その横浜市でさえ体制構築10年経過しても、tPA治療の安全の指標である症候性頭蓋内出血を公表せず、市民、議会への要望を無視し続けている。

 

また、tPA治療の件数だけは増加しているが、とてもでないが “寝たきりが減る。” という成果など期待できる状況ではない。横浜市立脳卒中・神経脊椎センターの治療実績をみただけでもその状況がよくわかる。

 

最近はtPA治療のみだけではなく、血管内治療との組み合わせの治療が主流だと聞いたが、各病院の実績が公表されていない以上、そう簡単に鵜呑みにはできない。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12252803165.html

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12270336271.html

http://www.toyoko-stroke.com/treatment/acute_ivr.html

 

脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史をしっかりと反芻した上で、議員もよく勉強し自治体ごとで対応しないことには、国民に寄与する法にはならない可能性があることを肝に命じるべきだと思う。

 

以下、添付します。

 018/12/10

待望の脳卒中循環器病対策基本法が、本日、成立しました。

待ちに待ったこの日を迎えました。嬉しさは当然ですが、それよりホッとしたという気持ちが強いです。

各都道府県で計画的に脳卒中対策事業が行われることになるはずです。気持ちを引き締めて前向きに取り組んでいきたいと思います。

脳卒中協会から発出されたメールを添付します。山口先生、中山先生、峰松先生、そのほか関連の皆様の努力に敬意を評します。ご苦労様でした、そして法制化を機にさらに頑張っていきましょう。

日本脳卒中学会

理事長 宮本先生侍史

 

関係の皆さま

本日1210日、第197回国会最終日に、「健康寿命の延伸などを図る為の脳卒中、心臓病その他循環器病に係る対策に関する基本法」(以下、脳卒中・循環器病対策基本法と略す)が可決・成立しました。

与野党が激突する厳しい国会情勢の中、脳卒中・循環器病患者、家族、国民のために、本法の成立にご尽力くださいました国会議員の方々に敬意を表し、厚く御礼申し上げます。

また、これまでご協力くださった皆様に、改めて感謝申し上げます。

公益社団法人日本卒中協会は2008年から、関係諸団体と協力し、「脳卒中対策基本法」の法制化を目指して来ました。

しかしながら政権交代や東日本大震災などの影響のため作業は難航しました。

2013年に尾辻秀久参議院議員を会長とする「脳卒中対策を考える議員の会」が発足し2014年の通常国会に約20万人が署名した請願書を提出し、それを受けて参議院厚生労働委員会に「脳卒中対策基本法案」を発議して頂きました。

残念ながら時間切れのため法案は継続審議となり、その後の衆議院解散・総選挙の為に、廃案となりました。

この段階までに、個別疾患に対して基本法を作ることに対するご批判をいただき、また日本心臓財団や日本循環器学会を含む循環器病関係諸団体からの申し入れもあり、国民の死因第2位の心臓病を含む循環器病と、死因第3位かつ寝たきり原因第1位の脳卒中とを合わせた、包括的な基本法の法制化に取り組むこととしました。

これは、両疾患の原因と予防策に共通点が非常に多く、いずれも発症後の迅速な治療が改善の鍵となり、リハビリテーションや再発・重症化予防が患者の生活の質の改善に繋がるなど、両者を一括して扱うことは理にかなっているからであります。

そこで新たに、「健康寿命の延伸などを図る為の脳卒中、心臓病その他循環器病に係る対策に関する基本法」の法制化を目指して、「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」を結成し、活動を続け、今日を迎えることができました。

本法の成立によって脳卒中対策が終わったわけではなく、本日から新たな取り組みが始まります。日本脳卒中協会は1997年の発足時より、脳卒中の予防と患者・家族の支援を二本の柱に活動を行ってきました。

本法の成立を受けて、今後より一層これらの活動に励む所存ですので、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

公益社団法人日本脳卒中協会

理事長 峰松一夫

常務理事 山口武典

専務理事 中山博文