横浜市脳血管疾患救急医療体制から学ぶ、脳卒中・循環器病対策基本法の法制化へ向けての危うさ | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

横浜市脳血管疾患救急医療体制から学ぶ、脳卒中・循環器病対策基本法の法制化へ向けての危うさ

横浜市脳血管疾患救急医療体制から学ぶ

脳卒中・循環器病対策基本法の法制化へ向けての危うさ

 

横浜市役所の体質が、原発避難いじめ問題を機に露呈している。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017022690070356.html

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6231326

 

2月26日、横浜市教育委員会が設置した再発防止委員会で、詳細な議事録を残さなかったことが明るみに出た。yahooニュースでも大きく取り上げられ、1000を優に超えるコメントの大反響。東京新聞のコメントにもあるように、横浜市はさらに信頼を失うこととなった。

 

ところで、この自治体の体質は、あらゆる領域で共通している。例えば、大口病院で少なくとも2人の方が殺されてしまった要因の一つに、深刻な病院からの内部告発を無視した横浜市保健所医療安全課の無責任体質も、この自治体の忘れてはならない一つの体質である。

 

さて、平成17年、脳梗塞の新しい治療薬tPAが認可され、革命的な治療法として登場した。tPAとは脳のつまった血管を短時間で開通させ、脳を障害から救うという薬である。

 

しかし、一方で、脳出血という合併症がある。その合併症が起これば、さらに障害もひどくなり、死亡率も高いという問題がある。

http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph63.html

 

そのtPAの国の認可に貢献したのが、畑隆志、松岡慈子、植田敏浩医師を中心とした横浜市立脳血管医療センターの脳卒中診療部(当時)

 

その実績は平成16年、私自身が厚労省に問い合わせをし確認している。現在の横浜市立脳卒中・神経脊椎センターとは大いに異なる医療体制だった。

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12060432469.html

 

横浜市医療局の前衛である病院経営局が、脳卒中診療部を解体させたことは以前、ブログにも書いた。群馬大学医学部の内視鏡医療事故と同様ともいえる医療事故を内部から指摘・告発した脳卒中診療部を横浜市は排除した。

 

今回のいじめ問題で批判を受けている隠ぺい体質だが、教育委員会だけの問題ではない。

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12036289069.html

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12002018365.html

 

また、横浜市不正防止 内部通報制度が機能しなかった典型的な例でもある。

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11270388008.html

 

その脳卒中診療部をすっかり排除してから、平成21より横浜市が始めたのが、tPA治療を軸とした横浜市脳血管疾患救急医療体制である。いわば、指導者不在の体制の中での開始であった。

 

横浜市は “円滑かつ適切な医療が受けられる仕組み作りをしてきた” と、自らホームページで言及している。

http://www.city.yokohama.lg.jp/iryo/teikyotaisei/nou02-yokohama.html

 

適切な医療と言及するなら、その根拠となるデータがなければ、単なる作文でしかなく、実効性はない。

 

現在、横浜市は適切な医療機関への搬送と称して、病院ごとのtPA治療実績を公表。全国で横浜市だけだと思う。

 

行政、医療機関の指導・協力、貢献があったのは勿論だが、公表に至った推進力は、横浜市の患者団体(日本脳卒中者友の会、脳卒中から助かる会)だった。

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/154632/

 

平成1711月、横浜市で初めてtPAを使用した救急搬送を提案した私だが、今回、228日開催の平成29年度横浜市予算 消防局審査で暫くぶりに、質問に立つことになった。

 

審査を前に、この公表データーを見た。例えば、平成23年から平成26年までの横浜市立脳卒中・神経脊椎センターの治療実績は23年度が21%と最高で、あとは10%台で極めて低く、平成16年当時のセンター脳卒中診療部と同様の医療レベルでないことが一目瞭然にわかった。

 

市販後調査から、tPA治療で期待される回復は33%以上。tPAを使用しなくても(偽薬)26%は回復する。つまり、横浜市立脳卒中・神経脊椎センターのtPAの治療実績は偽薬よりも低いことになる。

http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph63.html

https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39040/Default.aspx

 

公表された実績を分析して、患者団体はその都度、更なる要望が市に提出される。患者さんは単なる数ではない。誰もが治療実績が高く、体制の整った安全な病院に搬送されたい。

http://nosottyu-tasukarukai.com/0214_2013.pdf

 

平成21年4月から開始された横浜市脳血管疾患救急医療体制が、8年の歳月をかけても、未だに成果が不明瞭であり、患者団体の要望に応えていないことが分かった。

 

質問当日の朝、データーを管理する横浜市医療局に、データーが不備ではないか、調べて欲しいとの問い合せをした。

 

平成26年度のデーターには、tPAを使用しているにも係わらず、使用した後の結果を一部報告しない医療機関が7カ所、全症例を報告しない医療機関が2カ所あることを指摘(ルール違反であり参加資格なし)

 

また、医療機関ごとのtPA治療実施数などにも誤りが散見され、報告が出来ない症例の表記(アンダーバー・未)などが統一されていなかったなどなど。

 

公表する前には、参加医療機関から関係者が集まり、横浜市立脳卒中・神経脊椎センターの代表で、公益社団法人 日本脳卒中協会の横浜支部長でもある山本正博医師を中心に連絡会が開かれている。

 

その連絡会議で、データーを確認・検証、全員の了解のもと公表を了承して、医療局のホームページにアップしていると伺った。

 

質問当日、私から公表された最新の平成26年度データーの問題点の指摘を受け、医療局、消防局からの回答は「ご指摘の通りでミスでした。今、データーを訂正しました」とのこと。体制の劣化といわれても仕方のない状況がみえてきた。

 

副作用の脳出血(症候性頭蓋内出血)も、各医療機関に報告義務を課し、連絡会で報告・情報共有されているにも係わらず、指導的立場にある日本脳卒中協会横浜支部長が中心となっている会議の都合で、全く先に進んでいない実態も浮かびあがった。

 

また、救急隊がこの公表されたビッグデータを十二分に活用していない事実も分かった。つまり、横浜市救急隊は医療機関ごとの成績や体制を考慮して患者さんを優先的に搬送していないのだ。

 

例えば、平成26年度はtPA治療実績が4年間もずっと振るわない、横浜市立脳卒中・神経脊椎センターに最も多い551人の患者さんが搬送され、最も多い39人の患者さんにtPA治療が行われている。

 

また、北部医療圏(鶴見、港北、緑、青葉、神奈川、都築、緑区)では、超急性期脳卒中加算の施設基準を満たしていない病院に2番目に多い548人の患者さんを搬送している。

 

これらは患者さんの立場に立つた時、極めて深刻な状況である。とてもじゃないが “救える命を救いたい” という標語どおりに仕事をしているとは、市民からすれば到底見えないのでは? これも、一種の倫理の逸脱ではないだろうか?

http://www.city.yokohama.lg.jp/iryo/teikyotaisei/pdf/chiryojisseki-h26.pdf

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11136961364.html

 

さて、去年の5月自民、公明両党の議員有志が「循環器病対策基本法」の原案をまとめたことが毎日新聞で報道された。

http://mainichi.jp/articles/20160506/dde/041/010/083000c

https://www.carenet.com/news/general/carenet/41990

 

その発信と共に、脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会が唐突に立ち上がった。会の中で発信したのは、日本脳卒中協会の山口武典氏であった。

 

ところが、賛同者名簿には2010年から7年間、日本脳卒中協会と共に、「脳卒中対策基本法」制定のため歩んできた全国で最も大きい脳卒中の患者団体であるNPO法人日本脳卒中者友の会(旧称:全国脳卒中者友の会連合会)の名はない。

http://noutomo.com/

http://www.jsa-web.org/selfhelp/shg00.html

 

設立から20年。当時、会員数約3500名。27都道府県40団体からなる患者団体である。一方、同じく日本脳卒中者友の会と共に脳卒中対策基本法成立に歩んできた日本失語症協議会の名は明記されている。

http://www.junkankitaisaku-motomerukai.org/approval

 

この「脳卒中・循環器病対策基本法」の案では、実際、自治体において実効性のある対策が実行できるのかという視点などで、日本脳卒中者友の会は反対したため、医師で構成される学術団体の代表らに、はじかれてしまったのだ。 

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12159689033.html

 

つまり、脳卒中者友の会だけが患者団体ではないというスタンスをとったことになる。ともに歩んだ今までの7年という歳月はどういうことだったのだろうか?

 

そして、横浜市においては、患者の立場に立ち、病院ごとのtPA治療実績公表という実績を示した患者団体でもある。

 

また、ともに歩んできた患者団体どうしも、日本脳卒中協会の都合で袂を分かつことに。これは尋常でない状況である。

 

8年の歳月をかけても、実効性のあるかつ安全が担保された脳血管疾患救急医療体制を展開できない地方自治体の例として、この横浜市がある

 

そして、その体制の中心が、日本脳卒中協会横浜支部長であることを、脳卒中・循環器病対策基本法の法制化を前にして、地元の我々政治家は、改めて認識しなければならない。

 

さらに、この貴重なデータを十二分に活用出来ない中、患者さんを搬送してきた横浜市消防局(横浜市救急隊)という地方自治体組織の現実がある。

 

法律ができたところで、地方自治体において対策基本法を実効に移すことは想像以上に大変であることを横浜市の例から医学会の先生方は気づくべきだろう。

 

また、私たち議員こそが、病院ごとの治療実績公表という快挙を成し遂げたこの日本最大の脳卒中患者団体に歩みよりながら、法制化を進めることが、国民にとって将来に禍根を残さない最善の策である思っている