脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史とその危うさ その3
脳卒中・循環器病対策基本法成立の歴史とその危うさ その3
脳卒中・循環器病対策基本法は、12月8日の参議院本会議で通過して、12月
10日の衆議院本会議で成立した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39023820X11C18A2000000/
そもそも、この基本法の前身は、“脳卒中対策基本法”であった。しかし、政治的な理由などで成立が困難となると、脳卒中・循環器病対策基本法に名称を変更してしまった。
公益社団法人日本脳卒中協会などは共に、「脳卒中対策基本法」制定のため歩んできた全国で最も大きい脳卒中の患者団体であるNPO法人日本脳卒中者友の会(旧称:全国脳卒中者友の会連合会)が、変更に異を唱えたとして公益社団法人としてあるまじき言いがかりで排除した。
その後、脳卒中・循環器病対策基本法成立を求める会が2016年5月に成立し今日に至っている。私は、公益社団法人日本脳卒中協会や脳卒中・循環器病対策基本法成立を求める会の姿勢を非常に疑問視していた。本当に国民にとっての法案成立ができるのだろうかという。
https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12159689033.html
1月24日に大手メデイアに報道された東大病院の心臓手術医療事故の記事をきっかけにいろいろと調べてみると、脳卒中・循環器病対策基本法成立を求める会の背景が見えてきた。
驚いたことにこの法案が成立する2日前の12月6日、参議院厚生労働委員会で、国民民主党の足立信也議員が、東大病院の医療事故について質問している。
https://mainichi.jp/articles/20190123/k00/00m/040/244000c
http://www.wasedachronicle.org/information/c51/
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/197/0062/19712060062008a.html
足立信也君
― 略 ― 資料を御覧ください。これは、私としては、何といいますか、同じ医療者として愕然とした、「選択」という、今月のものなんですが。
簡単に言いますと、拡張型心筋症で、もう心臓の機能が弱くなっているのを、カテーテルを使って、左心房と左心室の間のゆるゆるになった僧帽弁をちょっとクリップを掛けてということなんですが、これをやっていて、途中でうまくいかずに中断してやめた、その十六日後に亡くなったという事案ですね。
これ、字が小さくて申し訳ないんですが、じっくり読んでいただきたいと思うんですけど。私から言わせていただくと、これ、治療法の適用そのものがまず間違っている。
それから、PMDAからの警告の条件がある。その条件にも反している。合併症を気付けなかった、そして説明をしていない。
極め付けは、この裏かな、裏の方の左下、死亡診断書です。これ手術が途中でうまくいかずにやめちゃったからかもしれませんが、手術なしと書いてあるんですよ。これとんでもない事案だと私は思っているんです、このまま報道が事実であればですよ。とんでもないですよ。 ―略― 医療安全調査機構への報告は、これはあるんでしょうか。―略―
○政府参考人(吉田学君)
お答えいたします。―略― お尋ねの事案につきましての報告状況あるいは内容については把握をしてございません。
○足立信也君
制度上はやっぱりそうなんですが、これ読んでみると院内調査もやられていないような気が私はします。厚生労働省には、今の二つの制度とは別に、厚生労働省にはこれは、こういう事案があったという報告はあるんですか。
○政府参考人(吉田学君)
お答えいたします。私どもといたしましては、本報道を受けまして、現在、東京大学医学部附属病院からの聞き取りを予定させていただいておりまして、そこから事実の把握に努めたいというふうに考えてございます。 ―略―
○足立信也君
この委員会にも医療関係者かなり多くいらっしゃいます。この報道が事実だとするとこれ完全に隠蔽ですよね。もう十年以上前から十五年ぐらいになりますかね、医療機関というのは、逃げない、隠さない、ごまかさないということで対応してきて信頼を勝ち取ってきた。
その延長線上に医療事故調査制度があると、私はそのように捉えていますが、事実だとすると、これは、逃げる、隠す、ごまかすですよ。これはひどい。しかも、特定機能病院ですからね。
この教室、東大循環器内科、教授は小室一成さんです。まあここでどきっとされる方が結構いらっしゃると思うけれども、循環器学会の代表理事です。
それ、小室さんと聞くとディオバン事件を皆さん思い出すと思うんですが、五つの研究グループでデータ改ざんがあって、論文不正ですね、全部撤回したんですよ、五グループ。その一つのグループのリーダーですよ。―略―
○足立信也君
小室教授、どんな人なのかなと思ってウィキペディアで見たら、自他共に認める東京大学医学部のプリンスと書いてあるんですね。脳卒中、循環器病対策基本法の成立に向けた活動を行っていると書いてあるんですね。
―略―しかし、それと、法案については今後議論になると思いますけれども、それはそれとして、これは大変大きな問題、日本のトップの大学ですからね。そのことを重ねて申し上げておきます。
この議事録から経過を見ると、大手メデイア以外の報道およびこの国会での足立議員の指摘の結果、東大病院が医療事故調査機関に報告したことになる。
http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/info_20170203.pdf
http://www.j-circ.or.jp/topics/20181221_law.htm
足立議員が指摘するように、小室一成教授が脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会の代表理事であったことは、国会議員の間では周知であったこともわかる。
また、小室一成教授は東大病院の医療事故の隠ぺいに関わった可能性もあり、さらにデイオパンの論文捏造にも関わってきた経緯もあるとのこと。
循環器対策基本法成立後は予防や診断、治療法の開発に役立てるため国立循環器病研究センターや関係学会が協力し全国から循環器病の症例情報を集める体制整備も進めるとあった。
小室一成教授が脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会のリーダーであったとなると、集約されるデータの扱いにも影を落とす可能性があるのでは。
https://www.asahi.com/articles/ASLDC33PYLDCUBQU001.html
そして、「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」の問題は、「反対するものは排除するという体質を持っているだけではないようにも思える」と聴く。
https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12159689033.html
改めて思うが、医師と製薬会社の利益相反問題が明るみになった昨今、医師の背景を考慮・調査した上で、医師の意見を参考にすることが、政治家にとって政策展開する上で賢明な時代になったかもしれない。
結局、不都合なことが起こった場合、説明責任を果たせなくなってしまうからだ。まさに東大病院のこの事件は、不都合なことであるはずだ。
https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12309641333.html
しかし、脳卒中対策基本法が脳卒中・循環器病対策基本法にとってかわってしまったのも、もとは足立議員らが「脳卒中対策基本法」を反対したことであったことが非常に感慨深い。
その反対がなければ、日本脳卒中協会とNPO法人日本脳卒中者友の会は袂を分かつ必要もなかった。
結局、多くの政治家の都合で患者団体がふりまわされた基本法になってしまったように思えてならない。
https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12085721439.html