2018年からMycujoo配信やなでしこリーグのYouTube配信が始まり、2020年は全試合YouTube配信、WEリーグ:2021-2022からはDAZNとなり、各チームを均等に観戦できるようになりました。

その中で、I神戸の試合に関してだけは、それまでもTV放送・web配信されていましたので、対戦相手も比較的万遍なく網羅したデータが、2015年以来採れていて、

これまで、合計119試合、攻撃556本・守備432本のデータを蓄積しています。
2023-2024リーグ戦(皇后杯含む)では8試合、攻撃37本・守備29本を分析・集計しています。
 

以下にI神戸の2023-2024WEリーグのコーナーキックの状況の概容と、2024-2025WEリーグの予想を記載していきますが、原則下図のような配置を基に述べていきます。

 

青字:16試合以上先発した選手  緑字:16試合以上出場した選手
橙色:11試合以上出場した選手  赤字: 5試合以上出場した選手
黒字: 上記以下の選手 
 

下線:引退・移籍など退団 * :夏期入団選手 

+ :冬期入団選手 $ :昇格・2種登録選手

長期離脱
MF8増矢2024/03~8ヶ月、MF14水野2023/10~9ヶ月、FW29辻澤2024/05~8ヶ月
DF15井手2023/04~2023/12、MF14水野2022/12~2023/09

退団
GK1山下2024/08マンチェスターC(ENG)、DF4竹重2024/06テルスターV(NED)、MF8増矢2024/05引退、FW9田中2024/07Uta Royals FC(USA)、MF13北川2024/08BKヘッケン(SWD)、MF16天野2024/06ハンマービル(SWD)、MF17箕輪2024/07大宮V(リース)、GK18戸梶2024/07大宮V(リース)、MF19林2023/12サンタクララ大、DF22足立2024/01福岡JA(リース)、FW23栫井2024/01湯郷ベル

 

 

攻守の配置の1例を示します。

 

 

第21節:2024/05/18

 

 

 

 

(1) 2023-2024シーズンの全般傾向。

 

以下赤字のデータはこのブログで記事にした試合からの独自データです。

詳細は3-12を参照ください。

 

2023-2024リーグ戦は3得点、1失点。確実に黒字を計上し、4期連続としている。

 

攻撃では、フリー先着率は0%(リーグ12位)、シュート打ち率は27%(同4位)。
守備では、被フリー先着率は3.4%(リーグ2位)、シュート被弾率は31%(同10位)。

どう言う状況だったのか、色々考えてみたが、非常に説明が付きにくい数字になっている。

 

 

レベルを(A)~(E)で評価。あくまで私の視点です。

 

① 高さ関係:揃っている(C+)

 

10人平均で163.4cmは高い目の数字。

4竹重選手(172cm)の次が、5三宅選手・6松原選手(165)で開いているのだが、

2守屋選手・3土光選手・9田中選手・13北川選手が164cmで、

守備の際には目立つ弱点がない構成になっている。

 

② 軸になる攻撃:ニアで9田中選手(B)
 

ニアへの配球率は66.7%(平均48.3%)でかなり集めている。だが、先着率は29.2%(平均33.6%)で、平均やや下の数字が残っている。

9田中選手のヘディング技術は高いので、これでも十分な脅威だと言える。

 

 

③攻撃の工夫・戦略:手詰まり状態が続いている(D)

 

2018年春にショートコーナーなどピッチを広く使って、9得点を上げた。

だが、対戦相手がキッチリ決まり事を作って対応するようになり、効果が薄れる。

収支で赤字を出した2019年以来、基本的には苦戦が続いている。

2023-2024のフリー先着率0%は、その象徴のような数字。

 

 

④守備力:マンツーマンに戻したが少し不安定になった(C+)


5人をゾーン固定配置したマンツーマン(MIXディフェンス)を2021-2022から2年採用。

2021-2022:無失点、2022-2023:2失点と概ね良好な結果を得ていた。

2023-2024は、マンツーマンディフェンスに戻したが、シュート被弾率は31%(同10位:全データ平均24.1%)。2022-2023の14.8%の倍以上浴びている。

 

ただ、フリーで先着を許したのが3.4%(リーグ2位)。平面戦もリーグ1位の値を出していて、選手個々は良く頑張っていたと言える。

 


 

(2)データ

 

A.なでしこリーグ・リーグカップ公式記録より

 

 

 

B.独自収集データより

あくまで、私が観戦・ブログ化した試合が対象ですし、独断と偏見で判断して集めたデータです。

①集計表とシュート率・被シュート率のグラフ2枚

②左右CKの集積図

③配球分布表

 

 

 

 

 

イメージ 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)詳細評価

 

以下話が長いです。興味のある方は読んでいただければ幸いです。

 

A.攻撃詳細

 

2023-2024リーグ戦は3得点。

4竹重選手・5三宅選手・13北川選手各1点。

 

 

a)ニアでの合わせ(B)

 

・ニアへの配球率は66.7%(平均48.3%)、先着率は29.2%(平均33.6%)。

重要視してボールを集めていたが、実りは平均を下回った。

・記録37本中、9田中選手が24回ニアへ先頭で走って、ターゲット7回シュート2本。ヘディングスキルが高い選手なので十分な脅威だが、キッカーが合わせ切れていないのだと思われる。

 

 

b)中央からファーでの競り(C)

 

3土光選手・4竹重選手・5三宅選手が主に担当。

4竹重選手は、まだ叩き込むほどの技術は無いが、競り勝って落とす所までは、かなり期待できる。

先着率は33.3%(平均33.9%)と平均的だが、正面~ファーサイドへの配球率は33.3%(平均51.7%)と低く、重要視されていない。

 

 

c)ショートコーナー・ローボール(C-)

 

2018年春は特に左コーナーキックが無双状態で、80本中25本がショートコーナーだった。だが、秋には手詰まり。

以後減少していて、2023-2024リーグ戦では、37本中1本。全データ平均12.6%を大きく下回っている。

 

 

d)キッカーと戦術選択(D+)
 

2022年夏に中島選手、2023年夏に阪口選手・脇坂選手とキッカーが次々に移籍して、新しいキッカーになった。
13北川選手(左4本/右17本)、7山本選手(8/0)・16天野選手(5/2)と言う分担制だった。

ショートコーナーが少なかったのは、

①作戦として見込まれていなかったのと、

②ショートコーナーで様子を見ながら攻める権限・または余裕が、キッカーに無かったからだと思う。
 

 

e)ピックプレー(C+)
 

37本中9回、2023-2024は積極的に使った印象。

・9田中選手をフリーにするため使っていて、実際ディフェンスを振り切ることが多かったが、合わせ切れなかった。

 

 

f)ゴール前密集隊形(D)

 

・2023-2024リーグ戦で2回(5.4%)確認、使用率としては平均(9.4%)の半分くらい。

だが、以前はほとんどやらないチームだったが、「使うようになった」と言うところ。

・人を集めて混戦からの偶然を期待しているだけのレベル。深い戦略は無い。


 

g)相手ゴールキーパーの守備範囲限定(C)

 

24愛川選手・11髙瀬選手・6松原選手などがGK脇に入っていて、特に戦略的に重要な役割を負っているようには思えない。

ただ、11髙瀬選手は流石で、しっかり相手GKをコントロールしている。

 

 

h)その他

 

13北川選手は、新潟L時代には左利きの上尾野辺選手や園田選手が居て、プレイスキックを蹴らしてもらえなかった。(自身のヘディングが強いこともあるのだが・・)

でも、I神戸に移籍してキッカーを務めたことが、パリ五輪:ナイジェリア戦の3点目のFKに繋がったわけで、

なでしこJAPANや彼女のキャリアにとって、大きな意味のある1年だったと言える。

 

 


B.守備詳細

 

a)基本守備体系

① 基本は、マンツーマン中心。3人のゾーン固定配置。

 

・固定配置するのは、ニアポスト脇:16天野選手、ゴールエリア枠線上に9田中選手・4竹重選手が多いパターン。

 

②ショートコーナーには、相手の力に合わせて対応。

積極的に対応したり、しなかったり。

 

③ゾーンディフェンスは基本的にはやらない。

 

 

b)各選手の傾向・特徴

 

・2守屋選手・3土光選手・5三宅選手・13北川選手らが、マンマークを担当していて、基本的に厳しい密着マークを行っているのだが、5三宅選手・3土光選手は柔軟に対応している。
 

 

c)マンツーマンのマークの強さ(B)

 

・フリーで先着を許したのが3.4%(リーグ2位)。

平面戦もリーグ1位4.88で、この値は平面戦を評価し始めてからチーム平均としては最高値。実にキッチリ相手をマークしていた。

特にピックプレーを、マークチェンジを原則としてスムーズに行っていたのが、私には印象的だった。

 

**平面戦の採点は、3点完璧なディフェンス勝ち、4点ディフェンス勝ち、5点イーブン、6点オフェンス勝ち、7点オフェンスフリー、8点オフェンス"ど"フリーで評価。


・ただ、シュート被弾率は31%(同10位:全データ平均24.1%)で、悪い。

ちょっと理由が思いつかないし、色々想像してもしっくりこない。

説明できず、申し訳ありません。

 

 

d)ゾーン配置選手(ストーン)の強さ(A-)
 

9田中選手は視野も広いし、ボール落下点の見極めも早く、フットワークもある。

4竹重選手は単純に高くて強い。

この2枚は適材適所で強力。

 

 

e)逆襲力(C)
 

基本10人守備だから、逆襲はあまり期待していない。

ただ、10成宮選手が走る状況になれば、突破を期待できるのだが、一時期に比べると10成宮選手は強引には行かなくなっている。

 

 

f)統制(A)

 

良く統率されている。

・一本目や交代後に、マークミスでフリーの選手を出すこともない。

山下選手・三宅選手・土光選手あたりがまとめているのだと思われる

 

 


(4)過去の傾向・推移

 

A.個人の力の増減


a)キッカー

川澄選手と中島選手の併用から、川澄選手が抜けた。力量的には変わっていない。
中島選手のほぼ専任になって、戦術的には1人で考えられるので向上した。

2020年は右CKを杉田選手が蹴って併用になった。

2022年夏に中島選手が移籍で抜けて、阪口選手がメインキッカー、7脇坂選手が代行を務めていた。

2023-2024は北川選手と天野選手・山本選手の併用。

 

 

b)ヘディング力

主力メンバーで高瀬選手は変わらないが、ベブ(ゴーベル・ヤヌス)さん、

澤さん、甲斐さん、田中明日菜選手、道上選手らが抜け、高さ・強さという面では弱体化した。

2020年、田中選手、西川選手が移籍加入して少しは戻し、

2021-2022に竹重選手が加入。平均以上になった。

 

 

c)攻撃のメインターゲット・頼れるプレー
2015年までは明らかに澤さん中心だったが、引退以後、絶対的な軸は居なくなった。

2020年田中美南選手が入団してから、再びニアでの合わせが中心になっている。

 

d)ピックプレー

澤さんは個人的に臨機応変に使っていた。

2016年以降は、ブーム的に使われることが有っても、文化と呼べるような継続性は見られない。

・2014・15年は田中明日菜選手がクロス(2-4:リンク参照)を見せていた。

・2020年は三宅選手がニアサイドに出る際にラッシュ&ピックA(リンク参照)を多用した。

 

 

e)守備の統制
甲斐さんが指揮をしていたが、三宅選手が一本立ちし、問題なくリーグトップクラス。

2021年夏にGKに山下選手が加わって、非常に強固な物になった。

監督が毎年のように替わっても、よく練習していると推測する。

 

 

 

(5)2024-2025シーズンの予想など

 

フェロン監督は留任するが、主力がごっそり抜ける。

 

攻撃の軸の田中選手、高さで随一の竹重選手、左右キッカーの北川選手・天野選手、守備をまとめていた山下選手が居なくなる。

2024-2025シーズンのコーナーキックの予想は、はっきり言って無理。

 

2024-2025シーズンのフォーメーション的には、フェロン監督は4-3-3がお好きなようだが、質・枚数共に豊かなCB陣を2人しか使えなくなるので、無理だろう。

MF陣・FW陣が余っている訳でも無いし、6松原選手をアンカーに配置した3-5-2は継続せざるを得ないと見る。

その前提で、この秋のフォーメーション予想図を最上部に作成したのだが、

2023-2024にそれなりに実績のある選手で埋めることが出来た。橙・赤記名選手が1人ずつで済むとは意外だった。

このメンバーで優勝は望めないだろうが、そこそこ無難にシーズンを立ち上がると思う。

 

この図に、怪我から復帰するだろう14水野選手、沢山採った外国人選手たち、そして若手選手たちが、どれくらい戦力になれるか、と言うことになる。

ただ、外国人選手たちは、なでしこJAPANと同等以上の国の代表選手として、五輪やW杯に出場した選手は居ない。WEリーグでスペシャルな活躍は望めないだろう。

 

さて、I神戸はどうなることやら?

 

 

履歴

 2019/01/29 作成 (アーカイブ)

 2020/01/11 更新 (アーカイブ)

 2021/03/19 更新 (アーカイブ)

 2022/09/03 更新 (アーカイブ)

 2023/08/20 更新(アーカイブ)

 2024/08/22 更新

 

 

以上です。


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目次 1.概要(アメブロ版)

 

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2-3 パターン① ラッシュ&ピックB 2015/11/29

2-4 局面的な技術:パターン② クロス 2015/12/06

 

3-11 なでしこリーグなどのコーナーキック統計(随時) 2022/05/28更新

3-19 各チームの先着率・シュート率 2022/06/01更新

 

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3-119 2022-2023WEリーグのコーナーキックまとめ④平面戦状況 2023/07/06

 

 

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