2018年からMycujoo配信やなでしこリーグのYouTube配信が始まり、偏りはあるものの、かなり各チーム均等に観戦できるようになりました。
その中で、I神戸の試合に関してだけは、それまでもTV放送・web配信されていましたので、対戦相手も比較的万遍なく網羅したデータが、2015年以来取れています。
 
(1) 2020年シーズンの全般傾向。
 
2020年リーグ戦は3得点、0失点。
 
2018年中盤以降低調な状況を繰り返していたが、2020年は攻守共に持ち直している。
シュートを打った率はやや低迷を続けているが、守備での被弾率は平均を下回った。
 
レベルを(A)~(E)で評価。あくまで私の視点です。
 
① 高さ関係:低い目(C-)
・2020年シーズンのラインアップでは、突出したエース的存在は居ないし、
平均身長での比較でも低い方になる。
だが、西川選手・田中選手は強さを持つので、少し改善した。

 

② 軸になる攻撃:ニアで三宅・田中・京川選手を交代で使ったのだが・・(C+)
・強さ・高さで脅威となるヘディングのスペシャリストが居ない。

 
・2018年シーズン後半から、ニアに走り込む三宅選手に集めたが、2019年皇后杯ノジマ戦まで、約1年半、結果が出なかった。
が、2020年の三宅選手を見ていると、ラッシュ&ピックA(リンク参照)を使ったマークの振りきり方は、十分信頼に足りると私は評価する。
もっと三宅選手のニアを中心に組み立てて良いはず。
 
③攻撃の工夫・戦略:手詰まり状態が続いている(D)

2018年春にショートコーナーなどピッチを広く使って、9得点を上げた。

だが、対戦相手がキッチリ決まり事を作って対応するようになり、効果が薄れる。
以来2019年は苦戦が続いている。
 
④守備力:改善したのだが・・(B)
シュート被弾率18.5%(平均24.3%)と2019年29.9%から改善している。
鮫島・三宅選手がまずまずの稼働率だったので、まとまったのだと思う。
特に三宅選手が相手エースを抑えたのが、安定をもたらせたのだと思われる。

 
(2)データ
 
A.なでしこリーグ・リーグカップ公式記録より
 
 
 
B.独自収集データより
あくまで、私が観戦・ブログ化した試合が対象ですし、独断と偏見で判断して集めたデータです。
①集計表とシュート率・被シュート率のグラフ2枚
②左右CKの集積図
 
 
 
 
 
 
 

 

(3)詳細評価

 

以下話が長いです。興味のある方は読んでいただければ幸いです。

 
A.攻撃詳細
 
2020年リーグ戦は3得点。
 
決めたのは、三宅選手(ニア)、岩渕選手(ニア流し→押し込み)、西川選手(ファー)。
 
 
a)ニアでの合わせ(C+)
 
・2020年リーグ戦では、田中・京川・三宅の3選手が交代でニアを目指していた。相手から見て脅威と言うほどではない。
 
・三宅選手をニアサイドに出すのは、2018年シーズン後半からだが、マークを引き剥がせず、ボールに先着しても、流したところをブロックされていた。
が、2020年ラッシュ&ピックA(リンク参照)でマークを相手ゾーン固定選手に当てる技術を得たようで、素晴らしいゴールも生んでいる。
 
・田中選手、京川選手の飛び込みだが、2020年リーグ戦では先着無し。
マークを剥がせていない。この状況なら、三宅選手のニアを増やすべき。
 
・希に杉田選手が走り込むが、ステップが独特なので、マークをしづらそうな守備選手がいる。
 
 
b)中央からファーでの競り(C)
 
高くは無い。ただ、意外に形になる。
 

・高瀬選手・西川選手がターゲットになっているケースが多い。

・高瀬選手の嗅覚とゴール前に詰める技術は流石なのだが、ボールが来ない。

・杉田選手は案外勝っている。溜めてから始動できている。

 

c)ショートコーナー・ローボール(A→C)
 
2018年春は特に左コーナーキックが無双だったが、秋には手詰まり。
2020年は10.8%。平均(12.7%)的な値。
 
d)キッカーと戦術選択(B)
 
杉田選手(左2回/右21回)、中島選手(6/3)を左右で使い分け。
中島選手は精度・球質・戦術共にリーグSクラス。
相手守備にマーク漏れがあると、しっかり見つけて合わせられるのも立派。
杉田選手はニアに偏る傾向が有る。
 
e)ピックプレー(D)
 
・前述の通り三宅選手はニアサイドへ出る際に多用している。
 
・2016年シーズンは京川選手がニアに出る際に、ループ(2-6:リンク参照)をしていたが、久しく見られない。
ヘディングの高さは無いが、テクニック的には、なでしこトップレベルだと思うので、
マークを外す術を、再考してもらいたい。
 
 
f)ゴール前密集隊形(D)
 
・2020年は使用していない。
 
・2019年秋にだけ、私の記録に3回有る。
ただし、人を集めて混戦からの偶然を期待しているだけのレベル。深い戦略は無い。

g)相手ゴールキーパーの守備範囲限定(E)
 
GK脇にセットする選手が、ほぼ場所取りをしない。
GK脇に立つのは岩渕選手。GKの守備範囲は全く狭められていない。
特にニアを攻めるのなら、重要だと思う。
 
h)その他

攻撃における歪みが有る。
主にセーフティーで下がっているのは、鮫島選手と守屋選手。
守備力と走力でのチョイスなので仕方が無いが、攻撃的には身長の有る選手を2人(ある意味)無駄にしている。
 

B.守備詳細
 
a)基本守備体系
① 基本は、マンツーマン中心。9人守備で2名のゾーン固定配置。前残り1人。
 
・固定配置するのは、中島選手がニアポスト脇、田中選手ニアポスト前約5mのパターンが多かった。
 
・京川選手が入ったときは、ニアポスト前約5mに立つ。
 
②ショートコーナーには、相手の力に合わせて対応。
積極的に対応したり、しなかったり。
 
③ゾーンディフェンスは基本的にはやらない。
 
・2019年までは、相手攻撃側陣がゴール前に集まって密集を作って来たら、ゾーンディフェンスに切り替えてた。
なお、相手が一旦密集を作った後に散開すれば、そのままゾーンだった。
実戦例は2018年度皇后杯決勝の日テレ戦の1度だけ。
このゾーンの一般的な(普通に4人程度走り込む)攻撃への強度は不明。
 
・2020年は切り替えていないで、マンツーマンのまま。
 
b)各選手の傾向・特徴
 
・高瀬選手・守屋選手・田中選手・杉田選手は厳しい密着マークを行っている。
 
・三宅選手と鮫島選手はセット時点で距離を取ったマークをすることが多い。
 
そこから攻撃選手のダッシュのタイミングに合わせコースに入るのがうまい。
また、牛島選手のディフェンスマインドは、U-20で世界制覇した選手達の中でも突出していると、私は評価。
この3人はヘルプ・ディフェンスも出来るし、相手のピックプレー(ブロック)も躱せている。
相手エースを密着マークする高瀬選手と合わせて、4人で走り込む選手をマークする布陣の安定感は抜群。だったのだが・・・・。
 
・守屋選手・杉田選手・三浦選手が、時々ボールワォッチャーになるのは気がかり。
 
c)マンツーマンのマークの強さ(B-)
 
・全体的にマークが強いはず。
身長で負けていても、容易にはボールに先着させない。
能力の高い選手を集めているだけある。
 
・相手のエースを、三宅選手と高瀬選手がしっかり押さえている。
 
・だが、私のマーク状況の記録によると、2020年の平面戦のチーム平均は5.2。
全体平均が5.1で、やや平均値を下回った。
・守備機会の多かった三宅選手・守屋選手が4.9、髙瀨選手5.0とまずまずだったが、杉田選手5.4、鮫島選手6.0と良くは無かった。
 
d)ゾーン配置選手(ストーン)の強さ(C-)
 
田中選手・京川選手はリーグとしては標準以下。
周りが見えている方でもないが、強さ・うまさはそこそこ。
 
 
e)逆襲力(B)
主に岩渕選手の役目だが、スピードが有るわけでは無いのでロングドリブルでは取り囲まれる。だが、中島選手・八坂選手らが、押し上げるので、結構驚異だと思う。
 
f)統制(A)
本当に良く統率されている。
・一本目や交代後に、マークミスでフリーの選手を出すこともない。
鮫島選手・三宅選手あたりがまとめているのだと思われる
 

(4)この約5年間の傾向・推移
 
A.個人の力の増減

a)キッカー
川澄選手と中島選手の併用から、川澄選手が抜けた。力量的には変わっていない。
戦術的には1人で考えられるので向上しているはず。
2020年は右CKを杉田選手が蹴って、中島選手と併用になった。
 
b)ヘディング力
主力メンバーで高瀬選手は変わらないが、ベブ(ゴーベル・ヤヌス)選手、
澤さん、甲斐さん、田中明日菜選手、道上選手らが抜け、高さ・強さという面では弱体化している。
2020年、田中選手、西川選手が移籍加入して少しは戻している
 
c)攻撃のメインターゲット・頼れるプレー
2015年までは明らかに澤さん中心だったが、引退以後、絶対的な軸は居なくなった。
 
d)ピックプレー
・澤さんは個人的に臨機応変に使っていた。
・2014・15年は田中明日菜選手がクロス(2-4:リンク参照)を見せていた。
・2020年は三宅選手がニアサイドに出る際にラッシュ&ピックA(リンク参照)を多用した。
 
e)守備の統制
甲斐さんが指揮をしていたが、三宅選手が一本立ちし、問題なくリーグトップクラス。
監督が替わっても、よく練習していると推測する。
 
 
(5)2020年シーズンの予想など

 

大きく変わらないと思うが、星川新監督さん次第。

 
①鮫島選手の移籍
カバーディフェンスに長けていたので、チームとして脆さが出るかも。
星川監督がSBに牛島選手を使えば問題ないと思うが、阪口選手などを使うと少々心配に思う。
 
②岩渕・仲田・八坂・増矢選手の移籍。
コーナーキックに関しては主役じゃなかったので、大きな影響はない。
ただ、守備からの逆襲の迫力は無くなると思われる。
 
③星川監督
2010~2012年以来の就任。
でも、あの時は、澤さんや甲斐さんがいたわけで・・。

攻撃では、しっかり練習する時間があるチームなので、仕込みも見せて欲しい。

守備では、鮫島選手が抜けて損なわれた弾力性みたいなものを、どう取り戻すのか、見物だと思う。

 
履歴
 2019/01/29 作成(アーカイブ)
 2020/01/11 更新(アーカイブ)
 2021/03/19 更新
 
以上です。

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