「ピック&ロール」。

 

新潟L89分のコーナーキックで20山谷選手が使って、見事なヘディングシュート。

  https://www.youtube.com/watch?v=uFOwMvDWuYI&t=7247

ブログを書き始めて4年、初めて見ました。
シーズン終了時にゴールランキングをやる予定ですが、もう1位決定でしょう。
詳細は後述します。


9月15日行われたリーグ戦第12節。
I神戸のブログは最近多かったので、この試合の記事化は回避予定だったのですが、

(余計なモノを)見てしまったものは、仕方有りません。
YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=uFOwMvDWuYI

 

I神戸は、前節と同じ。普通に想定できる布陣。
 武仲(鮫島・守屋・三宅・髙瀬)(杉田・伊藤)(八坂・増矢・中島)岩渕

 

おそらく先発メンバーでチョイスがあるとしたら、CFWが14京川選手10岩渕選手か、

くらいでしょう。

 

一方、新潟Lは以下の布陣。
 平尾(北川・中村・イ・ヒョギョン・山谷)(瀧澤・児玉・川村・佐伯)(上尾野辺・左山)

 

カップ戦までは、見るからに「試運転」だった3中村選手5川村選手が万全の様だ。

ドイツから帰国した27児玉選手も加入して、15坂口選手を余らすほどの状態。
ただ、順位的には上位に居るモノの、得点力不足は深刻。
この試合でも6左山選手をFWに起用。前節伊賀FC戦でもFWでスタメンだったが、

高さを活かすボールがほとんど無く、良いところでオフサイドを取られるなど、

悩み多きプレーだった。改善を見せるか否かが注目される。

 


試合は、解説の甲斐さんのロースコア予想を裏切って、合計7点も入った。

 

新潟Lの前半は、ちょっと見たことが無いようなダメダメぶり。
DFラインが下がって間を攻められるし、

こぼれたボールは全てI神戸が回収、と言っても良いような状況。

戦力的には充実したが、まだ馴染んでいないと、こうなることもあるのだな・・と思った。
経験豊かな選手が多いので、ハーフタイムで修正したのは流石だった。

 

一方、I神戸は良かった。
前半は圧倒的、後半も互角以上に戦っていたし、ゴールにも迫れている。
ドリブル突破が多く出たし、パスの展開も良かった。
前戦の動き出しも普段より多かったと思う。
「みんな止まって足下への各駅停車パスの量産」の、

悪いのパターンはほとんど現れず、試合を通して良く攻めていた。
この調子をキープできれば、勝ちを積み上げられると思う。

ちょっと遅い気もするけど・・・。

 


得点:
 23分(22:02~) (35m左ライン際)20山谷(パスミス35m左サイド)9増矢(15m左)

  10岩渕(~10m左・シュート)
 44分(43:08~) (25m左ポスト前)6伊藤(30m左ポスト前)10岩渕(25m左ポスト前)

  6伊藤10岩渕(~20m正面・ミドルシュート)
 67分(66:41~) (65m正面)5三宅(30m左ポスト前)16イ・ヒョギョン(12m左)

  9増矢(~6m左・シュート)
 84分(82:48~) (55m右ポスト前)5川村(45m右ポスト前)10上尾野辺(45m右)

  15坂口(~35m右→20m右)17石淵(~10m右・シュート)
 87分(85:51~) (25m右サイド)8杉田(10m正面)3中村(ヘディング13m左)14京川(シュート)
 89分(88:46~) (左CK)15坂口(5m右ポスト前)20山谷(ヘディングシュート)
 93分+(46:29~) (35m左)8杉田(15m左ライン際)3鮫島(7m左サイド)22島袋(ゴール)

 

~:ドリブル
 Youtube ポインタ操作 前半:+15:48 後半:+32:10(飲水タイム後+32:04)

 

その他主なチャンス
  SB:Shoot Block SC:Shoot Cut S:Save FS:Fine Save B:Bar P:Post
  F:Free(GKと1対1など)

 

I神戸
 CK03:04~,07:57~,08:25~SB,CK10:06~,11:40~,12:03~,14:02~,15:20~FS,CK15:56~,

  25:38~,26:42~FS,CK27:25~,28:33~S,34:00~SC,38:20~SB,CK39:13~,CK39:52~
 54:39~,CK55:22~,56:50~,CK61:00~,CK70:13~,77:32~FS,CK78:14~,FK78:57~,

  80:20~P,89:54~SB

 

新潟L
 01:24~SB
 CK48:45~,FK49:55~,50:20~,62:31~S,66:00~,70:57~F,74:11~SB,CK87:47~SC

 

 

では、いつもの通り、コーナーキックを分析していく。

 


(1)両チームのディフェンスシステム

 

I神戸はマンツーマン中心の2人のゾーン配置。
新潟Lは9人守備で、マンツーマンディフェンス中心、2人のゾーン配置。

 ただし、左CKは3鮫島選手の上がりを警戒して10人守備。

 

ちなみに、先発選手を背の順にならべる。
I神戸    5      2     11     3      8      9      7     28    10     6     GK
         三宅 守屋 高瀬 鮫島 杉田 増矢 中島 八坂 岩渕 伊藤 武仲
          165  165   164   163  162   160   158   158  156  150    170
新潟L 5       6        16         3     20    11     24       10       14     27     1
         川村 左山 イ・ヒョギョン 中村 山谷 佐伯 北川 上尾野辺 瀧澤 児玉 平尾
          169   167     166       165  164   163   163      157     156   155   173

 

身長的には、新潟Lがやや有利程度で、大きな差は無い。
ただし、新潟Lには技術やパワーで制空権争いに強い選手が多く、

「優勢」くらいの表現でも良いと私は評価する。

 


(2)統計


例によって、私が採っているSTATSを紹介します。
なお、公式記録ではI神戸は9本となっていますが、10本が正解です。
後半の1本が抜けています。

                I神戸    新潟L
コーナー本数        10       3
得点(1次攻撃)        0       1


センタリング→シュート   0      2/0
センタリング→パス     2/1      0
ルーズボール          1        0
クリアー           4/1       0

キーパーパンチ      1/0      0
キーパーキャッチ      0       0
 * フリー/競り合い
オフェンスファール      0       1
ディフェンスファール     0       0
キックミス           0       0
ショートコーナー不発    0       0
時間つぶし           0       0
直接ゴール           0       0
オウンゴール           0       0


フリーになった選手    2/6     2/4
    (ボール受け/ボール来ず)
ピックプレー:推定含む   3/0     2/1
     (成功/失敗)

 


(3)コーナーキックの内容と特記すべきプレー

 

I神戸が久々にピックプレーを使っていて、上向いた面もある。
一方の新潟Lはしっかりと仕込んで、レベルの高いフォーメーションプレーを見せた。


A.I神戸のコーナーキック

 

この試合のコーナーキックのレベルは、受け手側は「向上」なんだけど、

7中島選手のキックの狙い目は良くなかった。

 

a)体制
キッカーは7中島選手(右利き)が左右CKを蹴った。

受け手は以下のパターンが多いが固定ということも無い。

・ニア:8杉田選手5三宅選手14京川選手
・正面からファー: 11高瀬選手28八坂選手5三宅選手9増矢選手(8杉田選手)、
・GK脇:10岩渕選手
・コボレ狙い:6伊藤選手9増矢選手
・セーフティー:3鮫島選手2守屋選手

 

b)結果概要
 1本目 (03:04 ポインタ18:52) 左CK 7中島選手9増矢選手折り返し→3中村選手クリア。
 2本目 (10:06 ポインタ25:54) 右CK 7中島選手5川村選手ヘディングクリア。
 3本目 (15:56 ポインタ31:44) 右CK 7中島選手5川村選手ヘディングクリア。
 4本目 (27:25 ポインタ43:13) 右CK 7中島選手20山谷選手ヘディングクリア。
 5本目 (39:13 ポインタ55:01) 左CK 7中島選手5三宅選手ヘディング流し→

   追いかけた6左山選手に当たって再CK。
 6本目 (39:52 ポインタ55:40) 右CK 7中島選手→抜けて28八坂選手が拾う。


 7本目 (55:22 ポインタ1:27:32) 右CK 7中島選手11佐伯選手クリア。
 8本目 (61:00 ポインタ1:33:10) 左CK 7中島選手5川村選手ヘディングクリア。
 9本目 (70:13 ポインタ1:42:17) 左CK 7中島選手GK平尾選手パンチング。
10本目 (78:14 ポインタ1:50:18) 右CK 7中島選手14京川選手5川村選手クリア。

 

c)全般的な印象と特記すべきプレー

2枚の図のように、7中島選手のキックがゴールに近く、5川村選手などに、

はじき返されている。
自分たちはヘディングで劣勢なのだから、もっと外側から攻めるべきだ。

F日体大戦で、ピッチを広く使えていたのだから、継続してもらいたいところだ。

 

一方受け手は改善していて、メインターゲットでは無いが、8杉田選手28八坂選手が、

マークを振り切っている。
だが、いずれも個人の動きで、チームとして使おうとしなかったのは残念である。

① 8杉田選手は、ダッシュで振り切ってニアへ走っていた。
  8杉田選手は特徴的な足裁きをするので、マークをするのは厄介なのかも知れない。
  3中村選手が、こんなにやられているのは記憶に無い。
  また、ピックプレーも1回有った。
  ニアでの合わせを狙うなら、14京川選手の次は、この選手だと思う。
  5三宅選手より、高さは劣るがマークを引き離せる。

  ニアから流したときにブロックされにくい。

 

 28八坂選手は、ニア側にセットして、ファーへと回っていた。

  ほぼ全てのプレーで、ラッシュ&ピックB(2-3:リンク参照)

  クロス(2-4:リンク参照)のピックプレーが発生し、11佐伯選手を振り切れていた。

  ただ、チーム戦略の一部にはなっていない。
  この動きで決めるつもりなら、11高瀬選手9増矢選手は、

  ファーのスペースを空けるべきだ。

 

 

2人の動きが最も良く出ていた3本目を図にしておく。

 

8杉田選手がファーポストからスタート。

マークの3中村選手5川村選手にぶつかりそうになって引き離される。

見事なラッシュ&ピックA(2-2:リンク参照)が成立。
一方28八坂選手はPKスポット近くから、一度ニアへ出てからファーへと回る。

マークの11佐伯選手は背後の選手に少し交錯し、28八坂選手を見失っている。

こちらはラッシュ&ピックB(2-3:リンク参照)

 

 

 

B.新潟Lのコーナーキック

 

たった、3本だったが、全てがレベルの高い内容だった。
5川村選手をメインターゲットにして、コーナーキックに取り組んでいると、印象を持った。


a)体制

キッカーは右CKを10上尾野辺選手(左利き)、左CKを15坂口選手が蹴った。

受け手は以下のパターン。

・ニア:6左山選手24北川選手17石淵選手
・正面からファー:5川村選手16イ・ヒョギョン選手20山谷選手
・GK脇:11佐伯選手
・コボレ狙い:10上尾野辺選手
・セーフティー:3中村選手14瀧澤選手

 

b)結果概要

 1本目 (48:45 ポインタ1:20:55) 右CK 10上尾野辺選手GK武仲選手パンチング。

  その前にオフェンスファール。(11佐伯選手GK武仲選手を押したとの判断?)
 2本目 (87:47 ポインタ1:59:51) 左CK 15坂口選手5川村選手ヘディングシュート→

  14京川選手カット→2守屋選手クリア。
 3本目 (88:46 ポインタ2:00:50) 左CK 15坂口選手20山谷選手ヘディングシュート・ゴール。

 

c)全般的な印象と特記すべきプレー

 

まず、1本目。ちょっと複雑な動き。

 

a)ニアサイドでの動き:6左山選手が場所取り、24北川選手の合わせを狙う。
① 6左山選手(マーク:5三宅選手
  まず最初にニアへ走り出し、7中島選手のニア側で場所を取った。
② 24北川選手(マーク:8杉田選手
  6左山選手が確保したスペースへ走り込み、ボールを流そうとしたが、

  ボールは僅かに上を越えた。
  8杉田選手は、一瞬周りを取り囲まれ追えなくなったが、

  ばらけてなんとか間に合っている。
  なお、10岩渕選手は積極的にヘディングに出ないので、

  7中島選手の出足を押さえてしまえば、ニアサイドは狙い所となる読みなのだろう。

 

b)正面からファーへの動き:ピックプレーで5川村選手をフリーにする動き。
5川村選手(マーク:11高瀬選手
  20山谷選手らをループ(2-6:リンク参照)してファーへ向かう。
  11高瀬選手16イ・ヒョギョン選手のブロックを躱して、

  5川村選手を追いかけ、間に合っている。
③ 16イ・ヒョギョン選手(マーク:3鮫島選手
  11高瀬選手のブロックに失敗。その後、正面へ詰める。
  3鮫島選手は、24北川選手に一度食い付くが、8杉田選手が間に合いそうなので、

  反転し16イ・ヒョギョン選手を再度マークする。(流石!)
 20山谷選手(マーク:2守屋選手
  5川村選手が通り過ぎたあとニアに走り込む。

 

結果は、おそらく、11佐伯選手GK武仲選手を押して、ファールを取られたので、

無駄になったが、複雑にピックプレーを絡め、スペースを作りながら攻めている。


2・3本目は、ほぼ同じ配置から5川村選手20山谷選手がピックプレー。
まず、Aパターンで警戒させ、Bパターンで決めるというストーリー性もあった。

 

2本目は、20山谷選手11高瀬選手をブロック(ピック)。

5川村選手がフリーになって、ヘディングシュートを打っている。
典型的なブロック&ラン(2-5:リンク参照)のAパターン。
溜めてから打ったブロックだったので、

ボールの軌道を追っていた11高瀬選手は躱せなかったし、

2守屋選手も、ボールよりも20山谷選手マークだったので、

5川村選手はノーマークでヘディングシュート。


約1分後、89分の3本目は、同じような配置から、同じように20山谷選手

11高瀬選手をブロック(ピック)。

連続してピックされた11高瀬選手に問題は有るが、

20山谷選手も上手くて、真っ黒な有罪でも無い。

 

20山谷選手マークの2守屋選手は、2本目の残像も有ったのだろう。

マークチェンジして、フリーになった5川村選手を追おうとする。
一方20山谷選手11高瀬選手をブロックしているので、

ゴール側のスペースを全て制している。

そこにボールが来たので、一歩前に出てイージーなヘディングシュートとなった。

 

典型的なブロック&ラン(2-5:リンク参照)からのBパターンが成立して得点。
バスケットでよく見るプレーで、ピック&ロールである。(1-3/6:リンク参照)

まさか、実戦で見せてもらえるとは思っていなかった。
6左山選手17石淵選手がニア側へ捌けた動きにも、ストーリー性が有って、

あまりに見事すぎる。
今年のコーナーキックゴールランキング1位は確定的。

 

上記の他にも、ブロックを打った後のCパターンとして、

走った選手にデフェンスが2人とも食い付いて、

ブロックを打った選手がフリーになることもある。

 

そもそもブロックを打ちに行く選手がリーグでは珍しいし、

ブロックを打ったら、その時点でプレーを終えている選手がほとんど。

そんな現状で、このブロッカーの「次の動き」を意識高く実践しているのは、AC長野。

特に6國澤選手は以前から意識してやっていた。

3五嶋選手も見習ってか今年に入って見せている。(4-167:リンク参照) 

しかし、6國澤選手がこの夏からイタリア挑戦で居なくなった。

コンビプレーの面も有って、期待薄となっていた。

 

その中で、新潟Lが見せてくれたのは、ある面納得のこと。

このブログで確認しているだけでも、3中村選手5川村選手6左山選手らが

ピックプレーを使っているのを複数回確認しているし、元所属選手にも実績がある。
おそらく、なでしこリーグで最もピックプレーが文化になっているのは、このチームだろう。
新潟LのHPのマッチレポートのインタビューで、

20山谷選手は、「練習の通り」と言っている。
ちゃんと知識があって、身に付けていたのである。

 

また、5川村選手という存在を活かし、コーナーキックからのゴールで、

得点力不足をカバーしようとしている事情が垣間見える試合だった。

 

 以上です。

 

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1-3/6 カナダW杯決勝 ピックプレーとは(一般知識)  2015/10/04

 

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4-4 I神戸0-2 新潟L:なでしこリーグ・エキサイティングシリーズ 2015/10/19

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4-170 なでしこリーグ 新潟L 0-1 I神戸  2019/04/02

 

4-167 なでしこリーグ 浦和 2-1 AC長野  2019/03/22

 

 

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関連記事など、外部リンク

 

INACTVweb
2019プレナスなでしこリーグ1部 第12節  INAC神戸レオネッサ  VS アルビレックス新潟レディース
 https://www.youtube.com/watch?v=uFOwMvDWuYI
 

I神戸HP 2019プレナスなでしこリーグ1部 第12節
https://inac-kobe.com/match/result/12

 

新潟LHP 2019プレナスなでしこリーグ1部 第12節
https://www.albirex-niigata-ladies.com/game/result/2019/pg2242219.html