日銀の「政策金融」
銀行保有株式の買取りのついでに日銀が取り組んできた「政策金融」に興味がわいたので調べてみました。ふつう、日銀といえば金融政策ですが、カッコ付きで「政策金融」と書いたのは意味があります。
こ こで政策金融というのは、市場環境の整備や特定の政策意図(産業の育成など)の下に本来は政府がやってもよいような金融施策全般を指すものとします。市場 金利の操作を通じて物価安定やマネーサプライへ影響を与える施策や、緊急時に特融をするような信用秩序維持政策には中央銀行が独占的にこれらを行う理論的 裏づけがあり、教科書にも載っています。しかし中央銀行がどんな政策金融を担うのかとか、その範囲についてはまとまった議論はあまり聞きません。よくある のは「優良な担保の裏づけのある金融政策以外に手を出すと通貨価値が毀損し、ひいては中央銀行の信認が損なわれる」のでダメだ、という主張です。しかしど の程度毀損してはいけないのか、毀損しないよう気をつければやってもいいの?とかは実はまじめに議論されたことはないような・・・。まあ、面倒な議論をす るよりも、政府自身や政府系金融機関が取り組んだ方が「すみわけ」「比較優位」としていいのだからそれ以上はいいじゃないか、ということなんでしょう。。
それはともかく、『日本金融年表』(日銀刊:ウェブでもみられる)を眺めているといろいろ面白い政策金融に取り組んでいるので、以下時系列に書いておきます。
(日銀の「政策金融」の変遷)
・昭和21年3月16日 工業手形等物資の生産移動の裏付けのある手形を商業手形に準じ優遇
することを決定
・21年 6月 1日 製糸業者の購繭手形に対する優遇措置
・21年 6月28日 連合軍住宅関係資金にかかる公益営団振出手形の優遇措置
・21年 7月 8日 輸出向綿製品加工賃手形を商業手形に準じ再割引
・21年 8月 9日 スタンプ手形制度実施(緊要な生産部門の運転資金優遇措置)
・21年 8月30日 貿易手形制度実施(輸出物資製造・集荷資金等の貿易金融の優遇措置)
・21年11月29日 輸出向生糸集荷資金融通手形(生糸手形)の優遇措置を実施
・22年 1月15日 融資斡旋委員会設置(支店でも融資斡旋を開始)
・22年 6月 2日 起債調整協議会(24年6月 起債懇談会と起債打合会に分化)
・22年 7月 1日 日本銀行貿易スタンプ手形制度創設(輸出前貸資金に限定)
・23年 3月26日 公団認証手形担保貸付の優遇措置
・23年 4月23日 商工中金に中小企業関係別枠融資を実施
・23年 4月30日 農業手形制度創設(農業生産金融の優遇)
・23年 5月20日 購繭スタンプ手形制度の適用範囲拡大(種繭・乾繭等)
・23年 5月28日 日本興業・日本勧業良好に中小企業金融関係別枠融資
・23年 6月 4日 農業手形制度の適用範囲を拡大(肥料、農薬、農機具)
・23年10月 1日 購繭スタンプ手形制度の適用範囲を輸出玉糸メーカーに拡大
・24年 1月15日 貿易手形制度の適用範囲を輸出業者の直接発注先に拡大(メーカー貿易
手形の新設)
・24年 2月 1日 国有繊維払い下げに伴い、輸出綿・毛製品生産資金に対し貿易手形の特例
・24年 7月14日 輸入羊毛の内需用払い下げ代金にスタンプ手形制度を適用
・24年 7月18日 漁業手形担保貸付の優遇措置を実施
・24年 7月21日 重要産業の設備資金融資を行う生命保険会社から融資相当額の国債買入れ
・24年 8月 3日 木炭集荷資金融通手形を適格担保として優遇
・24年11月 8日 公募株・証券処理調整協議会放出株購入資金供給のため生命保険会社から
国債を買入れ
・25年 4月13日 商品(倉庫証券)見返貸付制度実施
・25年 5月15日 融資斡旋の逐次廃止を言明
・25年 8月30日 貿易手形制度運用の厳格化を決定
・26年 5月14日 レギュラー・ウェイ実施に伴う各地証券金融会社に対する資金援助措置(短資
取引株式担保預り証を付随担保とする証券金融会社振出の手形を担保とする貸付制度)
・26年12月21日 ワシントン輸出入銀行との間に4000万ドルの綿花借款契約
・27年 5月 1日 日米行政協定に基づく米軍経費支払いのための経理処理として在日米軍との
当座預金取引を開始
・27年 9月13日 援助資金私企業貸付金債権の一部を開銀に引継ぎ(残りは10月18日)
・29年 2月 8日 融資斡旋部廃止
・29年 3月 9日 輸入金融優遇措置の全面見直し(①別口外国為替貸付の新規承認停止、②
輸入決済手形、運賃手形の手形期間圧縮、③輸入物資引取資金関係スタンプ手形制度を
鉄鋼および皮革以外停止、④工業手形のスタンプ手形制度準用扱い廃止)
・30年 5月 6日 輸入物資引取資金関係スタンプ手形制度を廃止
・31年 5月31日 購繭資金に対するスタンプ手形制度適用を廃止(スタンプ手形制度自体が休止
となる)
・31年 8月 6日 手形貸付担保の種類、担保価格を改正(原則として担保手形については適格
商業手形・輸出手形・輸入決済手形・輸入運賃手形・農業手形に限定)
・33年12月31日 農業手形制度廃止(九州、四国は34年1月末)
・41年 1月 8日 輸入貿易手形制度の取扱い停止
・43年11月19日 日本証券金融㈱を通じる公社債流通金融の実施
・47年 9月19日 輸出前貸手形制度および期限付輸出手形制度を9月30日限りで廃止。
・47年10月 2日 公定歩合の形式を改正(輸出金融優遇措制度廃止に伴い期限付輸出手形
割引歩合および輸出前貸手形を担保とする貸付利子歩合を廃止<この結果、公定歩合は
2本建ての簡略化>)
・53年 5月22日 輸入決済手形制度実施(輸入貿易手形制度廃止)
・54年12月 3日 同制度停止
・56年 3月19日 商品(倉庫証券)見返貸付制度廃止
こ れを眺めていると日本の産業史を金融面から納得できますね。戦後の復興期はとにかくすぐゼニになる軽工業を復興させるべく生糸の輸出向け手形の割引優遇措 置を繰り返し発動しています。また、原料のマユを買うための資金調達の手形も積極的に割り引いています。「スタンプ手形」という耳慣れない用語があります が、これは輸出奨励のために輸出関係手形に日銀がスタンプを押した手形で、再割引のときに優遇レートが適用になるというものでした。
昭和22年 には「融資斡旋委員会」なるものが行内に立ち上げられ、各支店でも融資斡旋が推進されたようです。いまどき金融庁でさえこんなベタな融資推進はやりませ ん。何でもやるんだなあ。23年には農業手形なんてのも創設して優遇していますね。食糧増産が緊急課題だったんでしょう。24年には漁業も木炭集荷業も優 遇。25年には倉庫証券を裏づけに融資をしていますが、これって倉荷証券のことでしょうかね?!Wikipediaみるとそのように出ていますが、倉荷証 券なんて教科書で習った以外実際にみたことは無いので不思議な感じがします。
目を引くのが27年の米軍との当座預金取引開始です。これは知らなかった。今でも取引してるんでしょうかね。
26年の「レギュラー・ウェイ」実施に伴う証金に対する融資云々・・というのはちょっとややこしい事情があります。この制度は今もヒッソリと存続しているはずですが、要するに信用取引の育成のために
株を担保にしてコール資金を供給する
と いう仕組みです(正確には、証金が資金調達をするときに取引所に預けた株を担保に短資からコールマネーを調達するのですが、その「預り証」を付随担保にし て資金を日銀が提供するという仕組み)。レギュラー・ウェイというのは米国を参考にして作った信用取引の一種です。戦後、株式民主化の後も日本経済には資 産の蓄積がなかったため株式市場は低調でした。これを活性化するには仮需の喚起が必要だ、というわけで証金が相次いで設立され、その資金手当てという「政 策金融」に乗り出すことになったんですね。証券会社はコール市場で直接ファイナンスできない時代が長かったですし、この政策は当時意味があったと思いま す。
この27年頃を境に「何でもあり」の政策金融措置は徐々に廃止・縮小されていっています。復興→成長促進から都銀のオーバーローン=日銀貸出依存の緩和が重点項目に移っていった時代です。
い ずれにしても、危機のときには「金融政策」以外の「政策金融」で中央銀行が果たす役割というのは大きいということですね。繭・生糸・農業漁業・鉄鋼という リアルな生産現場の後押しから株式市場まで、やろうと思えば何でもできちゃうという意味で、やりようによっては出番はいろいろあるのかも(ちなみに繭や農 業漁業、信用取引を支援しても別に通貨価値が毀損して騒ぎになった、という話はあまり聞きませんね。そういう点ではCPの適格担保化なんてカワイイもんか もしれません)。
こ こで政策金融というのは、市場環境の整備や特定の政策意図(産業の育成など)の下に本来は政府がやってもよいような金融施策全般を指すものとします。市場 金利の操作を通じて物価安定やマネーサプライへ影響を与える施策や、緊急時に特融をするような信用秩序維持政策には中央銀行が独占的にこれらを行う理論的 裏づけがあり、教科書にも載っています。しかし中央銀行がどんな政策金融を担うのかとか、その範囲についてはまとまった議論はあまり聞きません。よくある のは「優良な担保の裏づけのある金融政策以外に手を出すと通貨価値が毀損し、ひいては中央銀行の信認が損なわれる」のでダメだ、という主張です。しかしど の程度毀損してはいけないのか、毀損しないよう気をつければやってもいいの?とかは実はまじめに議論されたことはないような・・・。まあ、面倒な議論をす るよりも、政府自身や政府系金融機関が取り組んだ方が「すみわけ」「比較優位」としていいのだからそれ以上はいいじゃないか、ということなんでしょう。。
それはともかく、『日本金融年表』(日銀刊:ウェブでもみられる)を眺めているといろいろ面白い政策金融に取り組んでいるので、以下時系列に書いておきます。
(日銀の「政策金融」の変遷)
・昭和21年3月16日 工業手形等物資の生産移動の裏付けのある手形を商業手形に準じ優遇
することを決定
・21年 6月 1日 製糸業者の購繭手形に対する優遇措置
・21年 6月28日 連合軍住宅関係資金にかかる公益営団振出手形の優遇措置
・21年 7月 8日 輸出向綿製品加工賃手形を商業手形に準じ再割引
・21年 8月 9日 スタンプ手形制度実施(緊要な生産部門の運転資金優遇措置)
・21年 8月30日 貿易手形制度実施(輸出物資製造・集荷資金等の貿易金融の優遇措置)
・21年11月29日 輸出向生糸集荷資金融通手形(生糸手形)の優遇措置を実施
・22年 1月15日 融資斡旋委員会設置(支店でも融資斡旋を開始)
・22年 6月 2日 起債調整協議会(24年6月 起債懇談会と起債打合会に分化)
・22年 7月 1日 日本銀行貿易スタンプ手形制度創設(輸出前貸資金に限定)
・23年 3月26日 公団認証手形担保貸付の優遇措置
・23年 4月23日 商工中金に中小企業関係別枠融資を実施
・23年 4月30日 農業手形制度創設(農業生産金融の優遇)
・23年 5月20日 購繭スタンプ手形制度の適用範囲拡大(種繭・乾繭等)
・23年 5月28日 日本興業・日本勧業良好に中小企業金融関係別枠融資
・23年 6月 4日 農業手形制度の適用範囲を拡大(肥料、農薬、農機具)
・23年10月 1日 購繭スタンプ手形制度の適用範囲を輸出玉糸メーカーに拡大
・24年 1月15日 貿易手形制度の適用範囲を輸出業者の直接発注先に拡大(メーカー貿易
手形の新設)
・24年 2月 1日 国有繊維払い下げに伴い、輸出綿・毛製品生産資金に対し貿易手形の特例
・24年 7月14日 輸入羊毛の内需用払い下げ代金にスタンプ手形制度を適用
・24年 7月18日 漁業手形担保貸付の優遇措置を実施
・24年 7月21日 重要産業の設備資金融資を行う生命保険会社から融資相当額の国債買入れ
・24年 8月 3日 木炭集荷資金融通手形を適格担保として優遇
・24年11月 8日 公募株・証券処理調整協議会放出株購入資金供給のため生命保険会社から
国債を買入れ
・25年 4月13日 商品(倉庫証券)見返貸付制度実施
・25年 5月15日 融資斡旋の逐次廃止を言明
・25年 8月30日 貿易手形制度運用の厳格化を決定
・26年 5月14日 レギュラー・ウェイ実施に伴う各地証券金融会社に対する資金援助措置(短資
取引株式担保預り証を付随担保とする証券金融会社振出の手形を担保とする貸付制度)
・26年12月21日 ワシントン輸出入銀行との間に4000万ドルの綿花借款契約
・27年 5月 1日 日米行政協定に基づく米軍経費支払いのための経理処理として在日米軍との
当座預金取引を開始
・27年 9月13日 援助資金私企業貸付金債権の一部を開銀に引継ぎ(残りは10月18日)
・29年 2月 8日 融資斡旋部廃止
・29年 3月 9日 輸入金融優遇措置の全面見直し(①別口外国為替貸付の新規承認停止、②
輸入決済手形、運賃手形の手形期間圧縮、③輸入物資引取資金関係スタンプ手形制度を
鉄鋼および皮革以外停止、④工業手形のスタンプ手形制度準用扱い廃止)
・30年 5月 6日 輸入物資引取資金関係スタンプ手形制度を廃止
・31年 5月31日 購繭資金に対するスタンプ手形制度適用を廃止(スタンプ手形制度自体が休止
となる)
・31年 8月 6日 手形貸付担保の種類、担保価格を改正(原則として担保手形については適格
商業手形・輸出手形・輸入決済手形・輸入運賃手形・農業手形に限定)
・33年12月31日 農業手形制度廃止(九州、四国は34年1月末)
・41年 1月 8日 輸入貿易手形制度の取扱い停止
・43年11月19日 日本証券金融㈱を通じる公社債流通金融の実施
・47年 9月19日 輸出前貸手形制度および期限付輸出手形制度を9月30日限りで廃止。
・47年10月 2日 公定歩合の形式を改正(輸出金融優遇措制度廃止に伴い期限付輸出手形
割引歩合および輸出前貸手形を担保とする貸付利子歩合を廃止<この結果、公定歩合は
2本建ての簡略化>)
・53年 5月22日 輸入決済手形制度実施(輸入貿易手形制度廃止)
・54年12月 3日 同制度停止
・56年 3月19日 商品(倉庫証券)見返貸付制度廃止
こ れを眺めていると日本の産業史を金融面から納得できますね。戦後の復興期はとにかくすぐゼニになる軽工業を復興させるべく生糸の輸出向け手形の割引優遇措 置を繰り返し発動しています。また、原料のマユを買うための資金調達の手形も積極的に割り引いています。「スタンプ手形」という耳慣れない用語があります が、これは輸出奨励のために輸出関係手形に日銀がスタンプを押した手形で、再割引のときに優遇レートが適用になるというものでした。
昭和22年 には「融資斡旋委員会」なるものが行内に立ち上げられ、各支店でも融資斡旋が推進されたようです。いまどき金融庁でさえこんなベタな融資推進はやりませ ん。何でもやるんだなあ。23年には農業手形なんてのも創設して優遇していますね。食糧増産が緊急課題だったんでしょう。24年には漁業も木炭集荷業も優 遇。25年には倉庫証券を裏づけに融資をしていますが、これって倉荷証券のことでしょうかね?!Wikipediaみるとそのように出ていますが、倉荷証 券なんて教科書で習った以外実際にみたことは無いので不思議な感じがします。
目を引くのが27年の米軍との当座預金取引開始です。これは知らなかった。今でも取引してるんでしょうかね。
26年の「レギュラー・ウェイ」実施に伴う証金に対する融資云々・・というのはちょっとややこしい事情があります。この制度は今もヒッソリと存続しているはずですが、要するに信用取引の育成のために
株を担保にしてコール資金を供給する
と いう仕組みです(正確には、証金が資金調達をするときに取引所に預けた株を担保に短資からコールマネーを調達するのですが、その「預り証」を付随担保にし て資金を日銀が提供するという仕組み)。レギュラー・ウェイというのは米国を参考にして作った信用取引の一種です。戦後、株式民主化の後も日本経済には資 産の蓄積がなかったため株式市場は低調でした。これを活性化するには仮需の喚起が必要だ、というわけで証金が相次いで設立され、その資金手当てという「政 策金融」に乗り出すことになったんですね。証券会社はコール市場で直接ファイナンスできない時代が長かったですし、この政策は当時意味があったと思いま す。
この27年頃を境に「何でもあり」の政策金融措置は徐々に廃止・縮小されていっています。復興→成長促進から都銀のオーバーローン=日銀貸出依存の緩和が重点項目に移っていった時代です。
い ずれにしても、危機のときには「金融政策」以外の「政策金融」で中央銀行が果たす役割というのは大きいということですね。繭・生糸・農業漁業・鉄鋼という リアルな生産現場の後押しから株式市場まで、やろうと思えば何でもできちゃうという意味で、やりようによっては出番はいろいろあるのかも(ちなみに繭や農 業漁業、信用取引を支援しても別に通貨価値が毀損して騒ぎになった、という話はあまり聞きませんね。そういう点ではCPの適格担保化なんてカワイイもんか もしれません)。
銀行株式の買取り②
銀行が政策投資株式を保有することの効果についてつらつら考えていると、日銀自身が詳細に試算していました(「株式保有を前提とした銀行の企業取引の総合採算性について
」)。
結論をまとめるとこんな感じです。
・銀行に有利に計算しても、2000年~04年度までの全体的な採算は負であった。
・含み益を考慮すると、2005年度はプラスであるが、その度合いは小さい。
・個別企業の取引を積み上げて試算した場合でも、黒字の先は全体の4割であった。
・採算性が1%を超えている先は全体の先数の8~9%程度であった。
・銀行の株式保有動機を計測すると、相手先企業の業績が好いときには保有を増やしている
ものの、業績が悪化してもすぐに処分しているわけではないこと、その度合いは大企業の方
が高いこと。
さ まざまな仮定を置いた試算とはいえ上記のような結論であるならば、銀行の株式保有の意義はほとんど無いことになります。それどころか、価格のボラティリ ティが高くBIS比率を不安定にさせる分だけさらに損ともいえます(日銀の2008年9月の「金融システムレポート」も株式保有に関するリスクを正面から 指摘しています)。
ところで、銀行がどれだけ株式を保有しているかの集計データはすぐには分からないのですが、日銀の「金融システムレ ポート」のグラフ(図2-23)でみると、2007年度では都銀で15兆円、地銀で5兆円程度ということになります。今回の買取再開で日銀が1兆円、国 (取得機構)も2兆円程度の買取りを行うとすると合計で3兆円の買取りとなります。前回の買取り額が日銀2兆180億円、国1兆5,868億円で計3兆 6,048億円で、市中売却後の今の残高は両者計1兆7,296億円です。この残高と今回買取り分とを単純合算すると4兆7,296億円という規模になり ます。
これだけ買うともう「根雪」ですね。きっと次の景気循環が山越えた時期になっても売り切れないうちに3回目の買取りが始まるのではないかと・・。
別の問題として、自己資本に対する株式保有のリスク負担を解放すると貸出余力が高まり企業への貸し渋りや資金繰り難が緩和するという期待もあるかもしれま せん。これは株式買取により中央銀行預け金が増加するのだから、いわゆる「信用乗数効果」を通じて貸出が増えるのではないか、という話です。しかし実際に は信用乗数が安定していた試しはないし、そもそも預貸率が5~6割程度で低迷している金融機関では貸しようがありません。なかなか、上手い話はなさそうで す。
結論をまとめるとこんな感じです。
・銀行に有利に計算しても、2000年~04年度までの全体的な採算は負であった。
・含み益を考慮すると、2005年度はプラスであるが、その度合いは小さい。
・個別企業の取引を積み上げて試算した場合でも、黒字の先は全体の4割であった。
・採算性が1%を超えている先は全体の先数の8~9%程度であった。
・銀行の株式保有動機を計測すると、相手先企業の業績が好いときには保有を増やしている
ものの、業績が悪化してもすぐに処分しているわけではないこと、その度合いは大企業の方
が高いこと。
さ まざまな仮定を置いた試算とはいえ上記のような結論であるならば、銀行の株式保有の意義はほとんど無いことになります。それどころか、価格のボラティリ ティが高くBIS比率を不安定にさせる分だけさらに損ともいえます(日銀の2008年9月の「金融システムレポート」も株式保有に関するリスクを正面から 指摘しています)。
ところで、銀行がどれだけ株式を保有しているかの集計データはすぐには分からないのですが、日銀の「金融システムレ ポート」のグラフ(図2-23)でみると、2007年度では都銀で15兆円、地銀で5兆円程度ということになります。今回の買取再開で日銀が1兆円、国 (取得機構)も2兆円程度の買取りを行うとすると合計で3兆円の買取りとなります。前回の買取り額が日銀2兆180億円、国1兆5,868億円で計3兆 6,048億円で、市中売却後の今の残高は両者計1兆7,296億円です。この残高と今回買取り分とを単純合算すると4兆7,296億円という規模になり ます。
これだけ買うともう「根雪」ですね。きっと次の景気循環が山越えた時期になっても売り切れないうちに3回目の買取りが始まるのではないかと・・。
別の問題として、自己資本に対する株式保有のリスク負担を解放すると貸出余力が高まり企業への貸し渋りや資金繰り難が緩和するという期待もあるかもしれま せん。これは株式買取により中央銀行預け金が増加するのだから、いわゆる「信用乗数効果」を通じて貸出が増えるのではないか、という話です。しかし実際に は信用乗数が安定していた試しはないし、そもそも預貸率が5~6割程度で低迷している金融機関では貸しようがありません。なかなか、上手い話はなさそうで す。
株の買取りの効果
日銀の株の買取については日本政策投資銀行と日本銀行
で負担についてちょっと書きました。
今度は効果について考えてみます。
日銀が株式買取を発表したリリースをみると、
「株式保有リスク削減努力を支援し、金融システムの安定確保を図る。特に国際金融市場の緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まりなどを通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に影響を及ぼしている。特に株価の下落により多額の減損や評価損が計上されている」
と あります。具体的には株式は価格変動によって自己資本を直接毀損させるうえリスクウェイトも高いためBIS規制上、銀行経営に深刻な影響をおよぼしてい る、という認識でしょう。BIS比率の低下は貸出余力を低下させるとともに銀行経営そのものの信頼を低下させるからです。
ところで日銀 が株を買うと売り手の銀行には日銀当座預金が増えます。中央銀行預け金のリスクウェイトはゼロ%ですからBIS上の負担はありません。一方日銀預け金は収 益を生まないので銀行は最低所要分以外はなんらかの運用に回すことになります。これが信用創造ということになり通常は貸出に回るわけです。しかし今必要と されている企業向け貸出のリスクウェイトは株式同様かなり高いものです。また株式のような価格変動リスクは小さいものの、今度は信用リスクがあります。信 用リスクに対しては貸倒引当金の引当が必要ですが、BIS比率上の組入れには限度があり、しかもTierⅡ部分です。
そう考えると、「実際の効果ってどのくらいあるんだろう?」という気もします。しかも今は準備預金に金利をつけているので、銀行としてはあえてリスク資産に回さなくても金庫代分くらいはもらえてしまいます。問題の根っこは
・信用リスク
・BIS比率の計算の仕組み
な ので、この2つに整合する行動誘因を銀行側に与えるようにしないと金融的な目詰まりは止まらないかもしれません。信用リスクに対しては査定基準を一時的に 緩和するとか保証枠を広げるか(ただし一般企業に公的資金を注入する話とはまた別)、BIS比率の運用方法を調整するしかありません。
BIS比率をいじると国際的な比較可能性がなくなって却って銀行経営の信認が落ちるという話もありえますが、もともと具体的な適用・運用はかなり各国当局 の裁量に任されているはずです。そもそも規制のための道具ですから、時価会計(という民間の道具)をいじるよりよほど裁量的にいじっていいのではないかと 思います。大雑把な議論ですが。
まあ、こういう時期には「効果は不透明でも’やれることは何でもやる’という不退転の姿勢をみせること が政策責任者として大事」というのも実務ではよくある話なので否定はしません。ただし何でもやるとコストも増えるし「後でみると効果が無かったかもしれな い」というのもまたよく聞く話ですね。
今度は効果について考えてみます。
日銀が株式買取を発表したリリースをみると、
「株式保有リスク削減努力を支援し、金融システムの安定確保を図る。特に国際金融市場の緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まりなどを通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に影響を及ぼしている。特に株価の下落により多額の減損や評価損が計上されている」
と あります。具体的には株式は価格変動によって自己資本を直接毀損させるうえリスクウェイトも高いためBIS規制上、銀行経営に深刻な影響をおよぼしてい る、という認識でしょう。BIS比率の低下は貸出余力を低下させるとともに銀行経営そのものの信頼を低下させるからです。
ところで日銀 が株を買うと売り手の銀行には日銀当座預金が増えます。中央銀行預け金のリスクウェイトはゼロ%ですからBIS上の負担はありません。一方日銀預け金は収 益を生まないので銀行は最低所要分以外はなんらかの運用に回すことになります。これが信用創造ということになり通常は貸出に回るわけです。しかし今必要と されている企業向け貸出のリスクウェイトは株式同様かなり高いものです。また株式のような価格変動リスクは小さいものの、今度は信用リスクがあります。信 用リスクに対しては貸倒引当金の引当が必要ですが、BIS比率上の組入れには限度があり、しかもTierⅡ部分です。
そう考えると、「実際の効果ってどのくらいあるんだろう?」という気もします。しかも今は準備預金に金利をつけているので、銀行としてはあえてリスク資産に回さなくても金庫代分くらいはもらえてしまいます。問題の根っこは
・信用リスク
・BIS比率の計算の仕組み
な ので、この2つに整合する行動誘因を銀行側に与えるようにしないと金融的な目詰まりは止まらないかもしれません。信用リスクに対しては査定基準を一時的に 緩和するとか保証枠を広げるか(ただし一般企業に公的資金を注入する話とはまた別)、BIS比率の運用方法を調整するしかありません。
BIS比率をいじると国際的な比較可能性がなくなって却って銀行経営の信認が落ちるという話もありえますが、もともと具体的な適用・運用はかなり各国当局 の裁量に任されているはずです。そもそも規制のための道具ですから、時価会計(という民間の道具)をいじるよりよほど裁量的にいじっていいのではないかと 思います。大雑把な議論ですが。
まあ、こういう時期には「効果は不透明でも’やれることは何でもやる’という不退転の姿勢をみせること が政策責任者として大事」というのも実務ではよくある話なので否定はしません。ただし何でもやるとコストも増えるし「後でみると効果が無かったかもしれな い」というのもまたよく聞く話ですね。
一般企業に公的資金②
一般企業に公的資金を注入する枠組みが決まってきましたが、注入した資本が毀損しても国は5~8割しか補填しないようですね。しかしそれで規律が働くかというと分かりません。
金 融機関は債権を持っていますから、エクイティホルダーとは利益相反が存在します。もし再生の見込みのあまり無い企業なら、万一破綻でもすれば債権の弁済率 は数%に留まる可能性が高くなります。しかし国が損失補填してくれれば回収率は大幅に改善する可能性があります。したがって、債権者の論理でいえば、
・自力で再生可能な企業は自分で優先出資を入れて債権の確保とエクイティホルダーとしての
利益の双方をとる
・自力再生が難しい企業には国に資本注入を申請してもらって債権の保全を図る
と いう行動が合理的です。国に集まってくるのは「見込みのありそうな企業」ではなく「見込みのなさそうな企業」という可能性があるということです。経済学で いう「逆選択」ですね。債務の多寡は比較的わかっても「将来の成長性や重要性」を客観的に判断することは難しいので、なにはともあれ申請した方がトクに なってしまいます。
一方、金融機関側に再生努力へのインセンティブを与えるために、国といっしょに必ず出資することを補填の条件とした場合はど うでしょうか。再生の見込みのある企業はもともと自行だけでカバーするのだから国に支援を仰ぎません。再生の見込みの無い企業に申請させる場合、貸出に加 えて出資まですると、今度は破綻した場合に金融機関側で経営責任を問われる恐れがあります。国のお墨付きがあったのだから免責になるかというと、これは個 々の事例の差が大きいでしょうから一概にOKとはならないでしょう。また全件免責にしてしまうと一層モラルハザードを助長してしまうかもしれません。
国サイドの問題としては、選抜を厳格化したり経営責任を追及しすぎると誰も申請しなくなってしまうためハードルを低めざるを得ません。この辺りの「関係者の行動の誘因」をうまく制御する制度設計にしないと、仕組みを作っても閑古鳥になるかゴミ箱になってしまいます。
金 融機関は債権を持っていますから、エクイティホルダーとは利益相反が存在します。もし再生の見込みのあまり無い企業なら、万一破綻でもすれば債権の弁済率 は数%に留まる可能性が高くなります。しかし国が損失補填してくれれば回収率は大幅に改善する可能性があります。したがって、債権者の論理でいえば、
・自力で再生可能な企業は自分で優先出資を入れて債権の確保とエクイティホルダーとしての
利益の双方をとる
・自力再生が難しい企業には国に資本注入を申請してもらって債権の保全を図る
と いう行動が合理的です。国に集まってくるのは「見込みのありそうな企業」ではなく「見込みのなさそうな企業」という可能性があるということです。経済学で いう「逆選択」ですね。債務の多寡は比較的わかっても「将来の成長性や重要性」を客観的に判断することは難しいので、なにはともあれ申請した方がトクに なってしまいます。
一方、金融機関側に再生努力へのインセンティブを与えるために、国といっしょに必ず出資することを補填の条件とした場合はど うでしょうか。再生の見込みのある企業はもともと自行だけでカバーするのだから国に支援を仰ぎません。再生の見込みの無い企業に申請させる場合、貸出に加 えて出資まですると、今度は破綻した場合に金融機関側で経営責任を問われる恐れがあります。国のお墨付きがあったのだから免責になるかというと、これは個 々の事例の差が大きいでしょうから一概にOKとはならないでしょう。また全件免責にしてしまうと一層モラルハザードを助長してしまうかもしれません。
国サイドの問題としては、選抜を厳格化したり経営責任を追及しすぎると誰も申請しなくなってしまうためハードルを低めざるを得ません。この辺りの「関係者の行動の誘因」をうまく制御する制度設計にしないと、仕組みを作っても閑古鳥になるかゴミ箱になってしまいます。
有事の財務戦略(まとめ)
TierⅠクラスの上場大企業でも軒並み営業赤字が続出している中、「なんでもあり」のリストラ策や救済策が繰り出されつつあります。
頭の整理と備忘のために、やや原則に立ち戻って「有事の際に考えられる事業戦略・財務戦略」を羅列的にまとめておこうと思います。ファイナンスのBlogなので、BSとPLの形に添って挙げてみます(理論的には効果が疑問視されるものや前向きの戦略も含む)。
1.BS:資金の確保と資産の健全化
→ 売掛債権の回収(回収期間の短期化)、圧縮
→ 棚卸資産の圧縮
→ 不要な投資有価証券の売却
→ 遊休不動産、政策投資株式の処分
→ グループ会社の現金預金の集中管理による資金効率アップ(CMSの導入)
→ 不採算事業からの撤退
→ ノンコア子会社の戦略的売却
→ 売掛債権や貸付債権の証券化(ABS)、不動産証券化による現金の捻出
→ 新規事業投資案件の厳選
2.BS:負債面の安定化
→ 借入の長期化、新規借入
→ 政策金融公庫など公的機関の利用
→ 融資枠(コミットメントライン)の活用
→ CP発行
3.BS:資本面の充実
→ 株式買入、自己株式消却
→ 第三者割当増資
→ 優先株やCBによる調達
4.PL:売上の強化
→ 事業の選択集中、商品絞込み
→ 主力商品・事業の競争力強化、市場シェア確保
→ 低価格商品ライン等への複線化、顧客層拡大
→ 新規市場(購買層、地域など)の開拓
5.PL:支出のメリハリと圧縮
→ 仕入原価の徹底した見直し(単価交渉、仕入先・仕入地選別、原材料等の等級や種類の
集約・選別、共同仕入・物流の共同化等)
→ 人件費削減(稼働率引下げ、休業、派遣・臨時職員削減、正社員新規採用停止、役員
給与賞与カット、従業員賞与カット、無残業化、賃金カット、早期退職勧奨)
→ 外注費削減(外注先の選別・交渉、中国などへのアウトソース化)
→ 賃料削減(工場・事業所・店舗等の閉鎖・集約、賃料交渉、本社移転)
→ 広告宣伝費の絞込み
→ 償却方法の見直し
→ 借入利息引下げ
→ その他経費節減(社用車・福利厚生削減、水光熱費削減、交際費・出張費削減、リース化
の検討等)
→ 配当抑制
大 事なことは、「事業戦略あっての財務戦略」(キリンHDの古川CFO/日経2008年12月25日)という前提です。この方針の下に、すぐやれる資金繰り 確保などを進めると同時に不況期だからこそやれる割安なM&A投資や主力事業の一層の強化など前向きの投資は止めてはいけないということですね(それもま まならない財務状態は別として)。そうした意味で具体例を挙げるとこんな感じです。
(事業の選択と集中)
・電機大手の事業部門の統合交渉(東芝-富士通の半導体部品事業統合など)
(ノンコア子会社の売却)
・シティグループによる日興コーディアル・日興アセットマネジメントの売却(報道レベルですが)
・東芝による東芝不動産の野村グループへの売却
(不況下のM&Aによる市場シェア確保)
・新日石と新日鉱の経営統合
・キリンやアサヒによる海外事業買収
・三井住友海上、あいおい、ニッセイ同和の3損保統合
(低価格商品ラインの投入)
・アサヒのクリアアサヒの投入と拡販
・ピザハットの大幅値下げラインの投入
(新規事業への積極投資)
・電機各社の太陽電池生産強化
・三菱商事の新規事業枠の社長直轄化・重点化
(投資案件の厳選・凍結)
・三越伊勢丹の本店改装先送り、大丸浜松店の出店取り止めなど
(グループ資金の集約と効率化)
・ソニー、キャノン、日立、セブン&アイなどにおけるCMSの導入・活用
(CBなどによる大規模調達)
・エルピーダメモリ(結果としてほぼ失敗→償還)
(ABSによる調達)
・トヨタやホンダの米国自動車販売金融子会社によるABS発行
(不動産証券化による調達)
・イオンの店舗証券化推進
(操業停止・休業・派遣社員の削減等)
・自動車・鉄鋼各社など
(賃金カットによる雇用の維持)
・日本電産
こ うした各社の自助努力がまずあって、その上でなお対応できない事態があれば別ですが、一般事業会社に公的資金だとかいう議論が先走っているのは解せないで すね。リーマンショックはたしかに大変な事件ではありましたが、まだそこから半年経つかどうかです。また、そもそも景気の山は2007年秋だったと判定さ れているのですから、「100年に一度の危機」を煽りすぎるのはどうなんでしょうか・・・。
頭の整理と備忘のために、やや原則に立ち戻って「有事の際に考えられる事業戦略・財務戦略」を羅列的にまとめておこうと思います。ファイナンスのBlogなので、BSとPLの形に添って挙げてみます(理論的には効果が疑問視されるものや前向きの戦略も含む)。
1.BS:資金の確保と資産の健全化
→ 売掛債権の回収(回収期間の短期化)、圧縮
→ 棚卸資産の圧縮
→ 不要な投資有価証券の売却
→ 遊休不動産、政策投資株式の処分
→ グループ会社の現金預金の集中管理による資金効率アップ(CMSの導入)
→ 不採算事業からの撤退
→ ノンコア子会社の戦略的売却
→ 売掛債権や貸付債権の証券化(ABS)、不動産証券化による現金の捻出
→ 新規事業投資案件の厳選
2.BS:負債面の安定化
→ 借入の長期化、新規借入
→ 政策金融公庫など公的機関の利用
→ 融資枠(コミットメントライン)の活用
→ CP発行
3.BS:資本面の充実
→ 株式買入、自己株式消却
→ 第三者割当増資
→ 優先株やCBによる調達
4.PL:売上の強化
→ 事業の選択集中、商品絞込み
→ 主力商品・事業の競争力強化、市場シェア確保
→ 低価格商品ライン等への複線化、顧客層拡大
→ 新規市場(購買層、地域など)の開拓
5.PL:支出のメリハリと圧縮
→ 仕入原価の徹底した見直し(単価交渉、仕入先・仕入地選別、原材料等の等級や種類の
集約・選別、共同仕入・物流の共同化等)
→ 人件費削減(稼働率引下げ、休業、派遣・臨時職員削減、正社員新規採用停止、役員
給与賞与カット、従業員賞与カット、無残業化、賃金カット、早期退職勧奨)
→ 外注費削減(外注先の選別・交渉、中国などへのアウトソース化)
→ 賃料削減(工場・事業所・店舗等の閉鎖・集約、賃料交渉、本社移転)
→ 広告宣伝費の絞込み
→ 償却方法の見直し
→ 借入利息引下げ
→ その他経費節減(社用車・福利厚生削減、水光熱費削減、交際費・出張費削減、リース化
の検討等)
→ 配当抑制
大 事なことは、「事業戦略あっての財務戦略」(キリンHDの古川CFO/日経2008年12月25日)という前提です。この方針の下に、すぐやれる資金繰り 確保などを進めると同時に不況期だからこそやれる割安なM&A投資や主力事業の一層の強化など前向きの投資は止めてはいけないということですね(それもま まならない財務状態は別として)。そうした意味で具体例を挙げるとこんな感じです。
(事業の選択と集中)
・電機大手の事業部門の統合交渉(東芝-富士通の半導体部品事業統合など)
(ノンコア子会社の売却)
・シティグループによる日興コーディアル・日興アセットマネジメントの売却(報道レベルですが)
・東芝による東芝不動産の野村グループへの売却
(不況下のM&Aによる市場シェア確保)
・新日石と新日鉱の経営統合
・キリンやアサヒによる海外事業買収
・三井住友海上、あいおい、ニッセイ同和の3損保統合
(低価格商品ラインの投入)
・アサヒのクリアアサヒの投入と拡販
・ピザハットの大幅値下げラインの投入
(新規事業への積極投資)
・電機各社の太陽電池生産強化
・三菱商事の新規事業枠の社長直轄化・重点化
(投資案件の厳選・凍結)
・三越伊勢丹の本店改装先送り、大丸浜松店の出店取り止めなど
(グループ資金の集約と効率化)
・ソニー、キャノン、日立、セブン&アイなどにおけるCMSの導入・活用
(CBなどによる大規模調達)
・エルピーダメモリ(結果としてほぼ失敗→償還)
(ABSによる調達)
・トヨタやホンダの米国自動車販売金融子会社によるABS発行
(不動産証券化による調達)
・イオンの店舗証券化推進
(操業停止・休業・派遣社員の削減等)
・自動車・鉄鋼各社など
(賃金カットによる雇用の維持)
・日本電産
こ うした各社の自助努力がまずあって、その上でなお対応できない事態があれば別ですが、一般事業会社に公的資金だとかいう議論が先走っているのは解せないで すね。リーマンショックはたしかに大変な事件ではありましたが、まだそこから半年経つかどうかです。また、そもそも景気の山は2007年秋だったと判定さ れているのですから、「100年に一度の危機」を煽りすぎるのはどうなんでしょうか・・・。