株の買取りの効果 | 謎の金融日誌

株の買取りの効果

日銀の株の買取については日本政策投資銀行と日本銀行 で負担についてちょっと書きました。

今度は効果について考えてみます。

日銀が株式買取を発表したリリースをみると、

「株式保有リスク削減努力を支援し、金融システムの安定確保を図る。特に国際金融市場の緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まりなどを通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に影響を及ぼしている。特に株価の下落により多額の減損や評価損が計上されている」

と あります。具体的には株式は価格変動によって自己資本を直接毀損させるうえリスクウェイトも高いためBIS規制上、銀行経営に深刻な影響をおよぼしてい る、という認識でしょう。BIS比率の低下は貸出余力を低下させるとともに銀行経営そのものの信頼を低下させるからです。

 ところで日銀 が株を買うと売り手の銀行には日銀当座預金が増えます。中央銀行預け金のリスクウェイトはゼロ%ですからBIS上の負担はありません。一方日銀預け金は収 益を生まないので銀行は最低所要分以外はなんらかの運用に回すことになります。これが信用創造ということになり通常は貸出に回るわけです。しかし今必要と されている企業向け貸出のリスクウェイトは株式同様かなり高いものです。また株式のような価格変動リスクは小さいものの、今度は信用リスクがあります。信 用リスクに対しては貸倒引当金の引当が必要ですが、BIS比率上の組入れには限度があり、しかもTierⅡ部分です。

 そう考えると、「実際の効果ってどのくらいあるんだろう?」という気もします。しかも今は準備預金に金利をつけているので、銀行としてはあえてリスク資産に回さなくても金庫代分くらいはもらえてしまいます。問題の根っこは

・信用リスク
・BIS比率の計算の仕組み

な ので、この2つに整合する行動誘因を銀行側に与えるようにしないと金融的な目詰まりは止まらないかもしれません。信用リスクに対しては査定基準を一時的に 緩和するとか保証枠を広げるか(ただし一般企業に公的資金を注入する話とはまた別)、BIS比率の運用方法を調整するしかありません。

  BIS比率をいじると国際的な比較可能性がなくなって却って銀行経営の信認が落ちるという話もありえますが、もともと具体的な適用・運用はかなり各国当局 の裁量に任されているはずです。そもそも規制のための道具ですから、時価会計(という民間の道具)をいじるよりよほど裁量的にいじっていいのではないかと 思います。大雑把な議論ですが。

 まあ、こういう時期には「効果は不透明でも’やれることは何でもやる’という不退転の姿勢をみせること が政策責任者として大事」というのも実務ではよくある話なので否定はしません。ただし何でもやるとコストも増えるし「後でみると効果が無かったかもしれな い」というのもまたよく聞く話ですね。