一般企業に公的資金② | 謎の金融日誌

一般企業に公的資金②

一般企業に公的資金を注入する枠組みが決まってきましたが、注入した資本が毀損しても国は5~8割しか補填しないようですね。しかしそれで規律が働くかというと分かりません。

金 融機関は債権を持っていますから、エクイティホルダーとは利益相反が存在します。もし再生の見込みのあまり無い企業なら、万一破綻でもすれば債権の弁済率 は数%に留まる可能性が高くなります。しかし国が損失補填してくれれば回収率は大幅に改善する可能性があります。したがって、債権者の論理でいえば、

 ・自力で再生可能な企業は自分で優先出資を入れて債権の確保とエクイティホルダーとしての
  利益の双方をとる
 ・自力再生が難しい企業には国に資本注入を申請してもらって債権の保全を図る

と いう行動が合理的です。国に集まってくるのは「見込みのありそうな企業」ではなく「見込みのなさそうな企業」という可能性があるということです。経済学で いう「逆選択」ですね。債務の多寡は比較的わかっても「将来の成長性や重要性」を客観的に判断することは難しいので、なにはともあれ申請した方がトクに なってしまいます。
 一方、金融機関側に再生努力へのインセンティブを与えるために、国といっしょに必ず出資することを補填の条件とした場合はど うでしょうか。再生の見込みのある企業はもともと自行だけでカバーするのだから国に支援を仰ぎません。再生の見込みの無い企業に申請させる場合、貸出に加 えて出資まですると、今度は破綻した場合に金融機関側で経営責任を問われる恐れがあります。国のお墨付きがあったのだから免責になるかというと、これは個 々の事例の差が大きいでしょうから一概にOKとはならないでしょう。また全件免責にしてしまうと一層モラルハザードを助長してしまうかもしれません。
 国サイドの問題としては、選抜を厳格化したり経営責任を追及しすぎると誰も申請しなくなってしまうためハードルを低めざるを得ません。この辺りの「関係者の行動の誘因」をうまく制御する制度設計にしないと、仕組みを作っても閑古鳥になるかゴミ箱になってしまいます。