株価評価:DCF④ 終価の見積りなど
1.終価
・DCF法ではキャッシュフローを予測する将来期間はだいたい5期程度です。しかし評価対象は会社の株式ですから、債券や不動産ファンドと違って5期が済んだら元本償還するとかブツを売って清算するといったことはできません。永続を前提に考えるわけです。
・ しかし6期め以降のキャッシュフローを精緻に見積もることは難しいし現実的ではありません。そこで最終期のキャッシュフローに対して一定の成長率(永久成 長率)を掛けることにより、6期め以降のキャッシュフローをひとまとめとして扱う便法が用いられます。この「ひとまとめにされた将来のキャッシュフロー」 を終価=Terminal Valueとよびます。テクニカルには最終期のキャッシュフローを(割引率-成長率)で割り、その値をさらに現在価値に直します(割引率>成長率だと終価 が負になってしまうので、そのような設定はしません)。
・DCFではこの終価が企業価値全体に占める割合が非常に大きくなることがありますので、成長率の設定は注意が必要です。
2.最終ラップ
・終価の算出まできたらあと一息です。事業計画期間における各期のキャッシュフローの現在価値と終価の現在価値を合計します。これが「事業価値」になります。
・事業価値に直近の現金等価物を加え、有利子負債を引きます。これで「株式時価総額」が出ます。
・株式時価総額を発行済株式数+新規発行株式数で割れば、資金調達後(ポストマネー)の1株価値=株価が求められます。ストックオプションなどの数も加えて割れば、「希薄化後株価」を知ることもできます。
・DCF法ではキャッシュフローを予測する将来期間はだいたい5期程度です。しかし評価対象は会社の株式ですから、債券や不動産ファンドと違って5期が済んだら元本償還するとかブツを売って清算するといったことはできません。永続を前提に考えるわけです。
・ しかし6期め以降のキャッシュフローを精緻に見積もることは難しいし現実的ではありません。そこで最終期のキャッシュフローに対して一定の成長率(永久成 長率)を掛けることにより、6期め以降のキャッシュフローをひとまとめとして扱う便法が用いられます。この「ひとまとめにされた将来のキャッシュフロー」 を終価=Terminal Valueとよびます。テクニカルには最終期のキャッシュフローを(割引率-成長率)で割り、その値をさらに現在価値に直します(割引率>成長率だと終価 が負になってしまうので、そのような設定はしません)。
・DCFではこの終価が企業価値全体に占める割合が非常に大きくなることがありますので、成長率の設定は注意が必要です。
2.最終ラップ
・終価の算出まできたらあと一息です。事業計画期間における各期のキャッシュフローの現在価値と終価の現在価値を合計します。これが「事業価値」になります。
・事業価値に直近の現金等価物を加え、有利子負債を引きます。これで「株式時価総額」が出ます。
・株式時価総額を発行済株式数+新規発行株式数で割れば、資金調達後(ポストマネー)の1株価値=株価が求められます。ストックオプションなどの数も加えて割れば、「希薄化後株価」を知ることもできます。
株式評価:DCF法③ 割引率について
・DCF法でキャッシュフローとともに価値を決める要素が「割引率」です。
1.割引率の定義
・割引率は「要求収益率」とか「必要収益率」などとも呼ばれます。投資家が投資プロジェクトに資金を拠出する際に求める最低限の収益率だからです。プロジェクトを実施する側(資金調達する側)からみれば「資本コスト」に当ります。
・ なお、割引率という言葉からの連想として「市場金利」と混同される場合がありますが違います。割引率は株式投資、債券投資など投資全般に対して要求される 収益率とリスクプレミアムの和です。一方「金利」はあくまで貸出や社債の利息=負債ホルダー(債権者に)とっての収益率になります。では、株式の方の収益 率はどうやって求めるのかというと、結論を先取りすればCAPM(Capital Asset Pricing Model=資本資産価格モデル)から求めます。CAPMから求めないといけないという強制性はないのですが、現在の株式期待収益率の決定理論としてもっ とも普及している方法論です。CAPMの導出はそれだけで1冊の本になりますが、以下簡単に説明します。
2.CAPM
・CAPM は、個別株式の期待収益率(上記にいう必要収益率をCAPM的にはこうよびます)を安全資産(国債など分散がゼロである資産)と市場ポートフォリオの期待 収益率との関係式として示したものです。具体的には、リスクのある個別株式の期待収益率は、安全な資産の収益率に加えてその個別株式の収益率と市場全体の 動きを示すポートフォリオの収益率の差=リスクプレミアムとリスクファクター(ベータといいます)を掛け合わせたものの和になるという考え方です。
・評価対象が上場株式ならば公表情報からベータを計算します。すなわちまず現状の負債比率の影響を排除するためにアンレバードベータ(エクイティべーた)に修正します。その上で新しい負債比率の下で修正されたベータに変換します。このベータを用いて期待収益率を求めます。
・ 一方、非上場会社の場合は上場している類似会社を選定してベータを求めますが、上場企業よりもリスクプレミアムが諸事情から明らかに高いと思われる場合も あるでしょう。その場合は試算された要求収益率に適宜定数を加える/定数を掛けるといった調整が行われます。この「定数」がどの程度なのかは案件や諸条件 によりまちまちで、評価者により異なるものとしかいえません。またそもそも市場データからベータを求める場合も、過去の収益率データの採用期間をどの程度 とるか、類似会社をどう選定するかといった問題に判断が必要ですから、完全に客観的な収益率を定めることは難しいといえるでしょう。
3.WACC
・結局、割引率とは株式と負債それぞれの必要収益率を残高で加重平均したものとなります。すなわちWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)を用いることになります。
・このとき負債の利子率には(1-法人税率)をかけます。分子のキャッシュフローで負債の節税効果を考慮していませんでしたが、分母の割引率において負債利子の税控除を勘案していることになります。
1.割引率の定義
・割引率は「要求収益率」とか「必要収益率」などとも呼ばれます。投資家が投資プロジェクトに資金を拠出する際に求める最低限の収益率だからです。プロジェクトを実施する側(資金調達する側)からみれば「資本コスト」に当ります。
・ なお、割引率という言葉からの連想として「市場金利」と混同される場合がありますが違います。割引率は株式投資、債券投資など投資全般に対して要求される 収益率とリスクプレミアムの和です。一方「金利」はあくまで貸出や社債の利息=負債ホルダー(債権者に)とっての収益率になります。では、株式の方の収益 率はどうやって求めるのかというと、結論を先取りすればCAPM(Capital Asset Pricing Model=資本資産価格モデル)から求めます。CAPMから求めないといけないという強制性はないのですが、現在の株式期待収益率の決定理論としてもっ とも普及している方法論です。CAPMの導出はそれだけで1冊の本になりますが、以下簡単に説明します。
2.CAPM
・CAPM は、個別株式の期待収益率(上記にいう必要収益率をCAPM的にはこうよびます)を安全資産(国債など分散がゼロである資産)と市場ポートフォリオの期待 収益率との関係式として示したものです。具体的には、リスクのある個別株式の期待収益率は、安全な資産の収益率に加えてその個別株式の収益率と市場全体の 動きを示すポートフォリオの収益率の差=リスクプレミアムとリスクファクター(ベータといいます)を掛け合わせたものの和になるという考え方です。
・評価対象が上場株式ならば公表情報からベータを計算します。すなわちまず現状の負債比率の影響を排除するためにアンレバードベータ(エクイティべーた)に修正します。その上で新しい負債比率の下で修正されたベータに変換します。このベータを用いて期待収益率を求めます。
・ 一方、非上場会社の場合は上場している類似会社を選定してベータを求めますが、上場企業よりもリスクプレミアムが諸事情から明らかに高いと思われる場合も あるでしょう。その場合は試算された要求収益率に適宜定数を加える/定数を掛けるといった調整が行われます。この「定数」がどの程度なのかは案件や諸条件 によりまちまちで、評価者により異なるものとしかいえません。またそもそも市場データからベータを求める場合も、過去の収益率データの採用期間をどの程度 とるか、類似会社をどう選定するかといった問題に判断が必要ですから、完全に客観的な収益率を定めることは難しいといえるでしょう。
3.WACC
・結局、割引率とは株式と負債それぞれの必要収益率を残高で加重平均したものとなります。すなわちWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)を用いることになります。
・このとき負債の利子率には(1-法人税率)をかけます。分子のキャッシュフローで負債の節税効果を考慮していませんでしたが、分母の割引率において負債利子の税控除を勘案していることになります。
株式評価:DCF法②:キャッシュフローの求め方
・資産価値評価の一般論は「キャッシュフローの将来の値の期待値を合計して、現在の価値に割り引いて求める」と書きました。まず何はともあれキャッシュフローを求めないと始まりません。ここではその流れをみてみます。
1.キャッシュという言葉の定義について
・ いきなり計算式出す前に、「キャッシュ」とか「キャッシュフロー」という言葉について確認します。キャッシュはそのまま字のとおり受けとれば現金という意 味ですが、単に出納帳や預金通帳の記帳をすれば分かるというものではありません。資金繰り表(経常収支表)の数字とも違います。
・株式評価や企業 価値評価でいうキャッシュフローは、財務会計(決算書)で発生主義で表示されている収益や資産・負債の変動を現金ベースに置き換えて表示されるものです。 なぜそのような求め方をするのかというと、財務会計の数字は全ての企業にとって共通の基礎ツールだからです。資金繰り表や出納帳は社内で用いられるコン フィデンシャルなものですから、対外的な開示を前提として組み立てられている企業会計原則や財務諸表等規則といったようなすべての企業に共通する処理規則 や表示ルールがありません。これは諸外国でも同じです。一方、株価評価や企業価値評価は外部の関係者がなるべく客観的な方法・他の案件や過去の事例と比較 可能な方法で行われることが望ましいです。ですから価値評価では決算書の数字を加工してキャッシュに直していくというプロセスを踏むのです。
※た だし、資金繰り表(経常収支表)を使ってはいけないと「公的に決まっている」わけではありません。実務の慣行です。実は経常収支表などを精緻に作っていれ ば、キャッシュの変動は決算書から作るものと同じになる場合もあるでしょう。実際、有価証券報告書提出会社が作成する「キャッシュフロー計算書」は決算書 からも作成できるし(間接法)、個々の取引を現金ベースで積み上げても同じ結果を求められるのです(直接法)。
2.誰にとっての価値?
・ここで、資産価値という言葉をもっと具体的に定義しておきます。というのは、キャッシュフローといっても誰にとってのキャッシュフロー評価なのか、が問題になるからです。投資家一般?債権者?株主?など視点はいろいろあります。
・そのために、事業価値、企業価値、株主価値といった混同しやすい言葉を以下のように整理します。
イ.事業価値=事業が生み出すキャッシュフローの期待値の割引現在価値の合計
ロ.非事業性資産=その企業の本業、事業と関係の薄い資産の価値。たとえば遊休不動産、余資運用で保有している投資有価証券など。負債として非事業性負債があれば、それを相殺して非事業性純資産と捉えることもあります。
ハ.企業価値=事業価値+非事業性資産
ニ.有利子負債=受取手形+短期借入金+長期借入金+社債+CP等(支払手形、未払費用など金利の発生しないものは含まない)
ホ.株主価値=企業価値-有利子負債
・ 上場企業の場合、理論的には、この株主価値が株式時価総額より小さければ割安評価、大きければ割高評価されているということになります。なお企業買収など で、買収価額(有利子負債+株式)が算定された企業価値(事業価値+非事業性資産)を超えることもあるでしょう。その場合は「超えた」部分がいわゆる「の れん代」ということになります。
・さて、上記から「企業価値評価」という場合には価値を享受する対象は投資家=債権者+株主になります。「株式価値評価」という場合には価値を享受するのは投資家=株主になります。キャッシュフローも企業価値に対応するものと株式に対応するものとは異なることになります。
3.キャッシュフローの求め方
・前置きが長くなりましたが、キャッシュフローの計算式は以下のとおりです。
(1)企業価値全体を算定してから株式価値を求める場合
企業価値
=FCFF(Free Cashflow to Firm)
=営業利益×(1-法人税率)+減価償却-設備投資-運転資本増減(△)
・ここで求めた企業価値から有利子負債を控除すれば株式価値となります。
・ 式の意味は以下のとおりです。まずキャッシュフローの出発的として「利益」を使うのはよいとして営業利益を使う理由。これは企業価値がが株主+債権者を合 せた投資家全体だからです。純利益や経常利益では債権者への支払利息を控除した後なので(営業外費用)使えません。次に法人税を控除するのは、投資家全体 としては会社のキャッシュフローから政府へのキャッシュフローを支払わなければいけないからです。なお、負債があるときは利息の税控除により企業価値に 「節税効果」が見込まれるわけですが、企業価値の算定では事前に負債があることを前提にしてしまってはトートロジーになってしまうので、100%株式調達 の場合に置き換えてキャッシュフローの価値を考えます。負債の効果は割引率において考慮します(後述)。減価償却額を足すのは、これが非現金の費用項目だ からです。費用として計上されていても実際にはキャッシュアウトしないので、足し戻すことになります。設備投資は投資キャッシュフローとして現金流出にな りますので控除します。運転資本増減は、売上・費用の計上と実際のキャッシュイン・アウトのズレを表しています。たとえば、売上が増えてもその分売掛金に なっていれば、キャッシュフロー上はマイナスです。逆に仕入れをしても掛けで買っていればその分キャッシュフロー上はプラスになるというわけです。
(2)株主価値を算定する場合
株主価値
=FCFE(Free Cashflow to Equity)
=税引後純利益+減価償却-設備投資-運転資本増減(△)-負債返済+新規負債増加
・ この式は(1)と似ていりますが、企業価値を経ずに直接株主に対応するキャッシュフローを求めています。したがって出発点となる利益は税引後の「純利益」 になっています。また債権者を区別していますから、新規の負債の調達と返済はキャッシュイン・アウトに影響を与える存在としてカウントされています。
1.キャッシュという言葉の定義について
・ いきなり計算式出す前に、「キャッシュ」とか「キャッシュフロー」という言葉について確認します。キャッシュはそのまま字のとおり受けとれば現金という意 味ですが、単に出納帳や預金通帳の記帳をすれば分かるというものではありません。資金繰り表(経常収支表)の数字とも違います。
・株式評価や企業 価値評価でいうキャッシュフローは、財務会計(決算書)で発生主義で表示されている収益や資産・負債の変動を現金ベースに置き換えて表示されるものです。 なぜそのような求め方をするのかというと、財務会計の数字は全ての企業にとって共通の基礎ツールだからです。資金繰り表や出納帳は社内で用いられるコン フィデンシャルなものですから、対外的な開示を前提として組み立てられている企業会計原則や財務諸表等規則といったようなすべての企業に共通する処理規則 や表示ルールがありません。これは諸外国でも同じです。一方、株価評価や企業価値評価は外部の関係者がなるべく客観的な方法・他の案件や過去の事例と比較 可能な方法で行われることが望ましいです。ですから価値評価では決算書の数字を加工してキャッシュに直していくというプロセスを踏むのです。
※た だし、資金繰り表(経常収支表)を使ってはいけないと「公的に決まっている」わけではありません。実務の慣行です。実は経常収支表などを精緻に作っていれ ば、キャッシュの変動は決算書から作るものと同じになる場合もあるでしょう。実際、有価証券報告書提出会社が作成する「キャッシュフロー計算書」は決算書 からも作成できるし(間接法)、個々の取引を現金ベースで積み上げても同じ結果を求められるのです(直接法)。
2.誰にとっての価値?
・ここで、資産価値という言葉をもっと具体的に定義しておきます。というのは、キャッシュフローといっても誰にとってのキャッシュフロー評価なのか、が問題になるからです。投資家一般?債権者?株主?など視点はいろいろあります。
・そのために、事業価値、企業価値、株主価値といった混同しやすい言葉を以下のように整理します。
イ.事業価値=事業が生み出すキャッシュフローの期待値の割引現在価値の合計
ロ.非事業性資産=その企業の本業、事業と関係の薄い資産の価値。たとえば遊休不動産、余資運用で保有している投資有価証券など。負債として非事業性負債があれば、それを相殺して非事業性純資産と捉えることもあります。
ハ.企業価値=事業価値+非事業性資産
ニ.有利子負債=受取手形+短期借入金+長期借入金+社債+CP等(支払手形、未払費用など金利の発生しないものは含まない)
ホ.株主価値=企業価値-有利子負債
・ 上場企業の場合、理論的には、この株主価値が株式時価総額より小さければ割安評価、大きければ割高評価されているということになります。なお企業買収など で、買収価額(有利子負債+株式)が算定された企業価値(事業価値+非事業性資産)を超えることもあるでしょう。その場合は「超えた」部分がいわゆる「の れん代」ということになります。
・さて、上記から「企業価値評価」という場合には価値を享受する対象は投資家=債権者+株主になります。「株式価値評価」という場合には価値を享受するのは投資家=株主になります。キャッシュフローも企業価値に対応するものと株式に対応するものとは異なることになります。
3.キャッシュフローの求め方
・前置きが長くなりましたが、キャッシュフローの計算式は以下のとおりです。
(1)企業価値全体を算定してから株式価値を求める場合
企業価値
=FCFF(Free Cashflow to Firm)
=営業利益×(1-法人税率)+減価償却-設備投資-運転資本増減(△)
・ここで求めた企業価値から有利子負債を控除すれば株式価値となります。
・ 式の意味は以下のとおりです。まずキャッシュフローの出発的として「利益」を使うのはよいとして営業利益を使う理由。これは企業価値がが株主+債権者を合 せた投資家全体だからです。純利益や経常利益では債権者への支払利息を控除した後なので(営業外費用)使えません。次に法人税を控除するのは、投資家全体 としては会社のキャッシュフローから政府へのキャッシュフローを支払わなければいけないからです。なお、負債があるときは利息の税控除により企業価値に 「節税効果」が見込まれるわけですが、企業価値の算定では事前に負債があることを前提にしてしまってはトートロジーになってしまうので、100%株式調達 の場合に置き換えてキャッシュフローの価値を考えます。負債の効果は割引率において考慮します(後述)。減価償却額を足すのは、これが非現金の費用項目だ からです。費用として計上されていても実際にはキャッシュアウトしないので、足し戻すことになります。設備投資は投資キャッシュフローとして現金流出にな りますので控除します。運転資本増減は、売上・費用の計上と実際のキャッシュイン・アウトのズレを表しています。たとえば、売上が増えてもその分売掛金に なっていれば、キャッシュフロー上はマイナスです。逆に仕入れをしても掛けで買っていればその分キャッシュフロー上はプラスになるというわけです。
(2)株主価値を算定する場合
株主価値
=FCFE(Free Cashflow to Equity)
=税引後純利益+減価償却-設備投資-運転資本増減(△)-負債返済+新規負債増加
・ この式は(1)と似ていりますが、企業価値を経ずに直接株主に対応するキャッシュフローを求めています。したがって出発点となる利益は税引後の「純利益」 になっています。また債権者を区別していますから、新規の負債の調達と返済はキャッシュイン・アウトに影響を与える存在としてカウントされています。
株式評価:ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法①
1.資産価値の一般論
・ディスカウント・キャッシュフロー法(以下DCF法)について説明する前に、まず資産一般の評価方法の基礎についてファイ ナンス論の見地から簡単にみてみます。資産評価の方法論といっても会計的評価とか税務上の評価など分野によって色々な視角があるわけです。しかし会計制度 や税務が国により時代により様々である一方、そうした考え方の基礎に共通する方法論としてのファイナンス的な考え方は、もともとはごく単純な(そして重要 な)ものなので、ここを出発点とするのが自然なわけです。それは以下の説明に集約されます:
(資産の価値の一般的な求め方)
「資産の価値は、その資産が生み出す将来のキャッシュフローの予想値(期待値)を現在の値に割引きしたものの合計である」
上 記の説明では、ある資産を保有していることで将来にわたって毎期配当なり利息なりがもたらされるとすれば、それらをずーっと先まで合計したものがその資産 が稼ぎ出す価値だろう、と考えるわけです。ただし将来の配当や利息は現在では分からないから予想を立てて積み上げるしかないし、将来の価値は不確実だから 今の価値より割り引いてみる必要があると捉えるわけです。いたってシンプルで当り前の方法論です。
・ただし、実際に数字を求めるためのポイントとしては、
イ.将来のキャッシュフロー
ロ.予想値(期待値)
ハ.割引き
という3つのキーワードが重要で、求め方にはテクニカルな面があります。以下この点について説明していきます。
2.「キャッシュフロー」「期待値」「割引率」が重要
(1)将来キャッシュフロー
・ 資産価値を評価するために、その資産が将来生み出す価値が重要というのは自然ですが、キャッシュフローというものにこだわる意味は以下のとおりです。会計 的な利息や配当、利益といった概念は制度上の概念ですから経営者(資産の提供者)によって恣意的に変わるおそれがあります。たとえば減価償却方法や棚卸資 産の評価方法の変更、繰延資産や各種の引当金の見積り、売掛金や買掛金の計上などによって毎期の決算数値は相当変えることができてしまいます。一方、会社 に本来あるキャッシュ(現金)の動きは-粉飾とかは別にして-勘定科目をいじってもあまり動かすことはできませんから、ファイナンスで価値という場合には 毎期のキャッシュの流れ=キャッシュフローが重視されることになります。
※上記のように書くと「それでは会計の意味って何よ?」とか言わ れそうですが役割が違います。「会計」といっても大別すると3種類(会社法会計・金融商品取引法会計・税務会計)があります。会社法会計は債権者・株主保 護を目的として配当可能利益を算定することを主眼とします。金融商品取引法会計は、投資家全般の保護を目的として、経営成績とキャッシュフローを開示する ことを主眼としています。税務会計は法人税の課税を目的として、課税標準額を算定するためにあります。この中でも基礎となるのは会社法会計です。そこでは 一定期間の売上・費用を正しく配分し経営成績と財政状態を記述することが重視されています。その結果として配当可能利益も出てくることになります。
・ファイナンスでいうキャッシュと会計でいう利益は違うといいました。言ったそばからナンですが、ファイナンスで使うキャッシュフローは会計から求めます。もっというと財務諸表の数字を加工することで、キャッシュに変換して求めます。求め方はまた別途説明します。
(2)期待値
・ 将来のキャッシュフローは当然今分かりませんから、不確実な数字です。今日の100万円は明日1120万円かもしれないし、90万円かもしれないし50万 円かもしれません。したがって将来取り得る数字の「幅」を見積もってその平均値を用いるのが自然ですね。この平均値(予想値)を期待値といいます。取り得 る値の幅は事業計画や会社の成長性やリスクによってさまざまと思いますので、評価する側が資産の提供者から情報提供を受けたり、過去のデータを分析した り、理論モデルを構築してシミュレーションすることなどで予測することになります。この予測手法のひとつが金融工学なわけです。
なお、「期待値」という言葉ですが、ある特定の値になることを「期待している」という意味ではなく、予想の平均値といったほどの意味です。
(3)割引率
・ 将来のキャッシュフローの期待値は求めたものの、それだけでは使い物になりません。今の100万円と1年後の100万円、5年後の100万円の価値が違う のは何もむずかしいこと言わなくても当たり前ですね。今100万円もらったらそれを年利1%の定期預金で1年運用したら101万円くらいにはなるでしょ う。5年間運用したら105万円くらいにはなると予想できますね。これを将来価値からみてみます。運用して1年後に100万円になっているお金の価値は 1%で割り引くと99万円くらいです。運用して5年後に100万円になっているお金を今の値段に直せばもともと95万円とちょっとになります。この将来の 値を今の値段(現在価値)に割引くためのレートを「割引率」といいます。このレートは自分のカンで決めたっていいのですが、それでは評価の客観性も何もな いですから、決めるための理論がちゃんとあります。それはまた日を改めて、ということとします。
・ディスカウント・キャッシュフロー法(以下DCF法)について説明する前に、まず資産一般の評価方法の基礎についてファイ ナンス論の見地から簡単にみてみます。資産評価の方法論といっても会計的評価とか税務上の評価など分野によって色々な視角があるわけです。しかし会計制度 や税務が国により時代により様々である一方、そうした考え方の基礎に共通する方法論としてのファイナンス的な考え方は、もともとはごく単純な(そして重要 な)ものなので、ここを出発点とするのが自然なわけです。それは以下の説明に集約されます:
(資産の価値の一般的な求め方)
「資産の価値は、その資産が生み出す将来のキャッシュフローの予想値(期待値)を現在の値に割引きしたものの合計である」
上 記の説明では、ある資産を保有していることで将来にわたって毎期配当なり利息なりがもたらされるとすれば、それらをずーっと先まで合計したものがその資産 が稼ぎ出す価値だろう、と考えるわけです。ただし将来の配当や利息は現在では分からないから予想を立てて積み上げるしかないし、将来の価値は不確実だから 今の価値より割り引いてみる必要があると捉えるわけです。いたってシンプルで当り前の方法論です。
・ただし、実際に数字を求めるためのポイントとしては、
イ.将来のキャッシュフロー
ロ.予想値(期待値)
ハ.割引き
という3つのキーワードが重要で、求め方にはテクニカルな面があります。以下この点について説明していきます。
2.「キャッシュフロー」「期待値」「割引率」が重要
(1)将来キャッシュフロー
・ 資産価値を評価するために、その資産が将来生み出す価値が重要というのは自然ですが、キャッシュフローというものにこだわる意味は以下のとおりです。会計 的な利息や配当、利益といった概念は制度上の概念ですから経営者(資産の提供者)によって恣意的に変わるおそれがあります。たとえば減価償却方法や棚卸資 産の評価方法の変更、繰延資産や各種の引当金の見積り、売掛金や買掛金の計上などによって毎期の決算数値は相当変えることができてしまいます。一方、会社 に本来あるキャッシュ(現金)の動きは-粉飾とかは別にして-勘定科目をいじってもあまり動かすことはできませんから、ファイナンスで価値という場合には 毎期のキャッシュの流れ=キャッシュフローが重視されることになります。
※上記のように書くと「それでは会計の意味って何よ?」とか言わ れそうですが役割が違います。「会計」といっても大別すると3種類(会社法会計・金融商品取引法会計・税務会計)があります。会社法会計は債権者・株主保 護を目的として配当可能利益を算定することを主眼とします。金融商品取引法会計は、投資家全般の保護を目的として、経営成績とキャッシュフローを開示する ことを主眼としています。税務会計は法人税の課税を目的として、課税標準額を算定するためにあります。この中でも基礎となるのは会社法会計です。そこでは 一定期間の売上・費用を正しく配分し経営成績と財政状態を記述することが重視されています。その結果として配当可能利益も出てくることになります。
・ファイナンスでいうキャッシュと会計でいう利益は違うといいました。言ったそばからナンですが、ファイナンスで使うキャッシュフローは会計から求めます。もっというと財務諸表の数字を加工することで、キャッシュに変換して求めます。求め方はまた別途説明します。
(2)期待値
・ 将来のキャッシュフローは当然今分かりませんから、不確実な数字です。今日の100万円は明日1120万円かもしれないし、90万円かもしれないし50万 円かもしれません。したがって将来取り得る数字の「幅」を見積もってその平均値を用いるのが自然ですね。この平均値(予想値)を期待値といいます。取り得 る値の幅は事業計画や会社の成長性やリスクによってさまざまと思いますので、評価する側が資産の提供者から情報提供を受けたり、過去のデータを分析した り、理論モデルを構築してシミュレーションすることなどで予測することになります。この予測手法のひとつが金融工学なわけです。
なお、「期待値」という言葉ですが、ある特定の値になることを「期待している」という意味ではなく、予想の平均値といったほどの意味です。
(3)割引率
・ 将来のキャッシュフローの期待値は求めたものの、それだけでは使い物になりません。今の100万円と1年後の100万円、5年後の100万円の価値が違う のは何もむずかしいこと言わなくても当たり前ですね。今100万円もらったらそれを年利1%の定期預金で1年運用したら101万円くらいにはなるでしょ う。5年間運用したら105万円くらいにはなると予想できますね。これを将来価値からみてみます。運用して1年後に100万円になっているお金の価値は 1%で割り引くと99万円くらいです。運用して5年後に100万円になっているお金を今の値段に直せばもともと95万円とちょっとになります。この将来の 値を今の値段(現在価値)に割引くためのレートを「割引率」といいます。このレートは自分のカンで決めたっていいのですが、それでは評価の客観性も何もな いですから、決めるための理論がちゃんとあります。それはまた日を改めて、ということとします。
株式価値の評価方法:考え方の基本(2)
2.各分類における評価手法
・1で挙げた分類にしたがって、具体的な評価手法を挙げれば、以下のとおりです。それぞれに特徴があり、一長一短があります。違いのポイントは「企業の導体的側面を重視するか」「静態的側面を重視するか」「市場価値にひきつけて考えるか」といったことです。
(インカム・アプローチ)
(1)配当還元方法
・ 昔からある評価方法です。将来の年間配当額(一定とみなす)を資本還元率で割り引いて求めます。税引後利益のうち株主が実際に受け取るのは配当ですから、 受取配当のみに着目して株価を算定します。ただし上場株式にはキャピタルゲインもありますのでこの方法は本質的には正しくないというのが今のファイナンス 論の考え方です。
・なお、配当還元法にはバリエーションがあって、配当の2段階・3段階の成長を織り込んだモデルや利益の内部留保(事業への再投資)を考慮したモデルなどが提案されています。
(2)ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)
・会社の収益力を基礎とする考え方は(1)と似ているのですが、大きな違いがあります。主な違いとしては、
①計算式の分子は利益ではなくキャッシュフローを用いる
②毎期のキャッシュフローは変動する
③②に対応して割引ファクターも毎期異なる
④割引の根拠が異なる
⑤将来の算定期間の設定と期間後のキャッシュフローの扱いを決める必要がある
な どです。もっとも大きな違いは利益ではなくキャッシュフローを用いることです。利益は会計上のものですから会社の意図により数字をある程度操作できます が、キャッシュ(現金)の動きを恣意的に動かすことは(粉飾でもないかぎり)通常できませんから、株主に帰属する価値としてより望ましいという考え方で す。この他にもいろいろ違いがありますが、その点はまた後日。
(3)収益還元法
・将来の予想年間税引後利益をある割引率(資本還 元率といいます)で割引き、発行済株式数で割って算出します。会社は株主から資本を調達して一定の収益率で利益を稼いでいるという事実を株主側からみれ ば、利益をこの収益率で割り返せば必要な資本額が求められるという発想に基づきます(「ある割引率」を資本還元率と呼ぶ理由です)。この資本額を株数で割 れば、1株当りの価値=株価になるという発想です。ただし前提条件として、年間利益は将来にわたって一定と単純化しています。DCF法の簡易版と考えるこ ともできます。
(4)残余利益法
・配当還元法は年間予想配当を一定として単純に資本化率で割り引いていましたが、将来の毎期の利 益予想を織り込む改良モデルもあります。オールソン・モデルとか残余利益(超過利益)モデルなどと呼ばれます。増資も配当もなければ、期首株主資本に期間 利益を足していけば期末の株主資本になる、という会計的関係を用いて将来の株主価値を算定します。
※なお、配当還元法、収益還元法、DCF法、残余利益法のいずれも前提条件を注意深く揃えると算定結果は一致するという理論的説明があるのですが、議論がややこしくなるのでここでは説明しません。
(コスト・アプローチ)
(5)簿価純資産法
・ コスト・アプローチという名称は、会社の所有権を取得原価で考えるという発想から来ています。貸借対照表をみると、左側(借方)は会社が取得した資産、右 側(貸方)は会社が資産の取得に要した資金の源泉が載っています。このうち負債は他人から借入金や買掛金といったかたちで借用した部分です。したがって、 資産-負債=純資産が会社の価値のうち自己資金で獲得したもの、ということができます。会社の所有権は株主にありますから、純資産の価値が株式の価値にな ると考えます。具体的には、財務諸表の帳簿に載っている価額(簿価)で積み上げて負債を控除して株数で割れば、株価が算出できます。
(6)時価純資産法
・ 考え方は(5)と同じですが、資産の価額を積み上げるときに、簿価ではなく「時価」を用いる方法です。たとえば会社資産の中に上場株式があれば市場価格を 用いて評価します。不動産や美術品があれば鑑定評価を行って「公正価値」を算定して用います。在庫品などがあれば実際に売却できそうな「処分価格」を見積 もります。こうして直近時点での実態になるべく近い資産価値をもとに純資産を計算します。ただし、公正価値や処分価格にはどうしても「見積もり」という要 素が入りますから簿価よりは幅が出るといえます。
(マーケット・アプローチ)
(7)類j以会社比準法
・この方法は、公開 市場で株式が取引されており客観的な市場株価が存在する会社の中で、評価対象会社と類似の事業を営んでいる会社の株価を参考指標として用いるものです。上 記の他の方法では対象会社の株価を会社の事業計画や財務諸表から求めますが、それらの基礎資料はいずれも算定対象会社から提出されるものであって、客観性 に欠ける場合もあるでしょう。また業界他社との相対的な位置関係を知りたい場合もあるかもしれません。そのため、類似会社をいくつか選定して、利益額・配 当額・純資産額を勘案した算式によって株価を算定します。どのような会社を選定するかがカギとなります。
(8)類似業種比準法
・この方法は、考え方は(7)をほぼ同様ですが、評価対象会社とよく似た事業内容の会社が上場企業の中に見当たらない場合、参考指標を類似「業種」という大括りな分類に広げて評価するものです。
(9)取引事例法
・この考え方は、過去に実際にあった似たような規模・業種の会社の売買事例の取引価格を参考にして評価を決めるものです。不動産の評価に近いといえましょうか。
(その他の方法)
(10)「財産評価基本通達」による方法
・ 相続税が課税される際に、対象の相続財産の価値を評価するための算式でで、文字通り「通達」によって定めらた規制上の評価方法です。同族株主のいる会社か 否か、会社の規模(大・中・小)などによって適用となる算式が細かく定められていますが、用いられるのは類似会社比準方式(とその変形版)か配当還元法が 基となっています。
・1で挙げた分類にしたがって、具体的な評価手法を挙げれば、以下のとおりです。それぞれに特徴があり、一長一短があります。違いのポイントは「企業の導体的側面を重視するか」「静態的側面を重視するか」「市場価値にひきつけて考えるか」といったことです。
(インカム・アプローチ)
(1)配当還元方法
・ 昔からある評価方法です。将来の年間配当額(一定とみなす)を資本還元率で割り引いて求めます。税引後利益のうち株主が実際に受け取るのは配当ですから、 受取配当のみに着目して株価を算定します。ただし上場株式にはキャピタルゲインもありますのでこの方法は本質的には正しくないというのが今のファイナンス 論の考え方です。
・なお、配当還元法にはバリエーションがあって、配当の2段階・3段階の成長を織り込んだモデルや利益の内部留保(事業への再投資)を考慮したモデルなどが提案されています。
(2)ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)
・会社の収益力を基礎とする考え方は(1)と似ているのですが、大きな違いがあります。主な違いとしては、
①計算式の分子は利益ではなくキャッシュフローを用いる
②毎期のキャッシュフローは変動する
③②に対応して割引ファクターも毎期異なる
④割引の根拠が異なる
⑤将来の算定期間の設定と期間後のキャッシュフローの扱いを決める必要がある
な どです。もっとも大きな違いは利益ではなくキャッシュフローを用いることです。利益は会計上のものですから会社の意図により数字をある程度操作できます が、キャッシュ(現金)の動きを恣意的に動かすことは(粉飾でもないかぎり)通常できませんから、株主に帰属する価値としてより望ましいという考え方で す。この他にもいろいろ違いがありますが、その点はまた後日。
(3)収益還元法
・将来の予想年間税引後利益をある割引率(資本還 元率といいます)で割引き、発行済株式数で割って算出します。会社は株主から資本を調達して一定の収益率で利益を稼いでいるという事実を株主側からみれ ば、利益をこの収益率で割り返せば必要な資本額が求められるという発想に基づきます(「ある割引率」を資本還元率と呼ぶ理由です)。この資本額を株数で割 れば、1株当りの価値=株価になるという発想です。ただし前提条件として、年間利益は将来にわたって一定と単純化しています。DCF法の簡易版と考えるこ ともできます。
(4)残余利益法
・配当還元法は年間予想配当を一定として単純に資本化率で割り引いていましたが、将来の毎期の利 益予想を織り込む改良モデルもあります。オールソン・モデルとか残余利益(超過利益)モデルなどと呼ばれます。増資も配当もなければ、期首株主資本に期間 利益を足していけば期末の株主資本になる、という会計的関係を用いて将来の株主価値を算定します。
※なお、配当還元法、収益還元法、DCF法、残余利益法のいずれも前提条件を注意深く揃えると算定結果は一致するという理論的説明があるのですが、議論がややこしくなるのでここでは説明しません。
(コスト・アプローチ)
(5)簿価純資産法
・ コスト・アプローチという名称は、会社の所有権を取得原価で考えるという発想から来ています。貸借対照表をみると、左側(借方)は会社が取得した資産、右 側(貸方)は会社が資産の取得に要した資金の源泉が載っています。このうち負債は他人から借入金や買掛金といったかたちで借用した部分です。したがって、 資産-負債=純資産が会社の価値のうち自己資金で獲得したもの、ということができます。会社の所有権は株主にありますから、純資産の価値が株式の価値にな ると考えます。具体的には、財務諸表の帳簿に載っている価額(簿価)で積み上げて負債を控除して株数で割れば、株価が算出できます。
(6)時価純資産法
・ 考え方は(5)と同じですが、資産の価額を積み上げるときに、簿価ではなく「時価」を用いる方法です。たとえば会社資産の中に上場株式があれば市場価格を 用いて評価します。不動産や美術品があれば鑑定評価を行って「公正価値」を算定して用います。在庫品などがあれば実際に売却できそうな「処分価格」を見積 もります。こうして直近時点での実態になるべく近い資産価値をもとに純資産を計算します。ただし、公正価値や処分価格にはどうしても「見積もり」という要 素が入りますから簿価よりは幅が出るといえます。
(マーケット・アプローチ)
(7)類j以会社比準法
・この方法は、公開 市場で株式が取引されており客観的な市場株価が存在する会社の中で、評価対象会社と類似の事業を営んでいる会社の株価を参考指標として用いるものです。上 記の他の方法では対象会社の株価を会社の事業計画や財務諸表から求めますが、それらの基礎資料はいずれも算定対象会社から提出されるものであって、客観性 に欠ける場合もあるでしょう。また業界他社との相対的な位置関係を知りたい場合もあるかもしれません。そのため、類似会社をいくつか選定して、利益額・配 当額・純資産額を勘案した算式によって株価を算定します。どのような会社を選定するかがカギとなります。
(8)類似業種比準法
・この方法は、考え方は(7)をほぼ同様ですが、評価対象会社とよく似た事業内容の会社が上場企業の中に見当たらない場合、参考指標を類似「業種」という大括りな分類に広げて評価するものです。
(9)取引事例法
・この考え方は、過去に実際にあった似たような規模・業種の会社の売買事例の取引価格を参考にして評価を決めるものです。不動産の評価に近いといえましょうか。
(その他の方法)
(10)「財産評価基本通達」による方法
・ 相続税が課税される際に、対象の相続財産の価値を評価するための算式でで、文字通り「通達」によって定めらた規制上の評価方法です。同族株主のいる会社か 否か、会社の規模(大・中・小)などによって適用となる算式が細かく定められていますが、用いられるのは類似会社比準方式(とその変形版)か配当還元法が 基となっています。