株式評価:DCF法③ 割引率について | 謎の金融日誌

株式評価:DCF法③ 割引率について

・DCF法でキャッシュフローとともに価値を決める要素が「割引率」です。

1.割引率の定義
・割引率は「要求収益率」とか「必要収益率」などとも呼ばれます。投資家が投資プロジェクトに資金を拠出する際に求める最低限の収益率だからです。プロジェクトを実施する側(資金調達する側)からみれば「資本コスト」に当ります。
・ なお、割引率という言葉からの連想として「市場金利」と混同される場合がありますが違います。割引率は株式投資、債券投資など投資全般に対して要求される 収益率とリスクプレミアムの和です。一方「金利」はあくまで貸出や社債の利息=負債ホルダー(債権者に)とっての収益率になります。では、株式の方の収益 率はどうやって求めるのかというと、結論を先取りすればCAPM(Capital Asset Pricing Model=資本資産価格モデル)から求めます。CAPMから求めないといけないという強制性はないのですが、現在の株式期待収益率の決定理論としてもっ とも普及している方法論です。CAPMの導出はそれだけで1冊の本になりますが、以下簡単に説明します。

2.CAPM
・CAPM は、個別株式の期待収益率(上記にいう必要収益率をCAPM的にはこうよびます)を安全資産(国債など分散がゼロである資産)と市場ポートフォリオの期待 収益率との関係式として示したものです。具体的には、リスクのある個別株式の期待収益率は、安全な資産の収益率に加えてその個別株式の収益率と市場全体の 動きを示すポートフォリオの収益率の差=リスクプレミアムとリスクファクター(ベータといいます)を掛け合わせたものの和になるという考え方です。
・評価対象が上場株式ならば公表情報からベータを計算します。すなわちまず現状の負債比率の影響を排除するためにアンレバードベータ(エクイティべーた)に修正します。その上で新しい負債比率の下で修正されたベータに変換します。このベータを用いて期待収益率を求めます。
・ 一方、非上場会社の場合は上場している類似会社を選定してベータを求めますが、上場企業よりもリスクプレミアムが諸事情から明らかに高いと思われる場合も あるでしょう。その場合は試算された要求収益率に適宜定数を加える/定数を掛けるといった調整が行われます。この「定数」がどの程度なのかは案件や諸条件 によりまちまちで、評価者により異なるものとしかいえません。またそもそも市場データからベータを求める場合も、過去の収益率データの採用期間をどの程度 とるか、類似会社をどう選定するかといった問題に判断が必要ですから、完全に客観的な収益率を定めることは難しいといえるでしょう。

3.WACC
・結局、割引率とは株式と負債それぞれの必要収益率を残高で加重平均したものとなります。すなわちWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)を用いることになります。
・このとき負債の利子率には(1-法人税率)をかけます。分子のキャッシュフローで負債の節税効果を考慮していませんでしたが、分母の割引率において負債利子の税控除を勘案していることになります。