株式価値の評価方法:考え方の基本(2)
2.各分類における評価手法
・1で挙げた分類にしたがって、具体的な評価手法を挙げれば、以下のとおりです。それぞれに特徴があり、一長一短があります。違いのポイントは「企業の導体的側面を重視するか」「静態的側面を重視するか」「市場価値にひきつけて考えるか」といったことです。
(インカム・アプローチ)
(1)配当還元方法
・ 昔からある評価方法です。将来の年間配当額(一定とみなす)を資本還元率で割り引いて求めます。税引後利益のうち株主が実際に受け取るのは配当ですから、 受取配当のみに着目して株価を算定します。ただし上場株式にはキャピタルゲインもありますのでこの方法は本質的には正しくないというのが今のファイナンス 論の考え方です。
・なお、配当還元法にはバリエーションがあって、配当の2段階・3段階の成長を織り込んだモデルや利益の内部留保(事業への再投資)を考慮したモデルなどが提案されています。
(2)ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)
・会社の収益力を基礎とする考え方は(1)と似ているのですが、大きな違いがあります。主な違いとしては、
①計算式の分子は利益ではなくキャッシュフローを用いる
②毎期のキャッシュフローは変動する
③②に対応して割引ファクターも毎期異なる
④割引の根拠が異なる
⑤将来の算定期間の設定と期間後のキャッシュフローの扱いを決める必要がある
な どです。もっとも大きな違いは利益ではなくキャッシュフローを用いることです。利益は会計上のものですから会社の意図により数字をある程度操作できます が、キャッシュ(現金)の動きを恣意的に動かすことは(粉飾でもないかぎり)通常できませんから、株主に帰属する価値としてより望ましいという考え方で す。この他にもいろいろ違いがありますが、その点はまた後日。
(3)収益還元法
・将来の予想年間税引後利益をある割引率(資本還 元率といいます)で割引き、発行済株式数で割って算出します。会社は株主から資本を調達して一定の収益率で利益を稼いでいるという事実を株主側からみれ ば、利益をこの収益率で割り返せば必要な資本額が求められるという発想に基づきます(「ある割引率」を資本還元率と呼ぶ理由です)。この資本額を株数で割 れば、1株当りの価値=株価になるという発想です。ただし前提条件として、年間利益は将来にわたって一定と単純化しています。DCF法の簡易版と考えるこ ともできます。
(4)残余利益法
・配当還元法は年間予想配当を一定として単純に資本化率で割り引いていましたが、将来の毎期の利 益予想を織り込む改良モデルもあります。オールソン・モデルとか残余利益(超過利益)モデルなどと呼ばれます。増資も配当もなければ、期首株主資本に期間 利益を足していけば期末の株主資本になる、という会計的関係を用いて将来の株主価値を算定します。
※なお、配当還元法、収益還元法、DCF法、残余利益法のいずれも前提条件を注意深く揃えると算定結果は一致するという理論的説明があるのですが、議論がややこしくなるのでここでは説明しません。
(コスト・アプローチ)
(5)簿価純資産法
・ コスト・アプローチという名称は、会社の所有権を取得原価で考えるという発想から来ています。貸借対照表をみると、左側(借方)は会社が取得した資産、右 側(貸方)は会社が資産の取得に要した資金の源泉が載っています。このうち負債は他人から借入金や買掛金といったかたちで借用した部分です。したがって、 資産-負債=純資産が会社の価値のうち自己資金で獲得したもの、ということができます。会社の所有権は株主にありますから、純資産の価値が株式の価値にな ると考えます。具体的には、財務諸表の帳簿に載っている価額(簿価)で積み上げて負債を控除して株数で割れば、株価が算出できます。
(6)時価純資産法
・ 考え方は(5)と同じですが、資産の価額を積み上げるときに、簿価ではなく「時価」を用いる方法です。たとえば会社資産の中に上場株式があれば市場価格を 用いて評価します。不動産や美術品があれば鑑定評価を行って「公正価値」を算定して用います。在庫品などがあれば実際に売却できそうな「処分価格」を見積 もります。こうして直近時点での実態になるべく近い資産価値をもとに純資産を計算します。ただし、公正価値や処分価格にはどうしても「見積もり」という要 素が入りますから簿価よりは幅が出るといえます。
(マーケット・アプローチ)
(7)類j以会社比準法
・この方法は、公開 市場で株式が取引されており客観的な市場株価が存在する会社の中で、評価対象会社と類似の事業を営んでいる会社の株価を参考指標として用いるものです。上 記の他の方法では対象会社の株価を会社の事業計画や財務諸表から求めますが、それらの基礎資料はいずれも算定対象会社から提出されるものであって、客観性 に欠ける場合もあるでしょう。また業界他社との相対的な位置関係を知りたい場合もあるかもしれません。そのため、類似会社をいくつか選定して、利益額・配 当額・純資産額を勘案した算式によって株価を算定します。どのような会社を選定するかがカギとなります。
(8)類似業種比準法
・この方法は、考え方は(7)をほぼ同様ですが、評価対象会社とよく似た事業内容の会社が上場企業の中に見当たらない場合、参考指標を類似「業種」という大括りな分類に広げて評価するものです。
(9)取引事例法
・この考え方は、過去に実際にあった似たような規模・業種の会社の売買事例の取引価格を参考にして評価を決めるものです。不動産の評価に近いといえましょうか。
(その他の方法)
(10)「財産評価基本通達」による方法
・ 相続税が課税される際に、対象の相続財産の価値を評価するための算式でで、文字通り「通達」によって定めらた規制上の評価方法です。同族株主のいる会社か 否か、会社の規模(大・中・小)などによって適用となる算式が細かく定められていますが、用いられるのは類似会社比準方式(とその変形版)か配当還元法が 基となっています。
・1で挙げた分類にしたがって、具体的な評価手法を挙げれば、以下のとおりです。それぞれに特徴があり、一長一短があります。違いのポイントは「企業の導体的側面を重視するか」「静態的側面を重視するか」「市場価値にひきつけて考えるか」といったことです。
(インカム・アプローチ)
(1)配当還元方法
・ 昔からある評価方法です。将来の年間配当額(一定とみなす)を資本還元率で割り引いて求めます。税引後利益のうち株主が実際に受け取るのは配当ですから、 受取配当のみに着目して株価を算定します。ただし上場株式にはキャピタルゲインもありますのでこの方法は本質的には正しくないというのが今のファイナンス 論の考え方です。
・なお、配当還元法にはバリエーションがあって、配当の2段階・3段階の成長を織り込んだモデルや利益の内部留保(事業への再投資)を考慮したモデルなどが提案されています。
(2)ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)
・会社の収益力を基礎とする考え方は(1)と似ているのですが、大きな違いがあります。主な違いとしては、
①計算式の分子は利益ではなくキャッシュフローを用いる
②毎期のキャッシュフローは変動する
③②に対応して割引ファクターも毎期異なる
④割引の根拠が異なる
⑤将来の算定期間の設定と期間後のキャッシュフローの扱いを決める必要がある
な どです。もっとも大きな違いは利益ではなくキャッシュフローを用いることです。利益は会計上のものですから会社の意図により数字をある程度操作できます が、キャッシュ(現金)の動きを恣意的に動かすことは(粉飾でもないかぎり)通常できませんから、株主に帰属する価値としてより望ましいという考え方で す。この他にもいろいろ違いがありますが、その点はまた後日。
(3)収益還元法
・将来の予想年間税引後利益をある割引率(資本還 元率といいます)で割引き、発行済株式数で割って算出します。会社は株主から資本を調達して一定の収益率で利益を稼いでいるという事実を株主側からみれ ば、利益をこの収益率で割り返せば必要な資本額が求められるという発想に基づきます(「ある割引率」を資本還元率と呼ぶ理由です)。この資本額を株数で割 れば、1株当りの価値=株価になるという発想です。ただし前提条件として、年間利益は将来にわたって一定と単純化しています。DCF法の簡易版と考えるこ ともできます。
(4)残余利益法
・配当還元法は年間予想配当を一定として単純に資本化率で割り引いていましたが、将来の毎期の利 益予想を織り込む改良モデルもあります。オールソン・モデルとか残余利益(超過利益)モデルなどと呼ばれます。増資も配当もなければ、期首株主資本に期間 利益を足していけば期末の株主資本になる、という会計的関係を用いて将来の株主価値を算定します。
※なお、配当還元法、収益還元法、DCF法、残余利益法のいずれも前提条件を注意深く揃えると算定結果は一致するという理論的説明があるのですが、議論がややこしくなるのでここでは説明しません。
(コスト・アプローチ)
(5)簿価純資産法
・ コスト・アプローチという名称は、会社の所有権を取得原価で考えるという発想から来ています。貸借対照表をみると、左側(借方)は会社が取得した資産、右 側(貸方)は会社が資産の取得に要した資金の源泉が載っています。このうち負債は他人から借入金や買掛金といったかたちで借用した部分です。したがって、 資産-負債=純資産が会社の価値のうち自己資金で獲得したもの、ということができます。会社の所有権は株主にありますから、純資産の価値が株式の価値にな ると考えます。具体的には、財務諸表の帳簿に載っている価額(簿価)で積み上げて負債を控除して株数で割れば、株価が算出できます。
(6)時価純資産法
・ 考え方は(5)と同じですが、資産の価額を積み上げるときに、簿価ではなく「時価」を用いる方法です。たとえば会社資産の中に上場株式があれば市場価格を 用いて評価します。不動産や美術品があれば鑑定評価を行って「公正価値」を算定して用います。在庫品などがあれば実際に売却できそうな「処分価格」を見積 もります。こうして直近時点での実態になるべく近い資産価値をもとに純資産を計算します。ただし、公正価値や処分価格にはどうしても「見積もり」という要 素が入りますから簿価よりは幅が出るといえます。
(マーケット・アプローチ)
(7)類j以会社比準法
・この方法は、公開 市場で株式が取引されており客観的な市場株価が存在する会社の中で、評価対象会社と類似の事業を営んでいる会社の株価を参考指標として用いるものです。上 記の他の方法では対象会社の株価を会社の事業計画や財務諸表から求めますが、それらの基礎資料はいずれも算定対象会社から提出されるものであって、客観性 に欠ける場合もあるでしょう。また業界他社との相対的な位置関係を知りたい場合もあるかもしれません。そのため、類似会社をいくつか選定して、利益額・配 当額・純資産額を勘案した算式によって株価を算定します。どのような会社を選定するかがカギとなります。
(8)類似業種比準法
・この方法は、考え方は(7)をほぼ同様ですが、評価対象会社とよく似た事業内容の会社が上場企業の中に見当たらない場合、参考指標を類似「業種」という大括りな分類に広げて評価するものです。
(9)取引事例法
・この考え方は、過去に実際にあった似たような規模・業種の会社の売買事例の取引価格を参考にして評価を決めるものです。不動産の評価に近いといえましょうか。
(その他の方法)
(10)「財産評価基本通達」による方法
・ 相続税が課税される際に、対象の相続財産の価値を評価するための算式でで、文字通り「通達」によって定めらた規制上の評価方法です。同族株主のいる会社か 否か、会社の規模(大・中・小)などによって適用となる算式が細かく定められていますが、用いられるのは類似会社比準方式(とその変形版)か配当還元法が 基となっています。