株式評価:ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法① | 謎の金融日誌

株式評価:ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法①

1.資産価値の一般論
・ディスカウント・キャッシュフロー法(以下DCF法)について説明する前に、まず資産一般の評価方法の基礎についてファイ ナンス論の見地から簡単にみてみます。資産評価の方法論といっても会計的評価とか税務上の評価など分野によって色々な視角があるわけです。しかし会計制度 や税務が国により時代により様々である一方、そうした考え方の基礎に共通する方法論としてのファイナンス的な考え方は、もともとはごく単純な(そして重要 な)ものなので、ここを出発点とするのが自然なわけです。それは以下の説明に集約されます:

(資産の価値の一般的な求め方)
「資産の価値は、その資産が生み出す将来のキャッシュフローの予想値(期待値)を現在の値に割引きしたものの合計である」

上 記の説明では、ある資産を保有していることで将来にわたって毎期配当なり利息なりがもたらされるとすれば、それらをずーっと先まで合計したものがその資産 が稼ぎ出す価値だろう、と考えるわけです。ただし将来の配当や利息は現在では分からないから予想を立てて積み上げるしかないし、将来の価値は不確実だから 今の価値より割り引いてみる必要があると捉えるわけです。いたってシンプルで当り前の方法論です。
・ただし、実際に数字を求めるためのポイントとしては、
イ.将来のキャッシュフロー
ロ.予想値(期待値)
ハ.割引き
という3つのキーワードが重要で、求め方にはテクニカルな面があります。以下この点について説明していきます。

2.「キャッシュフロー」「期待値」「割引率」が重要
(1)将来キャッシュフロー
・ 資産価値を評価するために、その資産が将来生み出す価値が重要というのは自然ですが、キャッシュフローというものにこだわる意味は以下のとおりです。会計 的な利息や配当、利益といった概念は制度上の概念ですから経営者(資産の提供者)によって恣意的に変わるおそれがあります。たとえば減価償却方法や棚卸資 産の評価方法の変更、繰延資産や各種の引当金の見積り、売掛金や買掛金の計上などによって毎期の決算数値は相当変えることができてしまいます。一方、会社 に本来あるキャッシュ(現金)の動きは-粉飾とかは別にして-勘定科目をいじってもあまり動かすことはできませんから、ファイナンスで価値という場合には 毎期のキャッシュの流れ=キャッシュフローが重視されることになります。

※上記のように書くと「それでは会計の意味って何よ?」とか言わ れそうですが役割が違います。「会計」といっても大別すると3種類(会社法会計・金融商品取引法会計・税務会計)があります。会社法会計は債権者・株主保 護を目的として配当可能利益を算定することを主眼とします。金融商品取引法会計は、投資家全般の保護を目的として、経営成績とキャッシュフローを開示する ことを主眼としています。税務会計は法人税の課税を目的として、課税標準額を算定するためにあります。この中でも基礎となるのは会社法会計です。そこでは 一定期間の売上・費用を正しく配分し経営成績と財政状態を記述することが重視されています。その結果として配当可能利益も出てくることになります。

・ファイナンスでいうキャッシュと会計でいう利益は違うといいました。言ったそばからナンですが、ファイナンスで使うキャッシュフローは会計から求めます。もっというと財務諸表の数字を加工することで、キャッシュに変換して求めます。求め方はまた別途説明します。

(2)期待値
・ 将来のキャッシュフローは当然今分かりませんから、不確実な数字です。今日の100万円は明日1120万円かもしれないし、90万円かもしれないし50万 円かもしれません。したがって将来取り得る数字の「幅」を見積もってその平均値を用いるのが自然ですね。この平均値(予想値)を期待値といいます。取り得 る値の幅は事業計画や会社の成長性やリスクによってさまざまと思いますので、評価する側が資産の提供者から情報提供を受けたり、過去のデータを分析した り、理論モデルを構築してシミュレーションすることなどで予測することになります。この予測手法のひとつが金融工学なわけです。
なお、「期待値」という言葉ですが、ある特定の値になることを「期待している」という意味ではなく、予想の平均値といったほどの意味です。

(3)割引率
・ 将来のキャッシュフローの期待値は求めたものの、それだけでは使い物になりません。今の100万円と1年後の100万円、5年後の100万円の価値が違う のは何もむずかしいこと言わなくても当たり前ですね。今100万円もらったらそれを年利1%の定期預金で1年運用したら101万円くらいにはなるでしょ う。5年間運用したら105万円くらいにはなると予想できますね。これを将来価値からみてみます。運用して1年後に100万円になっているお金の価値は 1%で割り引くと99万円くらいです。運用して5年後に100万円になっているお金を今の値段に直せばもともと95万円とちょっとになります。この将来の 値を今の値段(現在価値)に割引くためのレートを「割引率」といいます。このレートは自分のカンで決めたっていいのですが、それでは評価の客観性も何もな いですから、決めるための理論がちゃんとあります。それはまた日を改めて、ということとします。