隣の住人の騒音に怒りを覚え、「壁」を「ドン」と叩く。
そんな「壁ドン」がいつしか少女漫画のキュン演出になったのは最近のことで。
それからキュン演出「股ドン」「顎クイ」など様々な枝分かれを見せたわけだが、
本作はそれらを詰め込んだフルコース映画だ。
親の転勤で寮に入ることになった高校生の赤羽由宇(小松菜奈)。
彼女はいつしか校内で絶大なる人気を誇る「白王子」こと白河タクミ(千葉雄大)と
「黒王子」こと黒崎晴人(中島健人)と間でその恋心を揺さぶられていく ―
「黒崎くんの言いなりになんてならない」
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別冊フレンドで連載のマキノによる少女漫画を
小松菜奈、Sexy Zoneの中島健人、千葉雄大 で実写映画化。
優しい白王子と超ドSの黒王子の間で揺れ動くヒロインの姿を
漫画のようなエフェクト演出の中で見せていく。
まず最初に発表します!
俺の映画ランキングがこの映画によって久々に変えられました。
ここまで意気揚々と笑みを浮かべながらスクリーンを出て行ったことは
これまでの人生で一度もなかったので当たり前です!
コングラッチュレーション!
俺が見てきた映画の中でダントツの1位です!
そう!
ダントツのワースト1位です!
というよりこの作品、映画じゃないです!
キュンとするシチュエーションVTRをスタジオの芸能人が見てキュンボタンを連打する、
そんなバラエティ番組のVTRだけを観させられているような感じです。
「キュン」とするVTRだけを観たい人にとっては正にフルコースだろうが、
そこにストーリー、要は「映画」を求めている人には
あまりにもキツイ93分。
物語構成の下手くそさに加え、演出の手数の少なさに
もう上映中「笑い」が止まらなかった。
故に、スクリーンを後にするとき、
「すごい作品観たな」という凄まじい高揚感にかられた。
まずこれだけは言っておきたかった。
では、評に移ります。
「イケメンの黒王子と白王子にヒロインが言い寄られ、どっちを選ぶ?」
というのが物語であるわけだが、
ここで重要となるヒロインの内面的な心の揺れ動きよりも
この作品はルック的なキュン演出にだけにひた走る。
まるで「お前たちは物語より壁ドンが見たいんだろ!」とドヤ顔をしているよう。
「キュン演出」を助長するためか、いくら観客が疑似体験できるようにとはいえ、
あまりにもヒロインのキャラクター性が空っぽであるため、存在感がない。
故に主人公の「黒?それとも白?」という物語に推進力は皆無なわけです。
では、何がこの作品のエンジンとなり推進力を生んでいるのか?
それは間違えなく黒王子、白王子による「キュン」演出なのだが、ヒドイの一言に尽きる。
「キュン演出フルコース」であることには間違えないのだが、
手数に対して演出のバリエーションが全くないのだ。
メルヘンな映像エフェクトとスローモーションによる黒王子と白王子の攻撃の後に、
「ポッ!」と帆を赤らめるヒロイン。
全部これだ!
「壁ドン」「顎クイ」「耳カジ」多様性のある攻撃が繰り広げられるのに、
演出が全く変わらないためひとつひとつに新鮮味がなく、
手数だけが多いためにドンドン慣れていってしまう。
メルヘンな映像エフェクトとスローモーションによる黒王子と白王子の攻撃の後に、
「ポッ!」と帆を赤らめるヒロインの羅列。
だからこそ、女性が誰でも胸を躍らせられるように作られた
主観的な「キュン再現VTR」を紹介するバラエティを見させられている気分になったのだ。
もちろん「キュン」だけを楽しみにしに来ている人にはいいだろうが、
「物語の中でのキュン」を求めていた俺には笑うしかなかった。
白王子はすごく優しい!
劇中で俺の内心を「もう限界だ」という台詞で代弁してくれたのだがらw
キュンだけでなく、この作品は総じて演出の手数が少ない。
まるで上映時間を埋めるためかのように、事ある毎に過去をフラッシュバック。
「またさっきの見せるの?」ともう飽き飽きしてくる。
スポンサーの事も考えてもっと短くしてCM挟んだ方がいいんじゃないかと。
劇中で見せた不自然すぎるあるお菓子メーカーの宣伝のようにでもw
そして、繰り返し演出によって意味を薄めたのが「ピアノ」
「黒王子は感情を伝えられなかった時にピアノを弾くんだよ」とあるように、
黒王子に弱さややさしさを語るアイテムであるピアノ。
なのに、なのにだ!
ピアノ弾きます。また、ヒアの弾きます。それをヒロインが思い出して、また弾いてます!
中盤永遠とピアノが流れているようだった。
「もういいよ!ルーキーズかよ!」(←わかる人はわかって)
音楽繋がりで言うと劇伴の使い方もキツイ。
この作品の音楽は劇伴として意味をなしてない。
前半はもうどのシーンでも音楽が流れてる印象で、
「ミュージカルでもこんな流さないよ!」状態。
そして極めつけは無理やりなSexy Zone曲の差し込みによる宣伝。
「ヒロインをバスケ勝負で賭ける」というポイントシーンなのに、
曲調が全くあってないし、ミュージックビデオとしても成立していない違和感。
イメージビデオの領域です。踏み込めない神の領域です。
イメージビデオ演出と言えば、
恥ずかしくなるほど中島健人と千葉雄大の体を舐め回すシャワーシーンがあるのだが、
そこについてはもう何も言わない。
「筋肉見たいでしょ!ホレホレ」とドヤ顔してるわけだから。
あと、申し訳ないが中島健人の演技が鼻に付く。
「いまキメました」というスイッチング表情が
折角イケメンなのに、格好つける痛い子に見えてしまった。
あなたの周りに格好つけるとき瞼を二重にする人いません?
そんな感じです。
まだまだ書きたいのですが、最後にこの作品最大の爆笑ポイントをご紹介。
クライマックスの黒王子VS白王子の真剣バスケ勝負です!
わからなくもないが、双方の行動が幼稚過ぎるでしょ!
自分が負けそうになってTVゲームの電源を切る子供そのものです。
もう笑えました!最高に笑えました。
そのあと、乱闘に突入してくれたらこの作品好きになったかもです。
最近の少女漫画原作映画が結構好きだったわけですが、
物語よりも「キュン」だけを優先するかのような本作は映画ではなく、TVバラエティ番組!
「キュン」を優先しているくせに、バリエーションのない演出力には
イケメン好きの俺も笑いが止まらなかった。
ドSという鎧が崩れ落ち、童貞?が露わになるラストシーンは可愛らしいが、
「黒?それとも白?」という物語がおざなりであったため、
「他人の恋愛どーでもいいよ!」の一言で投げつけたくなってしまった。
本当に面白いので、この感動を共有したいので
是非劇場で、劇場で見ていただきたいオススメ映画です!
★0個です。