ザック史上No.1のエンタメ!豪華で最高なオープニング映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

お疲れ様です。
SayGoです。

本日はザック・スナイダー17年ぶりのゾンビ映画
『アーミー・オブ・ザ・デッド』をレビューします。


NETFLIX配信日:2021年5月21日
上映時間:148分

監督:ザック・スナイダー(「300」「ジャスティス・リーグ」)
出演:デイヴ・バウティスタ「(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)シリーズ」

-あらすじ-
アメリカ軍の車両事故により未知の生命体が解き放たれてしまう。
噛まれた人間はゾンビと化し、パニックに陥ったラスベガスは封鎖されたのだった。
一連の混乱の中活躍しながら一線を退いたスコットは
ある日、謎の日本人から依頼を受ける。
それは、ラスベガスに残された大金の強奪計画だった―。




◆様々なジャンルがミックスされた娯楽ゾンビ・アクション大作◆

現アクション映画に多大なる影響を与えた
<稀代の映像作家>であるザック・スナイダ―。
「ジャスティス・リーグ スナイダ―カット」をまだ見れていない自分は
皮肉も込めてそう思っているわけですが、
必要以上に掘り下げずエンターテインメントにベクトルを切った本作は
そんなザックの外連溢れる映像世界を120%味合わせてくれた最高の一作でした。

ゾンビアクションに大金強奪という<チーム・ケイパー>要素をミックスした上、
核弾道着弾という設定で<タイムリミット>まで設けることで
よりエンターテインメント性を押し出した本作、面白くないわけがない。

豪華な映像で事の本編の前日譚を済ませるオープニングと
キャラクターを魅力的にバランスよく語り上げていく<手際の良さ>
こういった作品にこそザックは向いているのではとさえ思ってしまった。

またも贅沢な映画を生み出したな、NETFLIX。



◆映画「ウォッチメン」の名オープニングを彷彿とさせるオープニング◆

エリア51から未知の生物を輸送中のアメリカ軍が
車内フ〇ラをしようと盛り上がる夫婦の車と衝突し、
ゾンビが世に放たれてしまい...

という、ポップというかおバカな事の発端も好きですが、
やられたのは<ラスベガスがゾンビに埋め尽くされ、封鎖されるまで>
を楽曲「ビバ・ラスベガス」にのせて軽快に見せきるオープニング!

見事に再現されたラスベガスを埋め尽くすゾンビ映像は
映画「ワールド・ウォーZ」(2013)並みの物量と豪華さなわけですが、
際立つのは<一見してザックとわかる映像のカッコよさ>

リアルより外連に寄ったグラフィカルなデザインがなされた構図と
セクシーとグロとユーモアがぐちゃぐちゃにミックスされるパンチの強さ


映画「ランボー/最後の戦場」(2008)オマージュかわかりませんが、
<機関銃でゾンビの体が肉片になっていく>描写はキまってました。

キメ画のオンパレード、まるで予告編のようなスピード感で
いわばエビソード0を語り上げるこの手際の良さと高クオリティなの上、
主要キャラクターの物語もしっかり組み込まれており、
驚くほどドラマ性も携えているので
このオープニングだけ見ても映画として満足できるかと思います!




◆完全に「感染半島」!しかし、エンタメ性は格段に上!◆

元をたどれば、「エスケープ・フロム・L.A.」(1996)ですが、
<一線を退いたヒーローが大金を求めて隔離されたゾンビの世界に乗り込む>
という物語は日本で今年1月1日に公開された
韓国映画「感染半島」とソックリなわけですが、
エンターテインメント性は本作の方が圧倒的に思えました。

映画「感染半島」同様に本作も移民問題など、
社会問題に対するメタファーが盛り込まれているわけですが、
本作、そこを必要以上に掘り下げません。

悪く言えば、<記号的>なわけですが、
<潔さ、意識が高すぎない>からこそ
無我夢中にゾンビアクションを楽しめたという印象です。
古き良きアクション映画を思い出す核爆弾の扱いも最高でした。

本作のエンタメ性の大部分を担うのはゾンビ・アクションなわけですが、
<チーム・ケイパー>要素がその物語をさらに盛り上げていきます。

大金強奪ミッションを持ち掛けられた主人公 スコットが
プロフェッショナルや変わり者をスカウトしていく序盤は
映画「ジャスティス・リーグ」さながらアがりますし、
その中でそれぞれの担当が割り振られていくため
人数が多くとも混乱することはありません。

そして、長けていたのがそれぞれのキャラクターを魅力的に語り上げた
ザック・スナイダ―の監督としての手腕でしょう。

ザ・武闘派もいれば虚弱な金庫マニアも。
「ターミネーター:ニュー・フェイト」(2020)のサラ・コナーを思わせる活かしたおばちゃんもいれば、
「ガンズ・アキンボ」(2021)のニックスのようなかっこいい案内人も登場。
ゾンビ殺しで再生数を稼ぐYouTuberまでいますからね(笑)

そんなただでさえ個性的なキャラクター達を
相反する者同士、共通項を持つ者同士で掛け合わすことで
戦いの中でより魅力的に印象を残していきます。


チームによる強奪ミッションという本筋が進むと同時に
チーム内で括られたキャラクターたちの友情や裏切りといった
サイドストーリーが展開されていくことで熱量を帯びていきます。



◆着地は父娘の再生ドラマ。不穏さを残す結末◆

ピリピリと張りつめた空気の中、
時にゾンビを用いたユーモアで抜け感も作りながら
強奪ミッションを展開していくわけですが、
ある展開を気にクライマックスは<人間vs人間vsゾンビの三つ巴のお祭り騒ぎ>へ!
強行突破アクションシーンの連続に作品のテンションもドライブしていきます。

「こいつそんなに強いのかよ!」といったご都合的な部分も多分にありますが、
ゾンビを倒す爽快感だけでなく憎たらしいキャラクターを待ち受ける惨事が生むカタルシスと
辛くもかっこいいキャラクターの最期演出などで畳みかけるように脱出劇に向かっていきます。

その果てに行き着くのが主人公とその娘の父娘の再生ドラマ。
オープニングで端的に描かれた<亀裂>を2人は
ゾンビに埋め尽くされたラスベガスで再生していきます。

強い女性像だけでなく<娘を思う強気父親像>をしっかり描く本作は
昨今のポリコレ志向の強すぎる作品の中ではバランスが良く思えました。

そして、うまいのが父娘ドラマの終着でしょう。
ユーモアを織り交ぜることでウェットに傾けないバランスも良かったですが、
父の母に対する行動を<愛あるもの>と語り、
その行動を娘がとることで<再生>を描いた部分は
名シーンと言わないまでもいい終わり方だったかと思います。

<今後、世界はどうなるのか>

1人の男にすべてがゆだねられたラストカットもいい余韻を残してくれました。



◆総評◆

個人的にはザック・スナイダ―作品の中で
最もエンターテインメント色が強く、
彼の映像作家としての外連を120%で味わえた一作でした。
148分という長尺ではあるものの
それを感じさせない軽快な作品。
オープニングだけでもぜひご覧ください。