日本映画界を震撼させたるろ剣アクション極まれり映画『るろうに剣心 最終章 The Final』 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

本日紹介する映画は
大人気コミックを実写映画化にして
日本アクション史を塗り替え続けるシリーズの最新作
『るろうに剣心 最終章 The Final』

公開日:2021年4月23日
上映時間:138分

監督:大友啓史(大河ドラマ「龍馬伝」)
アクション監督:谷垣健治
原作:和月伸宏
出演:佐藤健/新田真剣佑

人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心(佐藤健)は、
日本転覆を画策した志々雄真実との戦いの果てに
平穏な生活を送るようになっていた。
しかし、彼の前に十字傷の謎を知る男 雪代緑(新田真剣佑)が現れる-



◇現邦画界で最も豪華絢爛なエンターテインメント。その射程は世界。
近年の日本映画界を賑わす人気漫画の実写映画化。
その中で最たる成功を収めるのみならず、
<強い志と飽くなき探求>で日本アクション史を塗り替えたと言っても過言ではないのが
大友啓史監督、佐藤健主演の『るろうに剣心』シリーズでしょう。


漫画ならではの要素をオミットするのではなく、
実写世界のリアリティに合わせてリビルドしていくようなこのシリーズは
時代劇としてもアクションエンターテインメントとしても
回を重ねるごとに明確なジャンプアップを見せてきた。

そんなシリーズがついに<最終章2部作>にたどり着いた。
物語の<終わり>にあたる本作が見せたのは
圧倒的なアクションのクオリティとボリュームだ。

シリーズ史上ではなく、現日本映画界において
最も豪華絢爛、最もダイナミズムなアクションの数々は
またも日本映画史を塗り替えにかかる
が、
驚くべきはそのアクションを通して、
罪への贖罪と復讐心の対峙をエモーショナルに語って見せる演出。
まさに<集大成>と言える出来でした。

そんな『るろうに剣心 最終章 The Final』を
レビューしていこうと思います。



◇剣心と縁に絞ったシンプルな物語が高めるエンターテインメント性
『るろうに剣心』の一時の完結編となった人誅編。
剣心の過去を描く追憶パートを次作に残し、
構成されたのが『るろうに剣心 最終章 The Final』だ。

実写版るろ剣シリーズでは時に大胆な改変が行われており、
それが総じてうまくいっている印象を受けているわけですが、
本作においても同様にうまくいっており、
今回の<物語のシンプル化>とも言える改変によって
最終章の一旦を担うエンターテインメント性を極めた作品になっていたように思える。

左之助と剣心の物語や2人の姿を継承するように成長する弥彦といった
物語完結に相応しい原作要素を大胆にオミットした本作は、
姉を殺された復讐に駆られる縁と
彼との再会によって再び過去と向き合うことになる剣心の戦いに焦点を絞って見せる。

原作を知っていれば、残念さを抱いてしまう可能性はあるわけだが、
断言できるのはその大胆さによって<潔いアクション映画>になっていたという事だ。

物語量としてもテイストとしてもヘビーな印象の強かった人誅編を
剣心と縁の物語に絞り切った本作は痛快なアクション映画たる存在感を放ち、
また、一点に特化したことによって剣心と縁の感情はより明確なものとなっており、
必然的にエモーショナルさも強められていた印象を受けました。


 また、この構成に期待せずにいられないのが最終作になるだろう
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。

シリーズアクションの惜しみなく出し尽くすことで、
<るろ剣アクションの集大成>を示したのちで、
OVA版が名作とされる『追憶編』で
<時代劇に正面から挑もうとしている>ように思えて仕方がないからだ。


『The Beginning』はOVA版よりのヘビーでシリアスな一作になることが

本作で一種表明されているようなものなので期待せずにはいられない。
もしかしたら、日本映画史に残る傑作時代劇が誕生する可能性もある。

物語の潔いまでのシンプル化によって
シリーズが築き上げたるろ剣アクションの神髄を見せつけたよう。
賛否はあっても、ファンなら楽しめるだろう一作。



◇アクションが物語を語りだす。アクションが語るキャラクターの感情。
実写版『るろうに剣心』シリーズの最たる魅力はアクションだ。
大友啓史監督のアクションへの理解とアクションチームへの信頼。
それに最大限応えたダイナミズムなアクションを作り上げた谷垣健治。
与えられた課題をすべて我が物にし、体現して見せる佐藤健をはじめとするキャスト。

複数の要因が見事なまでにリンクし、相乗効果的に反映されているからこそ
このシリーズのアクションは凄まじいものになっているように思える。

縁の圧倒的なパワーと機敏さを見せつけるオープニングの掴みから、
狭い屋内を舞台することでるろ剣アクションの神髄を語って見せれば、
1対多数のアクションをファンが喜ぶサプライズ展開を入れ込みながら繰り広げる。
まさに<集大成たるアクションシーンのつるべ打ち>といったところだ。

しかし、本作はこれまでのるろ剣アクションを
さらにネクストレベルへと導いていく。

ファンを魅了したシリーズのアクション(キャラクターアクションスタイル)
をなぞりながら、決して同じことはせず、すべて着実にグレードアップされている。
俳優陣のアクションへの熱量やクオリティの向上といった部分や、
日本映画屈指の豪華絢爛な舞台セットのリッチさ、
そこを駆け回るダイナミックな動きも前作からレベルを上げているわけだが、
自分が感動したのは<リアルと漫画らしい外連の絶妙なバランス>


基本的に漫画らしい止め絵(わかりやすく言えば必殺技描写)を排除した
リアル思考の強いアクション演出がなされているわけですが、
本作は随所にはっきりと<漫画らしい止め絵>をアクセントに効かせてくる。

その様式美な絵作りやアクション演出
アクションシーンがリアルであるからこそ映えるものとなっており、
1対多数バトル内における一瞬の<剣心無双演出>
見事な爽快感を演出しているように思えた。

そして、恐ろしいのが本作のアクションは
キャラクターの物語を語る映画的なアクションにもなっているという事。

四乃森蒼紫と操の<継承>やあるキャラクターの剣心への<想い>などを
セリフではなくアクションでサラッと描き語り上げるという上品さ。
ここに関しては映画秘宝の谷垣健治インタビューを
読んでから観賞したからこそ気づけた部分でこそあるものの、
その緻密なアクション設計には驚かされた。

そして、その白眉たるシーンがクライマックスの剣心対縁のタイマンバトル
音楽を乗せず、静寂を破るぶつかる2人のアクションのみで成立してしまう
アクションの圧倒的な質の高さも強烈なわけだが、
無音である故、戦いはどこか悲しみや葛藤を帯びており、
それが縁の憎悪や剣心の罪の意識描写に通じている部分も素晴らしければ、
2人がある一点で通じはじめた瞬間に<音と光が指すという演出>には痺れた。

勝ち負けでは区切れない剣心と縁の戦いは
アクションを通して間接的に語られたからこそ深みのある結末となっており、
作品は総じて明白なエンターテインメント性を放ちながら、
最後に関してはカタルシスをしっかり遠ざけるという
作品、物語を理解した構成、演出にファンとして歓喜した。

本作のアクションシーンに関しては
百聞は一見に如かず。
現日本映画最高峰にリッチなアクション映画は
ぜひ映画館でご覧ください。



◇真剣佑演じる縁...もはや北斗の拳
ここからは馬鹿になって書いていきます。
剣心の宿敵となる縁を新田真剣佑が演じているわけですが、
パーフェクトなカッコよさです。

千葉真一の血統とセンスが継承された根本的な身体能力に加え、
この若さで画面を掌握してしまうスター性。
自分が新田真剣佑ファンであるため色眼鏡を通している部分も大いにあるだろうが、
それでも縁に彼以外考えられないほどのはまり役に思えた。

そして、驚くべくはその肉体美
これに至っては<漫画より漫画>です。

個人的な真剣佑の肉体ベストは『OVER DRIVE』(2018)の中で見せた裸体だったわけですが
それをいとも簡単に超えてきました。

上半身の逞しさ、腕の筋肉美。
その肉体感は<北斗の拳のキャラクターに匹敵する>ものであり、
彼が上着を脱いだ瞬間の衝撃、漫画越えの肉体には言葉を失いました。
必ず、目を見開きます。



◇総評
書きたいことは山ほどありますが、
日本を代表するアクションエンターテインメントがまた誕生しました。
るろ剣の前か後か。
このシリーズが日本アクション映画の指標になることはほぼ確実でしょう。

そして、この作品理解とクオリティの高さに
次作が時代劇としての傑作の誕生をも期待させられてしまう。
全作が確かな成功を収めたシリーズは世界から見てもそうないかと思います。
最終作が有終の美を飾るのかどうか。
今から待ち遠しくて仕方がない。