おつかれさまです。
SayGoです。
本日はNETFLIXにて配信が開始された
中村珍の漫画の映画化『彼女』をレビューしたいと思います。
配信日/2021年4月15日
上映時間/142分
監督/廣木隆一(「余命1か月の花嫁」)
出演/水原希子・さとうほなみ
レイは高校時代から片思いをしていた七恵から
突然、電話を受ける。
七恵の結婚生活に壮絶なDVがあることを知ったレイは
その叫びを受け、彼女の夫を殺害。
いつしか2人は罪から逃げるように当てのない旅をはじめた―
中村珍氏の漫画「羣青」を廣木隆一監督で映画化。
出演する水原希子と「ゲスの極み乙女。」のさとうほなみの熱演が
注目を集めている。
<名の有る俳優が大胆な濡れ場に挑む>作品を見るにあたり、
自分はまず<脱ぐに値する映画かどうか>に注目してしまうわけだが、
本作は間違えなくその必要性のある作品だったのではないかと思う。
今回は作中で使用される言葉を用いるが、
レズビアンという要素が物語内に置かれていることに加え、
廣木監督の<日常を切り取るようなドキュメンタリック>な演出の中で
2人の熱演は様々なリアルを醸す映画の最重要な要素となっており、
これが脱げない俳優さんで映画化されていたら全く深みが異なったに違いないからだ。
特に主人公であるレイと七恵が再会を果たし、殺人という罪を背負って旅に出るまでの
序盤においては、セリフではなく俳優の裸体が2人の関係性やその距離感、
事の凄惨さや苦しみ、憎悪と言った感情までをも体現していく。
この時点で自分はかなりの良作かとも思えた。
罪を背負ったレイと七恵が共に当てもない旅をする中で、
抱いてきた疑心を露にし、本音の奥にある本心を露にしていく
ロードムービーと並行して、
高校時代の2人の物語がそれを歪にも純粋にも語り上げていく。
罪を背負いながら2人の終わりを悟る時間を謳歌しようとするような作りや
歩みが止まることで終演を迎えるラストシーンに、
なぜか『俺たちに明日はない』(1967)を彷彿とさせられもした。
青春のようなカラフルさに溢れながら
自分を生きることへの葛藤や現実の残酷さが付き纏う本作は
シスターフッド作品としてもかなり魅力的に思えた。
正直、142分という長編なことや、
中盤、意図的であろうが物語を前に進ませない作りに中弛みを覚えたが
終盤に<目を見開くように見入ってしまうシーン>と演出がいくつもあった。
まずはレイの兄嫁を演じる<鈴木杏の圧倒的な存在感>。
終盤でレイと七恵は激しい衝突を見せるのだが、
その場面にいる鈴木杏演じる兄嫁の立ち振る舞いと堂々たる存在感に
自分は目を奪われた。
2人を理解させ合わせようとする、そこに邪魔が入らないようにする
まさに親心たる兄嫁の姿は年輪を重ねた鈴木杏が見事に体現している。
また、彼女の言葉はこの作品のすべてにもなっているため注目していただきたい。
そして、次に<レイと七恵が社内でラジオから流れてきた歌を歌うシーン>だ。
YUIのファンだった自分は流れてくる「CHE.R.RY」にいろんな想いがあるからこそ
最初こそ冷ややかな目で見てしまったわけだが、素晴らしい演出が驚かされた。
そこについて語る前に本作の廣木監督の作品演出について触れたい。
この作品は作り込まれた画もあるものの、日記を切り取るような
ドキュメンタリーチックな演出が取られている。
特にレイと七恵の重要なシーンではカットを割らず、長回し。
そこにいるレイと七恵のありのままを映すかのように演出されている。
クライマックスにあるレイと七恵が体を合わせるシーンは
そんなドキュメンタリー的な撮影もあって素晴らしいものになっているわけです。
※このシーンは必見です。
その上で印象深かったのが、車内でレイと七恵が
「CHE.R.RY」を楽しくに歌い出すシーンです。
<レイと七恵は歌を歌うのですが、歌詞が曖昧で完璧には歌えていない。>
でも、それを恥じるそぶりもなく、時に顔を見合わせながら歌い出す。
自分をよく見せようとしていない部分に2人の関係性を垣間見、
展開としても2人が吹っ切った演出としても見事。
そして何より、そのあまりに<自然な空気演出>に自分は感動させられました。
そして、最後に自分が名シーンだと思ったのが、
<レイと七恵の出会いが語られるシーン>。
ここに関しては言葉で説明できないのですが、
恋に落ちた瞬間をここまで見事に切り取ったシーンは見たことがない。
レイと七恵の高校時代を南沙良 植村友結が演じているわけですが、
その表情の演技、アクションとリアクションが完璧すぎる。
このシーンは世界のどこの人間が見ても理解できるかと。
あまりのすばらしさにこのシーンで感涙しました。
そんな様に終盤は本当に素晴らしいシーンが目白押しでした。
この2人の俳優さんは今後注目です。
廣木隆一監督の演出と俳優陣の演技が見事に合致した本作は
すばらしい名シーンが多く、作品としても傑作でした。
おススメです。