おつかれさまです。
SayGoです。
本日はジェームズ・ガンがアメコミを
ゴア描写満載エンターテインメントに仕立て上げた
『ザ・スーサイド・スクワッド"極"悪党、集結』
をレビューしようと思います。
公開日:2021年8月13日
上映時間:132分
監督:ジェームズ・ガン(「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」)
-あらすじ-
政府職員のアマンダ・ウォラーは
地球外生命体の秘密実験「スターフィッシュ計画」を阻止すべく、
受刑者による部隊タスクフォースX=通称 スーサイド・スクワッドを招集。
南米の島国 コルト・マルテーゼへの潜入と破壊ミッションが開始されるのだったが、
チームは早々に壊滅的な被害を受けてしまう。
2016年に映画化されたDCコミックの「スーサイド・スクワッド」を
ディズニーから解雇通告を突きつけられたジェームズ・ガン監督がリランチ。
製作費約2億ドルを費やしたビッグバジェット作品であるとともに、
下品なユーモアとショッキングなゴア描写で飾られたジェームズ・ガンの
トロマ魂の伺える作家性がこの上なく強い作品となっている。
◆すべてが過激!これぞ決死部隊たる極悪エンターテインメント◆
ディズニーから解雇通知を突きつけられたジェームズ・ガンが
ディズニーに中指を立てるが如く、過激で下品なアメコミ映画を生み出しました。
この作品にGOを出し、ジェームズ・ガンに好き勝手させた
ワーナー・ブラザーズを称賛したい。
ブラックユーモアにしてしまうブリッブリ、キレッキレのギャグセンス。
イラク戦争を彷彿とさせる社会批評性や
アンチアメリカ、アンチヒーロー的な側面を描きながら
クライマックスでは見事なヒーローオリジンに着地させる脚本力。
活劇の中でシームレスにキャラクターの設定、バックボーンを
済ませていく交通整理力。
どれをとってもジェームズ・ガン、やばすぎる。
万人向けではない作品でこそあるものの、
刺さる人には劇薬級のエンターテインメントであることに違いない。
◆5億点のアバンタイトル!粋すぎるクレジット◆
2016年版のようなキャラクター説明シークエンスなど皆無。
巨大な星条旗をバックにスーサイドスクワッドを集結させ
あっという間に海岸からのコルト・マルテーゼ上陸作戦へ。
ジェットコースターの如く、有無言わせぬスピード感で幕を開けます。
「作戦!?ねょーよ!」と言わんばかりの司令官アマンダによる雑な扱い。
「今回は人体破壊描写あるんで!」と高らかに宣言するような映像。
メンバーが次々に死んでいくという、
開いた口が塞がらない怒涛の急展開は
2016年版で圧倒的に欠けていた決死部隊感が演出されていました。
カッコ良さ皆無でただ馬鹿馬鹿しく死していくヒーローの出陣は
「デッドプール2」(2018)のXフォース降下シーンを連想しましたが、
フリも無ければゴア描写の度を越している本作の悪趣味さはレベチ!
しかも、彼らは誘導舞台で本隊は別のルートで上陸。
という大落ちでここまでの数十分が無に帰された瞬間は滾りました!
そして、センスが凄まじいのがクレジット演出。
全編を通して、文字の遊びがとにかくユーモア富んでいるわけですが、
このオープニングはユーモアより露悪さがバランスよく配合されており、
その隅々まで行きわたるクレイジー加減にオープニングから飛ばされました。
「観たかったスースク、これだ!」
そう思わせてくれたこのオープニングは5億点でしょう。
◆ヒーロー展開を一瞬で卑劣な殺戮シーンに!もはやトロマ◆
「プライベート・ライアン」(1998)顔負けの戦場地獄描写で幕を開けた本作は
その後も人体破壊描写を惜しむ様子は微塵もなく、
露悪的ユーモアを交えることでゴア描写をギャグにも仕立て上げていきます。
物語中盤、現地の武装集団に捕らわれたフラッグ大佐の救出劇が展開されるわけですが、
このシークエンスは度を越したブラックを炸裂させる。
チームのリーダー格であるブラッドスポートとピースメイカーが
「俺の方がすごい!」と己の技術を見せつけ敵兵を倒していく。
倒し方の悪趣味さが静かにインフレしていく様に、
サラッと成人男性のち〇こをスクリーンに映し出せば、
マス掻き&精子投げかけジェスチャーで
ブラッドスポートを挑発するピースメイカー。
ノリはジェームズ・ガンの出身でもある
残虐性や下品さを馬鹿なコメディに仕立てる
トロマ映画にかなり近いものとなっています。
とはいえ、一応にも仲間の救出という大義名分があるので
ヒーロー性は担保されているわけなのですが、
フラッグ大佐のもとへ行き着いた瞬間に
彼らの救出活動が非人道的なの殺戮劇に一転するという
ブラックギミックを用意。
「アメリカ流」という言葉で追い打ちをかけるこのジョークは
面白いだけでなく、これまでの映画にはないフレッシュさもあり、
また、普通のヒーローなら罪悪感に苛まれるところ、
ジョークでごまかす様で彼らが犯罪者集団であることまで示してしまう。
ジェームズ・ガン監督作「スーパー!」(2010年)同様、
馬鹿馬鹿しいだけでなく、
ヒーロー活動とその暴力性からアンチヒーロー性を語り、
他国からの視点によるアメリカの批評を入れ込まれるなど
DCらしいシリアスな側面もしっかり組み込まれている本作。
センスも手腕が恐ろしいの一言です。
◆脚本力の凄まじさ。この程度はお手の物◆
驚くべくは2016年版と設定や展開などはほぼ変わっていないのに
まったく別作品、なんなら傑作にまでもっていってしまっているのが
本作の脚本の妙。
キャラクターの交通整理力にはとにかく頭が下がる。
2016年版とは異なり、主人公的な存在を中心にしっかりと置かれた本作は
彼視点でキャラクターが整理されていくので混乱することはまずない。
事細かく言葉や回想でキャラクターを説明することを避け、
潜入活劇の中でヒーローのキャラクター性を説明していく演出もうまく、
その特性や性格をサラッと見せておきながら、
後半ではそれ用いた作劇でキャラクターに見せ場まで作ってくる。
もう、こんなのお手のものなのでしょう。
また、キャラクターの抱くトラウマや過去の描写などを
シームレスに進行する時間軸に組み込んでいくアイディアもキレッキレ。
ラット・キャッチャー2の回想をバスの窓に映し出してみれば、
ポルガドットマンの抱く母への憎悪、トラウマを
なかなかにショッキングで強烈、この上なく馬鹿馬鹿しい映像描写で
語って見せる。
複数の物語を同時進行せず、大胆な時系列の整理を施すことで
流れを止めない部分もナイスですね(笑)
どれもこれもセンスの光る演出となっており、
物語のスピード感や流れを止めることがないため
高いテンションを維持してくれるエンターテインメントとなっていた。
そして、見事なのがクライマックス。
ミッションの実情が明かされるとともに
(ひと昔前の)アメリカという国に対する批評性を帯びだす。
イラク戦争を彷彿とさせる物語の構造と
その真実を巡ったチームの対立が始まる。
国を救うことではなく減刑を求める者たちが
この展開を機にヒーロー性を見せ始めた後で、
<市民を救う>という明確なミッションを設けて
「これぞヒーローオリジン!」という物語にドライブしていくクライマックス。
巨大怪獣 スターロという馬鹿馬鹿しくも
その巨体感で絶望を演出して見せる映像も見事であったが、
絶妙なさじ加減で彼らを世界を救ったヒーローにせず、
ある関係性の中でのみ確固たるヒーローの獲得という部分に
着地してみせたところにこそ、センスとうまさを感じてしまった。
過激なアンチヒーローでもあり見事なヒーローオリジン。
下品極まりないのに社会性を内包する物語。
ジェームズ・ガン監督、あまりに凄すぎる。
◆しっかり上がるアクション。汚いのに美しい映像◆
アクションもひとひねりしてくれているのがこの新スースク。
先ほど書いた露悪的な殺害アクションも面白いが
かっこいいハーレイ・クインのアクションも印象的!
境地からしなやかな肉体技で脱する静なるアクションも面白ければ、
デュアルライフルアクション、跳躍力ある槍アクションなど
本作のハーレイ・クインのアクションはバリエーションに富んでいる。
ハーレイ・クインのアクション時に
急に大量の花びらが舞い出す演出も
今現在意味合いなどの整合性は見つけられてはいないわけだが、
うっとりするほど美しいシーンとなっており、
ある意味でこの作品のクレイジーさを象徴するシーンにもなっている。
クライマックスの巨大怪獣スターロ戦も楽しくて仕方がない。
怪獣もの×ゾンビもの×ヒーローという
ジャンルミックスなお祭り騒ぎ展開はスクリーン映えする映像。
それぞれが一応にも役割を見出し、チームとして怪獣攻略に挑む様や
ツイストを利かせる展開に
度を越した物量の〇〇〇による攻略という汚くも美しい結末。
特にクライマックスに関してはぞわっとする気持ち悪さがありながら、
それらが一瞬輝き美しさを帯びる不思議さがあり、
いままで分泌されたことのない脳汁が出る興奮でした。
そして、最後に言いたいのが随所でうかがえる
「もういいよ!」と突っ込みたくなる余計なアクション。
個人的に印象的なのはハーレイ・クインとピースメイカーなのだが、
敵が明らかに戦意喪失状態にあるのに、
一打二打三打と余計に追い打ちをかけていく。
このやりすぎ感、多いよ感がたまらないものでした。
◆総評◆
GotGでしかジェームズ・ガンを知らない人は
その過激さと下品さには驚くだろうが、
このクレイジーでショッキングな本作は夏にぴったしのぶっ飛び加減。
とにかくジェームズ・ガンのセンスが光る作品。
ネズミと仲良くなる=和解するというラストカットまで最高すぎるでしょ。