4年に一度五輪が開催されるのが閏年で、本年がこれに当たる。この年に、四国八十八カ所の霊場を巡るお遍路の御利益は、通常の3倍の御利益があるとのこと。ただし、通常は1番札所から回る「順打ち」ではなく、逆に88番札所から1番へ巡る「逆打ち」で回ることが条件である。しかも、今年は丙申という60年に一度の年で、逆打ちで弘法大師に巡り合えたという話が残っており、貴重な年なのである。そのために、各旅行会社かのは、逆打ちのお遍路の企画が目白押しだという。
ところで、「順打ち」はじゅんうち、「逆打ち」はぎゃくうちと読み、意味は前述の通りである。
面白いことに、建築の地下工事の進め方にも、「順打ち」と「逆打ち」がある。しかし、読み方が違う。後者の読み方は”さかうち”と読む。地下工事は通常、はじめに底まで土を掘って空間にしてから、構造物を下から上に順番に作っていく。これを「順打ち」という。そのため、地下の構造物が完了しないと、地上の工事に移れない。
ところが、地下の土を底まで全て掘る前に、順に上から1階分ずつ土を掘って、構造物を作り、また、その下を掘って、構造物を作る、要は地下の構造物を上から下に作っていく方法が「逆打ち」である。地下を全て作る前に地上の工事にかかれるので、工期が短くなるのが最大のメリットだ。
実際に四国八十八カ所を巡るには、相応の時間が必要であり、よほどの事情がない限りは実行は難しい。しかし、擬似的に一つの場所に四国八十八カ所の札所のお砂を埋めて、巡礼することで実際に回るのと同じご利益が期待できる。お砂踏みと称して、東寺をはじめ様々な寺院で定期的に開催されている。
連休最後の日曜日に、京都仁和寺の裏山にある八十八カ所ウォークに行った。仁和寺の裏山となる御室八十八ヶ所霊場の札所でスタンプを押しながら巡拝する行事が、月に一回ある。スタンプラリーをしなければ、いつでも、裏山にある札所を巡ることができる。なんと、この施設群は仁和寺の僧侶が190年ほど前から作ったとのことで、歴史がある。裏山の高低差約200m、総距離3kmの山道沿いに、88か所のお堂が建っており、順番に参拝しながら巡るのである。
当日は、通常順打ちでいくのを、逆打ちで回ることにした。裏山の参拝道は枯葉に覆われて滑りやすく、急坂も結構多い。木々の新緑で太陽の光が遮られ、ひんやりとした空気を感じた。野鳥たちの鳴き声がしきりに響き、自然石を積んだ階段を息を切らして登って行った。お堂が目の前に見えると、納められた観音様や如来様に手を合わせて、祈念した。特に薬師如来様のお堂では、病が消え去るようにお願いした。
登りでは相当傾斜がきつく、体力が低下した身体を鞭打った。ゼイゼイ息をして登っては、休憩しながら、成就山山頂に着くと、京都市内が一望できる広場に出た。あ~見晴らしのいいこと、疲れも一掃できる。しばらく、眺めに満喫してから、下山の一途をたどった。八十八カ所のお堂を逆打ちで回り、最後の1番札所に到着した時、弘法大師の偶像に手を合わせて、無事88個のスタンプが押せた。約3時間半かかって回り、お昼もだいぶ過ぎてしまった。
ガクガクした足に鞭打って、完了したスタンプ帳を持って、スタート時点の受付に持っていくと、終了の印をもらって無事終わった。想像以上に体力的にはきつく、一人では挫折したかもしれない。奥方と一緒で助かった。徒歩9km、12,000歩だった。御利益があることを願って、また歩こう。