札幌の皮膚科専門医/美容皮膚科 女医 日景聡子です。
 
 
「くすみ」とも認識されやすいシミの一種、肝斑については今までも何度かブログに書いてきました。
 
 
原因としては紫外線、女性ホルモン(妊娠など)、ストレス、日々の間違ったスキンケア(こすりすぎ)などが挙げられます。
 
 
今日は、女性ホルモンの部分に焦点を当てて書いてみます。
 
 
妊娠すると一過性にシミが濃くなるお話、こちらの記事からご存じの方も多いと思います。
 
しかし、妊娠が終わると関係ないかというと、そうではないんですね。
 
 
女性ホルモンが減ってくる更年期、婦人科でホルモン補充療法を行いますが、これも肝斑を濃くする可能性があるとの報告があります。
 
 
ただし、肝斑が濃くなるのが嫌だからホルモン補充療法を受けない、というのはちょっと違いますよね。
 
 
女性ホルモンは皮膚だけではなくて、全身の臓器に関係しています。
 
 
そこから来る不調、健康寿命への影響を考えると、肝斑のため「だけ」に治療を拒否するのは考えものです。
 
 
肝斑の治療というと、トラネキサム酸の飲み薬(トランサミン®やトランシーノ®など)が代表的です。
 
 
しかし、ピルを含めて女性ホルモンの治療を行う場合、トラネキサム酸との飲み合わせを嫌がる婦人科の先生もいます。
 
 
そのため、トラネキサム酸の飲み薬が難しい方には導入をお勧めしたり(肌から直接トラネキサム酸を入れていく治療です)、漢方を処方しています。
 
 
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)です。
 
 
漢方を専門とする先生方は、昔から肝斑の治療に使っていたようです。

 
血の巡りが悪くて目の周りや口の周りがくすみやすい方にも処方していますし、むくみを取る作用もあることからフェイスラインがスッキリする方も。
 
 
桂枝茯苓丸は血の巡りを良くする漢方として更年期治療でもおなじみですので、40代以降の肝斑であればこちらを使うというのも1つだと考えています。
 
 
女性ホルモンの増加に伴ってメラニンが増える反応を、桂枝茯苓丸加薏苡仁が抑えてくれるというデータもあります。
 
 
妊婦さんへの処方は推奨されていませんが、40~50代でホルモン補充療法を受けている方の肝斑には効果があると認識しました。
 
 
肝斑=トラネキサム酸と思われがちですが、漢方という選択肢もあります。
 
 
その方が体をトータルで整えるという意味では向いているのかもしれません。
 
 
もちろん、間違ったスキンケアを続けていてはダメなのですが…
 
 
肌の治療にあたる際は、女性ホルモンや更年期の影響も考えながら方針を立てています。
 
 
ちなみに、「シミ治療=トラネキサム酸内服」とは限りませんのでご注意下さいね。