格ゲーはつまらない
こう書くと怒る人はいっぱいいるだろう。もちろんこれは正確な表現ではなくて、格ゲーとFPSは面白さの部分は全然違うし、格ゲーにしかない独自の面白みもある。だけど、その格ゲーの面白さを体験できるのはごくごく限られた人間だけ、というのが実際のところ。深くやりこまないと格ゲーの楽しさはわからない
だから多くのゲーマーにとって、格ゲーは「つまらないもの」という評価になるのは仕方ない。それを格ゲーのすべてにおいて(ジャンルそのものが)つまらない、という評価に拡大するのは間違いだが、ざっくりと「つまらないもの」であることは格ゲー好きも認めたほうがいい。それはただの事実だ(だからFPSに覇権を取られたのだから)
そのへんを書いてみようと思う
①地形的要素存在しない
現在の格ゲーの主流は2D(2.5D)で狭く平坦な場所での殴り合いだ
地形概念が存在しない、という言い方もできる。それは単純化されて要素としてオミットされているということでもある。地形概念が存在する格ゲーとは終点化しないスマブラのようなものだ
FPSで遮蔽物や地形の起伏がないということは考えられない。それをするとあまりにもクソゲーになる。FPSは地形によって接敵時の有利不利が生み出され、そこからエイム力での有利不利が加算されて結果になるので、地形がなければエイム力を競うだけのゲームになる
地形的要素が存在しないということは、ゲーム性が単純であるという言い方もできる。この表現は誤解を生みそうだが、しかしプレイヤーが処理しなければならない概念が少なければ要素の複合度は減り、シンプルになるのは事実で、ここはFPSとの大きな違いでもある。FPSでは重要な要素である地理要因をカバーしきるのはプロでも難しく、いわゆる運(まぐれ)が多発する。それに比べれば地理構造が単純なCSGOなどはまぐれの率が低くなるのも、概念の複合度が低いからだ
②まぐれの不在、描写の違い
格ゲーにまぐれは存在しない。強いて言うなら2択や3択の回答は運=まぐれ、と言えるかもしれないが、基本的に格ゲーに運という概念はない
FPSの立ち回りも厳密には運ではないが、到底人間に支配しきれる概念ではないから運と呼称される。たとえば接敵時に相手の後ろや横を取った側は圧倒的に有利だが、どんなプロでも後ろや横を絶対に取られない動きというものはやりようがない。仮にぼくがスタヌやニンジャと何百回も戦ったら、まぐれで後ろや横をとってキルすることはいくらかは発生するだろう。どんなプロでも環境を支配しきれないので、いつかは「運悪く」後ろを取られることは発生する
しかし格ゲーではプロがその気になれば被弾ゼロ(ノーダメではなく、差し合い読み合いに負けての明確な被弾)を達成することは不可能ではない。仮にぼくがウメハラと1000回戦えば、どこかで対空昇竜の1発くらい入る瞬間はあると思うが、それは1発もらったって勝てるからハイリスク行動を振ってくるという前提で、もし被弾ゼロを目指して戦われたら波動拳の1発すら入らないだろう。格ゲーでは環境=重要な要素のほとんど支配してしまうことが実際にできる。ぼくはそれを「まぐれの不在」とここでは表現している
描写の違いも大きい。FPSなら初心者でもキルは取れるが、同じものは格ゲーではワンパンやワンコンに相当する。この描写の違いは大きい。何度も差し合いが繰り返される中で都度の差し合いの勝率が平均化されるわけだが、FPSではこれはいわゆるキルレであり、格ゲーにはそれがない。キルにまぐれはあるがキルレにはなく、ワンパンにまぐれはあるが勝ち負けにまぐれはない、という言い方もできる。平均化された差し合い勝率、とでも呼ぶべきものが指標にはならず、その勝率が高い側が勝ちの全てを持っていく=平均化の後にそこから100・0になる、という構造が格ゲーにはある
FPSにおいてはさしあたりの指標となるのはキルレ1.0だが、5キル10デスと2キル10デスには大きな意味の違いがある(違いが見出せる)。しかし格ゲーで「負けたけど5割削った」と「2割削った」に意味の違いを見出すのは難しい
キルレが悪くてもキルが取れたら快感はあるし、それがいわゆる報酬系となって初心者のモチベに繋がるが、格ゲーでワンパンやワンコン入れたからと快感を感じてモチベに繋げるのはかなり難しいだろう。それが描写の違いだ
その過程において格ゲーはモチベ維持がかなり難しい部類のゲームになる。途中の報酬系が貧弱だからだ(勝つことの報酬比率が極端に高いということでもある)
③戦法と対応の強要
たとえば待ちガイルであったり、スマブラならガン待ちリンクやバッタアイクについて格ゲーマーはどう答えるだろうか?
「それを突き崩すのがゲーム性」
「対応できない腕なのが悪い」
「それも立派な戦術」
といったところだろう。しかしFPSでこれらワンパやガン待ち戦術に相当する芋砂や角待ちSG(地雷つき)について、FPSプレイヤーの回答はこうなる
「放置すればいい」
「芋は貢献しないから無視でいい」
「人数差になるからむしろこっちが有利」
つまり、いわゆる強行動やワンパ戦術に対して対応を拒否することができ、というかむしろそっちが基本になる。もしこれらの(いわゆるクソ戦法の)対応を強要されるタイトルがあればFPSではクソゲー扱いされるだろう
つまり格ゲーにおいては強行動ぶっぱやガン待ちといったいわゆるクソ戦法に対して、対応せざるを得ないゲーム性になっている。そして実際強いからそのやり方は横行し、出会う確率も高い。スマブラSPのオンラインでガン待ちに遭遇する率は非常に高い(ちなみにスマブラSPの現時点のtierを見る限り、遠距離牽制持ちが上位を占め、結局待ち有利なのが可視化されてしまっている。ガン攻め有利とはなんだったのか)
それを悪いことだとは言わない。言わないが、相手をしていてストレスフルであることも否定できない。要するにストレスを回避できないのが格ゲーであり、だから「しんどいゲーム」になってしまう側面は間違いなくある
④動けない時間の長さ
格ゲーの基本は被弾中は操作できないというところにある。5分の殴り合いになったとすれば、半分近い時間は操作不能時間に当たる
一方FPSにおける操作不能時間はリスポン待ちだけだ。撃ち合い中は操作できるし、そもそもほとんどの時間は移動に使われているから、ベースレイプや延々とリスキルにでも合わない限りほとんどの時間でゲームプレイはできる(それが面白いか別の話だが)
無限リスキルはゲームとして発生させられないことがほとんどなのでBFのベースレイプを例にする。チームの実力差によって全拠点を制圧され、リスポン地点から動けない、ほぼ負け確の状態をベースレイプという。この状態に追い込まれたチームはだいたい抜けるわけだが(遠距離からキルを取ることはできても勝ち目もないし地味だから)格ゲーの被コンボ中というのは何もできないという意味では似たようなものだ。瞬間的に終わるかダラダラ続くかの差しかない
しかしFPSにおいてベースレイプまで至った状態での途中抜けが非難されることはまずない。実質的に決着がついているし、ゲームとして一切面白くないのは事実だし、嫌気がさして抜けてしまうのはどうしようもないわけだ。しかしFPSなら抜けて次に行くようなつまらない時間帯が、格ゲーだとゲームの大半を占めていると考えたらどうだろう?
格ゲーのプレイ時間の多くが、かなりストレスフルな時間帯という結論になってしまう。やはりここでも格ゲーは「しんどいゲーム」という見方になってしまうだろう
⑤非直感的、難しいけど底は浅い操作難度
格ゲーの操作は難しい。相当簡易化されているスマブラですら、必須テクの小ジャンを安定させられないプレイヤーが多数いるし、初心者が操作ミスで崖から落ちるのは日常茶飯事だ
しかし、入り口が狭いだけでコンボ入力が安定すればそこから先の操作技術というのは実は底が浅い。先行入力の緩和などで余裕の増えた現代の格ゲーならなおさらだが、要するに「ウメハラやときどにしか実現不可能なコンボや技」というものは存在しないということ。格ゲーにおいて必要最低限の技術はハードルが高いが、そこから先の技術の伸び代はそこまで大きくない
格ゲーにおける腕の差はむしろ読みや経験といった対人スキルで生まれるものだ。どうせコンボにはシステム上の限界があるのだから、突き詰められない果てがあるわけではない
一方FPSにおける腕の差とはすなわちエイムの差。そしてどんな凄腕のプロでも100発100中HSは不可能になっている。しかしFPSにおけるエイミングは(マウスであれば特に)かなり直感的で、ある程度の腕前に到達するまではかなり早い
言い換えればFPSの操作性は「入り口が広く果てしない」からやりこみやすいのに対して、格ゲーのされは「入り口が狭く底から先も狭い」ということになる
どんなプロでも全弾命中はさせられないからエイムbotが猛威を振るうわけだが、初段命中させればノーミスでコンボをつなぐチートがあったとして格ゲーで脅威になるだろうか?たぶんならないだろう。ある程度のプレイヤーなら同じことがほぼ確実できるからだ
FPSの操作が直感的であるというのは大事なことだ。実際はグレ投擲や偏差射撃などは距離感とセンスが相当求められるから決して簡単ではないが、ある程度あてることは誰でも簡単にできる。格ゲーというのはグレを投げるための操作がかなり複雑で、そのかわり投げたら必ず当たるという仕組みとでも言うべきか。しかし初心者からみればグレを投げられるゲームと投げられないゲームであり、前者のほうがそりゃ楽しいだろう
スマブラが%や距離(あと相手のベクトル入力)によってコンボが繋がったり繋がらなかったりすることが、一部格ゲーマーから否定的に評価されるのも似たような話だろう。その連中は「コンボを出すのは難しくていいけど、出したら確実に決まるようになっていないとダメだ」と言っているわけで、格ゲーのゲーム性ってのはそういうもんなわけだ
⑥完全個人技という側面
格ゲーは1on1が基本だ。たとえば対人対戦アクションとしてガンダムvsシリーズをあげても、あれを格ゲーと呼ぶやつはいないだろうし、2on2という時点でない、という話が必ず出るだろう
しかしFPSでタイマンというのは非常に例外的で、人数差という要素が重くのしかかるようにできているのが普通だ。たとえばぼくと同レベルのプレイヤーを用意し2人で行動すればプロ1人にもそう負けなくなる。これも勝敗を決める因子として過程を複雑にしていく
タイマンにはタイマンの独特の良さがあるから格ゲーはそれでいいのだけれど、よく言われるメンタル面でのしんどさ=負けを他人のせいにできない、という問題はモチベ維持の点でのしかかってくる
それだけではなく、格ゲーの「自分が相手より強くならない限り決して勝てない」というストイックな構造もここから来ている。他人というファクターが存在しないから、乗算にならず、個人技の比べ合いという形に純化していく
それこそ格ゲー独特の良さでもあり、格ゲーを別格に楽しめる人にとっての蜜の部分なのだけど、勝ち続けられる本当に強い人がごく一部である以上、負けがこむ多くの人にとって辛くどうにもならない構造、ということもまた一面の事実ではある
⑦報酬系の弱さ
格ゲーの報酬系は相当弱い。格ゲーは勝ち負けに価値のほとんどが詰め込まれたかなり極端でシンプルなゲームだから、勝てたら楽しいし負ければ楽しくない。言い換えると、格ゲーには過程での楽しさはほとんど用意されていない(もしくはそれを感じ取れるまでが相当長い)
↑で少し書いたけど、格ゲーでのワンパンやワンコンはFPSではキルに相当する。キルは過程の報酬としてはよくできたものだ。その代わり、勝ち負けやキルレの報酬=快感というのは、格ゲーの勝ちのそれより相当に低い
ざっくり言えば、格ゲーは勝った瞬間に脳汁がドバッとでるゲーム。勝てなきゃほとんどなにもない。しかしこれは、負け続ける初心者のモチベ維持という意味では相当に辛い
勝ち負けにしか価値がないという意味では将棋なんかもその通りだが、将棋は駒落ちといういい仕組みがあり、手を抜かずに勝ちを演出できるやり方が昔から用意されている。格ゲーにはそれが用意されていない。ランクでHP補正をかけたって死ににくいカカシを延々ぶん殴るゲームになるだけだし、本当に駒落ち相当のことをやるなら上級者側は一部コマンドや技が封印される、といった形にならざるを得ないだろう。しかしそんなものを作ろうという話を聞いたことすらない
逆にいえば、将棋ですら駒落ちがあるのに、格ゲーはそれすらしないのだから初心者が残るわけがない、という言い方もできる。FPSはタイトルにもよるがbot撃ちもあるし、そもそも初心者でもそれなりにキルが取れる。じゃあキルの取りにくいApexはどうなんだって話だが、そもそもバトロワ系は漁りと生き残りが最初の報酬系になっているから、初心者が0ダメでも楽しさを見出せる部分がある
こう書くと怒る人はいっぱいいるだろう。もちろんこれは正確な表現ではなくて、格ゲーとFPSは面白さの部分は全然違うし、格ゲーにしかない独自の面白みもある。だけど、その格ゲーの面白さを体験できるのはごくごく限られた人間だけ、というのが実際のところ。深くやりこまないと格ゲーの楽しさはわからない
だから多くのゲーマーにとって、格ゲーは「つまらないもの」という評価になるのは仕方ない。それを格ゲーのすべてにおいて(ジャンルそのものが)つまらない、という評価に拡大するのは間違いだが、ざっくりと「つまらないもの」であることは格ゲー好きも認めたほうがいい。それはただの事実だ(だからFPSに覇権を取られたのだから)
そのへんを書いてみようと思う
①地形的要素存在しない
現在の格ゲーの主流は2D(2.5D)で狭く平坦な場所での殴り合いだ
地形概念が存在しない、という言い方もできる。それは単純化されて要素としてオミットされているということでもある。地形概念が存在する格ゲーとは終点化しないスマブラのようなものだ
FPSで遮蔽物や地形の起伏がないということは考えられない。それをするとあまりにもクソゲーになる。FPSは地形によって接敵時の有利不利が生み出され、そこからエイム力での有利不利が加算されて結果になるので、地形がなければエイム力を競うだけのゲームになる
地形的要素が存在しないということは、ゲーム性が単純であるという言い方もできる。この表現は誤解を生みそうだが、しかしプレイヤーが処理しなければならない概念が少なければ要素の複合度は減り、シンプルになるのは事実で、ここはFPSとの大きな違いでもある。FPSでは重要な要素である地理要因をカバーしきるのはプロでも難しく、いわゆる運(まぐれ)が多発する。それに比べれば地理構造が単純なCSGOなどはまぐれの率が低くなるのも、概念の複合度が低いからだ
②まぐれの不在、描写の違い
格ゲーにまぐれは存在しない。強いて言うなら2択や3択の回答は運=まぐれ、と言えるかもしれないが、基本的に格ゲーに運という概念はない
FPSの立ち回りも厳密には運ではないが、到底人間に支配しきれる概念ではないから運と呼称される。たとえば接敵時に相手の後ろや横を取った側は圧倒的に有利だが、どんなプロでも後ろや横を絶対に取られない動きというものはやりようがない。仮にぼくがスタヌやニンジャと何百回も戦ったら、まぐれで後ろや横をとってキルすることはいくらかは発生するだろう。どんなプロでも環境を支配しきれないので、いつかは「運悪く」後ろを取られることは発生する
しかし格ゲーではプロがその気になれば被弾ゼロ(ノーダメではなく、差し合い読み合いに負けての明確な被弾)を達成することは不可能ではない。仮にぼくがウメハラと1000回戦えば、どこかで対空昇竜の1発くらい入る瞬間はあると思うが、それは1発もらったって勝てるからハイリスク行動を振ってくるという前提で、もし被弾ゼロを目指して戦われたら波動拳の1発すら入らないだろう。格ゲーでは環境=重要な要素のほとんど支配してしまうことが実際にできる。ぼくはそれを「まぐれの不在」とここでは表現している
描写の違いも大きい。FPSなら初心者でもキルは取れるが、同じものは格ゲーではワンパンやワンコンに相当する。この描写の違いは大きい。何度も差し合いが繰り返される中で都度の差し合いの勝率が平均化されるわけだが、FPSではこれはいわゆるキルレであり、格ゲーにはそれがない。キルにまぐれはあるがキルレにはなく、ワンパンにまぐれはあるが勝ち負けにまぐれはない、という言い方もできる。平均化された差し合い勝率、とでも呼ぶべきものが指標にはならず、その勝率が高い側が勝ちの全てを持っていく=平均化の後にそこから100・0になる、という構造が格ゲーにはある
FPSにおいてはさしあたりの指標となるのはキルレ1.0だが、5キル10デスと2キル10デスには大きな意味の違いがある(違いが見出せる)。しかし格ゲーで「負けたけど5割削った」と「2割削った」に意味の違いを見出すのは難しい
キルレが悪くてもキルが取れたら快感はあるし、それがいわゆる報酬系となって初心者のモチベに繋がるが、格ゲーでワンパンやワンコン入れたからと快感を感じてモチベに繋げるのはかなり難しいだろう。それが描写の違いだ
その過程において格ゲーはモチベ維持がかなり難しい部類のゲームになる。途中の報酬系が貧弱だからだ(勝つことの報酬比率が極端に高いということでもある)
③戦法と対応の強要
たとえば待ちガイルであったり、スマブラならガン待ちリンクやバッタアイクについて格ゲーマーはどう答えるだろうか?
「それを突き崩すのがゲーム性」
「対応できない腕なのが悪い」
「それも立派な戦術」
といったところだろう。しかしFPSでこれらワンパやガン待ち戦術に相当する芋砂や角待ちSG(地雷つき)について、FPSプレイヤーの回答はこうなる
「放置すればいい」
「芋は貢献しないから無視でいい」
「人数差になるからむしろこっちが有利」
つまり、いわゆる強行動やワンパ戦術に対して対応を拒否することができ、というかむしろそっちが基本になる。もしこれらの(いわゆるクソ戦法の)対応を強要されるタイトルがあればFPSではクソゲー扱いされるだろう
つまり格ゲーにおいては強行動ぶっぱやガン待ちといったいわゆるクソ戦法に対して、対応せざるを得ないゲーム性になっている。そして実際強いからそのやり方は横行し、出会う確率も高い。スマブラSPのオンラインでガン待ちに遭遇する率は非常に高い(ちなみにスマブラSPの現時点のtierを見る限り、遠距離牽制持ちが上位を占め、結局待ち有利なのが可視化されてしまっている。ガン攻め有利とはなんだったのか)
それを悪いことだとは言わない。言わないが、相手をしていてストレスフルであることも否定できない。要するにストレスを回避できないのが格ゲーであり、だから「しんどいゲーム」になってしまう側面は間違いなくある
④動けない時間の長さ
格ゲーの基本は被弾中は操作できないというところにある。5分の殴り合いになったとすれば、半分近い時間は操作不能時間に当たる
一方FPSにおける操作不能時間はリスポン待ちだけだ。撃ち合い中は操作できるし、そもそもほとんどの時間は移動に使われているから、ベースレイプや延々とリスキルにでも合わない限りほとんどの時間でゲームプレイはできる(それが面白いか別の話だが)
無限リスキルはゲームとして発生させられないことがほとんどなのでBFのベースレイプを例にする。チームの実力差によって全拠点を制圧され、リスポン地点から動けない、ほぼ負け確の状態をベースレイプという。この状態に追い込まれたチームはだいたい抜けるわけだが(遠距離からキルを取ることはできても勝ち目もないし地味だから)格ゲーの被コンボ中というのは何もできないという意味では似たようなものだ。瞬間的に終わるかダラダラ続くかの差しかない
しかしFPSにおいてベースレイプまで至った状態での途中抜けが非難されることはまずない。実質的に決着がついているし、ゲームとして一切面白くないのは事実だし、嫌気がさして抜けてしまうのはどうしようもないわけだ。しかしFPSなら抜けて次に行くようなつまらない時間帯が、格ゲーだとゲームの大半を占めていると考えたらどうだろう?
格ゲーのプレイ時間の多くが、かなりストレスフルな時間帯という結論になってしまう。やはりここでも格ゲーは「しんどいゲーム」という見方になってしまうだろう
⑤非直感的、難しいけど底は浅い操作難度
格ゲーの操作は難しい。相当簡易化されているスマブラですら、必須テクの小ジャンを安定させられないプレイヤーが多数いるし、初心者が操作ミスで崖から落ちるのは日常茶飯事だ
しかし、入り口が狭いだけでコンボ入力が安定すればそこから先の操作技術というのは実は底が浅い。先行入力の緩和などで余裕の増えた現代の格ゲーならなおさらだが、要するに「ウメハラやときどにしか実現不可能なコンボや技」というものは存在しないということ。格ゲーにおいて必要最低限の技術はハードルが高いが、そこから先の技術の伸び代はそこまで大きくない
格ゲーにおける腕の差はむしろ読みや経験といった対人スキルで生まれるものだ。どうせコンボにはシステム上の限界があるのだから、突き詰められない果てがあるわけではない
一方FPSにおける腕の差とはすなわちエイムの差。そしてどんな凄腕のプロでも100発100中HSは不可能になっている。しかしFPSにおけるエイミングは(マウスであれば特に)かなり直感的で、ある程度の腕前に到達するまではかなり早い
言い換えればFPSの操作性は「入り口が広く果てしない」からやりこみやすいのに対して、格ゲーのされは「入り口が狭く底から先も狭い」ということになる
どんなプロでも全弾命中はさせられないからエイムbotが猛威を振るうわけだが、初段命中させればノーミスでコンボをつなぐチートがあったとして格ゲーで脅威になるだろうか?たぶんならないだろう。ある程度のプレイヤーなら同じことがほぼ確実できるからだ
FPSの操作が直感的であるというのは大事なことだ。実際はグレ投擲や偏差射撃などは距離感とセンスが相当求められるから決して簡単ではないが、ある程度あてることは誰でも簡単にできる。格ゲーというのはグレを投げるための操作がかなり複雑で、そのかわり投げたら必ず当たるという仕組みとでも言うべきか。しかし初心者からみればグレを投げられるゲームと投げられないゲームであり、前者のほうがそりゃ楽しいだろう
スマブラが%や距離(あと相手のベクトル入力)によってコンボが繋がったり繋がらなかったりすることが、一部格ゲーマーから否定的に評価されるのも似たような話だろう。その連中は「コンボを出すのは難しくていいけど、出したら確実に決まるようになっていないとダメだ」と言っているわけで、格ゲーのゲーム性ってのはそういうもんなわけだ
⑥完全個人技という側面
格ゲーは1on1が基本だ。たとえば対人対戦アクションとしてガンダムvsシリーズをあげても、あれを格ゲーと呼ぶやつはいないだろうし、2on2という時点でない、という話が必ず出るだろう
しかしFPSでタイマンというのは非常に例外的で、人数差という要素が重くのしかかるようにできているのが普通だ。たとえばぼくと同レベルのプレイヤーを用意し2人で行動すればプロ1人にもそう負けなくなる。これも勝敗を決める因子として過程を複雑にしていく
タイマンにはタイマンの独特の良さがあるから格ゲーはそれでいいのだけれど、よく言われるメンタル面でのしんどさ=負けを他人のせいにできない、という問題はモチベ維持の点でのしかかってくる
それだけではなく、格ゲーの「自分が相手より強くならない限り決して勝てない」というストイックな構造もここから来ている。他人というファクターが存在しないから、乗算にならず、個人技の比べ合いという形に純化していく
それこそ格ゲー独特の良さでもあり、格ゲーを別格に楽しめる人にとっての蜜の部分なのだけど、勝ち続けられる本当に強い人がごく一部である以上、負けがこむ多くの人にとって辛くどうにもならない構造、ということもまた一面の事実ではある
⑦報酬系の弱さ
格ゲーの報酬系は相当弱い。格ゲーは勝ち負けに価値のほとんどが詰め込まれたかなり極端でシンプルなゲームだから、勝てたら楽しいし負ければ楽しくない。言い換えると、格ゲーには過程での楽しさはほとんど用意されていない(もしくはそれを感じ取れるまでが相当長い)
↑で少し書いたけど、格ゲーでのワンパンやワンコンはFPSではキルに相当する。キルは過程の報酬としてはよくできたものだ。その代わり、勝ち負けやキルレの報酬=快感というのは、格ゲーの勝ちのそれより相当に低い
ざっくり言えば、格ゲーは勝った瞬間に脳汁がドバッとでるゲーム。勝てなきゃほとんどなにもない。しかしこれは、負け続ける初心者のモチベ維持という意味では相当に辛い
勝ち負けにしか価値がないという意味では将棋なんかもその通りだが、将棋は駒落ちといういい仕組みがあり、手を抜かずに勝ちを演出できるやり方が昔から用意されている。格ゲーにはそれが用意されていない。ランクでHP補正をかけたって死ににくいカカシを延々ぶん殴るゲームになるだけだし、本当に駒落ち相当のことをやるなら上級者側は一部コマンドや技が封印される、といった形にならざるを得ないだろう。しかしそんなものを作ろうという話を聞いたことすらない
逆にいえば、将棋ですら駒落ちがあるのに、格ゲーはそれすらしないのだから初心者が残るわけがない、という言い方もできる。FPSはタイトルにもよるがbot撃ちもあるし、そもそも初心者でもそれなりにキルが取れる。じゃあキルの取りにくいApexはどうなんだって話だが、そもそもバトロワ系は漁りと生き残りが最初の報酬系になっているから、初心者が0ダメでも楽しさを見出せる部分がある