Goodbye Mr A - The Hoosiers (2007年全英4位)
今年の春、フージアーズというイギリスのバンドの「Goodbye Mr A」という曲をしばしば耳にした。なんでも島根県発のフラッシュアニメーション作家FROGMAN(本名小野亮)が手がけたアニメ映画『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIEII~私を愛した黒烏龍茶~』のためにフージアーズが主題歌として書いた曲で全英チャートの4位まで上ったらしい。
この曲、どっかで聴いたような気がしていたが、すぐにELO(Electric Light Orchestra)の1978年のヒット曲「Mr. Blue Sky」に似ていることに気が付いた。似ているといってもパクリではなくて「Mr」という言葉の入る題名からして「Mr. Blue Sky」の影響を受けていることをアピールしているような曲である。「Mr. Blue Sky」はELOの1977年リリースのアルバム「Out of the Blue」から「Turn to Stone」(1978年全米13位)、「Sweet Talkin' Woman」(1978年全米17位)に次ぐシングルでかろうじてトップ40に入ったような曲(最高位35位)でヒットというほどヒットはしていない。(イギリスでは6位)
ELOの最高傑作というと私は1976年の「A New World Record(邦題「オーロラの救世主」)」をあげる。彼らの代表曲「Telephone Line」(1977年全米7位、年間15位)、「Living Thing」(1976年全米13位)などのヒット曲を含むもので最初から最後まで聴いても飽きない数少ないアルバムである。事実、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」やスティービー・ワンダーの「キー・オブ・ライフ」などの名盤とともに1977年のビルボードの年間アルバムチャートのトップ10に名を連ねている。
<ビルボード年間アルバムチャート 1977年>
1.Rumours - Fleetwood Mac (Warner Bros.)
2.Songs In The Key Of Life - Stevie Wonder (Tamla)
3.A Star Is Born - Original Soundtrack/Barbra Streisand (Columbia)
4.Hotel California - The Eagles (Asylum)
5.Boston - Boston (Epic)
6.A New World Record - Electric Light Orchestra (United Artists)
7.Part 3 - KC & The Sunshine Band (TK)
8.Silk Degrees - Boz Scaggs (Columbia)
9.Night Moves - Bob Seger & The Silver Bullet Band (Capitol)
10.Fleetwood Mac - Fleetwood Mac (Reprise)
11.Fly Like An Eagle - Steve Miller Band (Capitol)
12.Their Greatest Hits 1971-1975 - The Eagles (Asylum)
13.Bigger Than Both Of Us - Daryl Hall & John Oates (RCA)
14.Frampton Comes Alive! - Peter Frampton (A&M)
15.This One’s For You - Barry Manilow (Arista)
16.Endless Flight - Leo Sayer (Warner Bros.)
17.Leftoverture - Kansas (Kirshner)
18.Year Of The Cat - Al Stewart (Janus)
19.Rock And Roll Over - Kiss (Casablanca)
20.Greatest Hits - Linda Ronstadt (Asylum)
Mr. Blue Sky - ELO (1978年全米35位)
その最高傑作の「A New World Record」に続いてリリースされた「Out of the Blue」はジャケット・デザインを日本人デザイナー長岡秀星が担当し、ELOの充実期に相応しい内容と言えないこともなかったが、LPレコード2枚組みだったにもかかわらず1曲もトップ10シングルを出せなかった。
ELOはロックとオーケストラの融合が売りだったのだが、この辺りからオーケストラの代わりにシンセサイザーを使う傾向が出て来て、それがまだ花を咲かせていない感じがする。後に81年のアルバム「Time」から例のドラマ『電車男』に使われた曲「Twilight」(1981年全米38位)で完成を見ることになったが、そういう傾向の曲よりもシンプルなロックン・ロールナンバーの方が受けて「Don't Bring Me Down」(1979年全米4位)や「Hold On Tight」(1981年全米10位)がヒットした。
ELOにはその他にも「Can't Get It Out Of My Head(見果てぬ想い)」(1975年全米9位)、「Evil Woman」(1976年全米10位)などヒットがあり、全米チャートで最高35位と振るわなかったこの「Mr. Blue Sky」はオーケストラをフィーチャーしたスケールの大きい曲でありながら、はっきり言っていままで影が薄かった。ところが、今回「Goodbye Mr A」という「類似品」が出て注目されたからかどうかは判らないが、このELOの「Mr. Blue Sky」の方もANAのCMで使われ結構話題になっているのだ。
Mister Blue Sky - Lily Allen
話はそれで終わらなかった。昨年「Smile」(2007年全米29位)を全英チャートのトップに送り込んだリリー・アレンが、昨年の暮れにこの「Mr. Blue Sky」を歌って、それがフランスの携帯会社SFRのテレビCMに使われていて、最近J-WAVEでかかったので驚かされた。
アメリカでトップ10ヒット7曲、イギリスで15曲というELO。リーダーのジェフ・リンは90年代にジョージ・ハリスンの紹介でビートルズの「アンソロジー・プロジェクト」に参加し、新曲「Free as a Bird」(1996年全米6位)などのプロデュースを担当して話題になった。また、最近でもプッシーキャット・ドールズがヒット曲「Beep!」(2006年全米13位)の中でELOの「Evil Woman」の間奏のストリングスのパートをサンプリングしたりした。日本では比較的地味な存在だったが、突然、ドラマ『電車男』で使われたり、「Mr. Blue Sky」が今になって注目を浴びてきたりするところが面白い。いいものは時代を超えて愛されるということか。
ザ・トリック・トゥ・ライフ(期間生産限定盤)
/ザ・フージアーズ

オーロラの救世主(紙ジャケット仕様)
/エレクトリック・ライト・オーケストラ

アウト・オブ・ザ・ブルー
/エレクトリック・ライト・オーケストラ

タイム
/エレクトリック・ライト・オーケストラ
