死の棘 そこらのホラーよりこわいぞ
◆BS2の小栗康平作品集をHDDに録画していたのをやっと鑑賞。
◆寡作映画作家小栗康平の作品集がBS2で連続放映された。「泥の河」「伽椰子のために」「死の棘」「眠る男」である。すべて,HDDに録画していたが,なかなか観る暇がない。名作「泥の河」は宮本輝の原作から大好きで,映画「泥の河」も9800円もするLD(レーザーディスク)を持っている。
◆「伽椰子のために」はデビュー作だが,初めて鑑賞した。南果穂が初々しい。朝鮮と日本の歴史を背負った重い佳作だ。
◆さて,「死の棘」である。佳作小説家「島尾敏雄」の原作。主人公の男は「島尾敏雄」自身。名前もそのままである。その敏夫の浮気を知った,妻の狂気のような,夫への責めが延々とつづられる。
◆撮影はセットのようで,縁側の向こうの空は,いつも上半分が灰色で,下半分が白い,どんよりした日本海の空のよう。それは重苦しい夫婦の関係のようにいつも中途半端に明るく暗く,据わりが悪いのだ。
◆そこに来て,音楽が実に不気味だ。作曲は細川俊夫。日本を代表する現代作曲家である。その魂を引き裂くような弦楽器の響きが映画の狂気を増していくようである。
◆松坂慶子の狂気の演技が恐ろしい。この女房には「芸のためなら女房も泣かす」はまったく通用しない。時代は戦争の直後と思われるが,男と女が対等であるところに,この夫婦の異様さが有る。
◆小栗作品は,見終わった後,一週間ほど心の奥底に鉛を残すような厳しさがある。しかし,思わず映画には引き込まれている。
トロイ 群衆シーンに驚愕
- ワーナー・ホーム・ビデオ
- トロイ 特別版 〈2枚組〉
◆レンタルDVDにて鑑賞。
◆群衆シーンのすばらしさに驚く。同様な場面に「ハムナプトラ2」があるが,CGも日進月歩である。トロイはCG臭さが抜けて,どこまでがエキストラか分からないのがすごい。「スターウォーズⅠ」のポッドレースのシーンの群衆なぞ,実際のエキストラとCGの違いが分かりすぎて,悲しいくらいである。その実際のエキストラの中にマーク・ハミルがいたのも悲しかったが・・・。
◆男優人の充実はもちろんだが,ヘレン役のダイアン・クルーガーは際だって美しい。彼女はドイツ出身でディアーヌ・クルージェというフランス風の読みもあり,ミッシェル・ヴァイヨンにも出演しているようだ。久々に魅力的な美人女優の出現に大きく期待したい。
◆監督は「Uボート」のウォルフガング・ペーターゼンだが,完全にハリウッド化した映画には,あまりリアリティを感じられない。これは,ペーターゼン監督に限らず,ハリウッドの歴史大作には,作り物臭さがまとわりついているように感じる。だから,男優や女優の美しさに酔えばよい。ああ,CG無き頃の大エキストラ大作「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールが優しげな顔で出ていたなあ。彼の胸の中に去来するものは何だろうか。「昔はよかった」?「今はらくちんでいい」?
チャングムの誓い 40話 ついに抱擁
◇恋は巨大な障害の中で一層燃え上がるものだなあ。チャングムとジョンホ。これまで思いを告げながらも,チャングムの立場をおもんばかって,静かに見守っていたジョンホ。恋よりも,女官の仕事を,医女の仕事を優先してきたチャングム。疫病とヨリらの策謀の中で,絶体絶命に追いつめられたチャングム。間一髪ジョンホに救われ,そしてついに二人は美しき抱擁に至る。
◇以前中国との国際交流団として,船で中国に渡ったことがある。交流も2日目を過ぎたとき,数百人の日本人団に食中毒が発生。多くの交流団員が苦しんだ。苦しむ団員とそれを必死で介抱する団員の間に多くの恋が生まれた。私は幸か不幸か,症状が軽く,船室で一人で休んでいたので,恋は生まれることはなかった。(悔)
◇HDDにはアンコールチャングムもたまってきており,日々チャングム三昧である。
宇宙戦争 スピルバーグよどこへいく
◇ユナイテッドシネマ200人程度の小屋で観賞。少しおくれて入り,エンディング5分でトイレに行きたくなり,ずいぶんがまんしたが,限界で,席を立ち,戻るとエンドタイトルが流れていた。トホホ。◇冒頭より息もつかせぬ特撮で見せる。スピルバーグらしい家族のきずなを漂わせながらも,母が去り,兄が去り,極限の中で,家族は離れ離れになっていく。勉強もせずだらだら過ごす兄は,地球を守るという自分の存在価値を見いだし,トライポッドに向かっていく。
◇名子役ダコタ・ファニングはその達者な演技は発揮できずに,こわがっているだけであり,もったいない使い方だ。才気煥発に父親を助けていくみたいにできなかったのかなあ。
◇ボストン行きのフェリーの場面は白眉である。引きさかれる家族,やっと乗ったフェリーもあえなく転覆させられる。様々な光か交錯する夜間のシーンはすばらしかった。
◇ティム・ロビンスとの静かなシーンはクライマックス前の静けさだろうが,あまりに前半との特撮の量のちがいに,少し拍子抜けする。
◇「続・激突カージャック」のころのエネルギーの爆発がないのは,スピルバーグも加齢したと思えばしかたないが,加齢なりの重厚な作品を期待してしまうのは酷なのだろうか。ああ,スピルバーグよどこへいく。
ジョゼと虎と魚たち さわやかさの中のテーマ
◇すてきな邦画にであった。幸せ。
◇池脇千鶴の名演技に脱帽である。冒頭の乳母車の中で包丁をかざす,醜い彼女が,どんどんかわいく知的でエネルギーとウイットに満ちたすばらしい人物像へと観る者の目を新しくしてくれる。
◇「こわれもの」として世間から隠そうとする世代(祖母)と偏見をもたない不思議さわやかな大学生(妻夫木)。リアルさとそうでなさがないまぜになって主人公ジョゼのまわりを回るが,ジョゼはしっかりした自分をもち,自立している。
◇ラストで,結局ジョゼから逃げてしまう自分の情けなさに涙して,その情けなさからも逃げようとする大学生(でも,男ってこういうものだと思う)と電動車いすで買い物に出て,人生を楽しむかのようなジョゼの後ろ姿が対比されて終わる。車いすは後ろ姿しか映さないが,たぶんジョゼは微笑んでいる。それが,さわやかさの中に見事にテーマを浮立たせていて秀逸。
◇「スウィングガールズ」の上野樹里が芦屋(?)の令嬢で大人っぽい役を演じるが,違和感なく,高校生でも大学生でも,そして主婦もできる,恐るべき女優かもしれない。
◇「ジョゼ」の表現語法で感心するのは,映像で全部を語らず,観る者の想像を上手に喚起すること。それは,まるで文学である。例えば,セクシーな場面だが,ジョゼ「いちばんHなことしてもええよ」で,画面はモーテルでの愛の交換の終わった場面で,妻夫木「いたくなかった?」ジョゼ「あんなんでええの?」これは,いったいどんな行為をしたのかは,観る者の想像にゆだねられるが,男はたいがい判ってしまう。こんなところが,じつに文学的である。久々に出会った邦画の秀作である。
レンタル10枚借り いろいろ観ました
◇近くのレンタルDVD店が1枚100円セールを行っていたので,開店前から並んで,10枚を借りてきた。
◇「笑の大学」
「タイガー&ドラゴン 三枚起請の回」
「JamFilms」
「うる星やつら オンリーユー」
「機動警察パトレイバー アーリーデイズ Ⅰ&Ⅱ」
「精霊流し」
「ジョゼと虎と魚たち」など
◇「笑の大学」いまひとつ
「タイガー&ドラゴン」すばらしい!シリーズへ向かう勢いがあり,設定が完全に提示されている。
「JamFilms」玉石混淆。気に入ったのは望月六郎のセクシーなストーリー。吉本多香美にうっとり。
「うる星やつら オンリーユー」押井 守はやはり,「ビューティフルドリーマー」で自分らしさを全開にした。
「パトレイバー」何度みてもすばらしい。押井ワールドとエンタティメント性の見事な結合。
「ジョゼ」はあまりにすばらしいので,別に述べたい。
- バンダイビジュアル
- 機動警察パトレイバー アーリーデイズ VOLUME 1.
チャングムの誓い 35話 疑惑 あなうれし ひさしぶりの女官たち
◇ああうれしい,久しぶりの女官たち。我らがクミョンは,一から出直す決心したものの,チェ一族の掟に縛られたのか,なんとスラッカンの最高サングンになって,髪型が円盤ヘアーに。チェサングンは女官長に昇進。あおりを食って,ミンサングンらは,王様の「便」係に。そして,泣き虫ヨンセンは,王様の寵愛を一度受けたきり,ひたすら待ち,祈る日々。女官にも軽く見られ,もっとも悲しい立場。しかし,ヨンセンの雪の中でひたすら祈るのは,王の来訪を祈るのでなく,親友チャングムの無事と再会。突然現れたチャングムに対する,ヨンセンの涙と笑顔は,本当に切なかった。「私がもっと王様を喜ばせられたら,チャングムを助けてあげられたのに」と自らを責めるヨンセン。宮中の女の悲しさがひしと伝わる。
◇「毒を飲ませれば,娘を送り込む。チェジュドに追放すれば,舞い戻ってくる」チェ女官長の恐れと,クミョンの達観したような「かかわったのがいけなかったのです」その恐れを払拭せんと,全力でチャングムを排斥にかかるだろう。どうチャングムが切り抜けていくのか。
◇クミョンの足のツボをほぐしながら,クミョンの苦しみを淡々と診断するチャングム。それは,やはり復讐の鬼としてのチャングムなのか,医女としてのチャングムなのか・・・。ずばり言い当てられたクミョンの恐れはが倍加したことは間違いない。
ジョンホとの再会も「最高サングン就任のお祝いの言葉が後回しになって」しまう悲しさよ。クミョンの無言の演技のすばらしさ。
◇ジョンホの「チャングムさんを中傷したときは,我々への宣戦布告と受け取る」かああ,気持ちよい台詞だ。腐敗した宮中を改革せんとついに牙をむいた,ジョンホ,そしてチャングムの静かなる復讐心?しかし,名教師イクピル先生が宮中に入り,チャングムの迷いも必至だ。ますますおもしろくなる大河ドラマ!
- 著者: 張 銀英
- タイトル: 「宮廷女官チャングムの誓い」シナリオ・ブック 第1巻
梶芽衣子2本立て! 修羅雪姫&女囚さそり
◇レンタル屋さんも,とんでもない2本立てを送ってくれたものだ。
◇梶芽衣子の2本立て。「修羅雪姫」と「女囚701号さそり」。藤田敏八と伊藤俊也。伊藤監督は第1回作品と銘打ってある。
◇「修羅雪姫」は,冒頭の雪の刺客シーンで始まり,その出生から,なぜ復習の「修羅」となるのかが前半でわかりやすく提示される。梶芽衣子演ずる「雪」のクールな美しさはもちろんんだが,「雪」の母親の復讐への執念がより恐ろしい。「雪」は復讐をするために生まれてきた子なのである。復讐を遂げさせるために,母親は誰とでもまぐわいをもった。相手は誰でもよく,復讐を遂げさせる子供を欲しいがために。これは,恐ろしい。よって「雪」の生きる目標は生まれながらに明白なのである。これが恐ろしい。
◇子供時代の厳しい修業,乞食村の描写やクライマックスの鹿鳴館での死闘と,飽きさせない娯楽作品となっている。雪の上の真っ赤な血をタランティーノがキルビルで引用したのはもう,有名な話。
◇「雪」の着物はいくつか着替えられ,いずれも梶芽衣子の着物姿は最高に美しい。
◇「女囚701号さそり」これまた,すばらしい傑作。今度は母の復讐でなく,自らが愛した男から裏切られた事への復讐。これまたすさまじい。輪姦されたままの格好で,黒と赤のローブだけをまとり,敵の男を警視庁前で見つけるや,そのローブをぱっと空中に放り投げ,裸同然のすがたで,出刃包丁で斬りつけていく。
女性は大切にしないと怖いです。
◇刑務所の中の描写もすばらしい。熱湯みそ汁をかけていびる女囚人に,逆にみそ汁と浴びせかけ大やけどを負わせるは,自分をねらったガラスを所長の目につきささせるは,その知恵と俊敏さが小気味よい。
◇両作品とも,梶芽衣子はつねにクールであり,笑顔は皆無だし,台詞も少ない。そこがなんともかっこいい。傷つけられたら,牙をむいてどこまでも復讐を遂げようとする。それは人の業である。泣き寝入りしたり,曖昧にすませようとする凡な自分にとって,あこがれであり代弁者であるのか,だから復讐映画は無くならない。
海を渡る夢 スペインの空気とユーモアと哲学と
◇長崎セントラル劇場にて鑑賞。ふらりと立ち寄ると,時間ぴったり。2Fでの「ベルリンフィルと子どもたち」にも惹かれたが,やはり,アメナバール監督を選ぶ。
◇四肢麻痺のラモンの腕が動き,立ち上がり,ベッドをどけて,助走をつけて窓から飛び出していく。カメラはラモンの目となって,スペインのどちらかというと荒涼な土地を昇降しながら,そして海へ。すばらしい映像である。スペインの空気を伝えてくれる。
海へと飛んだあと,砂浜を歩き,知り合った女性弁護士との抱擁。そして,カメラは,ラモンのベッドでのうつろげな表情へ切り返す。最高の名場面であり,涙があふれる。
◇テーマは尊厳死であり,重たいものだが,ラモンのウイットにあふれユーモアある語りや切り返しで,見ていて気分が落ち込むことはない。ラモンの書く詩は,哲学的で自分には難解であったが,DVDなどでもう一度見て理解したい。できるかな?
とまれ,9時半に起き,長い一日を,哲学書を読んだり,ワーグナーを聴いて過ごしているラモンの知性はすばらしく高まっているはずである。思索をめぐらす暇もない自分の毎日を考えてしまった。むろんラモンの人生は地獄である。だからこそ,あれほどの家族の愛情につつまれていても,死を選択するのである。
◇アメナバール監督だからといって,最後のどんでん返しを期待してはいけない。海を渡るラモンの魂(視点)をエンドタイトルに,生や死について考える暇さえない多忙な自分に,じっくり考えてごらんと語りかけてくれる。
茶の味 癒されるほのぼのさ
◇すばらしき春野家のみなさまに癒されました。長男はじめの雨の中転校していく好きな子を追いかけるシーン。ジャンプするときの表情。まるで自分のようだと思った人も多いと思う。そして,転校生とのアイアイ傘。傘をバスの中に投げこむやさしさ。ああ,そんな時もあったなあってきっと思う。
◇浅野忠信演じるおじさんの「呪われた森」での話。思わず人に話したくなる。それほどおかしい。う○ちを頭にのせた血まみれの入れ墨者は,富豪刑事のやくざ顔の刑事さんだった。最近よく見る俳優さんだ。
◇末っ子の幸子の悩み。巨大な自分に見つめられていること。ほとんど台詞がない,彼女だが,その思いが見事に表現され,観る者に伝わるのは,この子の自然体と監督石井克人の力であろう。ひまわりが巨大化し,宇宙全体を包んでいくのは,「コンタクト」のオマージュか。この場面でCGとはこのようなファンタジックな場面であれば何ら違和感を感じないことに気付く。リアリティとしてCGを使うとしらけるが,このような可能性があるんだなあ。
◇我修院さんはいつもながらの怪演で笑わしてくれる。「山」や「どうしてあなたは三角定規なの」など異様な振りといい声。あの体の動きはアニメーターとして自ら動きを体現していくという職人の芸だったことが,お母さんとの振り付けの打ち合わせで分かってくる。単に奇異をてらっているのではないのである。孫の幸子との窓閉め合戦(?)。あれとて無意味な行為でなく,ラストの感動の4冊の画集へとつながる,アニメーターオジイの取材であったに違いない。
◇春のゆったりとした暖かさの中で癒されているそんな映画だ。









